Top > 赤い翼のデモンベイン02
HTML convert time to 0.011 sec.


赤い翼のデモンベイン02

Last-modified: 2013-12-22 (日) 19:51:39

 アークエンジェルに帰還したフレイたちは、彼等を待っていた人々にもみくちゃにされた。

 いや、キラはさりげなく小突かれていたように見える。

 ベルデュラボーが格納庫に現れるとクルーは道を開けた。

「見事だったよフレイ・アルスター。素晴らしいものを魅せてもらった」

 彼の両頬には涙の後が残っていた、意外と涙もろいらしい。

「ありがとうございましたベルデュラボーさん。

 おかげでこうしてキラをもう一度捕まえられました」

 僕は捕獲動物の扱いだったのかな……

 キラは心の中で涙をぼろぼろ流していた、きっと感動の涙だ、そうに違いない。



「なに、エセルは君の手助けをしただけ、君の心がキラ君を捉えたんだ。」

「そうですね、文句言うばかりで苛々させられましたし、」

「ふざけないで下さい! この■■」

 フレイの発言に一瞬にして怒りが沸騰したのか、放送禁止用語を助けた人間に浴びせるエセルドレーダ、女同士の戦いになると品格が薄れるようだ。



「あははは、エセルドレーダとそんなに仲良くなってしまうとは驚きだ。

 彼女は普段は気難しいのだけど」

「マスター!? フレイ・アルスターと仲が良いなどとあんまりです」

「そうよ、こんな虫食いの古本とハイティーンの少女が仲が良い訳ないでしょ」

「20年も生きていない小娘が!」

「なによ2000歳以上の老婆が!」



 どこかの鼠と猫のようににらみ合う二人。

 格納庫は暖かい雰囲気に包まれた。



 現在戦況は、全勢力がフリーダムの無差別大暴れによって大混乱に陥った後、フリーダムが沈静化したので、皆次をどうしようか考えあぐねているようだ。



 ドミニオンに居るナタルから連絡が入り、次の行動を一緒に考えようとした瞬間。



 ズズーンとアークエンジェルが大きく揺れた。



 おかしい、アークエンジェルを狙える位置にある機体は……フリーダムしかいない。

 だがパイロットも無しに動くとは思えない。

 通信を試みるも相手はいない。無人のモビルスーツが動くという現象に誰も答えを出すことができなかった。



 CICのチャンドラが驚きの声を上げる。

「あれを、フリーダムの頭の上を見てくれ!」



 そこにはローブのような衣をまとい、決して開くことの無い目を持った盲目の導師が、フリーダムの頭頂部に生身で平然と立っていた。



「マルキオ導師!!!」



 キラの驚愕の声が格納庫に響いた───

「息災ですか、キラ君?

 あなたはSEEDを持つもの、体は労わって下さい」

「マルキオ導師、あなたがあのフリーダムをおかしくしたんですか?

 ラクスを唆したのも、たった一日で僕をプラントまで運んだのも?」

「それは勘ぐりすぎです。私はラクス・クラインにはSEEDを持つ者が存在すると言い続けただけ、そう、人類を導けとか、次なる人類の扉を開くなどということは、ただの一度も言ったことはありません。全て彼女が勝手に解釈して行動したに過ぎません。

 プラントにすぐに来れたのは単純にコネクションです。優秀なジャンク屋や、独自の情報網を私は持っているのです。ただ───」

 マルキオの姿が崩れていく、人の姿から黒い闇が蠢く何かに変貌する。

 眉間に人のモノではない瞳が開き、全身からは人間の心を鷲掴みするような暗い瘴気が放たれる。

「フリーダムを造ったユーリ・アマルフィにちょっとだけ技術を与えたり、

 僕がそれを量子コンピュータに組み込むように囁いたことは認めよう」

 優しげなのに毒の花のような女の声音でソレは白状した。



「ナイアルラトホルテトラップ、這い寄る混沌!

 人を深淵の闇に引きずり込む悪魔、

 盲目にして痴愚なる、アザトースを開放せんとする邪神!

 やはり最初から貴様が暗躍していたのか!?」

 ベルデュラボーが見たことはクルーが見たことが無い程激昂し、ソレに吐き捨てる。

「最初から? それはいつかな?

 フリーダムのことかな? それともユニウスセブンに核攻撃をするよう進言したこと?

