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虚空、果てなく_〜SEED OF DOOM〜_int_2

Last-modified: 2011-03-27 (日) 19:33:18
 

   Short Intermisson−2

 

   プライベート・スニーキング・ミッション Act01

 

 赤服〜ザフトレッド〜
 それはザフト・アカデミーの上位卒業者に対して与えられる栄誉だった。
 アカデミーでの訓練を終えてザフトに配属される際に、通常の緑を基調とした制服ではなく、赤の制服の着用を許される。
 その中でもさらにトップランクの三人は、アカデミーの卒業式において赤服の授与を受ける。
 そしてそれかモビルスーツ・パイロットであれば、配属後の部隊でパーソナルカラーのMSが与えられるのだ。
 優秀な人間の中でも際立って優秀であることの証であり、それを授与されるのは誇りに思ってよいはずのことだった。
 しかし。
 「なんか、どうでもよくなっちゃたな〜」
 気のない言葉を吐いているのは当のザフト・アカデミーに在籍中で、近日中の卒業、それもトップ3として卒業式での赤服授与がほぼ決まっているルナマリア・ホークだった。
 実技・学科の全ての考査は終了し、今は卒業を待つのみの身であるルナマリアは、何か不祥事でも犯さない限り確実に赤服授与の栄誉に浴す事になる。
 在学中は常にパイロット科でトップクラスの成績だったルナマリアはそれを目指していたのだから目標を達成できたことを喜ぶべきなのだが、そのことより今の彼女の心中を占めているのは別のことだった。
 寮の自室の窓から外を眺めていたルナマリアだが。
 「またあの人のこと考えてるの」
 不意に背後からかけられた言葉に慌てて振り向くと、見慣れた顔がそこにあった。
 彼女の妹であり、寮の部屋のルームメイトでもあるメイリン・ホークの顔が。
 「何言ってるのよ、そろそろ卒業だし、どこに配属されるのかなって」
 平静を装うルナマリアだが、赤毛のショートヘアから一房だけ飛び出した髪の毛が動揺を表すように揺れてしまい、内心の動揺を如実に表現してしまう。
 そんな姉のわかりやすさに。
 「ふぅ」
 呆れたように溜息をついたメイリンは。
 「お姉ちゃんって、面食い?」
 そう問いかける。
 その呆れ顔のままの詰問に。
 「どういうことよそれ?」
 つい噛みついてしまうルナマリア。
 たしかに「あいつ」は顔立ちが整っている。
 ザフトアカデミーに在籍するコーディネーターである以上平均的に容貌が端正なのだが、中でも「あいつ」の鋭利な刃のような顔立ちは目立つ。
 もっとも。
 そんな「あいつ」と共にいることの多い金髪の絶世の美形のせいである程度、いやかなり霞んで見えてしまうが。
 好き嫌いは別として客観的に見てあいつが彼に美形度で劣っているのは否めない。
 (あれは比較対象としては相応しくないわね、別格ってやつよ)
 そう考えていると、まだ妹の呆れた視線が注がれていることに気がつく。
 それに軽い反発を覚えるルナマリア。
 自分があいつ、シン・アスカのことを常に気にかけているのは事実だが、それは別にシンの容貌に惹かれてのことではない。
 むしろシンを気にかけだしてから「よく見ると顔もいいのねこの子」と気がついたくらいだ。
 「別に、あたしはシンの顔がいいから気になってるわけじゃないわよ」 
 そう断言するが、次の瞬間メイリンの愛らしい顔が意地の悪い笑顔を作り出す。
 「ふーん、別に誰の事とか言ってないのに、シンのことなの?」
 顔を赤くしたルナマリアは。
 「メイリーンッ!お姉様をからかうと承知しないわよーっ!」
 妹の身体を抱え込むと、敏感な部分へのくすぐりを開始した。
 「きゃっ、お姉ちゃんっ、冗談だって、やめてっ、やめっ、あんっ」
 「あんたの弱いところは全部わかってるんだからっ、覚悟っ」
 「きゃんっ」
 仲の良い姉妹のじゃれ合いだが、音声だけ聞くとなにやら淫靡に聞こえる時間が過ぎ去り。

