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機動戦士ガンダムSeed Destiny -An Encounter with the Trailblazer-_14話

Last-modified: 2014-06-01 (日) 12:18:50
 

ミサイルが縦横無尽に飛び交い、ビームライフルで撃墜されたMSよって火球が作り出される。
所属不明のジンハイマニューバ2型がユニウスセブンの地面を駆け巡る戦場の中、シンは圧倒されていた。

 

「なんだよ、これ」

 

ユニウスセブン破壊作業で3度目の戦場だ。その空気に圧倒され呑まれたわけではない。
むしろ、徐々に慣れてきて十全に実力を発揮出来るようになりつつあった。
それでも、今シン・アスカは圧倒されていた、あの存在に。

 

『工作隊は破砕作業を進めろ! このままでは奴らの思うつぼだ。迎撃隊、3機1編成で事に当たれ!
ディアッカ、貴様はその位置から迎撃隊への援護射撃。シホ、お前はオレについて来い』

 

ザフト軍は、突如現れた所属不明の敵MSの攻撃に戸惑い翻弄され、編成がズタズタにされていた。
だが、イザークの乗ったザクファントムの登場により戦場は好転する。

 

覇気のある声で檄を飛ばし、矢継ぎ早に指示を出すイザーク・ジュール。
その声に呼応するように、戦場にいる全てのザフト兵の動きが機敏になっていく。
通信機越しからも伝わる圧倒的な存在感に、シンは身震いした。
的確な指示に、勇猛果敢な指揮官がいると戦場はこうも激変するのか。
先ほどまで敵に回避されたことによる焦りで射撃が鈍っていたディアッカ・エルスマンは冷静さを取り戻し、
迎撃部隊も浮き足立ち、バラバラに動いていたのが、味方のフォローをしつつ一機、また一機と確実に敵を撃墜していく。

 

「貴様が隊長機か!」

 

一機のジンがビームライフルを無作為にばら撒きつつ、イザークのザクファントムに突進してくる。
左腰に装備されている斬機刀を抜き払い、大上段に振り上げた。
まだザクファントムまでは遠間であったが、ハイマニューバの推進力ならば一瞬でその間合いなどなくなる。
それを計算に入れ敵MSは斬機刀で攻撃することを選択したが、イザークはその一枚上手を行った。

 

イザークは慌てることなく対処する。右手に装備されている武器を素早く突き出す。
鋭く突き出されたハルバード型の柄の長い武装が、ハイマニューバのコックピットに当たる。
ビームを展開していないため、軽くMSの装甲がへこむだけで、敵パイロットは怯みもしない。

 

「そんな攻撃でこの俺が止まると思ってッ」

 

だが、それ以上先の言葉を敵パイロットは口にすることができなかった。
パイロットが怯むことが無くとも、MSは確実に停止する。一瞬でいいのだ。
イザークはその一瞬でビームアックスを巻き込むように構え、ハイマニューバのコックピットを切り裂いた。
シンの脳裏に言葉が浮かぶ。

 

『ヤキンドゥーエの英雄』

 

前大戦を生き抜いた一部のパイロットたちに囁かれた称号。
その名に相応しい鬼神のごとき活躍に、シンは気づかぬうちに見惚れ動きを鈍らせていた。
イザークの視界に映るMSの動きが鈍い。苛立ち混じりに彼は吼えた。

 

『インパルス、ぼさっとするな!状況は待ってくれんぞ!』
「は、はい!!」

 

イザーク・ジュールの存在感に圧倒され、動きが鈍っていたインパルスにまで激は飛んできた。
シンは慌てて返事をして機体を動かし、工作部隊の護衛にまわる。
そうだ、戦場では一瞬のミスが命取りになる。わかっていたはずなのに、出来ていなかった。
そのときだった。インパルスのコックピットに熱源探知のアラームがけたたましく鳴り響く。
カメラに映るその姿を確認すると、シンの目つきが険しくなった。

 

「あいつら、なんでこんな時に」

 

幾重のビームが戦場に降り注いだ。ボギーワンに強奪されたアビスである。それだけではない。
ガイアとカオスも追従しており、破砕作業を始めようとしている工作隊のMSを次々と撃墜し始める。

 

「冗談じゃないぜ、こんなところでドタバタと」
「お前らのせいかよ、こいつが動き出したのは」
「……ッ!」

 

突如介入してきた強奪機のせいで戦場が再び崩れかける。
それにいち早く対応したのはミネルバから応援として駆けつけたシンたちであった。

 

「あいつらぁああ!」

 

ルナマリアが吼えた。それもそうだ、今は一刻も早く破砕作業を進めねばならないというのに、
あの所属不明のパイロットたちは作業の妨害をしているのだ。
あまつさえ、その攻撃によって命を失っている味方もいる。怒るなというのが無理な話だ。
シンがインパルスのスラスターを全開にしてアビスに肉薄する。ビームサーベルを抜き払い切りかかる。
当然、アビスのパイロットもそれに呼応するようにビームランスで受け止めた。

 

