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聖戦士ダンバインSEED DESTINY_02話

Last-modified: 2011-07-28 (木) 19:20:28

 オーブ、神殿上空。
 アの国の聖戦士、シン・アスカは、名乗りを上げた後にすかさずダンバインのコックピットハッチを閉じる。上空から弾き出されただけの敵は、すぐに復帰してくると考えたのだ。
 そして、その考えは正しく、コックピットハッチを閉じてすぐにダンバインをビームがかすめた。
 敵機……かつてシンの家族を皆殺しにしたのと同じモビルスーツは、ビームライフルをダンバインに向けながら、早くも戦場に戻ってきている。
 胸部辺りにオーラショットの直撃を受けていたはずだが、損傷の痕も見えていないし、動作に不調が起こっている様子もない。それを見てシンは、少しだけ緊張した様子を見せて呟く。
「オーラショットを受けて無傷か? あいつ、オーラバトラーより硬いぞ」
「大丈夫なのシン?」
 シンの肩に掴まり、同じように敵を見ているミ・フェラリオのフレイが心配そうに問う。
 それに答えてシンは、オーラソードを抜き放ちながら言った。
「でも、オーラバトラーとはやり慣れてない。あいつ、モビルスーツと撃ち合うつもりで撃ったから外したんだ。慣れる前に叩く!」
 ダンバインは一瞬で加速し、敵の機体へと突き進む。敵は距離を取るように動きながら、ビームライフルを連射した。
 その尽くが外れたが、それでも一発毎にその射線はダンバインに近寄ってくる。
「!? この短時間で慣れ始めて……」
 敵の学習能力の高さに驚きの声を上げかけ、そしてシンは背後で起こった爆発音に言葉を失った。
「後ろ! あの建物が燃えちゃってるよぉ!」
 フレイがコックピットの透けた壁にしがみつき、後ろを覗き見て叫んだ。
 ダンバインを狙って外したビームが、その背後にあった神殿に直撃したのだろう。
 神殿が消し飛んだとしてもシンにとっては興味は無かったが、その杜撰な攻撃はシンを苛立たせた。
「このモビルスーツ! 流れ弾を考えないのは全部同じかよ!」
 しかし、叫んでから気付く。
 敵機は、神殿で起こった爆発に動揺したようで、その動きを止めていた。それは一瞬の事であり、敵機はすぐにダンバインへとビームライフルを向け直す。しかし、その一瞬を逃すシンではなかった。
「そこ!」
 シンが狙うや、ワイヤークローが撃ち出され、敵機のビームライフルを絡め取る。直後、ダンバインはワイヤーを掴んで引いた。
 ビームライフルは有らぬ方向を向き、撃ち放たれたビームは何も無い空へと飛んでいく。ビームライフルはそのまま敵機の手からもぎ取られ、無為に宙を舞った。
 一方、ダンバインはワイヤーを引いた力も加えて、敵機へと一気に肉薄する。
「シン! いっちゃえええええっ!」
 フレイの歓声を聞きながら、シンはオーラソードを慎重に構える。
「これでぇ!」
 敵機は、頭部機銃を撃ち放ちながらビームサーベルを抜こうとしていた。ダンバインは、機銃弾を全てオーラバリアで弾き散らしながら敵機の懐へと入り、全力でオーラソードを振り抜く。
 鈍い衝撃が、ダンバインを揺らした。
「……な?」
 シンは、敵に与えた損害に呻く。
 敵機の装甲が色を失い、僅かに傷が刻まれた……それだけだ。
「何て硬いんだ、こいつ!」
 シンが狼狽している間に、敵機はビームサーベルを抜いていた。それが振り下ろされる前に、シンは敵機を蹴り飛ばして距離を取る。
「シン、本当に大丈夫なの!?」
「うるさいよ! 敵がちょっと硬いくらい……」