 

 「メイリンはずいぶんシンのこと嫌いみたいね」
 くすぐりつかれたルナマリアが、くすぐられ続けて息も絶え絶えにベッドに突っ伏した妹へと聞く。
 そうなのだ。
 元々人付き合いのあまりよくないシンだが、ルナマリアはグループ研修で一緒になったりとそれなりに縁が多かった事もあってかなり親しくしている。
 そのため会話をすることは多いのだが、その際メイリンがルナマリアと一緒にいると、そそくさとその場を離れることがよくあった。
 「はひ、はひ、ひっ、だっ、だって、あの人、せっ、性格悪そう」
 苦しい息が整うと同時にバサリと切り捨てるメイリン。
 反論の言葉が見つからないルナマリア。
 確実にそうだと言い切れるわけではないが、性格がいいと言えるような要素を少なくともルナは知らない。
 その逆の要素なら何度と無く目や耳にしているが。
 例を挙げるなら、シン・アスカは口が悪い。
 基本的に寡黙だが、口を開けば辛辣な皮肉を吐くことが多い。
 それも憫笑を浮かべて。
 あれを見て「いい人」と言い切れるほどルナマリアは独特な感性はしていない。
 「それに何か怖いよ、時々目が据わってるでしょ、あれって絶対人を殺したことのある目だって」
 本人の前でそんな事を言うどころか、目の前にいるのすら怖がるのに居ない場所では言いたい放題のメイリン。
 しかしそれも決して故の無い誹謗中傷ではない。
 少なくともルナマリアには、そのメイリンの推察を否定することは出来なかった。
 そう、シン・アスカは一部そりの合わない教官や仲が良くない同期生相手には、時折りその赤い瞳を怒りの炎で燃やし、殺気にも似た闘気を発することがあった。
 だがその気はすぐに収まり、すぐもとのメフィストフェレスのような皮肉な憫笑を顔を浮かべるのだ。
 経験の豊富な教官の類はその闘気に気圧され、形ばかりの叱責をして場を誤魔化した後でそそくさと逃げ出したものだが、未熟ゆえシンの放散した闘気を感じられなかった同期生たちは悲惨な目に遭った。
 怒気が萎んでもシンは決して内心まで完全鎮火したわけではないのだから。
 いつも通り、相手を軽々と叩きのめした上に、臓腑を抉るような的確な皮肉を投げかける。 
 もっとも本気の怒気は失っているのである程度、いやかなり手加減はしている。
 少なくともルナマリアには本気には見えない。
 明らかに本気ではない相手に叩きのめされた上に皮肉を言われる気持ちはいかばかりか。
 そのシンの行動を客観的事実だけで把握するならメイリンの言うように相当性格が悪いと言わざるを得ない。
 圧倒的な能力。
 しかしそれだけの力を持ちながら、シンには増上慢な雰囲気は欠片もなかった。
 皮肉な事に、もしもシンが周りを見下していたなら決して皮肉も言わなければ暴力沙汰も起こしていないだろう。
 一切相手にしないで無視を決め込んだはずだ。
 言ってみれば周囲と同格という認識があればこそ口も手も出るのだ。
 ただ単に能力だけが突出しているから結果として無敵状態になっているに過ぎない。
 シンの言動は、ルナマリアから見れば高い場所に安住している人間ではなく、より高みを目指す者のそれに見えた。
 アカデミーの戦闘訓練を片手間でこなしてしまうようなあれだけの能力を持ちながら、さらに目指している高みとは一体なんなのか。
 そしてまた、 ルナマリアの感じるシンは本来やんちゃな少年だった。
 何故か心を開いている美形のルームメイトや、話す機会の多いルナには時折り年相応の少年らしい面を見せることもあるのだ。
 その少年が、自らの持つ絶大な力を恐れ、また何らかの重い使命の重圧を受けて、無理矢理冷徹な人間として振舞おうとしている。
 あくまでも振舞おうとしているだけで、毒舌や実力行使に及ぶ辺りその本質はまったく隠せていないが。

