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機動戦士ザクレロSEED_第22話

Last-modified: 2009-05-04 (月) 22:38:20

 ユウナ・ロマ・セイランは、ヘリオポリスのシェルターの通信室で、オーブ本国の父ウナト・エマ・セイランと超長距離通信を交わしていた。
 話は、ヘリオポリス市民収容の為の部隊がアメノミハシラから発進したという事。
 聞き終えてユウナは、苦笑混じりに言った。
「急いだんだね。もっとぐずぐずすると思ったけど」
『連合軍第8艦隊が、ヘリオポリスに向けて進軍中だ。ヘリオポリスが主戦場になる可能性もある。それに巻き込まれる事を恐れたのだろう』
 ウナトは、彼なりに掴んだ情報からの推測を述べる。
 第8艦隊の動きは、地上からも観測出来る。オーブ軍がその動きを知らない筈がない。
 そして、連合製MSがヘリオポリスでZAFTに奪われている事を知る者ならば、第8艦隊の目的が連合製MSの奪還だと想像する事は容易い。となれば、第8艦隊がヘリオポリスに攻撃をかける可能性は予測出来る。
 連合ZAFT両軍が戦う中、市民の逮捕などという作業が出来るはずもない。ヘリオポリス自体が戦闘に巻き込まれて破壊されてしまう事も有り得る。
 そんな状況である事を考慮すれば、戦闘が始まる前に全て終わらせてしまおうとするのは当然の結論だ。
「なるほど……で、急遽用意したのがネルソン級一隻分の戦力に、コロニー建設の時の大型輸送船と」
 呟く様に言ってからユウナは、ウナトに別の問いを向ける。
「わからないな。どうしてそんな大型輸送船を使うんだろうね?」
『ヘリオポリス市民を収容する為だろう。確かに、あれならば一隻で全員を収容出来る』
 ウナトの返答は、オーブ軍が公式に説明した物と同じである。
 一隻でヘリオポリス市民を収容するには大型船の方が都合が良く、色々な兼ね合いから古い大型輸送船を使う事に決定したと。
 しかし、ユウナはそれを否定するかの様に言った。
「普通の輸送船を数隻使っても同じ事が出来るよ。あんな骨董品を使うより安全で仕事が早く安上がりだ」
 単純な話、貨物船数隻で十分な仕事に、巨大なタンカーを持ってきたような物だ。
 確かにそれでも仕事は出来るが、過剰な輸送力を得た代償に、大質量を動かす為の莫大な燃料消費、巡航速度の低さからくる移動時間の増加、大型船故の操作性の悪さから来る作業効率の低下など問題が多く発生する。
 そして最も不可解なのは、オーブ軍がわざわざこの大型輸送船を整備までして持ち出した事だ。事情があって急ぐと言うのなら、通常の輸送船を掻き集めた方が早かっただろう。
 何故、整備という手間と時間をかけてまで、大型輸送船なのか……
「僕なら、船倉に棚でも作って、捕らえたヘリオポリス市民をそこに並べて寝させるね。それなら普通の輸送船一隻でも十分だろうし」
 そもそもの目的が犯罪者の収監なのだから、輸送中に自由に動き回らせる必要はない。
 ならば、奴隷貿易船か絶滅収容所のように、船倉の容量を有効に活用してギチギチに詰め込んでおけばいいのだ。閉塞された環境はさぞかし心身に悪いだろうが、輸送中に死ぬ人間が出ても、今のオーブならば誰も気に留めまい。
『提案するなら、私ではなく、オーブ軍の方に直接言ってくれ……いや、冗談だ。本気にして、連絡を取るなよ。お前ならやりかねんからな』
 ウナトは悪態をついた後、少し慌ててユウナに釘を刺した。
「信用がないなぁ」
 ユウナは苦笑してみせる。
 無論、今のユウナにとってヘリオポリス市民を手にかける事に意味はない為、発案を実行に移す事はない。
 無数の人間が苦悶する姿を観察するというのも面白そうだが、やはり愛した相手と楽しむのとは比較にならないと思えたし、そもそもそういった事は敵を使ってやれば良いのだ。利用価値のある駒を遊びで無駄にするわけにはいかない。
 と、そんな事をとりとめなく考えたユウナは、もう一つ、無駄に出来ない者の事を思い出した。
「そうだ、父さん。信用のない息子からの忠告だけど……そろそろオーブから逃げないと、一族郎党皆尽く死ぬ事になるよ」
 ユウナの忠告を聞いた途端、通信モニターの向こうでウナトが目を剥きだして叫んだ。
『何をする気だ!?』
「いや、僕が……ってだけじゃなくてね」
『だけじゃないって事は、やっぱりお前も何かしでかす気か!?』
 自らの信用の無さを改めて知ってユウナは苦笑が大きくなり、乾いた笑い声を漏らす。