 フレイの声に怒鳴り返している間に、敵機は遠慮無く斬り込んでくる。その動きを見ながらシンは、ダンバインを動かした。
「格闘戦なら、年季が違うんだからさ!」
 バイストンウェルでの戦いは、射撃戦よりも剣を使った格闘戦が多かった。そして、それに習熟しているからこそ、射撃武器がオーラショットしかないダンバインで死線をかいくぐる事が出来たのだ。
 それに、敵機の動きを見るに、格闘戦は射撃戦ほど得意ではなさそうだ。
 大振りしてくるビームサーベルを、すんでの所で見切り、僅かな動きでかわす。
「装甲が硬いなら!」
 シンが狙ったのは、ビームサーベルを振り抜いた敵機の腕。その関節部。両手で構えたオーラソードを、関節の隙間から内部に突き立てる。
 装甲の無い、機構的にも脆弱な部分を突かれ、敵機の腕の関節部から盛大に破片と火花が散り飛ぶ。シンはオーラソードを捻るようにして内部の傷を大きくし、引き抜く。オーラソードに絡んでコードとパイプが引きずり出された。
 コードが切られて動力が途絶えたか、ビームサーベルの刀身が消え失せる。
「シン、敵の剣が消えた!」
「チャンス!」
 フレイの声に勝ちを確信し、次にオーラソードを突き立てる場所を探すシン。
 しかしその時、敵機の腰の部品が動いたと見るや、ダンバインの目前で激しい火花が散った。
「腰に何かついてるのか!?」
「シン、油断するから!」
 ダンバインを後ろに退かせながらシンは、敵機が腰から何やら撃っているのを見る。さらに敵機は、背中から砲身も出してきて、それを使って射撃を開始した。
「くそっ!」
 シンは慌ててその攻撃を回避する。腰の砲はオーラバリアで防ぎきったようだが、他の攻撃も防げるかどうかを実戦で試すつもりにはなれない。
 ビームをかいくぐるダンバインの後方、神殿及び周辺の森で、再び流れ弾による爆発が、今度は次々と連続で起こっている。
「またか! この辺には人も住んで居るんだぞ!?」
 敵機は、シンの家族を殺した奴と同じく、人を巻き込む事には頓着していないらしい。
 敵機は気にした様子もなくダンバインを狙っていたが、やがてダンバインが十分に離れた所で背を向けて逃げ出した。
「シン、あいつ逃げちゃうよ!? 追っかける!?」
 フレイが逃げていく敵機の後ろ姿を指差す。
「! ……いや、止めておこう。腕一本とったし、十分だ」
 シンは一瞬だけ追いかけてとどめを刺す事を考えたが、再び砲撃をされて被害が無駄に広がる事を考えてそれを止める。
 自分と同じ場所で同じ目に遭う人間が生まれるのは、気分的に嫌だった。身を挺してそれを防ごうというつもりもないが、逃げてくれる敵を追ってまで戦渦を広げたくもない。
「俺も、トッドの事は笑えないかな」
 シンは言いながら逃げていく敵機を見送り、ダンバインにオーラソードをしまわせた。
 トッド・ギネス。かつての戦友。彼の功績をもって、ドレイク・ルフト陛下が彼の故郷を攻めない事とした話は聞いている。
 そんなトッドにはかなわないだろうが、シンにも少しは故郷を気に留める所があったらしい。
「まあ、国民に罪はないしな。私的な闘争に巻き込まれるなんて……」
「なぁーに、一人で納得してんのよ?」
 ぶつぶつと思いを口にしていたシンに、シンの頭に抱きつくようにしながらフレイが呆れた様に聞いた。
「それより、これからどうするの?」
「これから? ああ、まずはあいつのばらまいた流れ弾の跡を調べよう。巻き添えになった人が居たら助けるくらいしてもいいだろ。で、この国の軍隊が出てきたら、後を任せて逃げる」
 簡単に決めてからシンは、敵機の流れ弾が着弾した場所を調べるべくダンバインを飛ばせた――