 

 そんな様々な謎を秘めたシン・アスカは、ルナマリアにとっては色々な意味で気になる存在だった。
 だがメイリンには姉が「顔と成績はいいけど性格は最悪の悪い男に引っかかりかけてる」という風に見えているらしい。
 知力・体力のスペックこそ高いものの、調子に乗りやすくうっかりした所もあるため、時折り妹にフォローされることも多かったルナマリアだけに、メイリンの心配も故ないことではないのだが。
 なにやら哀れみのこもった視線を向ける妹に対して少し業腹に感じたルナマリアは。
 「そもそも面食いって、アンタは他人のこと言えるわけ? レイ・ザ・バレル・ファンクラブ会員番号三番さん」
 反撃の糸口を掴んで言い返す。
 レイ・ザ・バレル。
 アカデミーではほとんどの成績がトップ(格闘技とパイロット科でのMS操縦訓練のみシンに首位を明け渡した)の上、どんなコーディネイトがされたのかこの世のものとは思えぬほどの絶世の美少年。
 神様の気まぐれか冗談のような存在に対してアカデミーの女子生徒の間で「レイ・ザ・バレル・ファンクラブ」が結成されたのは当然の帰結とさえいえた。
 そしてメイリンもその一人だった。
 シンを怖がって避ける彼女が、レイが同席している場合に限り姉のすぐ側と言う安全地帯を確保しつつその場にとどまることが多かったほど。
 「そうか、愛しのレイさまがシンにべったりなんで嫉妬してるんだメイリンは」
 「やだっ!変なこと言わないでよ気持ち悪いっ!」
 涙目で抗議するメイリン。
 それはメイリンに対して禁句と言えるものだった。
 実際アカデミーの女子生徒の大半を構成員とする「レイ・ザ・バレル・ファンクラブ」は大きく分けて二派閥に分かれている。
 あくまでレイとの交際を望む派閥と。
 レイを偶像化する派閥。
 その後者の中では、共に孤高の立場でありながらルームメイトということもあって例外的にお互いに対しては胸襟を開いているように見えるレイとシンの怪しい関係を妄想して悶絶している分岐派閥が過半数を占めていた。
 全ファンクラブ構成員の実に四分の一強がレイとシンが男同士の禁断の関係だと妄想して鼻血を噴いたり別のけしからん液体をあらぬ箇所から漏らしたりしていたのだ。
 そんな「異端者」は、レイとの交際を夢見る派閥の筆頭とも言うべきメイリンにとっては忌まわしい存在だった。
 異教徒との聖戦より同じ宗教内での他宗派への異端審問のほうが激しく残虐になるのは人の歴史の常なのだから。
 「でもいいなお姉ちゃん」
 メイリンの言葉は先ほどまでの姉への揶揄が消え、羨望の色が漂っている。
 なにがいいたいのかはわかった。
 シンとレイが一緒にいることが多いため、そのシンと積極的にコミュニケーションを取ろうとしているルナマリアは自然とその二人とトリオを結成することが多いからだった。
 公的にはパイロット科の成績トップ3として、ブライベートでも三人組として。
 悪意を持って見れば、シン一人ならともかく女生徒の人気を独占するレイも含めて男二人を侍らしているように見えなくもないのでなるべく三人だけという組み合わせになることを避けてはいたが。
 他の女生徒を交えたり、それこそメイリンも帯同し、彼女をレイと二人きりにすることで自分とシンだけの時間を作るったりと。
 (結構、大変なのよ……)
 メイリンにはその辺の苦労はわからないだろうなと思ったルナマリアは、不意に妹に対しても絶対に言ってはいけないことを思い出した。
 それこそアカデミーの学生ではレイ、シン、そしてルナマリアの三人だけに知らされたことを。

 