「ははは、しばらく僕は表舞台には立たないから、安心して良いよ」
 ひとしきり笑ってからユウナは、声音を真面目な物へと変えた。
「それより……このままだと父さんは、オーブと対立する事になる。そうなった時、敵が何であれ手段は選んでくれないよ? コロニー一つ、葬り去る事に躊躇のない連中だからね。脱出の準備は進めた方が良い」
『ヘリオポリスの様に……か』
 ユウナの言う事に間違いない事は、ウナトにもわかる。
 ヘリオポリスというコロニー一つが、オーブの敵として葬り去られようとしているのだ。元々国民に人気のないセイラン家など、葬り去るのは容易かろう。
『そうだな。最悪に備え、一族の者だけでも逃がす準備はしておく。だが、私が逃げる事は難しかろうな』
「父さんは仕方ないか……でも、セイランは小悪党の家系なんだから、父さんも生き足掻いてみてよ。死んだら、小銭を数えるどころじゃないよ?」
 ウナトの返答に、ユウナも諦めを露わに淡々とした口調で言った。
 ウナト自身が逃げ出す事は難しい。政治を司る氏族としての義務があるし、そう簡単にオーブでの既得権益を放り出すわけにもいかない。いよいよダメだとなれば逃げる努力はするが、その時には包囲の輪が狭まってきている事だろう。
 ぐだぐだやった上で、逃げ切れなくて捕まるか殺されるのが落ちか……
 だが、一族の子女やセイラン系統の氏族を逃がす準備をしておくのは悪くない。彼らが生き残れば、最悪でもセイラン家が全滅するといった事は防げる。
『ユウナ。お前も今回の一件が終息するまでは、オーブに帰らぬ方が良いな』
「そうだね。しばらくは帰れないかな。でも、何時か必ず帰るよ。オーブにはカガリが居るからね」
『お前はまたそれか』
 ユウナの浮かれた様な答えに、ウナトは呆れた様に溜息をついた。そんなウナトを見ながら、ユウナは一瞬だけ口端を歪んだ笑みに曲げる。
 ウナトは戯言と思ったのだろうが、ユウナは本気で帰るつもりだった。何時になるかはわからないが……遠くない未来に。
 その為にも、今は幾つか成功を積み上げていかなければならない。
「そうそう。逃げるタイミングだけど……ウズミ・ナラ・アスハが権力の座から落とされる事があれば、それが最後の警鐘だと思う」
『まさか、それはあるまい。ウズミは、今のオーブでは絶対だ』
 ユウナの言葉に、ウナトは首を横に振って答えた。
 今の状況は、オーブの理念を神の啓示のごとく掲げる事で動いている節がある。では、そのオーブの理念を作ったのは誰か? ウズミなのだ。ならば、ウズミを排斥する筈がない。教典を守って神を排するようなものだ。
 現状、ウズミにとっては暴走気味な情勢を制御しかねているようだが、それも初期の混乱だろうとウナトは考えていた。
「でもさ、それなのにウズミが排される……なんて事になったら、それこそ天下の一大事って奴じゃない? そりゃあもう、逃げ時ってものでしょ」
『確かにそうだが、有り得ない事を想定してどうする。やれやれ、そんなではお前に私の後を次がせる事など出来んぞ』
 軽い口調で言うユウナに、ウナトは渋面を作る。そして、思い出した様に言葉を続けた。
『そうだ、ユウナ……お前に頼まれていた連合とのコネだがな。かなりの大物と連絡をとる事が出来た。お前が何をするのか知らんが、この際だ、思い切りやってみるがいい。ただ、通信には立ち会わせて貰うぞ』
 ウナトの答えに、ユウナは有りがたいと思いつつも、父の甘さに内心で苦笑した。
「……何も聞かないで、そんな大物と引き合わせてくれるのかい?」
『今の情勢では、何時、私に何かあるかもわからん。お前には早く一人前になって貰わねば困る。これも、獅子のごとく、子を千尋の谷に突き落とすくらいのつもりだ。しっかりやり遂げて、私を安心させてくれ』
 やはり、甘い。千尋の谷とやらを全部お膳立てして、子が滑り落ちぬ様に手を差し伸べる用意までして、獅子のつもりとは。
 ユウナは、そんな父に心の底から感謝している。ウナトは知る由もないが、この甘さがあればこそ今まで“恋愛”を幾つも重ねて来られた。そして、これから始めるカガリへの言わば“プロポーズ”にしてもこの甘さは十分に利用させてもらえるだろう。
「ありがとう、父さん。必ず、やり遂げてみせるよ。それで……誰と話をさせてもらえるのかな?」
 ウナトと繋がりがある中で、かなりの大物と言うのだから、恐らくはロード・ジブリール辺りだろうとユウナは推測していた。ブルーコスモスのナンバー2であり、かなりの影響力を持つ人物だ。