『目的は戦闘じゃないぞ!』
「分かっています!それでも、あたしたちがあいつらを抑えるしかないじゃないですか!
それとも、味方が落とされるのを黙って見てろとでも言うんですか!!」

 

通信機越しにアレックスが何か言っていたが、シンは気にしなかった。
シンの代わりにルナマリアがヒステリックに返していた。戦場の空気と味方が撃墜されていく姿に、怒りが
振り切り彼女の言葉遣いは荒いものになった。半ば切れ気味だ。
一瞬たじろいだが、アレックスも言い返す。彼女たちより戦場の経験はアレックスのほうが多いのだ。
必要最低限のことは伝えなければならない、そんな気持ちを乗せシン、ルナマリア、レイに通信を繋いだ。

 

『そんなことは言っていない。冷静になれ、逆上していては目的を見失うぞ!』

 

伝わったのかどうか分からないが、所属不明のジンが2機とカオスがレイとアレックスを敵と定めたのか
接近してくる。アレックスは小さく舌打ちをし、どちらの対応をするか迷っていると通信が入った。

 

「オレはジンをやります。あなたはカオスをお願いします」
『ああ、分かった』

 

アレックスは素早く機体を切り返し、レイのザクから離れる。
どうやらカオスも彼のことを標的と定めたらしい。MA形態からMSへと変形し、攻撃を仕掛けてくる。
彼が機体を小刻みに動かし、回避行動をとっているとカオスは止めとばかりに兵装ポッドを分離した。
アレックスの顔に、口元に小さく笑みが浮かぶ。
この手の兵装を使う人種は大抵ある攻撃パターンに偏る傾向にある。

 

「そこだ!」

 

ザクの背後から攻撃しようとしていた兵装ポッドを、アレックスはビームライフルで撃ち抜く。
自分を囮にして、スキだらけになった背後から攻撃をする。ドラグーンを使うものは総じてこの傾向がある。
前大戦、足つきに搭載されていたメビウスゼロを相手に戦った彼だからこそ、導き出せた答えであった。
ここぞとばかりにアレックスはカオスに接近する。焦ったカオスがバルカンを乱射しているが、アレックスは
意に介すことなくMSの頭部を殴りつける。

 

「くそッ!」

 

カオスのパイロット、スティング・オークレは殴りつけられた振動の中、毒づきながらも攻撃を続ける。
彼の意思が乗り移ったかのようにポッドは執拗にアレックスを追撃する。だが、それは長くは続かなかった。
シールド内に装備されているビームトマホークを投げつけ、アレックスは兵装ポッドを撃墜してみせる。

 

アレックスがカオスに対し優勢に立っている頃、ルナマリアは強奪されたガイアと対峙していた。
互いにライフルを打ち合うが、回避能力が高いため放たれたビームは虚空の宇宙に消えてゆく。
獣形態に変形したガイアが、通常のMSではありえないような変則的な動きで赤いザクを追い詰める。

 

「チッ、やってくれるわね!」

 

ルナマリアは焦れたように舌打ちし、機体をユニウスセブンの大地から上昇させる。振り向きざまに
大口径のビーム法を腰だめに構え放つ。銃口から、強烈なエネルギーの奔流が迸る。
だが、俊敏な獣形態のガイアは素早く回避してみせる。それだけに留まらず浮遊しているユニウスセブンの
残骸を足場に見立て、獲物を追い詰める獣のごとくルナマリアに迫る。
勢いそのままにルナマリアのザクは蹴り飛ばされ、ユニウスセブンの大地にしたたかに打ちのめされる。
俊敏な動きのガイアに対し、ガナーウィザードはデッドウエイトでしかない。

 

「これで終わりね! 赤いの」

 

止めと言わんばかりに迫ってくるガイアを目にすると、ルナマリアは決断した。
ウィザードをパージし、身軽になったザクでお返しとばかりにガイアを蹴り飛ばす。
止めを確信していたガイアは無防備に攻撃を喰らい、吹き飛ばされる。

 

ガイアのパイロット、ステラ・ルーシェは突然の事態に一瞬頭が真っ白になった。
それでも、長年叩き込まれた戦闘技術により、頭ではなく体が反応する。即座に機体の制御を立て直し、
ライフルでザクを狙う。
ルナマリアもまた、ようやく掴んだ一瞬の隙を見逃すことなく、ライフルで狙い打った。
まるで互いに示し合わせたかのように右脚部をビームが貫く。

 

「やるわね、アイツ!」

 

後退しながらビームライフルでガイアを迎撃しつつ、敵パイロットの腕をルナマリアは認める。
片足をやられ機体バランスが取り辛くなっているにもかかわらず、彼女は器用に機体を操作してみせる。
一方ステラは、仕留め切れなかったことに憤り、執拗にザクを追い始めた。

 

その頃、ジュール隊の工作隊によってメテオブレイカーがひとつ、またひとつと打ち込まれていた。
ユニウスセブンの凍った大地を巨大なドリルが掘り進み、内部で爆発する。
縦横にいくつもの亀裂が走り、やがて大きな衝撃が訪れる。ようやくユニウスセブンが割れたのであった。
工作隊の通信にいくつもの歓声が上がる。

