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小話 ◆9NrLsQ6LEU 氏_血溜りの狂笑(仮)_第04話

Last-modified: 2009-05-11 (月) 21:11:23

キラ・ヤマトは焦っていた。

 

それで無くともここ数ヶ月で大切な仲間が次々と何者かに殺害されていたのだが、
此処に来て自らの姉であるカガリ・ユラ・アスハが傍若無人なテロリストに無残にも暗殺されたというのだ。
しかもプラントの殺人犯はいまだに手掛かりすら、掴めない状況である。
今回の出動もラクスやアスランからは一人では危険だから騎士団を動かすまで待つようにと
止められたのだが、流石に騎士団を動かすとなるとそれなりの準備が必要なために時間がかかる。
何者かも分からないような犯人を恐れて、オーブのテロリスト共を早急に叩かないなど
自由と平和の守護者を自称する、CEの聖剣伝説たるこのキラ・ヤマトの、
ひいては平和の歌姫ラクス・クラインの沽券に係わる問題であると主張したうえで、
最強のMSであるストライクフリーダムに乗っていれば誰にも負けることは無いと
無理やりに説き伏せてきたのだ。

 

しかしいま自分はたった1機のMSに足止めされている。

 

カガリがオーブの為にどんなに頑張っていたのかを知らないくせに、
そんな連中が僕たちに逆らうなんて許せない。
急ぎ、オーブへ行ってその無知蒙昧な輩に思い知らせてやらなければならない。
だというのに、この目の前にいるMSはなんで僕の邪魔をするのか。

 

「なんでこんな事をする、今がどういう状況だか判ってるの」
目の前の相手をいらだち混じりで怒鳴りつける。
その声に相手は通信を返してきた。
どうやら機械を通して声を変えているようだが、甲高いそれでいて底冷えする冷気を感じさせる声だった。

 

「さあキラ・ヤマト断罪の時だ、自らの罪を知り、地獄に堕ちろ」

 

なんだって僕の罪?僕が何をしたって言うんだこの人は、まさか前の動乱の時のことか。
あれは仕方なかったことだ、僕たちがどんな想いをしてこの自由で平和な世界を勝ち取ったと
思っているのか。
まさかこいつか、バルドフェルドさんをムウさんをマリューさんを色黒炒飯や銀髪オカッパ、

 

    あと何人かいたと思うけど名前知らないからいいや、

 

な仲間達を殺したのは。

 

「あなたか!僕の仲間を次々に」
「だとしたら」
「なら、ここで倒す」
言ってキラは一瞬目を瞑るとSEEDを発動させた。

 

しかしそれはすでに遅かった。

 
 

それは一方的な攻撃から始まった戦闘だった。
キラが愛機を駆りオーブへと急行する途中にこの量産型のフリーダムが追いついてきたのだ。

 

量産型フリーダムはプラントでも騎士団にしか配備されていない専用機であり、
簡略化と更なる機動向上を目指して再設計された機体である。
具体的には腰部のレールガンを取り外し背部のウイングスラスターにあったバラエーナビーム砲を
あらためて腰部に取り付けている。
これによりバラエーナ展開時ウイングスラスターが一方向で固定化されるのを改善し、
PS装甲に通用しない実体弾を外す事と本体のPS装甲もコクピット周りにのみ採用することで
かなりの軽量化に成功している。
また前腕部にサーベル状態との併用が可能なビームシールドを取り付けた事と
足のつま先からもビームサーベルを展開することでライフルを格納しなくても
接近戦に対応が可能となっている。
更に動力は核分裂炉を搭載しておりエネルギ−切れの心配も無い、
これはユニウス条約には騎士団は調印していない、で押し切った。
そのためキラはこのMSを何処かの中継基地より出てきた味方機であると思い、注意を払わなかった。
したがってストライクフリーダムの真後ろに量産型フリーダムが付いたときも
単純に自分のお供をしてくれるのだと考えた。
しかし一瞬のロックオンアラームが鳴ったのち、ビームライフルが火を噴いたのである。

 

ビームは正確に機体中央部を狙っていたが、そこはスーパーコーディネイターの反射神経
とっさに機体を沈み込ませて、直撃は防いだのである。
しかしこの時に運悪く、相手にとっては運良くストライクフリーダムの要である頭部を吹き飛ばされた。
ストライクフリーダムの主武装であるスーパードグーンを操るためのブレードアンテナ
そしてキラ得意のマルチロック・フルバーストを行なう為の観測装置このどちらもが
頭部ユニットに搭載されていたのだ。

 