 繋がりがあると言っても、それほど強い結びつきがあったわけではない。きっと、相当の苦労をしてくれたのだろう……ユウナはそう考えたのだが、父ウナトはユウナのそんな推測を覆す努力を見せてくれた。
 通信機の向こうで、ウナトは自らの仕事を誇る様に小さく笑い、その人物の名を告げる。
『ロード・ジブリール殿に話を付け、口を利いていただけてな。ブルーコスモス盟主ムルタ・アズラエル殿と繋ぎがとれた。政財界は元より、連合軍にも強い影響力を持つ盟主殿ならば、お前の目的にもかなうだろう』
「なっ……!?」
 ユウナも流石に声が出ない程驚いた。その顔を見て、ウナトは嬉しげにニヤリと笑う
『さしものお前も驚いたか。お前のそんな顔を見るのは久しぶりだな。苦労した甲斐があったというものだよ』

 

 

 ヘリオポリス厚生病院、その敷地内に建てられたプレハブ病棟。戦闘直後は喧噪が満ちていたこの場所も、かなり落ち着いてきていた。回復出来た者が去り、重篤者が病院内に改めて収容され、死にゆく者が死んだ事によって……
 プレハブ病棟に残された者達は、回復に長い時間を必要とする者か、永遠に癒えぬ傷を負った者達。そして、帰るべき家や迎えてくれる家族をを失った者だ。
 カズイ・バスカークは、母のベッドの脇に腰を下ろしていた。
『オーブ政府により、ヘリオポリスに残された市民の皆さんの保護と、本国への帰還事業が実施されます。市民の皆さんは、オーブ本国への移住の準備を行ってください』
 遠く、声が聞こえる。
 病院に設置されたスピーカーを通して、ZAFTが放送を行っているのだ。
 有線放送や街宣車などを使って連日の様に同じ放送を繰り返しているので、話の内容は既にヘリオポリス市民全てが知っていた。
 そして……オーブ政府が行おうとしている事が、保護や帰還事業などと言う様なものでは無い事も、ヘリオポリス市民のほとんどが察していた。それは、本国へ帰れば、犯罪者として扱われる事が確定しているからだ。
 オーブ政府はヘリオポリス市民に対し、罪を認め抵抗せず逮捕される事を求めている。抵抗する者へは、武力鎮圧を持って対処するとの恫喝もあわせて告げられた。
 これらのオーブ政府の決定に対してヘリオポリス市民は何が出来たのか……
 命を賭して抵抗するべく抵抗組織が結成されたとの噂は幾つも流れていたし、決起を促す檄文が街角に貼られた事も何度かある。
 しかし、雑多な小火器を持った程度の市民達にとって、オーブ軍は遙かに強大だ。また、ZAFTが治安維持の名目でオーブ軍に協力するだろう事も確実。コロニーという環境では逃げ場も隠れ場所もない。外からの補給も援軍もない。
 そんな勝利の有り得ない抵抗の先に何があるのか? 未来を見いだせない事に、多くの市民は抵抗を諦めていた。
「カズイ……」
 ベッドの上、四肢が失われた身体を包帯に覆われた母がカズイの名を呼んだ。
「私、お父さんと一緒に残りたいわ」
 カズイは、今までに何度か繰り返された話に、全く同じ答えを返す。
「……置いては行かないよ」
 牢獄で生かされるくらいならば、夫と息子との思い出が満ち、そして夫の死した地であるこのヘリオポリスに残していって欲しいと母は願っていた。もちろん、残して欲しいという願いは、母が自ら死を選ぶ事を意味している。
 だからカズイは決めていた。その時には、母を背負ってでも連れて行くと。犯罪者としての日々の果てに死刑が待つとしても、母を自分の意思で見殺しにする事は出来なかった。
「そうだ……父さんは共同墓所から返して貰ってきたから、一緒に行けそうだよ。あと荷物だけど、現金とか通帳とか保険証とかアルバムとかは持って行くよね」
 カズイは、話題を変え、そして一緒に逃げるのだと言う考えを母に強調する為に、逃げる準備の事を話し始める。
「それから日用品とか必要そうな物をまとめておくよ。宇宙をしばらく旅して、それからシャトルで降下だって話だから、何日分か着替えとかもいるだろうし……そうそう、僕のゲームと漫画は諦めたよ。荷造りしたけど、あれじゃ重くて持てなくってさ」
 荷造りは進んでいない。
 思い出の染みついた家。思い出の品々。全てを捨てて、未来無き旅に出なければならないのだ。気付けば、荷造り中の荷物に囲まれながら、幸福だった頃の記憶を思い返している自分が居る。
 ゲームや漫画などには何の価値もない。母への台詞は、変わらない自分を見せたいが為の冗談だ。
 本当は……出来るならば、家の全てを持って行きたい。母と、父との思い出があふれる家を。いや、それよりも出来るならばいっそ、あの頃の幸せをそのままに。