 それとも───

 ジョージ・グレンに新たなる人類が現れると予言したことかな?」

 その悪魔の声は宙域全ての人間の耳に直接響き、全ての人々が驚愕に息を飲んだ。



「じゃあ、じゃあ貴方が全てを仕組んだんですか?

 この世界も、コーディネイターブームも、ユニウスの悲劇も、

 フリーダムの暴走も!?」

「仕組んだとは酷い誤解だよキラ君。

 私はちょっとだけ囁いたり、ボヤを起こしてみたり、小さい種火に風を送ったりした

 だけのこと。全ては自分達で実らせた人災だ、因果応報だよ。

 世界をこんな泥沼にしたのは君達自身だ。

 僕はね、そんな自分で自分達の首を絞めるような人間の在り方が好きで

 好きでたまらないんだ、ああなんて美しいんだろう人間とは」



 ここにいたり、いい加減長口上に切れたフレイが行動を起こす。

「いくわよ、エセルドレーダ、とりあえずあの化け物を叩きのめせば、当面の元凶は消える。

 ZAFTも許せないけど、アレはもっと腹立たしいわ」

「待て、フレイ・アルスターあれは僕の獲物、いや仇だ」

 出撃しようとするフレイを押しとどめたベルデュラボーの表情は、もはやいつもの柔和な顔は微塵も感じられず、決死の覚悟を窺わせた。



「今回のそのフリーダムは如何なる趣向の催しなのだ、ナイアルラトホルテトラップ

 いやマルキオ」

「コレのことかい?

 彼の魔を断つ剣を覚えているだろう、忘れられるわけがない。

 あれは彼等を正の象徴、究極の善に引き上げるために用意された人形だ。

 あそこの僕は君や彼を育てたように、人物に着目して、アザトースの庭に至る鍵にしようと考えたみたいだ。

 ここの私は人物ではなく、あのジャンクの成果に着目して、機械で造られた人の写し身、モビルスーツを育て上げ、なにかの役に立たせられないかと考えたのです。」



「フリーダムが勝手に動き回る理由は、量子コンピュータに搭載された擬似人格。

”キラ・ヒビキ”がフリーダムに乗っている時のキラ・ヤマトの行動を模倣し、学習した結果です。詳しい中身は”王道ではない物語”の小説のエリカ奥様のアストレイ製作秘話を参照してください、意味が分からない? いえいえ向こう側へのお話です」

「けどコレは試作品でしかないからねぇ、まあ暴れまわるだけの出来損無いだよ。

 だが最初の実験としては上々だ。幾度か繰り返せば、いずれアレや君のリベルレギスを上回るような存在を作り出せるだろう。

 それから舞台の脚本作りに入るわけだ。気の長い話だけど僕にとっては瞬く間の話。

 実験場にされたここの世界は気の毒だけど、まあ精々足掻いてくれると愉快だね」



「キラ・ヒビキ、本来の僕の名前───

 じゃあ僕はそのフリーダムを、擬似人格を育てるためだけの存在だったの?」

 キラがマルキオに問う。しかし答えを貰う前にフレイの平手打ちがキラに炸裂した。

「いい加減にしなさいよキラ!

 自分を操っていた敵に自分の意味を決めてもらってどうするのよ!?