つまり今のキラは攻撃手段の大半を封じられ、しかも高機動で振り切ろうにも
ドラグーンを装着したままではVLの起動も出来ないという状況である。
しかも視界の悪いサブカメラでの戦闘を余儀なくされたキラの取りうる戦法は
いかにSEEDを発動させていようとぐるぐる回りながら全ての火器を乱射するしかない。
それでも普通のMSと通常の相手ならば、
最強のMSに乗る最高の資質を持ったスーパーコーディネイターであるキラであれば勝てたであろう。
だがいかに量産型とはいえフリーダム、そしてこの乱射されたビームの群れを掻い潜ることが出来る
腕を持ったパイロット相手では分が悪かった。
攻撃はかわされ、相手の攻撃は直撃こそ無いものの徐々にこちらを削り取ってゆく。
始めて味わう感覚に戸惑ったキラは通信をオープンにして怒鳴った。
「君は誰だ!どうしてこんな事をするんだ!」

 

通信を入れた瞬間、わずかに動きの鈍ったストライクフリーダムの右腕が
バラエーナ砲の直撃を受けて吹き飛んだ。
ショックで崩れた体勢を立て直しながら、再び叫ぶが相手からは何の答えも返ってこない。
しかも右腕が無くなったことによって出来た隙間から更に攻撃を仕掛けてくる嫌らしさである。
一度傾いた均衡は簡単には覆せない、右腕を失ったのを皮切りに右足を打ち抜かれた、
このままではまずいと相手の武装がビーム兵器しかない事を逆手にとってビームシールドを展開し
接近戦に切り替える。
あえて直線的な軌道で肉薄すると相手は足のサーベルを展開させバック転の要領で切り上げてくる、
それを一瞬の判断で読みきると急制動を掛けて停止し相手の振り切った足に向かって
右腰のシュペーラケルタを引き抜き両断する。
両足を失った量産型フリーダムはそのまま回転し、今度は逆にストライクフリーダムの股間から頭頂部までを
両断しようと前腕のビームサーベルを展開させて切り上げてきていた。
これを左にかわしたストライクフリーダムだが展開していた右側のスラスターを
ドラグーンごとすべて失ってしまう。

 

この攻防は実際のところキラの勝利だ、
なぜならば足の切り上げをかわした後、両足を切らずに胴体部分を両断していれば良かったのである。
しかしキラは不殺という、戦場においてある意味傲慢な戦い方をしている。
この戦法は圧倒的な実力差があれば通用するものである、そしてキラはいままで敗北したことがなかった。
自分に勝るとも劣らぬアスランとは引き分けであったし、
シンに撃墜されたときは彼曰く迷っていたから本気ではなかったらしい、
事実キラは撃墜されたにもかかわらずかすり傷ですんでいる。

 

自分より強い相手がいない、それはいつしか彼の驕りとなっていた。
この戦いではその驕りが決定的な、そして致命的な差となったのだ。

 

右側の武装が総て無くなったというだけではない、スラスターも失ったことで
姿勢制御すら困難な状況であり、これでは満足な戦闘機動など不可能だ。
相手側も両足を失ったとはいえ、継戦能力にこちらほどの支障はない。
こうなってはもはや一方的に蹂躙されるのみだ。
程なく残った左側のドラグーンごとスラスターを破壊されて機動力を失い漂うだけの
ストライクフリーダムは残る左腕と左足も破壊されて残骸と化した。
そのときコクピットに相手のかん高い笑い声が聞こえてきた。

 

「クックック クハハハハハ アッーハッハッハッハアー」

 

キラは反射的に叫んでいた。
「なにが可笑しいんだ」
はたして今度は返答が帰ってきた

 

「これが笑わずにいられるか、CEの聖剣さまがダルマとはな、ハハハハハ、無様だな」
「なんでこんなことをする」
「これは呪いだ、神に愛されたあんたとあんたの仲間にかけられたな。
 あんな結末は認めないと、総てを奪い去った者が勝者などとは許せないと、
 世界に満ちる怨嗟の声が断罪を、贖罪を求めた結果だ」

「違う、僕たちは自由と平和のために・・・」

「破壊と混乱を撒き散らした奴の言うことかあー!」

 

両腕に構えられたビームライフルと腰のバラエーナから放たれた4条の光が
最後に残ったストライクフリーダムの胴体ごとキラを光に変えていった。

 

ただしキラは最後の瞬間まで自分の正しさを疑ってはいなかった。
それははたして幸せなことだろうか。

 
 
 
 

騎士団の執務室でその戦闘記録をみたアスランは顔を蒼白にしていた。
正直に言って信じられない、
いくらなんでもストライクフリーダムに乗ったキラが敗北するなど想像すらしていなかった。