 

『まだだ、もっと細かく砕かないと』
「「アスラン!」」

 

砕けた破片を煙幕代わりにカオスから距離をとり、工作隊へと機体を寄せたアレックスが通信を入れる。
冷ややかな声の主に、イザークとディアッカは驚いた。戦友であり、今はオーブに亡命しているはずの男が
何故ここに?問いかけるよりも先に、アレックスは行動で示した。
未だにいるジンをビームライフルで迎撃し、メテオブレイカーを守ってみせる。

 

『工作隊、半分に割れたといえまだまだ気を抜くな!作業に当たれ!』

 

アレックスの姿に思うところがあったが、すぐさまイザークは工作隊に指示を出す。
半分に割れたといえ、まだまだ楽観できる状況ではない。もっと細かく破砕し、大気圏で燃え尽きるサイズ
にしなければならない。さもなければ地球は壊滅的な被害をこうむる。
未だナチュラルと融和など出来ると思ってないが、むやみに命が失われても良いとも思っていない。
前大戦でそう学んだイザークは機体を瞬時に動かし、岩陰から飛び出してきた2機のジンを迎撃する。

 

援護を入れようとしたシホよりも早く、彼の攻撃をサポートするものがいた。
アレックスのザクである。ビームライフルを幾重にも打ち込み、イザークが突貫しやすい状況を作り出す。
大振りのビームアックスを振り回し、イザークはジンを撃墜して見せた。
もう1機のジンは、中距離で放つイザークのビームガトリングガンの弾幕を避けてる所を狙い済ましたように
ディアッカのビーム砲により撃墜される。流れるように援護し合い敵MSを屠っていく3人。

 

戦場を支配する3機のザクに危機感を覚えたのか、アビスとカオスがイザークたちに攻撃を仕掛ける。
突っ込んできたアビスをイザークが正面から迎え撃つ。ビームコーティングされていない柄の部分を
ビームアックスで叩ききり、背後から忍び寄ったアレックスのザクがアビスの脚部を切り払う。
一瞬にして戦闘能力の一部を無力化されるアビス。今度は加勢に駆けつけたカオスに攻撃対象を移す。
正確な射撃でアレックスがカオスの動きを封じ、バーニアを全開にしたイザークが一瞬にしてカオスの
懐に飛び込む。振り下ろしたビームアックスによりビームライフルを手にしている右腕を切り飛ばす。
返す刀で、さらに逆袈裟切りにカオスの頭部が切り捨てられた。
こうなっては後退するしかない。アビスがすぐさまカオスの残った左手を引き、撤退していく。

 

「あれが、ヤキン・ドゥーエを生き残ったパイロットの力かよ」

 

遠目に見ていたシンはまたも圧倒された。あれだけ苦戦していた強奪機をたやすく戦闘不能に追い込む。
シンの口から思わず感嘆の声がこぼれた。
的確な指示を下し、圧倒的な存在感を見せ付けたイザーク・ジュールだけではない。
長大なビーム砲で次々と敵を撃墜していくディアッカ・エルスマン。
そして……偶然とはいえミネルバに同乗することになったオーブに亡命した前大戦の英雄、アスラン・ザラ。

 

辺りに敵が見当たらなくなり破砕作業を再開しようとしていた全MSに、ミネルバよりテキスト通信が入った。

 
 

攻防きらめく戦場を、遠くから見守るものがいた。
ユニウスセブンの大気圏突入コースに先回りし、待機していたダブルオークアンタである。
地球の引力に引かれながらもGN粒子を放出し、その場に機体を留める推力は、この世界のMSとは
一線を画しているのがよく分かる。
そんなMSのコックピットの中で、心配そうに彼女はつぶやいた。

 

「刹那、早くしないと……」
「まだだ。まだ戦っている者たちがいる」

 

今、クアンタからはユニウスセブンの底面しか見えないため、フェルトは気付かなかった。
ユニウスセブンで、まだ戦っている者たちがいることを。だが、彼女の言うことも一理あった。
メテオブレイカーによって細かく破砕されてしまうと、ダブルオークアンタでは手の施しようが無くなる。
この場にガンダムサバーニャがいれば、細かくなった無数の破片もライフルビットで撃ち落すことも可能だ。
クアンタも早撃ちをすることは可能ではあるが、ロックオンの乗るサバーニャほどの性能は無い……。
だからこそ、一塊になっている状態でライザーソードを叩き込み、ユニウスセブンを破壊する必要があった。

 

はやる気持ちを抑えるように、刹那は瞳と閉じた。
視界による情報を閉ざすことで、ある感覚を研ぎ澄ますことが出来る。
『脳量子派』
刹那がイノベイターに変革したため、扱えるようになった新たな感覚。
それを使い、刹那はユニウスセブンを戦場に戦っているものたちが撤退する瞬間を待っていた。
最悪、撤退が間に合わなければあの場にいるものたちもろともライザーソードで破壊しなければならない。

 

「間に合ってくれ」

 

刹那の願いが思わずこぼれた。

 
 

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