Top > 皇女の戦い 第三話
HTML convert time to 0.003 sec.


皇女の戦い 第三話

Last-modified: 2017-08-22 (火) 13:02:21

 中東の乾いた風が吹きすさぶ大空。
ガンダムによる飛行訓練をしているといつも思う。
自分が住んでいる国に貧困やそれによる犯罪が溢れているなんて嘘のような気がする...と。
そんな思いが今戦いに向かうマリナの気持ちを少しでも和らげていた。
自身のスーツよりも青々とした空に少しずつ晴れた表情になっているのがわかる。

 

「......っ!?」コクピット内に警報が響き渡る。それだけでなく何かが近づいてくる感覚に息を飲む。
「誰?」しかし辺りを見回しても何もない......ただ青空とそこに浮く白い雲があるだけ。
この気配は決して空腹の猛禽類ではない...もっと強烈な意思......≪人間の殺気≫だ......
幼いころより周囲の貧困を見てきた彼女は人々の金品や食料の取り合いを全く見なかったわけではない。
皇女の座に着いてからは極度に不満の爆発した国民の怒りも目の当たりに、その度に心を痛めてきた。
しかし、この殺気はそれまでのものとは違う。もっと純粋な敵対心。絶対に避けることができないことを彼女は感づいていた。
「どなたです?姿を見せてください。」
できるだけ毅然と落ち着いた声色で呼びかけた次の瞬間……

 
 

「はっ!」一瞬捉えられないように思えた太く、龍のように長く紅い光が澄んだ空を駆けていく......
避けたは良いが飛行船は右半分が溶けて白い鋼は形を歪ませ、溶けていく。あくまでそれはガンダム専用、マリナ以外誰も入っていなかったのが幸いだった......
勿論ユディータの巨大な白い痩身は右半分程が露出してはいるものの傷はないのがせめてもの救いだった。
「一体、何なの?」混乱する感情をできるだけ落ち着かせるマリナ。ファイターとして精神を鎮めることも教わっていた。
今朝テレビで見たステルス機能搭載のガンダムを思い出した。尤も、あれは既に会場に到着しているので今の連中は全く別人。偶然類似した技術を用いていたか、はたまた盗用したのか。
それはともかく目先の「空気」に視線を冷静に這わせるよう努めた。

 
 

「ふふ、中々いい避け方だったぜ。ちょっと惜しかったが。」「随分綺麗な機体じゃねえか。やっぱ皇女様が乗るものは一味違うな。」
どこか人を喰った、荒くれたような喋り方の男の声が2名聞こえてきた。
「私にはこんなことに付き合っている時間はないのです。どいて下さい。」
すると周囲にあった青空の一部が少しずつ人のような形となり浮かび上がってきた。
......いや、正確にはそれまで空中に擬態して隠れていた。
その姿はモンスターではなく、人の手で作られた歴とした機械...MSだった。
黒く無骨なシルエットと不気味に紅く光るモノアイ。まるで獲物を見つけて喜々とした獣のように見える。まるで狩人のように銃を構えて狙い撃ちするのを楽しんでいるような雰囲気さえある。
(今ここでまともに相手をしている時間はないわ......こうなれば...)
機体内部のパージスイッチを押すと残りの飛行船が外れゆっくりと地上に落ちていく。
こうなればデッドウェイトでしかないそれは、マリナの定めた狙いのままにゆっくりと緑の乏しい山に向かっていく。
誰もいないのは明らかなので一番安全な場所と言える。

 
 

背中にマウントしていた弓を携え矢を構える。
精度が高く、硬度と柔軟性を併せ持ったアローは幾度もマリナの窮地を救ってきた。
それに時に迫られている彼女にとって頼みの綱になるのは遠方から相手を狙える弓術しかない。
堂々とした構えで敵機二体のライフルを一気に弾き落とす。
「ぐっ、こいつ!」「やりやがって!」
「......私はガンダムファイターの端くれです。殺し合いなんて望んでいません。
......これ以上は......早く帰ってください。」
ファイトと違い明確な悪意を持った敵、しかしそれでも命を奪わずにいられることに越したことはない、そんなマリナの気持ちを嘲笑うかのように二体は太めのサーベルを取り出し襲い掛かってきた!

 

「仕方がないわ!残念だけど...」訓練で培った相手の動きを読む技術......マリナは柔らかい動きで回避するとさらに素早く構えた矢で一体の右腕、頭部を狙った。
センサーであるモノアイは外したが、空中でバランスを崩しつつ何とか存在している。
「野郎!」向かってくるもう一体に一切逃げる素振りを見せず弓の準備をするマリナのガンダムユディータ。
あともう少しでサーベルが頭部に届くかという所で瞬時にかわし、相手の懐に飛び込んだ。
「もうこんなことさせないで...」切なそうな声と共に相手の両肩を至近距離の射撃で破壊する。
衝撃で両腕は脆くも地上に落下していく。

 

「どうする、あいつ中々の腕前だぜ?」パイロットの一人が呼びかけた空間には誰もいない
...いや、いるのだ。マリナは犇々と感じていた。この二人よりさらに強い殺気を持った何者かがその空間にいるのだ。
「......!」ファイターになってからまだ数年も経っていないマリナですら緊迫感でその相手に目を見張らざるを得なかった。
「相当やるみたいだね......皇女さん?」
冷たく挑戦的な声と共に堅牢な装甲の巨人が浮かび上がって......

 
 

皇女の戦い 第二話 皇女の戦い マリナがガンダムファイターだったら… 皇女の戦い 第四話

 
 

URL B I U SIZE Black Maroon Green Olive Navy Purple Teal Gray Silver Red Lime Yellow Blue Fuchsia Aqua White