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潜入

Last-modified: 2008-07-05 (土) 18:46:49

 アメノミハシラ。ステーション内部の貨物室で、ダイアモンドテクノロジー社のマーク
が入った段ボール箱が持ち上がった。フルフェイスタイプのスニーキングスーツを着た人
物が這い出し、しゃがみ歩きで部屋の隅のエアフィルターに忍び寄る。
 手首の辺りから抜き出したケーブルを傍の床に差し込み、数秒するとフィルターが枠ご
と外れ、ぽっかりと開いた口の中に匍匐前進で潜り込んだ。

 

「こちらデルタ4、換気ダクト内への潜入に成功した」
『空調システムはハッキング済みだ。経路は確保してある。道なりに進んでくれ』

 

 モノアイが緑色に光って壁面を照らす。匍匐姿勢のまま、暗い内部を進んでいった。

 

『良いかいデルタ4。サハク司令官がシャワーを浴び終えるまで、後およそ5分だ。タオ
ルを手に取る前に、完璧な映像を入手しなければ意味が無い』
「解っている。しかし万一発覚すれば、これはミハシラに対する重大な裏切りだな」

 

 イヤホン越しに、唾を飲み込む音が聞こえた。

 

『……それでも知らなくちゃいけない。アズラエルを名乗る少女と司令官、どちらが……』
「それより、エコー7が全く姿を見せないのはどういう事だ?……むっ」

 

 ダクト内を曲がった先で、動きを止める。スリットの入った蓋から、光と水蒸気が漏れ
ていた。シャワーの水音も聞こえる。安定した重力ブロックならではの贅沢だ。

 

「シャワールームの真上まで来たようだ」
『良いぞ!スネークカムと指向性マイクを使うんだ!』

 

 身体を転がして背中を壁面に押し当て、ウェストポーチから機材を取り出す。マイクを
カメラ部分に取り付け、ワイヤーを掴み少しずつダクトへと近づけていく。そして、
ポーチに設置されたコントローラーに触れると、手を離したワイヤーが蛇のように鎌首を
もたげた。細心の注意を払い、スリットの間にカメラを滑り込ませる。

 

『どうなんだ!サハク司令官の……!』
「慌てるな、今音声も入って来……なにっ!?」

 

 手元の小型モニターに映った人物は2人。背中を向けたミナと、左腕で丁度胸が隠れて
いるエコー7。ロンド=ミナ=サハクの懐刀が、俯き加減で頬を染め呟いた。

 

『サハク司令官……いえ、ミナ様。やはり私は外で……』
『フフ、何を遠慮している?此方へ来るがよい』
「馬鹿な、これは……これでは!」
『どうした!スネークカムの映像は此方で確認できない!報告を!』

 

 その時、振り返ったミナがカメラの中心を覗き込む。殆ど同時にその長身が伸びあがり、
右腕でダクト蓋を掴んで力任せに取り外す。瞬時に表情を消したエコー7が浴室のドアを
開け、銀色をした円筒形の物体を掴んだ。

 

「しまっ……」

 

 乾いた音を立て、綺麗な放物線を描いたスタングレネードがダクトに飛び込んでくる。
爆発と閃光が、侵入者の意識を奪い去った。

 

『デルタ4! 応答しろ、デルタ4!……デルタ4ッ!!』