 荷造りの作業の最中に囚われる、やるせない思い。それを思い返していたカズイの胸に、重苦しい悲しみが迫り上がってくる。
 それを感じてすぐにカズイはその場所から立ち上がり、母に背を向けた。
 母を心配させるわけにはいかない。涙を見せるわけにはいかない……
 悲しみが胸につかえて、声を出せばそのまま嗚咽になってしまいそうだったが、それを無理に抑えてカズイは母に言う。
「さ……さあ、荷造りしに帰らないと。ハハハ、忙しいから困るよ。見舞いには、またすぐに来るから」
 カズイはそう言い残して歩み出す。声の震えは、母に気取られてはいないと信じた。

 

 

 ユウナに、シェルターの居間に呼び出されたトール・ケーニヒとエル。不安そうなエルの肩を抱きながら、トールは半ば警戒した様な目でユウナを見つつ聞いた。
「ユウナさん、話って何ですか?」
 ユウナが奇妙な人物である事は、出会ってからの数日でトールもエルも理解している。
 何か直接的な危害を加えてくる事はないのだが、いきなり猟奇的な事を言い放ってエルを酷く怯えさせる事があった。トールだって正直な話、そういった話は遠慮願いたい。
 だから、ユウナの話の内容によっては、トールはエルを連れて逃げる気でいた。
 しかし、ユウナはいつもの軽薄な態度はそのままだが、口調だけは真面目に話を始める。
「ここに来た理由をはぐらかしてきたけど……そろそろ説明した方が良いと思ってね。良いかい? ここに来たのは、このヘリオポリスで何が起こっているかを確認する為。そして、セイラン派にとっての力を確保する為だ。君達も見ただろう?」
「ミステール1……ですか?」
 力と言われ、トールは直感的にそれが何なのかを悟った。ユウナは、トールの答えに満足そうに頷く。
「そう。連合軍最新鋭の大型MA。ザクレロ試験型ミステール1。あれはセイラン派……僕の父の派閥の持ち物なんでね。取り返しに来たんだよ」
 このシェルターの格納庫に置かれている一機のMA。セイラン派が連合軍から譲り受けた、ザクレロのテストタイプ。ユウナは、それを手に入れに来た。
「あれは……俺のMAだ! オーブには渡さない!」
 ミステール1がユウナに奪われる……そう悟ったトールは、ユウナに向けて声を荒げる。だが、ユウナはそんなトールの反応を見越していた様で、面白がる様子で口端を笑みに曲げて言葉を返した。
「へぇ? 君に所有権は無い筈だけど……まあ良いか。それより、理由を聞かせて貰っても良いかな? どうして、あのミステール1が欲しいの?
 格好良いからかな? そうだよねー、男の子ならMAとか憧れちゃうもんな。でも、あれは玩具じゃなくて、本物の兵器なんだ。軍隊ごっこは、プラモデルか超合金でやって欲しいな」
「俺がやりたいのは軍隊ごっこなんかじゃない!」
 トールの怒りの声が部屋の空気を震わせる。
「俺は……あのミステール1で!」
「ダメ、お兄ちゃん! あんなのに乗っちゃダメ!」
 トールの身体に縋り付く様にしてエルが叫んだ。
「ねぇ……ダメだよ。お兄ちゃん。あんなのに乗らないで!」
 涙をこぼし、縋り付いたまま見上げる様にしてトールの顔を覗くエル。そんな二人を眺めるユウナの表情に愉悦の笑みが混じる。
 ああ、やはりこれは最高だ。実に楽しませてくれる。
 トールはエルを扱いかねている様だった。意思は変わらないのだろうが、エルを無碍に突き放す事も出来ないのだろう。
 ユウナは、そんなトールに助け船を出す事にした。
「トール君が望むのは復讐……そうなんだね?」
 その囁きにも似た問いにトールはハッとして顔を上げ、ユウナを見た。
 それから、トールはぎゅっと歯を食いしばり、意を決した様子で改めてエルに視線を落とす。
「ミリィ……でも、俺は! 俺は許せないんだ! オーブの理念は……いや、それを掲げた奴等が皆を殺した! 父さんを! 母さんを! それに、ミ……」
 激情のままに続けようとした言葉が途切れた。
 トールの頭の中に、閃光が瞬く様に記憶の断片が浮かんでは消える。炎の中の影。走る少女。黒焦げの破片。キス。顔がない死体……
「お兄ちゃん?」
 ループした思考は、エルの声で再び動き出した。
「あ? ああ、ミリィ……」
 そうだ、ミリィはここにいる。ミリィはここにいる。ミリィはここにいる……
 断片的に蘇った記憶が、再び心の闇の中に消えていく。そして後には重苦しい怒りと身を焦がす様な憎悪だけが残る。