 

だが映像は事実であり、これを持って来たのは頼りにする部下(実際は所属が違う)のシン・アスカである。
映像はそのまま続き、シンの乗るステルスセイバーと半壊した量産型フリーダムの戦闘へと移っていた。
セイバーもビームライフルと右足、左のアムフォルタスを失ったものの
相手のビームライフル2丁と右側のバラエーナを破壊した。
この時点で不利と悟ったのか逃走に移った量産型フリーダムの背面に残ったアムフォルタスを命中させ、
先のストライクフリーダム同様、量産型フリーダムが光になって消えてゆくのを見たところで映像を止め、
大きく息をついてからシンに向かって話し出した。

 

「これは事実なんだな」
一言一句を噛み締めるような口調である。
「はい、この記録にはなんの加工もしてません。なんなら調べても良いですよ」
答えを聞いたアスランは椅子から立ち上がり机を叩いて叫んだ。

 

「何で間に合わなかったんだ!お前は!」

 

はっきり言って言いがかりであるが本人は気にもしない、
すぐに顔を引き締めると次々と質問をかけて来る。
「で、捜索はしたんだろうな」
「規定に従って行いましたがキラさんもフリーダムのパイロットも発見できませんでした。
 現在はうちの課長経由で騎士団が捜索に当たっています」
その言葉に納得しかけたが聞き捨てなら無い単語が混じっている。

 

「ちょちょっと待て、もしかしてお前ほかの連中にキラが殺られたこと」
「言ってませんよ、例の犯人と交戦撃墜したが生死不明に付き捜索、調査を願う、で通しました。
 ま、あんな所に犯人が居るってのは不自然ですからね、気が付く奴は気が付きます」
答えを聞いたアスランは下唇を噛み締め、髪の毛をバリバリと掻くと苦々しげに退出を命じた。
「では失礼します。あ、あと議長への報告はお願いしますね」
凸の拡大に拍車をかけていたアスランの手がピタリと止まると目を丸く開いて尋ねてきた。
「まだ、言って無いのか?」
「当たり前でしょ、この手の報告は騎士団経由って決まってるんですから」

 

てゆうか、お前の決めた規則だろ。忘れてんのか?
いや待てそういえばこの凸には今日と明日はあっても昨日とか過去は忘却の彼方だったか。
それにこの顔には覚えがある、なにか面倒ごとを押し付けるときの顔だ。
ガルナハンの時とか、オーブと連合の艦隊に囲まれた時とかに一番危険な場所に人を送り込む時の顔だ。
シンのこういう嫌な予感だけは良く当たる、事実アスランはシンに向かって口を開きかけた。

 

「なあ、シン頼みが・・」
「イヤです」
にべも無い、一刀両断である。
その後言い争うが姿が見られたが最後にはアスランの「これは命令だ」の一言で
結局シンがラクスの所へ報告に行くこととなった。

 
 

実際のところシンとラクスにはこれといった接点は無い。
プラントに移住してきた当初はただの歌手であった彼女に興味は無かったし、
議長に就任してからは立場が違う。
顔を会わせたのはオーブの慰霊碑前とこの事件の事情聴取の時くらいだ。
どうやって伝えようか少し悩んだが、元々関係ない人物である。
映像見せて反応見て考えようと開き直り、ラクスの元へ向かった。
なんでも今日は政庁ではなく自宅に居るらしい。

 

クライン邸に向かう途中で前方から金と栗色の髪の毛をした3歳位の子供の手を引きながら歩く、
緑色の髪をした女性に気が付いた。
コムスの義理の母になるロミナ・アマルフィである。
向こうも此方に気が付いたようで、子供の足にあわせながら近づいてくると
折り目正しく挨拶を交わしてきた。
「こんにちはアスカさん、今日はこんな所で如何なさったの?」
コムスに会いに行った時などにお茶をご馳走になった相手である、無下には出来ない。
「いえ仕事でして、これからクライン邸に行くところです」
クライン邸と聞いたロミナはその美しい鼻梁をしかめると声を細めて聞いてきた。
子供に聞かせるような話ではないと察したらしい。

 

「もしかして、なにかありまして。まさかラクス様が?」
「いえ議長はまだ無事です、それにこの事件はもうすぐ終わりますよ。保障します」
「そう、それなら安心ね」
『ねー』と子供達に向かって笑いかけるロミナ、
シンはなにかどこかで見た気がする子供が気にかかったので質問してみた。
「あの、この子供もしかしてロミナさんの」
だとしたら父親は誰だろう、などと考えたが質問されたロミナはキョトンとしてから
口元に手を当ててコロコロと盛大に笑い出した。
「フフ、違いますよ、この子達はフラガさんのお子さんですよ。私が引き取ったんです。
 幸いかどうか私の家に二人では寂しいでしょう」
なるほど確かにフラガ家には子供がいたし、コムスがロミナに引き取られた理由も
マリューのマタニティーブルーのせいだった。
そうか、この子達は孤児になるのか、俺は自分と同じ目に遭う人無くなる様に力が欲しかった。
けれど現実はどうだ。