 あなたがそんなフラフラしてるから、あのフリーダムだって暴れるだけの能無しになっちゃったんでしょうが!」

 修羅の剣幕で説教するフレイ。



 あうあうと頷くキラ、もうフレイに操られる人形になっている。

 ようやくキラは自分は徹底的に受動な人間で、自分をよりよく生かしてくれる人についていくのが自分の人生だと受け入れた。

 この緊迫した状況の中、夫婦漫才をしている二人を眺める少年兵、サイとカズイ。

「なあサイ、お前フレイの婚約者だったよな」

「ああ」

「この戦争がなければ、結婚してたかもしれないんだよな?」

「ああ」

「彼女綺麗だな」

「ああ」

「女はおっかないな」

「ああ」

「その、婚約破談になったけど落ち込むなよ」

「ああ!」

「とりあえずアークエンジェルの応急修理を手伝おう」

「ああ頑張ろうなカズイ」



「要点は分かった。貴様を滅し去り、この世界から邪神共の干渉を断つ。

 僕たちがこの世界に流れ着いたのはこのためだったらしい」

 かつて無限螺旋が始まったとき、未だマスターテリオンが磨耗する前の心と、

 人の希望を備えていた時の瞳で邪神を睨み返した。



「へえ、君が───

 大導師マスターテリオンだった君が───

 正義の味方になるつもりかい?」

「勘違いするな、あのような貧乏探偵など御免だ。

 単に貴様に借りを返す、ただそれだけだ。」



 邪神はおかしそうに、憐れみをたたえて、ドンキホーテを哂うように言った

「無理さ、君では無理だ。外道の魔術では外道の窮極たる邪神を倒せはしない。

 眷属くらいなら、はたまたダンウィッチの怪くらいならどうとでもなる。

 けれど───まあ口で言っても止まる筈はないか。

 ならば殺し合おう、憎み合おう、犯し合おう、侵し合おう、愛し合おう。

 この狂気の果てを存分に楽しもうじゃないか人間!」



「無理かどうかはいつも終わってから判るものだ。

 この世界の貴様にもそれを刻み付けてくれよう」

 ナコト写本を纏い、真空の海へ飛び出していくベルデュラボー。



「マリュー艦長、おこがましいお願いですけど、僕も、僕も戦わせてください!」

「キラ君……でもあなたの機体は」

「私のを使え」

 横槍を入れてきたのはキラの姉、カガリ・ユラ・アスハだった。

「ストライクルージュが現地改修されてアークエンジェルにある。

 私が使いたくなか、使えなかった代物だ。

 マードック軍曹やサイの自信作だ。

 きっとお前なら使いこなせる」

「カガリ、皆、ありがとう。

 フレイ、僕は……んむ」

 何か言い終える前にキラの唇はフレイの唇に塞がれてしまった。



「いってらっしゃいキラ、必ずアイツを倒して。

 そして、ここにアークエンジェルに還って来て、絶対によ」

「フレイ───

 行って来るよ、必ず君のところに帰ってくる」

 しばし見詰め合うと、キラはストライクルージュの元へ駆けて行った。

 二人の愛はうなぎ登りだった。それを見ていた作業員やクルーの士気は一気に下降していった。見せ付けやがって、やってらんねえ。



「ちょっと、坊主が戦うってのにオレの機体は?