「ともかく、俺は許せない。全てを奪った連中を……オーブを! オーブの理念を! オーブの理念を掲げて正義を嘯く全ての奴等を! 殺してやる! 殺してやるんだ! その為には力が……ミステール1が必要なんだ!」
「……お兄ちゃん」
 トールの怒りと憎悪に彩られた叫びを聞き、エルは恐怖に身を震わせながらトールに預けていた身体を退いた。何かとても冷たい物に感じられて。
 一方、同じくトールの叫びを聞いたユウナは、素晴らしい演奏か何かを鑑賞した後の様な満足げな笑みを浮かべていた。
「わかった。トール君にミステール1を託そう」
「……え?」
 ユウナの発言に、エルは小さく悲鳴にも聞こえる声を上げて、途方に暮れた様な表情でユウナを見た。
 そんなエルに嗜虐心をそそられながら、ユウナは精一杯、申し訳なさそうな顔を作ってエルに話しかける。
「トール君から、戦う事を奪えるか? 答えは否だね。君がシミュレーターに乗るトール君を止められなかった様に、僕も彼を止める事は出来ない」
 エルは努力してきた。トールが戦わない様に……シミュレーターにも乗らない様に。しかし、その努力は全て失敗に終わっている。エルに出来なかった事を、ユウナが出来るわけが無いと言われれば、エルには返す言葉はない。
 だが、エルは考えていた。シミュレーターに乗せる事は防げなくても、あのミステール1に乗せない事は出来るのではないかと。
「ユ……ユウナさんが、あのMAを持って行ってくれたら」
 あのミステール1が無ければ……武器がなければ、トールも戦う事を諦めるのではないか? そんなエルの願いにも似た考えを、ユウナはゆっくり首を横に振って否定する。
「武器がなければ、トール君は素手でもかまわず戦おうとするんじゃないかな? なら、強力な武器を持たせてあげた方が、生き残る可能性は大きくなる」
 ユウナはその視線をトールに向けた。エルも、つられるようにトールを見上げる。
 トールは二人の視線に気付くと、迷いもなく首を縦に振った。
 そんなトールに満足げな表情を浮かべてユウナは、トールがMAが無くとも戦う事を肯定した事にショックを受けて泣き出しそうなエルに向けて、更に切り口を変えて話を続ける。
「それにね。僕がMAを持って行って、トール君が戦わずに残ったとしても……ここでの生活も何時かは終わってしまうんだ。ヘリオポリスは遠からずプラント領になるし、オーブはヘリオポリス市民全員の強制収容を決定したからね」
「強制収容?」
 シェルターに隠れていたトールとエルは、今何が起こっているかをほとんど知らない。酷く物騒な言葉に、トールが思わず反応して聞き返す。
 ユウナは呆れを表す為に、軽く肩をすくめて見せた。
「字の通りだよ。ヘリオポリス市民全員を捕らえ、“オーブの理念を守らなかった裏切り者”として裁くつもりだ」
 その答えに、トールは内心の怒りを沸き立たせて顔をしかめる。エルは不安そうにトールに寄り添い、彼の服の裾を指先で摘んだ。
 そんな二人を見ながら、ユウナは二人を更に追いつめるかのように言葉を並べ立てる。
「プラントはオーブの中立維持と占領地からの旧住民退去の為、この強制収容に協力している。つまり、このヘリオポリスでは、君達は見つかり次第、捕まってしまう。そして、オーブに罪人として送り届けられる。
 ここは隠しシェルターだから、そう簡単には見つからないだろうけど……それでも、最長で一年少々かな? 備蓄食糧や燃料が尽きるから、隠れて生きていく事は出来なくなる。
 その時にどうする? 大人しく捕まるかい? そうなれば結局、君達は離ればなれだ。
 共に居たいなら、戦って、生きる場所を自分で確保するしかない。わかってくれるかな?」
「……わからない。そんなのわからないよ」
 エルは、駄々を捏ねるように言い返しながら、首を横に振った。それを見て、ユウナは少し困ったように微笑みながら、静かに語りかける。
「そう……でも僕は、君にはトール君を支えていて欲しいと思うのだけどね。トール君一人では戦い続ける事は出来ないのだから」
「一人でも、ミステール1があれば……!」
 ユウナのその言葉に、トールは反論する素振りを見せた。ユウナは、仕掛けた釣り針に獲物がかかったとばかりに一瞬笑みを浮かべ、畳み掛ける様に話し出す。
「ミステール1で出撃する。戦う。問題はそれ以外だよ。
 戦闘後には整備補修が必要だけど、トール君にはそれが出来るかな? 戦えば弾や推進剤を消費する。補給しなきゃならないけど、トール君はそれを手に入れられるかな?
 オーブと戦うならオーブ本国へ行かないとならないけど、移動するには船が必要だね。船を手に入れて、そして操縦するのは誰かな?
