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皇女の戦い 第二話

Last-modified: 2017-08-22 (火) 12:54:34

「みなさん、お待ちかね!ガンダムファイトに備えて各国の選手達が集まってきております!」
ここは今回のガンダムファイトの開催地イギリス・ロンドン。
荘厳かつ新しいコロシアムには幾多の観客達に見守られながら多くのガンダム達が姿を現している。
空気を裂くようにして突如姿を見せるステルス機能搭載機。
大地を強引に割ってくる一際巨大な機体。
時計塔を天高く飛び越えるジャンプ力重視の機体。皆各国の最新技術をアピールする登場を見せている。

 

アザディスタンの王宮のテレビにもその雄姿が映し出されている。
「これが今回の代表の機体......」青紫の正装をしたマリナは下ろしていた拳を握る。
以前戦ってドローになった機体、テレビや合法的なネットワークで知っていた機体もあるが、やはり繊細な顔立ちは緊張りつめた心を隠せない。
「......?」突然消えた画面に驚いて振り向けば、リモコンの主はシーリンだった。
「今から自分を緊張させてどうするの?」
首を横に振ると微笑んで「他国の機体を少しでも知っておいた方がむしろ緊張を解せると思って。」
「肩、強張ってるわよ?」言われると恥ずかしそうに苦笑いするマリナ。
「だめね、どうしても下調べみたいなことをしなきゃ気が済まないところがあって。」
一度はすくめた肩をゆっくり張る。
「ふう......それだけの自覚があるのは良いけど逆効果な時もあるわ。責任感に押し潰されたら戦う前に負けるわ。そうなれば傷つくのはあなただけじゃないでしょう?」
口をキュッと結びながら頷くマリナ。「そうね。国のみんなの将来がかかっているものね......」
「そろそろ時間ね。行きましょう、シーリン。」その表情は紛れもなく皇女にしてガンダムファイターのものだった。

 
 

「マリナ様!絶対に勝って!」「必ず我々に資源を!」「ご武運をお祈りします!」
首都に住む多くの人々が王宮に集まり出発前のマリナを出迎える。幼い子供含め老若男女あらゆる人々が皇女に声援を送り、そして望みを託している。公務やファイトの修行の合間を縫って首都内の孤児院や病院に慰問を重ねてきたマリナには顔なじみの子供も大勢いた。
マリナの傍にいるシーリンは彼らの気持ちはわかるものの先を急いでいるといった面持ちだが邪険にする態度は取らなかった。それはマリナも同じだ。
「皆さんの思いは必ず果たします。離れていても私の戦いを見ていて下さい......
私に力を授けて下さりますから...」
真摯に答えるマリナに5歳ほどの女の子が大切そうに抱えた袋を持って寄ってくる。孤児院で何度も言葉を交わした子なので皇女相手にもそれ程緊張した様子はないが、その瞳は真剣そのものだった。
「あら、こんにちは。」両膝をついて微笑むマリナ。「これを私にくれるの?」
袋を開けると中には白を中心に赤、、黄色といった小さな花が1つに繋がった花飾りが出てきた。
「ありがとう、こんなに素敵なものを私に......」綻びながら少女の髪を優しく撫でる。
「いっぱい探して集めてきたんだよ。」少女はにこやかに、そしてどこか誇らしい笑みを浮かべた。
「マリナ様、この子が院の近くの山から採ってきたのです。土に汚れながら毎日少しずつ集めて......」少女の後ろにいたシスターの言葉にハッとして少女をそっと抱いた。
「そうだったの......貴女の為にも必ず勝つわ。信じて。」

 
 

以下が会場到着までの過程。
アザディスタン軍の基地内にあるガンダム(といっても保護用の巨大な飛行船に収納されているのだが)に乗り込みそのまま会場に向かうというシンプルなものだ。
ガンダムもその飛行船も過去のあらゆる軍事兵器や工業製品よりも頑強に作られているが、最新の注意を払う必要がある......

 

基地に向かう車内にはドライバーの他にマリナ、シーリン、腕利きのSPが3名。
道路の左右には王宮前よりも更に多くの国民達が皇女の乗った車に声援を送っている。
中には病を押して必死に手を振っている人もいる。マリナは微笑みながら丁寧に手を振り返す。
「マリナ、良かったわね。」「ええ...私、もっと強くなれた気がする......」
少女からもらった花飾りの入った袋をそっと、だが大切に抱きながらシーリンに応える。
「必ず勝つわ、私を信じてくれたみんなの為に......」
ガンダムファイター......本来格闘に身をやつした者が進む道を政の頂点にいる彼女自らが反対を押し切り選んだのだ。
無様な結果を残せば飢えと貧困に苦しむ国民だけでなく、彼女の無理を受け入れてくれたシーリン達にも申し訳が立たない...
(絶対に、敗北は許されない...)
「......」旧知の仲故かその切実な思いを見逃さなかったシーリンは、しかしいつもの冷然とした声で告げた。
「見えたわ、マリナ。」目の前にはアザディスタン軍事基地が質実剛健と聳えていた。