 最後の戦いでオレ除け者って、そりゃないでしょ」

「むちゃ言わないで下さいよ大尉、ラウ・ル・クルーゼと刺し違えたのは大尉のせいでしょうが、

 あそこまでイカれちまったら、応急処置どころじゃないですよ」

「なんでもいいんだ、オレはまだ戦える」

「冗談言わんで下さい、ストライクと一緒に結構な傷負って、痛み止めで誤魔化してるから

 絶対乗せるなって、医務室から報告上がってるんですから」

「メビウスゼロがあるだろうが!」

「あのガンバレルじゃフェイズシフト装甲を貫けませんよ、弾除けにしかなりません。

 むしろ他の面子が気にして足手まといです!」

「なんでもいいんだよ、敵を傷つけられないってんなら、ガンバレルにシールドでも付けて

 移動防壁にでもしちまえ」

「それこそ無茶苦茶です。自重してください大尉、内輪話ですが、もしも大尉が死んだりしたらマリュー艦長は骨抜きになっちまいます。そしたらアークエンジェルが沈む。

 大尉はCICでモビルスーツに指示を出してください」

「くそ、こんな大事な時に───」

 ムウはマードックの説得にしぶしぶ折れ、力なくブリッジへ上がっていった。

「とは言え、頼みは頼みだ。ルージュの換装は必要ないだろうし、シールド、付けてみるか」

 マードックの視線の先には埃を被ったメビウスゼロが静かに眠っている。



 ヴェザリウス艦内において、喧々諤々のブリーフィングが行われていた。

「あのフリーダムのせいで我が軍の被害は甚大、だが、どうやら暴走したらしく

 敵オーブ連合同盟軍の被害もまた大きい。敵軍はまずフリーダムを仕留めてから、いや仕留めることしか考えていないか───」

 アスラン・ザラは最新機ジャスティスを受領し、現在同盟軍との前線の最高責任者として

 活動していた。

「俺たちの敵は連合だろ、構わず連合を叩けばいいのさ」

 バスターを擁するディアッカが楽観的な意見を述べる。

「オレも同意見だ。連中の仲間割れなど放っておいて、連合を討つべきだろう。なにを迷っているアスラン!」

 焚きつけるのは同じくGATシリーズのデュエルを駆るイザーク。

「では、あのフリーダムは眼中に無いというのだな、ソレでいいと本当に思っているのか」

 アスランは作戦室全員の顔を見渡す。

 そこには、納得しきれていない顔ばかりだ。当然だろうフリーダムの戦闘力は兄弟機であるジャスティスと比べても、比べようがないほど異常だ。

 比喩抜きで瞬きする間に、射程外から四肢をもぎられ、戦艦を沈めてしまう。

 近づくことすらできず、数十機単位でモビルスーツを無力化するフリーダムは、次元違いだった。とても同じ工廠で製作されたザフト製モビルスーツとは思えない。

 そう悪魔の加護を持っているとしか思えなかった。



「さっきからの、あの会話が聞こえなかった者は手を挙げてみろ」

 全員陰鬱そうに手を下げたままだった。

「全員同意見のようだな。オレも自分が夢でも見ているのかと信じられないくらいだ。

 あのフリーダムには人間外の存在が関与していて、それはこの宇宙全ての人類に対して敵対的な存在であるというコトだ。先ほど報告が来たが、フリーダム、ジャスティスの開発責任者のユーリ・アマルフィ氏は手記を残し、エアロックから生身で飛び出し、自殺した」

「転送された手記の中身を要約すると、

 『悪魔に囁かれた。フリーダムに人知を超える、科学でないものをインストールしてしまった。 世界が侵されて行く、もう私の理性は持ちそうに無い。

 世界の全てに許しを乞う。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな』」

「こんな内容の文章がびっしりと書き込まれ、最後の方は自分の血液で綴ってあったそうだ」

 アスランは再び全員の顔を見渡した。

「我々ZAFTの今回の戦争目的は独立である。

 軍事面において優位にたちあわよくば連合本部を降伏させ、独立を勝ち取るのが目的だ。

 しかし、敵のダガータイプの生産により、当初の目的は困難になった。

 しかもNJキャンセラーの流出より、敵は核ミサイルや、核動力機の使用さえ可能になった。

 ナチュラルは強い。物量は圧倒的だ。地球降下した部隊は蹴散らされ、地球のZAFT勢力は一掃されている。

 端的に言おう。ZAFTは現在負け続きで押し込まれている。

 この言葉が理解できない者はいるか?」

 全員がうつむき、悔しさと恥辱に震えている、イザークなどは歯が砕けたのではないだろうか。

 コーディネイターの高い知性が、精神論に傾くことを許さない。

 彼等は自分達が敗北しつつあることを認めるほかないのだ。

「今も、プラント議会と連合首脳部との水面下の交渉は進んでいる。

 だが今回の一件で戦争そのものが停戦になるかもしれない。

 みんなの意見を知りたい。我々はフリーダムを同盟軍と共に撃破し、一時的にこの戦場で停戦するべきか、フリーダムと同盟軍との漁夫の利を狙うのか」

 アスランの言葉に皆口を噤んだ。一介の兵士にはその選択は重すぎた。

 だがZAFTは民兵組織であり、前線にいるアスラン達には幸か不幸か政治に携われる生まれなのだ。



「オレの意見を言わせて貰おう。オレは母親を殺したブルーコスモスの連中が憎い。

 だが、それ以上にプラントを守りたい。あのフリーダムが同盟軍を撃破したとして、

 我々だけの戦力でフリーダムを打倒できるだろうか?