 敵の情報を知れば効果的に戦える。戦闘前にそれを調べる事をトール君は出来るかな? 戦闘中は僅かな時間で状況が激変する。そんな戦闘中の情報収集は誰がする? 情報を元にして、効率的な戦い方を考えてくれる人はいるのかな?
 君を支え、戦場に送り込む者が必要だ。共に戦い、サポートしてくれる仲間。戦いを継続する為の資金や補給物資。的確な戦略、戦術、戦闘指揮。生きて戦い続けるには不可欠な物だけど、全てトール君には無い物だ。
 ここまで聞いても、君は一人でも戦えると思うかい?」
「…………」
 トールは愕然とした様子で俯き、ユウナから目をそらした。戦う力だけでは、戦う事は出来ない。それは、トールが想像もしなかった現実だった。
 アマチュアは兵器を語り、プロは兵站を語る。ほんの少し前まではただの学生だったのだから、こういった錯誤は仕方のない事だと、ユウナは理解していた。
 だからこそ、トールを自分の下に取り込む余地がある。
「僕が全て用意しようじゃないか」
 ユウナは、魂の契約を迫る悪魔の様に、親しげな笑みで申し出た。
「僕はこれからオーブを打倒する。ヘリオポリス市民を守り、ヘリオポリス市民を組織する。ヘリオポリス市民の手でオーブの理念の虚構を暴き立て、その信者達を完膚無きまでに叩き潰す。復讐と守護を望むトール君にも意味のある戦いになるだろう」
 ユウナは笑みを少しだけ人悪げなものにして、右手を握手の為に差し出す。
「どうだろう。一緒に戦わないかい?」

 

 

 夜半。トールは一人、寝室のベッドに身を横たえていた。
 いつもならばシミュレーターに向かっている時間。しかし今日のトールは、ベッドの中で、じっと考え事に耽っている。
 考える事は一つ。ユウナの差し出した手を取るか否か。とは言え、思考のほとんどはそれをどう断るかに費やされていた。
 あれこれ考えた挙げ句、断る理由が無い事に気付く……そんな事をずっと繰り返している。
 別に、ユウナが悪い訳ではない。断る理由の最有力候補として「ユウナは得体が知れないから」という理由は厳然として存在していたが……他の誰に誘われても、同じように迷った事だろう。
 断りたい本当の理由は、単に復讐を自分の物としたいだけだと言う事に、トールは気付いていた。
 理性を持って考えれば、ユウナの言う通り一人で復讐を行う事は不可能とわかる。
 迷いと呼べる物ではなかった。答えは出ているのだ。ユウナの手を取るより他にない。
 トールの中で、復讐の達成に重きが置かれていたなら違ったのだろう。あらゆる手段を用い、最後に復讐が果たされている事だけを目標に出来ていたら。そうだったなら、成功の可能性が大きい方を選ぶ事が出来たはずだ。
 しかし、感情と狂気は復讐を他人に委ねる事を拒絶する。
 自分の手で、自分の力だけで全てを成し遂げたい。全てを滅ぼしたいと。
 あらゆる物を失った今、復讐だけはトールだけの物だった。
 トールの復讐は、怒りも、憎悪も、狂気も、全てを呑み込んで煮えたぎる坩堝の様な物。単純に狂気の産物なのだとも言える。
 怨嗟と狂気の叫びを上げながら、自らの肉体と魂が滅びるまで戦い続ける……トールの中の復讐とはそういった物だ。
 それは目標の無い空虚な物でもある。オーブの理念を復讐の標的に置いているが、何処まで戦い、殺し、破壊すれば復讐が果たされた事になるのか、トールは考えた事すらない。きっと、トールの復讐心……いや、狂気が導く全ての標的を破壊するのだろう。
 ユウナの手を取るという事は、その復讐の一部……ひょっとすると大部分を、ユウナなど他の人間に委ねる事になる。
 狂気が導きのままに戦う事など出来るはずもない。望みである所の、肉体と魂が滅びるまで戦い続けるという事さえも叶わなくなるだろう。そうなってしまっては、トールの復讐は本来の姿を失ってしまう。