 
 

「今日という日をずっと待っておりました。私が皆様の礎になれるよう務めを果たします。」基地にて彼女達を出迎えた軍のトップに深々と頭を下げるマリナ。
「皇女自ら我らの為に御尽力下さるとは誠に光栄であります。」
トップの言葉と敬礼と同時に軍の上層部のメンバーも敬礼した。
一人一人に皇女が向けた視線は真剣さだけでなく、悲しげでもあった。
争いを好まないマリナも戦時中に命を懸けてきた彼らを尊敬している。だからこそ殊更に切なかった。
今回の闘いで国が豊かになれば少しでも彼らの犠牲も報われる...その感情もファイトでの力になっていたのは紛れもない事実だった。

 

基地内の格納庫はいつもより張り詰めた空気を孕んでいるように思われるのはファイターの思い過ごしだろうか。
技術者と整備員達とて同じような面持ちで皇女を送り出す準備に励んでいた。
「機体の最終点検は既に終了しました。ユディータの力があれば必ず......」
「はい、期待に必ず応えて見せます。」ずっと彼女のファイトを物理的に支えてきた技師長と握手を交わすマリナ。

 

「シーリン、先に行ってるわね。また会いましょう。」「ええ、気を付けてね。途中には何があるかわからないから。ここからがすでに戦場よ。」
厳しいながらもずっと見守ってくれた旧友と握手を交わすと慣れた足取りでタラップに乗って眼前の巨人・ユディータへと入っていった。

 
 

ガンダムユディータ......他国の機体とは一線を画す華奢でしなやかなそれは雪のように白い...
脛や前腕は濃紺に塗られており、白さと引き立て合う色使いになっている。
顎の上にスリットはなく、小さく細い顔。
出来得る限り攻撃のダメージを受け流す為全体的にボディのめりはりが強調されているが、胸と肩幅は小さくて狭い。
本来は弓術専用の機体だが、マリナのファイター志願により合気道にも対応すべく尚も柔軟なフレームシステムへと進化を遂げた。
背部にマウントされたケースからは縮小された特殊金属性の矢が収納されている。
(ユディータ、私を導いて...)
サバイバルイレブンを共に駆け抜けてきたこの機体に思いを馳せながら、孤独な戦場ともいえるコクピットに入っていく。

 

内部には上下に二つのリングがある。
丁寧に脱いだ衣服を折り畳むとそれらは一時的に粒子となって消えていく......
締まりつつもファイターらしからぬ細い肢体は決心を固めながら祈るように胸の前で手を握り、片膝を着く。
上方のリングからスーツが優しい色合いに似つかわしくない圧力を伴いながらマリナの身体に張り付いていく。
身体は強張り現在の態勢を保つのが精一杯。
「......っ!」いつものように苦しみながらも必死で手足を動かしスーツを纏わせていく。
ゆっくりと腰を上げ、立ち上がる。
最初の時に比べれば圧倒的に装着時間を短縮している。
実戦未経験の時は、スーツを着た直後でも体に負担がかかり動きがおぼつかず、フラフラしていたのだ。
それを国によるスーツの調節、柔軟性と(他のファイターには負けるが)最低限の筋力や動きのトレーニング。
これらの甲斐あって時間と負荷を最小限に留めるに成功したのだ。
各国共通の肩、手首、足首についたイエローのセンサー
無駄のない細い胴体を包む水色の爽やかなスーツがほんのりした腹筋を浮かび上がらせている。
撫で肩と股を守るのはうっすらとした水色。そしてそれらから伸びる長い手足と小さな臀部はユディータ同様の純白。
一口で言うと、手足に向かうに連れて薄い色になっているスーツだった。
そして胸にはアザディスタンの誇りを象った国の証が描かれている。
ずっとこのスーツと機体で戦い続けてきたのだ。
天井のハッチが開けば中東の真っ青な空がマリナを祝福するように広がっていた。
シーリンや技術者に会釈をするとシンプルな形状の格納型飛行船に乗り込み大空を旅立っていった。
皇女と国民の願いを風と轟音に乗せどこまでも......

 
 

皇女の戦い 第一話 皇女の戦い マリナがガンダムファイターだったら… 皇女の戦い 第三話

 
 

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