 

 

 森の方を先に軽く見て回ったが、幸いにも巻き込まれた民家などはなかった。とはいえ、至近距離に着弾のあった場所もあり、決して巻き添えの危険がなかったわけではない。
 一方で神殿……結婚式が開かれていたという事からしてもわかる通り、ここには人が集まっていたらしく被害はかなり大きかった。
 氏族と呼ばれる支配階級の連中だけなら、シンの心情的には放置しても欠片も心が痛まないのだが、彼らの下で働いている一般人もかなり巻き込まれている。
 シンは、燃え盛る炎の中にダンバインを踏み込ませていた。そして、瓦礫や炎に塞がれた通路の向こう……あるいは瓦礫の下に被災者を見つけては、安全な場所へと運び出していく。一応、氏族である事が明白であっても助けてはやっていた。
「これで片は付いたか?」
 概ね、救助作業を終えてからシンは呟く。
 あとは普通の消火作業でこれ以上の被害は防げる。それは、到着しつつある消防隊がやってくれる事だろう。
 これだけ時間があって軍が出動してこないのは予想外だったが、逃げた敵機を追っているのかも知れない。
「面倒になる前に逃げるか……」
 言いかけるシンに、その時、声がかけられた。
「聖戦士シン・アスカ殿!」
 凛とした強い声。それは、ダンバインの足下から聞こえてくる。
 見下ろせばそこには、ウェディングドレスを着た金髪の少女と、何処か頼りなげな風貌のタキシードを着た若い紫髪の男が立っていた。花嫁と花婿だろうという事は一瞬で察する。
「何だ!?」
 とりあえず、この騒ぎの根元であろう人間の声くらいは聞いても良いと考え、シンはコックピットハッチを開けて返事をした。
 シンの姿に驚いたのか、花嫁と花婿は困惑を表情に表して一歩退く。この世界には既に無いであろう革鎧姿に帯剣までしているのだ。その姿は異様に映る事だろう。
 それでも、花嫁の方が勇気を振り絞った様子で前に出てきた。
「助けてくれた事に感謝と礼をしたい!」
「救ったのではなく、あの機体に私怨があったからだ! 巻き込んだ事を恨まれこそすれ、礼をされる謂われはない!」
 拒む為ではなく、ただ正直に答える。
 シンがあの機体に攻撃を仕掛けたのは、私怨からでしかない。誰かを救ったとしたら、それは結果そうなったというだけだ。流れ弾でかなりの被害も出してしまっており、感謝される立場とは思えない。
「軍が戻ってくれば、俺は追われるだろう。望まない戦いは避けたいんだ。ここらで失礼させてもらう」
「ま、待て!」
 言うだけ言ってさっさとコックピットに戻ろうとするシンを、花嫁が呼び止める。
「私は……私は、カガリ・ユラ・アスハ! このオーブの代表首長だ! 私の名にかけて、誰にもお前に危害を加えさせない事を約束する!」
「何だって?」
 突然出てきた代表首長という肩書きに、シンは驚いて問い返す。
 シンの知ってるオーブの代表首長はウズミ・ナラ・アスハの筈……まあ、あの末期的な戦乱の中では何が起こってもおかしくはない。きっと討ち取られでもしたのだろう。
 生きていたなら殴り倒すくらいの事はしてやりたい相手だったが……いや、死んだと決めつけるのも早計ではある。無能をこじらせて首になった可能性だってあるだろう。どこぞの塔にでも幽閉されて、鼠の数でもかぞえていてもおかしくはない。
 ともあれ、今の代表首長が目の前のこの花嫁と言うのは驚きだった。そして、興味を持つ。今のオーブがどうなっているのか。
 ならば、少し話を聞いてみるのも悪くはないかも知れない。バイストンウェルへ召喚されてから、世界で何が起こったのかを聞く為にも。
 本当に代表首長ならば、この国での権力は絶対的な筈……先代、ウズミの頃はそうだった。その代表首長が約束したのならば、手を出してくるという事もないだろう。
「……騎上よりの無礼、失礼しました!」
 ともかく、相手が代表首長……言うなれば国王と同程度の貴人となれば、自分はアの国の聖戦士として無礼な振る舞いは出来ない。
 シンはそう判断して、ダンバインのコックピットから地面に下りた。そして、神殿の石畳の上に片膝をつき、聖戦士として恥ずかしくない礼を取る。
「アの国が聖戦士シン・アスカ。貴国で剣を抜いた事をお詫びいたします」
「あ、ああ、詫びる必要はない。それに楽に話してくれて良い」
 こういった時代錯誤な礼には慣れていないカガリは思わず後ずさる。と……その時、
「貴方、近寄っちゃダメ! 毒牙にかかるわよ!」
「え?」
 コックピットからフレイが飛び降りてきて、カガリの前でわめき立てた。
「おい、フレイ」
 嫌な予感がしてシンがフレイを止めようと立ち上がる。だが、フレイは止められる前に一気に言葉を並べ立てていた。
「いい? このシンって男はね。近寄った女の子には必ず、エッチな事をするんだから! 私だって、始めて会った時には押し倒されて胸を……」
「おい、あれは事故だろっ!?」
「事ぃ〜故〜? 出会う女の子に片っ端から事故を起こしてるじゃない!」
 この調子では、有る事有る事全部ぶちまけられると、シンは急いでフレイを捕まえた。
「黙ってくれよフレイ! 代表首長……ええっと、女王様相手だぞ!」
「あ、やだ! シンったら、そんなとこ触っちゃ……」
 両の手で包み込む様にして捕まえられているフレイが手の中で何やら言っているが、シンはそれを無視してカガリに気まずげな顔を向ける。