 先日、ルナマリア達三人は成績トップがほぼ確定した時点である「任務」を与えられた。
 かつて士官学校の生徒が学生でありながら身分は既に軍人であったの同様、アカデミーの学生とはいえ身分的にはザフトの一員である以上任務が与えられてもおかしくは無い。
 だがルナが面食らったのは、その内容だった。
 MSシミュレーター訓練。
 それを初めて聞いた時、ルナは自分がトップ成績どころか落第したのかと思った。
 シミュレーター訓練など当に終え、すでに練習機訓練も基本操作はおろか応用操作の課題も全て終わって復習的な実戦想定訓練段階に入っていたのだ。
 その段階でもう一度シミュレーターをやれなどとは、落第宣告ではないかと。
 だがそれはありえない。
 わざわざアカデミーの校長どころか、新プラント最高会議議長ギルバート・デュランダルまでが臨席した上で、極秘任務としてシミュレーター訓練を命じられたのだ。
 いわく 「将来想定される画期的新機体の操縦習得のための予行演習である」と。
 その時にデュランダル議長の周囲には、このプロジェクトの関係者らしいお歴々も数多くいた。
 中の一人に、ルナマリアは見覚えがあった。
 以前、休日外出中の彼女に声をかけてきた軽薄そうな男。
 際立った長身と、議長といい勝負の長髪。
 服越しにもわかる、広い肩幅と熱い胸板、太く長い手足と、引き締まった腰という鍛えられた肉体。
 そしてそれとは裏腹の甘いマスク。
 一度見ればなかなか忘れがたい特徴を数多く備えたその男はイルムガルト・カザハラ。
 容姿や肉体に恵まれた上に議長が主導して進めている軍事技術大規模刷新計画「ニュー・ダイレクション・ブラン」に協力している優れた頭脳の持ち主でもあり、意外な事にナチュラルだという。
 少し驚きはしたが、ショックは受けなかった。
 プラントに育ち、生まれた時から周囲がコーディネーターだらけの第二世代コーデイネーターは、一部のエリート意識の強い人間を除いて自分がコーディネイターであることに特に意識していないことが多い。
 一応プラントを守る使命感からザフトアカデミーに志願し、赤服候補という立場的にはエリートだが、メンタルが大衆的なルナマリアなどはその典型例であり、一般的にナチュラルよりも優秀なのは確かでも、物事には例外はあるだろうと特に気にしなかったのだ。
 そして計画に関与しているナチュラルは彼一人ではなかった。
 デュランダル議長といえばナチュラルとの融和を主張してきたクライン派の政治家なので、そういった優れたナチュラルをプラントの重要な案件に関与することも政治的に意味があるのだろうと漠然と考えもした。

 

 こうして三人はアカデミーの特別エリアに設置されたシミュレータールームへと入るカードパスを与えられた。
 ザフトの、ひいてはプラントの、そして最終的には全人類の命運の掛かった計画の一環。
 そのような議長の説明を受けたあとで、実際に訓練に入ったルナマリアは最初落胆した。
 シミュレーターはかなり操作が簡略化されていて、瞬間的な入力演算などの必要がなくなっていた。
 これは新機体どころか、単なる「ナチュラル用OS」ではないのかと。
 これならナチュラルの技術者が多く関与しているのも頷ける。
 だがそれは浅はかな勘違いだったとすぐに気づいた。
 ナチュラル用OS同様の操作の簡略化を補って余りあるほど、煩雑な微操作機能が付加されていたのだ。
 しかもそれは頭での計算ではなく、状況の把握と判断を迫られるものだったのだ。
 戦闘行動を行う際にも一切制止も減速もせず、そのまま機動と戦闘を両立させるためのプログラム。
 チュートリアル・モードからエクササイズ・モードに移行したルナマリアは唖然とする。
 高機動を維持したまま攻撃してくる敵の前にまるで的のように撃ちまくられる。

 

