Top > 戦後シン×ミーア_PHASE12
HTML convert time to 0.005 sec.


戦後シン×ミーア_PHASE12

Last-modified: 2008-04-27 (日) 18:40:57

ミーアは突然の展開に訳が分からなくなっていた。
昼間は昼間でディアッカがアスランが自分を迎えに来ようとしていると知らされ、何も
知らない筈のシンが突然暗闇の中ミーアの体を強く抱き締めて、まるで事情を知ってい
るような事を言う。

 

胸から腰の辺りが宙に浮き、足はまだ力が上手く入らないため、体を支える事が出来な
いミーアは不安にしっかりとシンにしがみ付く。

 
 

「あ、あのっ!」

 
 

昼間にディアッカにシンの事を尋ねられたミーアとしては、この展開に心臓がどくどく
と強く高鳴る。
しっかりと抱き締め合っている為、この脈動はシンに伝わっているのだろうと思うと
更に恥ずかしくなる。

 

「シン・・・あの、怖い・・・」

 

とりあえずこの状況をどうにかしなければとミーアがシンに伝えるが、シンは暫くその
ままずっとミーアを抱き締めていた。
ミーアの言葉から暫くして漸く気が済んだのか、シンがミーアの体をベッドに戻すが、
頬を重ね合わせたまま口を開いた。

 

「静かに。この距離だったら誰にも聴かれない」

 

頬以外の体が離れ、ミーアは背に回していた手を肩まで移動させると、次の言葉を待つ。

 

「・・・・・・・アスランが、迎えに来るって・・・・・?」
「・・・・どう・・・して?」

 
 

ミーアもまた息を潜めて小さく応えると、シンは事実なのだとぎゅっと瞳を閉じると
しっかりとミーアの肩を抱く。

 

「行かせない」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!」

 
 
 

熱く囁かれた言葉に、耳に触れる吐息。
心をくすぐるその熱さにミーアは一気に恥ずかしくなってシンの胸を押しながら悲鳴の
ような声を上げた。

 
 

まるで愛の告白のようで。

 
 

「・・・・ミーア?」

 

不思議そうなシンの様子に、恥ずかしく思っているのは自分だけなのだろうかとミーア
は火照った頬を両手で隠す。
昼間ディアッカに言われた言葉を思い出す。

 
 
 

シンが・・・・・・好き?

 
 
 

一気に体中の熱が高まり、じんわりと汗を掻く。
戸惑いがちに見下ろすシンの真っ直ぐな瞳がミーアの心を大きく揺さぶる。

 

何かを言わなければ間が持たず、ミーアは動揺にうろうろと視線を彷徨わせてから、
笑いながら口を開いた。

 

「や、やだっ!シンってば・・・・!告白みたい!」

 

直球過ぎた。

 

パニックを誤魔化そうとすると、かえって正直に言ってしまった事にミーアは後悔して
いると、シンがきょとんとした表情から眉根を寄せた恥ずかしそうな表情に変わり、
ミーアはその変化に自分が期待している事を感じ取っていた。

 
 

次に、シンは僅かに頬を膨らませた。

 
 
 

「・・・・・・・・悪いか」

 
 
 

時が止まった気がした。

 

反応に困った。

 

いや、嬉しいと思うのだ。
嬉しいが、今ひとつ自分の気持ちが定まっていなくて、何を口にすればいいのかも分か
らなかった。

 

ただ、恥ずかしい。
そして、不安で。

 

「何で泣くんだよ」
「ごめんね!・・・・わかんない!恥ずかしい!嬉しい!」

 

手で涙を拭おうとすると、シンが手探りで取り出したタオルを差し出してきたので
ミーアはそれを借りて顔全体を覆う。

 

「俺、あんたの歌、地球で聴いた事がある。皆の前じゃなくて、金網の向こうに向かって
唄ってる、歌」

 

皆に媚を売ったような歌じゃなくて、優しく語り掛ける歌。

 

「護衛が居たから遠くからだったけど、アンタは金網の向こうからアンタを見てる
ナチュラルに唄ってた。その歌が、いいなと思った」

 