 では、復讐の達成が彼方に遠のこうとも、復讐を自ら遂行する事を選ぶか? トールの中に考えが渦巻く。
 ミステール1で飛び立ち、オーブ国防宇宙軍の本拠地であるアメノミハシラを目指す。宇宙空間である以上、最初の加速に成功すれば、推進剤を使わずに移動は出来るはずだ。
 単機で攻撃を仕掛けてアメノミハシラを落とす。その後、可能なら奪った物資で補給して、大気圏突入を行い、オーブ本国を……
 そこまで考えて、その荒唐無稽さにトールは苦笑した。それで上手く行くなどありえない。
 しかし、それでも良いのかも知れないとトールは思う。復讐を自分だけのものとし、その復讐に身を捧げる事が出来る。万に一つの可能性でも成功すれば良し、死んでもトールに後悔する暇など無い。肉体も魂も砕けて燃え尽きるだけ……
 トールは、試験型ザクレロ・ミステール1という一匹の魔獣になりたいのだ。闘争に明け暮れ、全てを滅ぼしていく魔獣に。
 そうならなかったのは、トールを人として繋ぎ止めたものがあったから……
「……お兄ちゃん?」
 不意に声をかけられ、トールは寝室のドアが開いている事に気付いた。
 暗闇の満ちた寝室、壁を四角く切り抜いたように、廊下の光が中へ差し込んでくる。そこにトールは、エルの姿を見た。
「ミリィ? どうしたんだ?」
「お兄ちゃん……」
 俯き、強張った表情で居たエルは、トールの声に泣き出しそうな声で応える。そして、ベッドに歩み寄ると、少し逡巡してから聞いた。
「今日は一緒に寝ても良い?」
 トールの答えを待たず、エルはベッドに上がりトールの横に身を横たえる。エルの背後で寝室のドアが僅かな隙間を残して閉まり、寝室を再び闇で満たす。
 暗闇のベッドの上、ふわりと少女の甘い匂いがした。
「ミ……ミリィ? えと……」
 トールは、同じベッドの中のエルの存在に戸惑う。
 トールと“ミリアリア・ハウ”の年齢ならば、一線を越える事もありかもしれない。
 だからトールが、エルがベッドに入ってきた事を、そう言う事なのかと思ってしまったのは仕方のない事ではあった。
 とは言え、即座に手を出せる程、欲望に素直なわけもなく、心理的に追いつめられてるわけでもなければ、根性が座っているわけでもない。
 しかし、この行為は誘っているのだろうなぁと勘違いしたままトールは、とりあえずエルの小さな身体を抱き寄せた。
 壊れてしまいそうな程に柔らかで華奢な身体がトールの腕の中に収まる。
 そして……トールは、はたと困り果てた。ここからどうしたものか、経験がないばかりに判断がつかない。手を出したいかと言えば出したいのだが、変な事をやって嫌われるのは怖く、判断に困るのだ。
 困ってはいるのだが、腕の中の柔らかな感触はしっかりと感じられているし、少女の香りも存分に吸えているわけで、幸福感は怒濤のごとく押し寄せてくる。
 しばらくはこれで良いかと、ぼんやりと考え込んでいたトールに、腕の中のエルが不意に囁いた。
「お兄ちゃん、一人で戦いに行かないでね?」
 エルは、その身体をトールの胸に預け、潤む瞳でトールを見つめながら続ける。
「ずっと考えてたら、怖くなったの。お兄ちゃんが……お兄ちゃんが一人で居なくなっちゃうんじゃないかって。そして、戦って死んじゃうんじゃないかって」
 エルのその言葉に、トールの中から浮ついた気持ちが消え去る。そして、エルが来る前の迷いの時と同じ重苦しさが戻ってきた。
 つい先ほどまで考えていた妄想の通りじゃないかと、トールは自嘲しながら苦々しい思いで奥歯を噛みしめる。
 一人出撃し、無為に戦い、死ぬ。トールが考えた通りの事を、エルは心配していた。
 トールは復讐の中で戦い、死ぬ時には後悔と怨嗟を叫びながら砕け散る事が出来るのかも知れない。だが、残されたエル……トールにとってのミリィはどうなるか?