 それでもどうにか勘所を掴み、ようやくにしてエクササイズ1を終了したルナマリアがシミュレーターを降りると、隣の機械から先に降りていたレイがやや憔悴した顔で苦笑する。
 ルナマリアより一足早くエクササイズ1を修了したらしい。
 「なかなか辛いなこれは、常に戦術的判断と機体の最適な機動制御を強いられる、だがマスターすればこれまでとは次元の違う戦闘機動を実現できる」
 レイにしては長いセンテンスを、憔悴の中にも強い意志を漂わせて語る。
 このような難行を前にも向上心を口にするレイに驚愕するが、すぐに意識はシンにも向かう。
 まだ奮闘中のようだった。
 三人の中で一番の実力を持つシンだけに、続けてエクササイズ2もやっているのではと考えるルナ。
 やがてシンがシミュレーターから降りてくる。
 ああ、その時の顔。
 ルナマリアはあの顔を鮮明に思い出せる。
 そのシンの顔は紅い瞳を燃やす怒りの顔でもなければ、皮肉そうな冷笑顔でもない。
 そして時たま見せる、年相応の少年らしい顔でもない。
 清澄。
 そんな言葉が相応しい、何か超然とした顔をしていたシンが、レイやルナマリアの顔を見て一瞬「しまった」といわんばかりの顔になる。
 そしてすぐに何ごともなかったかのように取り繕うが、ルナマリアにはバレバレだった。
 レイも何か感じたようだが、黙して語らない。
 「シン、どうだったの?」
 「え、あ、そこそこかな」
 焦点の合わない目で誤魔化すように言うシンの横を、ルナマリアは神速で駆け抜け、シミュレーターへと飛び込むとまだデータの消えていないその画面を見た。
 それはまさに刹那の差。
 ルナが入ったまさにその瞬間、モニターは消えた。
 だがその前にルナは目にした。
 オール・エクササイズ・コンプリートと言う文字を。

 

 「お、おい」
 「もう、さっさと画面消しちゃって、何で隠すのよシン」
 焦って追ってきたシンに、自分が消える寸前の画面を見たことを隠すような言葉を放つ。
 「い、いいだろ別に」
 自らも動揺していたせいか、ルナの咄嗟の誤魔化しに見事に騙されるシン。
 だがルナマリアは内心、薄氷を踏む思いだった。
 ちょっとした好奇心から、決しては見てはいけない、知ってはいけないものに触れてしまった気がして。 
 自室に帰ったルナマリアは、メイリンとの会話も上の空でそそくさとベッドに横たわり、そして考えた。
 「シン・アスカは何者なのか」と。
 それまでルナマリアは、シンのMS操縦技術は自分やレイと大差がないと思っていた。 
 シンの方が上ではあっても、彼を10とすればレイは9、自分も8くらいは行っていると。
 そしてそれは自惚れでもなんでもない厳然たる事実だった。
 しかし、この新機軸シミュレーターでは。シンと自分たちの間に容易には狭められない大きな差が生じていた。
 今までシンは手を抜いていたのか?
 トラブルになった相手を手加減しまくって片手間に畳んでいたのと同じように。
 だがそれは違うと、ルナマリアは思う。
 シンの心を読めるはずもないが、手抜きをすればそれを隠せるほどシンは器用ではない。
 つまり、従来型MS操縦では確かに大差のなかった自分達の能力が、ことこの新機軸システムにおいては明確な差がついていたのだ。
 自分やレイがたった一つのエクササイズをこなすのに要した数時間。
 シンはそれと同じ時間にほんの十数分ほどをプラスしただけで、12あるエクササイズを全て終えたというのだ。
 何らかのルートで、既にあの新システムを体験済みだった。
 それが最も筋の通った解釈になる。
 だがそのような立場の人間が、なぜわざわざアカデミーに入校する必要があるのか。
 そしてまた、通常のMS操縦より新システムのほうにより精通しているなどということがありえるのか。
 考えれば考えるほど、シンの謎は深まる。

 

 回想から現実に戻るとルナマリアは再び窓の外へと目をやる。
 彼女は待っていたのだ。
 卒業前の最後の休暇、シンが外出することを知ったルナマリアは、危険がある可能性を承知で、彼の後を追跡してみるつもりだった。

 

   つづく

 
 

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