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機動戦士ガンダムSeed Destiny -An Encounter with the Trailblazer-_17話

Last-modified: 2014-06-01 (日) 12:30:26
 

右腕と左足を失ったザクを、ミネルバのMSハンガーにインパルスが収容する。
メカニックマンたちが機体が固定し始めるのを見届けると、シンはインパルスからフラフラと降りた。
先ほどの大気圏に突入しながらの戦闘。高温と強い振動、通常ではありえない戦場にシンの体は疲弊しきっていた。

 

「シン!!」
MSと降りたシンを、ルナマリアが熱い抱擁で迎え入れた。
「怪我はしてない? どこか痛いところとかない?」
ルナマリアが矢継ぎ早に尋ねながら、心配そうにシンの頬や体のあちこちにペタペタと触れる。
疲れ果てていたシンは、ルナマリアに押し倒されるように足がもつれて倒れた。
周囲で作業をしていたヴィーノやヨウランたちメカマンが囃し立てる。周囲などお構いなしにヒートアップ
しそうなルナマリアを、シンは力の入らぬ腕で押しのけようとした。

 

「ちょ、離れろルナ」
「アンタね、私は心配してんのに!!」
「そこまでにしておけ、ルナ」

 

頬を膨らませ、拗ねた表情のルナマリアの肩をレイがポンと叩く。
どこか納得のいかないながらも、ルナマリアはシンから離れた。
体にまとわり付いていたルナの重みが無くなると、シンは表情を緩めゼーゼーと荒い呼吸をする。
MSハンガーの床に寝そべったまま、疲れ果てているシンにレイは飲料チューブを差し出した。
差し出されたそれをノロノロと受け取ると、一気に飲み干す。染み渡る水分に、体が癒されるのを感じる。
フゥーとため息を一つ付き、ようやく落ち着けたシンは軽く身を起こして座り込む。

 

すぐさま、ルナがシンの後頭部や背中あたりを軽く払い、ゴミや汚れを落とそうとする。
「いいってば、ルナ」「良くないっての!ちゃんとしないと、笑われるのはアンタなんだからね!!」
鬱陶しそうにしているシンに、それでも世話を焼くルナマリア。それをレイが見守っていると甲高い声が
MSデッキに響いた。

 

「アレックス!無事か!」
「カガッ……代表、見ての通り私は無事です」
「良かった、本当に良かった」

 

アレックスがザクのコックピットから降りてくると、オーブ首相のカガリが彼に駆け寄る。
MSを降りた途端精根尽き果て、ルナマリアに押し倒されたシンと違いアレックスには余裕が見られた。
さすが、前大戦のエース。自分よりも経験値も体力もあるアレックスに負けてたまるか。
シンは力の入らぬ体に活を入れ、ヨロヨロと立ち上がり彼らのほうへ向かう。
立ち上がったシンを見届けると、アレックスはすっと手を差し出した。

 

「ありがとう、シン。君のおかげで、俺は命を救われたよ」
まだ先ほどの戦闘を引きずっているのか、アレックスの顔に憂いの色が滲んでいる。
それでも彼の口から出た言葉は紛れも無い本心であり、握り返した手の平から伝わる力強さに、シンは
素直に思っていることを口にする。

 

「いえ、俺……自分は、ただ救える命を見捨てたくなかっただけです。お礼を言われるようなことは……」
「そうか−−−−その気持ち、無くすなよ」
「え?」

 

返されたアレックスの言葉に、シンはどういった意味が込められているのか理解出来ないでいた。
敵を殺し、仲間が殺される。戦場の狂気に、目の前の純粋な少年が壊されぬことをアレックスは祈った。
無事に戻ってこれたこと、それから大気圏突入中に見た未確認MSのこと。グラディス艦長に報告する
ことがあったシンは、サッと敬礼をしてMSハンガーを後にした。

 
 

刹那はMSが隠せる小島に着地すると、クアンタの手を使いフェルトとともに地面に降り立った。
一部光学迷彩を張り衛星などから見つからぬようにすると、その場に簡易テントを建て始める。
クアンタに収納しておいたキャリーケースなど旅行用の荷物を取り出すと、フェルトに告げた。

 

「フェルトはテントで着替えてくれ。なんだったら、そのまま少し休むといい」
「ありがとう、刹那」

 

はじめてMSに乗っての介入、張り詰めた戦場の空気。大気圏の降下。
慣れぬ事の連続だったフェルトは、刹那の何気ない気遣いに胸が熱くなった。
手渡してくれたキャリーケースを嬉しそうに微笑み受け取る。フェルトがテントの中で着替え始める。
彼女がテントに入るのを見届けると、刹那はさっさとパイロットスーツを脱ぎ捨て着替えを済ます。
懐にはCBから支給された拳銃をしっかりと携帯する。

 

刹那には他にもやることがあった。携帯端末を取り出し、クアンタの状況を確認しておく。
「GN粒子、規定値をクリア。各部、各関節、コンデンサーオールグリーン……良し」
今後、整備は受けられない。そのことを鑑みれば、機体状況を逐一把握する必要があった。
そして、いつまでに戻って来いと指示されていない。
緊急事態が発生しない限り、資金の確保と平行して『この世界を見て来い』。
スメラギの言葉にしていない指示であると、刹那は受け取っていた。
そんな想いに耽っていると、背後からテントの開く音とともに、柔らかな声が届く。

 

「お待たせ、刹那……どう、かな?」

 

振り返るとそこには、今まで見たことのないフェルトの姿があった。
白のロングワンピースに、ふわりと羽織った新緑色のカーディガン。首に小さなネックレスが揺れる。
薄く化粧を施した彼女の頬は薄く赤みを帯び、唇はリップか口紅によって彩られふっくらと色付いていた。
刹那は言葉を無くす。いつも身近にいるのが当たり前で、家族のような存在の彼女の新たな一面。
控えめながらも女性らしい艶やかなフェルトの姿に、今まで抱いたことの無かった何かを感じる。
少し驚いた表情のまま固まってしまった刹那に対し、困ったようにフェルトが呼びかける。

 

「刹那?」
「…………よく、似合っている」
思わず口をついた刹那の答え。フェルトの表情がほころんだ。
「嬉しい。あのね、刹那。この服、昔にクリスティナと一緒に買ったものなの。
背が伸びたら、きっとこういうのが似合うからって、クリスが言ってくれてね。
それでね−−−−」

 

彼の返してくれた一言がよほど嬉しかったのか、少女のように無邪気にフェルトが語る。
嬉しそうに、楽しそうに、懐かしむように。
刹那もまた表情が緩み、穏やかな顔立ちになる。

 

「行きましょう、オーブへ」
「ああ、そうだな……フェルト」

 

オーブへ向かう刹那とフェルト。
かの国で、彼らはこの世界で懸命に生きる少年と出会いを果たす。
それは運命が導いたのか、イノベイターの予感が生み出したものなのか分からない。
ただひとつ言えることは、この出会いが小さく、だが確かなうねりを生み出すということであった。

 
 

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