 このシェルターに残れば、ユウナの言う通りの最後が待っているだろう。何時かは捕まり、オーブの理念を理由に裁かれる。
 それは許せなかった。これ以上、オーブの理念の下に人が傷つけられる事を看過する事は出来ない。それをさせない事は、トールの復讐にもかなう。
「守るよ。ミリィを。もう二度と、ミリィを殺させはしない」
 膨れあがった憎悪と怒りに押し出されるかのように、意思はそのまま言葉となって漏れ出た。
 しかし、その言葉では、エルにとっては話の意味が繋がらない。だから、エルはもう一度、トールに訴えかける。
「でも、それでお兄ちゃんが一人で戦って、死んじゃったら……嫌だよ。何処にも行かないで? 一人になんてならないで」
 エルは、トールの冷たく凍った表情を暖めようとでもするかのように、トールの頬にそっと手を添えた。
「どんな時でも、私がずっと一緒にいるから」
「!?」
 偶然にか、聞き覚えのある言葉……
 それを聞いた時トールは、エルに重なって、走り去っていく少女の後ろ姿が一瞬だけ見えたような気がした。
 行かせてはならない――
 何故かそう思えて、トールはエルの身体を強く抱きしめる。
「お……お兄ちゃん? 苦しいよぉ」
「……ごめん。ミリィが消えていくみたいに思えて……ごめん。俺は……もうミリィを一人にはさせない」
 トールは今、喪失感を思い出していた。何を失ったのか、それはトールにはわからなかったが、何かを失ってしまった事による、激しい喪失感の記憶だけが蘇ってくる。
 ほんの少しの間、触れ合えない距離に居ただけなのに、もう会う事は出来ない。
「……どうしたんだ? 手が……身体が震えるんだ。ミリィが居なくなるって思っただけなのに」
 喪失への恐怖で震えだしたトールの腕の中で、エルは静かに目を閉じる。
 エルには想像がついていた。トールが震えているのは、きっとあの日に死んだ本物のミリィの為だろうと。
 なら……ミリィとして、トールにしてあげられる事はある。
「お兄ちゃんが守ってくれるって言ってくれるなら、それを信じるよ。お兄ちゃんが、私を一人にしないって言うなら、それも信じる。だから……お兄ちゃんが守ってくれて、一緒にいてくれるから、私は何処にも行かないよ」
 エルは瞳を開き、それからトールの唇に自らのそれを押し当てた。
 温かいキス。
 トールの中に一瞬、誰かの笑顔が蘇る。誰なのか……今のトールにはわからない。
 ただ、キスを切っ掛けに、トールの心の中に渦巻いていた物が静かに退いていった。
 落ち着いてからトールは、顔を退いてエルとのキスを解く。
「ありがとう……ミリィ」
 感謝の言葉を囁きながら、今度はトールからエルにキスをした。ミリィの名を呼びながら……
 トールとキスを交わすエルの目から、一筋の涙が流れ落ちる。
 暗闇に満ちた寝室の中、それに気付いたのはエル自身だけだった。

 

 

「……残念。今日はハズレだったか」
 トールとエルの寝息が聞こえ始めたのを確認し、ユウナは手に持っていたビデオカメラのスイッチを切り、トールの寝室のドアを閉めた。
 そして、大あくびを一つしてから自分の寝室へと、いそいそと帰っていく。
 色々と期待していた様な展開にはならなかったが、それでも別の意味で収穫は大きかったので、ユウナとしては満足していた。
 確信が持てたのだ。トールとエルを、自分の手駒とする事が出来ると。
「怒りと憎悪……そして無自覚な後悔か」
 ユウナはニヤと笑いながら小さく呟く。
 怒りと憎悪は見て簡単にわかる。トールはそれを隠す事もなくさらけ出すからだ。
 そして、無自覚な後悔。トールは気付いていないのだろうが……“もう二度と、ミリィを殺させはしない”と言った意味。つまり、一度は守る事が出来なかった事実があると言う事……それは確実に、トールを縛るトラウマとなっている。
 その辺りを弄くるのが、トールを上手く動かすコツだろう。
 ユウナにとってミステール1は持ちうる最大の戦力だ。それをトールに渡す理由は、九割方「その方が面白そうだから」という理由で占められているが、もう一つトールのコントロールが容易だと想像出来たからという事がある。
 シミュレーションを見た所、トールの腕前は申し分ない。とは言え、父ウナトの部下や、傭兵ならばもっとMAを上手く使える者が居るだろう。
 しかし、トールならばその生死を含めて、ユウナがコントロール出来る。これは、他の誰かを駒にした時には得られない利点だ。
 トールには、自身の命以上に優先される狂気がある。狂気の発現とそれが向かう方向を誘導してやれば、トールは死を厭わずに力を振るうだろう。
 それでいてトールは他の狂気の者と違い、なかなか暴走しない。エルが……いや、ミリィという少女の幻影が、トールが復讐の獣と化す事を防いでいるのだ。
 トールの狂気と、エル。この二つを握れば、トールはユウナにとって絶対の信頼を置ける駒となる。狂気を孕むトールを単純に信用する事が出来ない今は、そんな無情な関係の方が信頼が置ける様に思えた。
 ただ、その状態のままであって良いというものでもない。別の形で信頼関係を築く事も必要だろう。だから、ユウナは今のところ嘘偽り無くトールやエルと接しているし、トールを戦力として搾取するのではなく与えられる物は全て与えようとも考えている。
 他にも、もっとフレンドリーな関係を目指してみるのも良いのかも知れないと少し考えた。
「それにしても、トール君は意気地がないな。あの場面は、一気に押し倒して良い場面の筈だ。もっと積極的じゃないと女の子を逃してしまう……これは、少し教授してあげた方が良いかな?」
 ユウナは自分の考えを口に出し、深く納得した様子で何度も頷く。
 こう言った人生の先達としてのアドバイスは、トールとの関係を良くしてくれるだろう。トールとエルが急接近し、その影にユウナが居ると知れば、エルの心も変わるはずだ。
「まずは手錠を使えって所からかな。縄の方が見栄えはするけど、やっぱり手錠の方が初心者向きだし」
 ユウナはアドバイスの内容を考えながら、自らの寝室へと消えていった……