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機動戦士ガンダムSeed Destiny -An Encounter with the Trailblazer-_13話

Last-modified: 2014-06-01 (日) 11:29:41

カガリとアレックスに与えられたミネルバの一室。その室内で、カガリは部屋の明かりを落としたまま
ベッドに浅く腰掛け、柔らかく手を組みじっと一点を見つめていた。
俯き垂れ下がる前髪によって、彼女の表情をうかがい知ることが出来ない。
悲しみにくれているのか、怒りに満ち溢れているのか、それとも憎しみに焦がれているのか。

 

「カガリ」

 

部屋に戻ってきたアレックスは、気落ちしている様子のカガリが心配になり声を掛けた。

 

「アレッ−−アスランか」

 

微かに頭を上げ、アレックスの言葉に反応するカガリ。だがやはり彼女の表情はまだ分からない。
この部屋には二人以外誰もいない。だからだろうか、彼女は気兼ねした様子なく彼の本当の名前を呼ぶ。
久方ぶりにその名を呼ばれたためだろうか、アスランはやや居心地の悪そうな顔をする。
そんな彼の様子を感じ、カガリの口元に小さく笑みが浮かぶ。
だが、そんな笑みすらもすぐに消え、彼女はゆっくりと口を開いた。

 

「なあ、アスラン……私はオーブを強い国にしたい」
「ッ!」

 

何を思い、カガリがその言葉を口にしたか図りかねたアスランは数瞬考え、そして問いかえした。
その言葉を口にしても良いのかとはばかられもしたが、それでも確かめねばならない。

 

「他国に侵略されない、軍事力のある国としてか?」
「違う! そうじゃない。そうじゃないんだ」

 

俯いたまま頭を振ってアスランの言葉を否定する。
彼女の言う強い国とはいったい何だ。答えが分からず、少年は胸が締め付けられるような思いになった。
カガリの頭がゆっくりと持ち上がる。彼女の瞳には負の感情など一欠けらも無かった。
やや力の無い表情だが、それでも絶望などに身を任せたりせず、何かを求める瞳をしている。
ゆっくりと彼女の唇が動く。

 

「私は知らなかった。父が、ウズミ・ナラ・アスハが、あれほど憎まれていたなんて」
「カガリ、それはッ!!」

 

ウズミのことを否定するかと思ったアスランは、慌てて言葉を挟もうとする。
だが、そんな彼のことなど気にも掛けず、カガリは淡々と語り続ける。

 

「父は世界の明日を願い、そして自国の民を傷つけた!」

 

握り締めている手が、小さく震える。

 

「血がつながっていなくとも、ウズミ・ナラ・アスハは私にとってただ一人の父だ。
その父が過ちを、罪を犯したというなら、私は贖いたい。許されると思ってなどいない。
それでも父のために、父が残した国のために何かしたいんだ!」

 

純粋な想いをこもった瞳でカガリはアスランを見上げた。
見詰め合う二人。だが、彼はその真摯な瞳を見つめ続けることが出来ず、フッと視線をそらせた。
彼女の言葉がまるで棘のように少年の胸に刺さる。

 

父親が犯した過ち。アスランの脳裏に父の言葉が響く。
『撃たねばならぬのだ、撃たれる前に!何故それが分からぬ!!』
最愛の母を亡くし、狂気に蝕まれていった父を思い出し、彼の胸に苦い想いがよぎった。
アスランの表情に翳りを見つけ、カガリの顔もまた暗くなる。
だが、それでも彼女は語ることを止めない。そう、彼女は願っていた。

 

「傷ついた人も、傷つけた人も、病める人も、弱き人も明日を夢見れるような、そんな国。
……力強い国にしたい。今はそのための道も、どうすればいいのかも分からない。それでも!」

 

カガリは大きく息を吸う。彼女の瞳には力強い輝きが宿っていた。
『そんな国にしたいんだ』と彼女は己に言い聞かせる。
アスランは思った。どれだけ道が険しくとも、カガリは真っ直ぐに自分の選んだ道を歩むのだと。
父親の遺したもの。選択肢が無かったわけではない、国を手放すという選択肢もあったはずだ。

 

だが、彼女は選んだ、手に取った。国を、父の想いを。
カガリの語った想いに答えるかわりに、アスランはそっと包み込むように彼女の手を握る。
アスランとカガリの瞳が重なった。フッと彼は微笑む。彼女の目指す険しい頂を思えば、誰もが顔を顰めた
かもしれない。だが彼は微笑んだ、あまりに彼女らしくひたむきで真っ直ぐであったから。

 

「カガリなら出来るさ。そんな優しい国になれば、きっと帰ってきてくれるはずだ。国を離れていった人たちも」
「そ、そうかな……」
「ああ。だから、俺は今、俺に出来ることをしようと思う」
「アスラン?」

 

自分の想いを認めてくれたアスランに、カガリは頬を赤らめながら微笑んだ。
アスランも己の思いを言葉にする。地球を、オーブを、カガリを助けたいから。

 

「オレは、ユニウスセブンの破砕作業を手伝おうと思う」
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