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機動戦士ガンダムSeed Destiny -An Encounter with the Trailblazer-_2話

Last-modified: 2013-04-19 (金) 12:30:33
 

トレミーの修復、長期間にわたる宇宙航行に伴う水や食料の問題。
そして有事の際、船外活動をできるようにするためにガンダム各機の修復の目処。
片付いていない問題は多々あるものの、プトレマイオス鵺改は完全修復され
ひとまずELSの母星へと旅立つ目処が立った。

 

クアンタムバーストの際パージした装甲を付け直し、GNソード鶩を装備したダブルオー
クアンタが量子ワープゲートを創る。
量子ゲートの煌く輪を、さながら鯨のような巨体のプトレマイオス鵺改が潜り抜けた。
遅れることクアンタとソードビットが後を追うように続く。量子ワープ空間を潜り抜ける
のは一瞬のこと。
訪れる眩暈のような感覚に、トレミーのクルー全員がまぶたを閉じ、再び開いた瞬間には
ELSの母星があるはずであった。
だが――――――――視界の先にあったものは。

 

「なんだ、ここは」

 

はじめに言葉を漏らしたのはロックオンであった。
視界の先に壮大に広がる青い星。
見紛うはずもなく、それは自分たちの母星『地球』そのものである。
だが、ブリッジにいる全員がその光景に違和感を覚えた。

 

「オービタルリングが……起動エレベーターがない?」

 

ミレイナの胸元にある端末に存在するティエリアが不意につぶやく。
彼らの世界にとって当たり前にあったはずのもの。地球を大きく一周するオービタル
リングが存在しないのだ。
その事実が理解できたとき、訪れるのは疑問である。

 

「じゃあ、ここはいったい何処なんだ」
「アレルヤ…………」

 

アレルヤが静かに自分の思った疑問を口にして、事実を整理しようとする。
だが彼とは違い、この異常な事態に対して不安に思っているのか、マリーはギュッと
最愛の彼の手を握りしめ心を落ち着かせようとした。
マリーの想いに答えるように、アレルヤは彼女の手を柔らかく握り返し、微笑む。
『大丈夫だよ、マリー』――――手の温もりからアレルヤの想いを感じたマリー・
パーファシーは穏やかな表情を浮かべ、小さくうなずいた。『ありがとう、アレルヤ』と。

 

「おそらくここは――――――俺たちのいた世界ではない地球」

 

ダブルオークアンタのコックピットにいる彼には確信があった。
イノベイターとしての直観力。それがジリジリと警報を鳴らしている。
眉根をよせ、厳しい表情で彼は眼前に広がる青く美しい地球を見つめる。

 

「何てことだ、ツインドライブの量子ワープゲートは別世界へまで飛んでしまうのか……
こりゃ、わしらの手に負える事態じゃないぞ」
「あなた、落ち着いて」

 

整備士であり、ガンダム各機を造り上げたイアン・バスティがガリガリと頭をかきながら
落ち着かない様子でぼやく。そう、彼の設計段階ではこのような事態が起こることは想定
されていなかった。だというのに、このような事態が発生した。
その理由は?新型のツインドライブの起こした運命の悪戯なのか?
自分ひとりで問題を抱え込み、混乱してしまっている最愛の夫が落ち着いてくれるよう
リンダ・バスティはぎこちない笑みを浮かべながら彼の腕を抱く。

 

この船でただ一組の夫婦を他所に、不安そうな表情でモニターを見ているものがいた。
毅然とした表情を崩さない刹那のことを、心配そうに見守るもの。
淡い桜色のショートカットの似合う女性、戦況オペレーターのフェルト・グレイス。

 

「…………刹那」

 

フェルトの胸中には不安が付きまとった。
また、刹那が戦火の中へ飛び込んでいってしまうのではないのか。何故だかそんな
イメージが浮かんでは消えていく。彼女の不安そうな視線に気がついたのか、表情を
変えることなく刹那は小さく頷いた。『フェルト、俺は大丈夫だ』
その仕草の意図を読み取り、少しだけ安心できたのかフェルトの顔に小さく笑みが零れた。
『うん――――信じてる、刹那』フェルトの微笑が言葉になることなく淡い想いになる。

 

(――――いいわね、若いって言うのは)

 

若い二人のやり取りを尻目にしつつ、戦況予報士のスメラギ・李・ノリエガは
クルー各員にすばやく指示を出した。

 

「各マイスターは有事に備えて頂戴。ミレイナ、フェルト。二人はこの世界に関する
情報収集及び索敵を。イアンさんたちは引き続きガンダム各機の修復作業を続けて下さい。
ラッセ、トレミーを潜伏させられる場所を探し出して移動させて頂戴。
そして、刹那。思うところは多々あるでしょうけど、トレミーに帰還して今後のことを
みんなで話し合いましょう」

 

「了解した。ダブルオークアンタ、これより帰還する」
「オーライ、スメラギさん」
「僕たちもできることをしよう、マリー」「ええ、アレルヤ」
「僕は情報収集の手伝いをしよう」「えへへ、アーデさんと一緒です〜」
「了解、やってみます」
「わしらも最善を尽くすとするか」「ええ、あなた」
「んじゃ、トレミーを動かすぞ」

 

頼もしき仲間たちがそれぞれの役割をこなす中、スメラギは素早く状況を認識し、
今後どうして行くのが最善なのかを模索する。
刹那・F・セイエイのいうとおり、おそらくこの世界は並列世界の地球。
この世界がいったいどこまでの文明レベルを保有していて、自分たちの存在がいったい
どんな現象を引き起こしてしまう恐れがあるのか。また、この世界に来てしまった意味は?
頼るべきヴェーダも無い状況の中、スメラギは自らの思考を加速させる。
そう――――愛すべき仲間を、家族を守るためにも。この世界に無用の混乱を引き
起こさないためにも。

 

「私はソレスタルビーイングの戦術予報士、スメラギ・李・ノリエガなのだから」

 

彼女の独白が、唇の中でこぼれ消えた。

 
 

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