 オレは出来ないと思う。むしろ同盟軍にZAFTの戦力を併せたとしても、確実に破壊できるか怪しいという認識を持っている。

 一度戦争を停戦に持っていき、外交戦略をもって独立を果す。

 あるいはこんな泥沼の戦局ではなく、仕切り直しを行い、勝てる戦略を立て直した上で再度宣戦布告すべきだというのがオレの個人的な意見だ」

 ぐるりと見渡しても他の意見は出そうになかった。

 平時なら確実に反対意見が出る。だがあの神懸り的な暗黒はZAFTの面々に深い恐怖を与えていた。



 ドミニオンブリッジにて、ZAFTの共闘願いが出たときアズラエルの顔は百面相だった。

「これはこれは、とんでもないものが舞い込んで着ましたね。

 さてこれは判断に困ってしまう。艦長率直に言ってあのフリーダムはZAFTの援軍無しで倒せますかね?」

「アズラエル理事は、歩兵が戦車にかなうとお思いですか?」

「やりようによるでしょう」

「歩兵の武装が小銃のみで、数だけを頼みに戦うとすれば?」

「弾切れするまで攻撃します、あるいは燃料切れを待ちますね」

「弾切れと燃料切れが無い戦車でしたら?」

 アズラエルは沈黙した。

「大きい爆弾で吹き飛ばすというのはどうです?ありますよねえ、いいものが」

「良い案だと思いますが、それではプラント攻略戦に支障を来たします。

 またその爆弾で破壊できなかった場合、やはり勝率を引き上げるには数を増やす他ありません」

 アズラエルは30秒ほど瞑目すると。

「今回の戦争でコーディネイターを絶滅させるのは無理ですね、ここは被害が少ないうちに手を

 打つことにします。奴等を滅ぼすのは別な方法か、新しい戦争に望みを賭けましょう」

 ビジネスマンの顔でそう答えた。

「艦長、受理すると返答してください、まずピースメーカー隊を出撃させてフリーダムに核攻撃を。

 あと生体CPUを出撃させてアークエンジェルの援護に回してください」

「了解いたしました、理事」

 ナタルは快活に答えると、アズラエルの望み通り指示を下し始めた。





 キラは自分のほっぺたをつねってみた。

 痛かった、悪夢の続きではないらしい。

 キラの目の前にはカガリから借りる予定のストライクルージュがある。筈だった。

 彼の目の前にあるのは頭、胴、足は変わらないストライク本体、そして右手にドリル。

 左手にグローブらしき馬鹿でかい拳をはめた、冗談みたいなストライクが居た。



挿入歌「あんなに一緒だったのに」



「そんなのってないよ……

 そ、そうだ」

 キラは内線を引っつかむと、

「マードックさん冗談でしょ?

 ムウさんのストライクの腕をつけてくださいよ、こんなのあんまりだ」

「なにか問題あるのか坊主? カッコイイし凄く強いんだぞ、

 それとストライクは予備も使い切ったし、代わりはない、そのまま出撃してくれ。

 何が不満なんだ」

「腕です!」

「ああ新兵器だな、あれは連合の鬼才ドクターウエストという人物が設計図を送ってくれたのを基に改修したんだ。右手はあらゆる装甲を打ち貫くヴァリアブルフェイズシフトドリルだ、穿孔のドリルジェノサイダーと叫ばないと回転しない。

 左手にはええと埋葬の価値無いとかいう強力なビームキャノンになってる。

 で、その左手の上にドクターウエスト博士が絶賛した、トール発案のロケットパンチが被さっている。一種の高振動粉砕装置になっていて、フェイズシフトが相手でも中身をミートソースやガラクタに変えてしまう恐ろしい武器だ。左手の二つの機構を合わせてサイボーグタオパイパイシステムというらしい」

「いやだぁーーー」

「キラ! また我が儘言ってるの、強いんだからさっさと乗って片付けてきなさい!

 それともまた引っ叩かれたいの?」

「キラ・ヤマト搭乗します!」

 鶴の一声こと、フレイの掛け声で一目散に乗り込むキラ。

 さっきまでフリーダムに搭乗して、脅威をばらまいていた人物には見えない。



 泣きながらシステムを起動するキラ。またヘンなものに気づいた自分を許してあげたい。

 本来GUNDAMとイニシャルの出る場面で。

 WESTROBOと出た瞬間、キラは何もかも忘れて眠りたくなった。



「キラ・ヤマト、ストライク発進します。武装はランチャーストライカーを」

 ミリアリアが見送ってくれる発進は久しぶりだ、少しだけキラは慰められた。

『了解、ストライク発進します、武装はドラムストライカー』

「なんだよそれ、そんなヘンなもの付けないでよ」

 無情にも怪しげなランドセルっぽいバックパックと、両肩にミサイルポッドが装着される。

 キラは自分がこの戦いで死ぬことを覚悟した。

 駄目だ、僕は帰ってこれない。

『ドラムストライク発進どうぞ』

 カタパルトのGを感じながら、キラはどうしてこんなことになったのかと、ヘリオポリスからの思い出を噛み締めながら出撃した。



続く───









】【戻る】【