「すいません。フレイの言う事は……」
「妖……精……?」
 カガリは驚愕に目を見開き、フレイをじっと注視していた。フレイの言葉は、聞いていなかった様だ。
 カガリの側にいる花婿もフレイには驚いた様子で、目を丸くして興味深げにフレイに見入っている。ぽつりと「もえ」とか言ったように聞こえたが、シンはとにかく聞かなかった事にした。
「妖精か。ミ・フェラリオを見た事はないだろうからな……でもコモン界にいるミ・フェラリオは、妖精で想像するような綺麗なもんじゃないから、がっかりするかも」
 ともあれ、妖精だというカガリの言葉に、一言述べておく。
 これが、フェラリオだけが住まう天上の海の世界、ウォ・ランドンに住んでいるミ・フェラリオなら別なのだろうが……
 コモン……バイストンウェルでの、人間に似た種族。彼等の住まう世界であるコモン界に暮らしているミ・フェラリオは、無論個人差と言う物もあるが、コモンから色々と影響を受けるからか低俗な者が決して少なくない。
「何よ、私が汚いみたいじゃない!」
 シンが思うに『コモンの垢にすっかりまみれたミ・フェラリオ』であるフレイが、シンの手の中から苦情を叫んでいた。
 シンは大きく溜息をついてフレイに言い聞かせようとする。
「そうは言わないけどさ。お前、お上品には遠いじゃないか。そんな口、女王様の前できいていると……」
「凄い!」
 シンの言葉を遮ったのは、カガリの歓声だった。
「ロボットとか、そんなのじゃないよな!? あのお前の乗ってたモビルスーツと言い、この妖精と言い、お前、いったい何なんだ!?」
 言いながら、好奇心と興奮で目をキラキラさせながら、カガリはシンに迫ってくる。
 どうも、かなり子供っぽく直情的な性格らしい。代表首長という地位にあって、こんな性格で良いのかと、シンにとっては他国の事ながら心配になる。
「いや、ちょっと落ち着いてくれ」
「出られたぁ!」
 迫ってくるカガリを押し止めようと、シンは手を開く。すると、その手の中からフレイが逃げ出して宙へ飛び上がった。
「あっ、待ってくれ!」
 カガリはとっさに、フレイを追って手を伸ばす。その足下、ドレスの裾が足に絡まる。
「あっ……」
 足がガクリと止まる感覚に足元を見るも既に遅く、カガリの身体は倒れ始めていた。シンの居る方向へ向かって。
「おい、ちょっ――うわっ!?」
 カガリを支えようとしたシンは、倒れるカガリに押されるままに後ろへと倒れ込んだ。
 ――革鎧と兜が、転倒の衝撃を吸収してくれた。それでも一瞬、意識は混濁する。
 シンは無意識に、自分の上に乗っかっている重い物をどかそうとした。直後、手に柔らかな感触が――
「シンのエッチぃ!!」
 フレイの声で、意識が一気に覚醒する。そしてシンは見た。呆然とした様子のカガリ……その胸を押し上げる様にして、カガリの身体を支える自分の手。
 カガリの顔が、次第に羞恥の赤に染まっていく。
「な、お、お前……」
「やっぱり、女の子見るとエッチな事するぅ!」
 シンの頭の側に下りてきていたフレイが、再び非難の声を上げた。
「す、すまない」
「い……いや、いい。私が悪かったんだ」
 とっさに謝るシンの前で、カガリの顔が完全に赤くなる。そしてカガリは、シンから顔を背けて小さく呟いた。
「いいから……手を放してくれ」
「あっ!?」
 シンの手は、まだカガリの胸に添えられている。それに気付いて、シンは慌ててその手を放した。
「うわっ」
 支えを失い、カガリの身体がシンの上に降ってくる。
「馬鹿! 急に放すな……」
 シンの上に身体を重ね、カガリは苦情を言った。そして、自ら身を起こそうとして、僅かに苦痛の表情を浮かべる。
「つ……転んだ時に足を捻ったみたいだ」
「大丈夫かい? カガリ」
 花婿がすかさず助けに入り、カガリを後ろから抱きかかえるようにして助け起こす。
「……すまない、ユウナ」
「これくらいは未来の夫にやらせてよ。それに、花嫁が別の男と、地面で揉み合ってる所を見せられちゃあ、嫉妬しないわけにもいかないでしょ?」
 花婿はそう冗談めかして言う。それから、重しになっていたカガリが居なくなって自ら立ち上がったシンに向かって、花婿は更に言葉を続けた。
「聖戦士殿。立ち話も何だし、場所を移さないか? それにその……君が乗ってきた物も、隠した方が良いだろ?」
 確かに……この世界のモビルスーツと比して規格外であるオーラバトラーを、衆目に晒しておくのはよろしくない。変に耳目を集めても困る。
 その気配りをしてみせるあたり、この花婿は有能なのだろうとシンは考えた。
「そう……だな。それと……」
 答え、そして言い淀んでからシンは言葉をつなげる。
「すまない。間男を演じる気は無かったんだ」
「わかっているよ」
 花婿は鷹揚に両の手を開いて謝罪を受け止める。それから花婿は少し真面目な表情を作って深々と一礼した。
「僕はユウナ・ロマ・セイラン。カガリ・ユラ・アスハの婚約者で、今日の結婚式をぶち壊しにされた男だ。僕からも君を歓迎させて貰うよ。アの国の聖戦士殿と妖精のレディ。オーブへようこそと――」

 
 

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