 

雰囲気が暗くなりかけたのを察したのかロミナが話題を変えた。
「それにこんなおばさん、誰も相手にしないわ」
「そんな、ロミナさんは綺麗ですよ」
「あら、じゃあアスカさんに貰ってもらおうかしら。未亡人だけど宜しくて」
「ええっ、それはその、あの」
むろん冗談だとは分かっているがそんなことを真顔で言われたのだ、シンで無くても動揺する。
結果シンは逃げた。
「じゃじゃあ俺仕事がありますんで」
後ろでロミナが笑っている、ひとしきり笑ったのか改めて声がかかった。
「今度は家のほうにいらして下さいね。おいしい紅茶を用意しますわ」
それに右手を上げるだけで答えるとクライン邸に向かって歩き出した。

 
 

クライン邸は小高い丘の上に建てられている、
したがって道は一本道であるため上り口に検問所が設けられているだけであった。
その検問所もすでに犯人撃墜の一報が入っているのだろう、いささか弛緩した雰囲気が漂っていた。
すでに連絡は来ていたらしく、待たされることなく居間に入るとすでにプラント最高評議長であり、
騎士団CEO、平和の歌姫ラクス・クラインは鎮座ましましていた。
シンは挨拶もそこそこに訪問の理由を述べると映像データをラクスに渡した。
ラクスは2度見返すと映像を止め、厳かに話し始めた。
「確認したいことがあります」

 

正直なところシンはラクスがもっと取り乱すと思っていた。
なにしろ恋人であるキラが討たれたのだ、さっきの凸よろしく
なぜ間に合わないだのどうして助けないだのなじられるのを覚悟していたのだが、
そんな雰囲気は微塵も無い。
「キラは間違いなく討たれたのですね」
「はい、現在捜索中ですがほぼ絶望的かと」
「で、キラを討ったものを倒したのはシン・アスカ様、あなたで間違いありませんわね」
「はい、たしかに自分が倒しました」
「そうですか」
そう言うとラクスは席を立ち、テーブルを回り込んでなぜかシンの横に座った。
驚いたシンは腰を引こうとするが、いつの間にか両手をラクスの手に包まれていた、
そのままグイと上半身をシンの方に傾けたラクスは右斜め45度の角度でシンの顔を見つめてくる。

 

ここでシンの理性は激しい警鐘を鳴らしていた。

この女はヤバイ、
世間で言われているような電波じゃない。確固たる自分の意思と力で以ってこの世界に君臨する妖女だ。
ヤバイ逃げろヤバイ逃げろヤバイ逃げろヤバイ逃げろ逃げろ逃げろ、

 

だが意識とは裏腹に体はまったく動かない、目線はいつの間にか大きく広げられた胸元と
スリットから根元までむき出しになった白い太股に釘付けになっており、
耳元で囁かれる甘い言葉が、いや蕩けるようなその声がシンの胸に熱泥のように絡まってきた。

 
 

アスカ様、いいえここはあえてシンと呼ばせて頂きます

 

 聖剣は切れてこそツルギ、朽ちて折れたツルギに如何程の価値がありましょうか

 

 貴方は折られても折られても自らを鍛え上げた真の一振り

 

 このか弱い身をどうぞ貴方の力でお守り下さい

 

 なぜなら、この身は貴方の物そして貴方は私の物

 
 

押し付けられた体が、かかる吐息が熱い

 

そして重ねられた唇は甘い甘い毒の味がした。

 
 
 
 

熱い
寒い
痛い
苦しい

 

掻き毟る
掻き毟る
この胸にある
憎悪を
悪徳を

 

思い出せ
思い出せ
あの屈辱を
あの惨めさを
あの日を
あの時を
あの瞬間を

 

そうだ
この胸にあるのは復讐の炎
この腹に宿るのは怨嗟の声
この腕を鍛えしは恩讐の技
わが魂に刻まれし慟哭の誓い

 

フフフ

 

ハハハハ

 

カカカカカ

 

さあここからだ
最後の舞台の幕が開く

 

まずは
「ひとつ」

 

そして
「ふたつ」

 
 

最後に残った
「もうひとつ」

 
 

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