「そ、それ以上言わないで!」
「何で?」
「だって、あれは!」

 
 

ミーアにとっては深い意味などない行為だったのだ。
ただ、小さな子供が自分に向かってキラキラとした瞳で見つめていたから。

 

ラクスの格好をしたミーアがお姫様のように子供達に映ったのだろう。

 

それが、嬉しくて。
自分が昔ラクスに向けていた視線と同じモノを向けられている。
子供は周りに兵士がいるのにも恐れず、金網から腕を伸ばして小さな花を差し出して
くれていた。

 

それを受け取る事は護衛から止められたから、お詫びと、そして自分だったら此処で
唄って欲しいと思うだろうからという軽い気持ちで少しだけ、唄ったのだ。

 

「・・・・・・だから、今回の護衛の仕事を請けた。ミーアに会ったら・・・好きになった」

 

淡々とした告白に、ミーアはタオルの隙間からシンの様子を見ると、シンはじっと
ミーアを見つめたまま、少し憮然とした表情で語っていた。

 

その表情が少し怖くて、ミーアはシンに手を伸ばす。
指先を触れ合わせ、最初は爪の先を撫でていたのだが、シンが全く反応を示さないので
ミーアの方から指を絡め、軽く握る。

 

「・・・・・なに?」
「うぅん・・・。あ、あの。・・・・・・・あたし」

 

昼間ディアッカに色んな事を言われて。
そして今、シンに突然告白されて。

 

何かに操られているような気もして。

 
 

ミーアはそれ以上を口に出来なかった。

 
 
 

口にするにはまだこの気持ちは育って居なくて。
更には、自分は幸せになってはいけないのだと思うから。
でも、確かにシンに対する気持ちがあるから。

 
 

言葉にしない代わりにシンと絡めた指を振って揺らし、きつく指を絡めて、最後には
しっかりと握り合った。

 
 
 
 

あたし、すぐに死んじゃうかもしれないんだよ・・・・・・・・?

 

シンを裏切っちゃうかもしれないんだよ・・・・・・・?

 
 
 
 

胸の奥にある言葉を口にする事は出来ない。
何も無かった日常から、突然色んな事が起こり過ぎて何から考えればいいのか分からない。

 

でも、今の気持ちは伝えたい。

 

体を起こそうとシンと触れ合っていない方の肘を立てると、シンが察してミーアの上体
を起こしてくれた。
絡め合った指を引き、シンにベッドに腰掛けるように促すと、言葉にしなくともシンは
ミーアの気持ちに応えてベッドに腰掛けた。

 

いつもよりシンが腰掛けた位置が近くて、呼吸のタイミングさえ分かりそうだった。

 

ミーアはシンと絡めていた指を放し、彼の肘を捕まえて引き寄せると頬に口付けた。

 
 
 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだよそれ」
「え?」

 
 
 
 

離れない内に逆にシンに腕を取られて引き寄せられる。

 

ぶつかり合った唇の向こうの歯にも当たって、軽い振動で痛かった。

 

押し潰されそうな、キス。

 

ただ、触れ合わせた、キス。

 
 

深く口付けるには二人の経験が浅くて、どうしたらいいのかも分からなくて。

 
 

いつ、離れればいいのかも、いつ息をすればいいのかもわからない、キス。

 

息苦しさにミーアの方からシンの胸を押して離れると、二人ともその瞬間に深く息を
吐き出した。
気まずくて互いに上目遣いに見つめ合うと、どちらからともなく、もう一度指を絡め
あって握り合うと、シンがミーアの体を気遣い、覆い被さるように口付けた。

 
 
 

死ぬ覚悟を決めたなら、こんな事しちゃいけないのに・・・・・・・。

 
 
 
 

しかし、愛される事がこんなにも幸せに感じるのだと知ってしまったばかりの少女に、
自制心など利く筈がなかった。

 

それだけ彼女は普通の女の子だった。

 
 
 

「絶対に、アスランには。・・・・オーブには渡さない」

 
 
 
 

二度目のキスの後に小さく、そして凄味を持って呟いたシンの言葉に、ミーアは罪悪感
のような物を感じていた。

 
 
 

ミーアは、迷っていた。