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第五話「ヘリオポリス崩壊」

Last-modified: 2014-03-07 (金) 23:05:31

「なんてデカさだよ…」
自分たちが暮らす町並の上に、全長三百mはあろうかという戦艦が浮かんでいる。その光景にハルトは目を奪われていた。

 

戦艦は「シグー」に気づいたようだ。艦尾から数発のミサイルをシグーに向かい放つ。
シグーは追尾してくるミサイルを撃ち落とし、コロニーを支えるシャフトの後ろへ回り込んで逃げる。

 

「―――っ! この卑怯者が!」

 

シグーのパイロットを非難しながらシャフトへ向かうミサイルをビームガンで撃ち落とす。
それでも間に合わなかったミサイルがシャフトに当たり、爆発が起こる。地表がギシギシといやな音を立てて揺れる。

 

「ちっ… シャフトを盾にしやがって…」

 

下手に攻撃すればシャフトに当たる。その躊躇いのせいでハルトはシグーに攻撃できないでいた。

 

その時、太い光条がシグーを襲う。シグーは回避行動をとったが、それでも左腕をもぎ取られる。
光条はその勢いのままコロニー内壁の対面へ向かう。

 

「―――ああっ!?」

 

コロニーの地表が白熱し、外郭ごと外へ向かってまくれあがる。
ビームの消えた後にはぽっかりと大穴が開いていた。
ビームの飛んできた方を見ると、ストライクが巨大な砲身を持って立っている。

 

「…こんな火力を…一機のモビルスーツに持たせたのか…?」

 

その恐ろしさにただただ呆然とする。シグーができた穴から外へ逃れていったのにも気がつかなかった。

 

「…しかしすげーなー、これ、キラとハルトが動かしてたわけ?」
「『ガンダム』? なにそれ?」
「にしてもこの二機、本当に似てるなー。アドヴァンス?の方が角が少なかったりスラスターがでかかったりするけど。」
「それよりこの人の手当て…あ、目を覚ましたみたいだ。」

 

あの後、キラとハルトは公園へ機体を進めた。ストライクに乗っている女性兵士――マリューの手当てをする必要があったからだ。

 

マリューは辺りを見渡した後、はっとしてキラが差し伸べていた手に向かって拳銃を突きつけた。
「機体から離れろ!」

 

アドヴァンスのコクピットで機体各所のチェックをしていたハルトも声に反応して一瞬そちらを向く。
しかし隣のストライクの中を除いていたトール達の頭上に一発撃たれたのを見て機体から降りる。

 

「なっ…何するんです!」

 

抗議しようとしたキラにマリューは銃口を突きつける。コクピットからトール達が降りてくると、マリューは口を開いた。

 

「…これは軍の最重要機密よ。民間人が無闇に触れていいものではない。」

 

その言葉を聞いてトール達は不満げな顔つきをする。
しかしマリューは断固とした口調で言った。

 

「――私はマリュー・ラミアス。地球軍の将校です。申し訳ないけど、あなた達をこのまま解散させるわけにはいきません。
事情はどうあれ、軍の最高機密を見てしまったあなた達は、しかるべき所と連絡が取れ、処置が決定するまで私と行動を共にしていただきます。」

 

トール達は一斉に不平の声をもらした。
「なんで!」
「冗談じゃねえよ、なんだよそれ!」
「ぼくらは『ヘリオポリス』の民間人ですよ?中立です。軍なんて関係ないんです!」
「黙りなさい!なにも知らない子供が!」

 

マリューの一喝に、みな気圧されて黙った。
「中立だ、関係ない、と言ってさえいれば今でもまだ無関係でいられる、
まさか本当にそう思っている訳じゃないでしょう? 周りを見なさい!」

 

周囲に目をやる。
人っ子一人残っていない町並、傷ついたシャフト、ぽっかりその向こうに宇宙空間を覗かせた外壁の穴…

 

「――これが、今のあなた方の現実です。…戦争をしているのよ。あなた方の世界の外はね。」

 

その後、ハルトはストライクに乗ったキラと共にアドヴァンスでモルゲンレーテに戻り、ストライクのパーツを探すようにマリューに命ぜられていた。

 

その作業の最中でも、ハルトの頭の中には様々な事が渦巻いていた。
あの後、ハルトはマリューに何故アドヴァンスを動かせたかを問われた。ハルトはここまでの経緯を――スグルの死を含めて――マリューに話した。マリューもそれである程度は納得した。そして独り言のようにこう呟いた。
「あの欠陥さえなければね…」
ハルトはその意味を問いただそうとしたが、マリューはそれには答えず、アドヴァンスの部品は皆無に等しいから、ストライクの部品探しを手伝うよう命じたのだった。
(あの欠陥…メインスラスターに関することか?)

 

そんな事を考えていると、爆音が聞こえた。空を振り仰ぐと、ジンが突入して来ていた。

 

「なんだあの武装は…コロニーを破壊する気か!?」

 

ジンの装備している大型ミサイルや長砲身のライフルに気づき、目を見開く。

 

「…キラ、先に行ってる!」

 

何か装備をアジャストしているストライクにそう告げ、アドヴァンスを飛翔させる。

 

アドヴァンスはストライクと同じX-100フレームが用いられているが、機動性を追求するため改良が施されている。
また、元々一撃離脱に主眼を置かれているため、武装は少ないが威力は他の機体と比べ高めに設定されている。
なのでストライクより機動性と攻撃力は若干上なのだ。

 

アドヴァンスを狙いジンの大型ミサイルが発射される。
「追尾式だと!?」

 

回避行動をとってもなお追いかけて来るミサイルをバルカンで撃ち落とす。その爆風でシャフトに傷がつく。

 

「人の住んでる所を滅茶苦茶にして…いいと思ってるのか!」
右腕の「ワイヤーシューター」を選択して発射する。ワイヤーの先端についた電磁石の銛が二発目のミサイルを放とうとしたジンの右腕間接部に刺さり、動きを封じる。

 

「食らえぇ!」
ワイヤーを伝って電流が流れる。電流は駆動系を破壊し、ジン全体の動きを封じる。

 

「終わりだ!」
ワイヤーの巻き取りで一気に間を詰め、距離が狭まった所で銛を抜く。そして身動きがとれないまま落下していくジンにとどめのビームガンを撃つ。

 

「ストライクは…手一杯か。」

 

ストライクの様子を見ると、どうやら別の赤いモビルスーツとやりあっているようだ。
援護に向かいたいがこちらも「アークエンジェル」やコロニーに飛来するミサイル、それを放つジンの対応で手一杯だ。

 

先程から大きく軋み、過負荷に耐えて身をよじるように揺れていたセンターシャフトが、遂に崩壊を始めた。
轟音を立てながら、コロニーの背骨とも言うべきシャフトが分解を始めると残っていたアキシャルシャフトが次々と弾け飛び、地表を傷つけさらに崩壊を加速する。
フレームがねじれ、軋みながら歪む。
シャフトを失った外壁は支えをなくし、回転によるそれ自体の遠心力に振られ、構造体にそって切り取られるように分解を始める。
稲妻が走るように、コロニー全体に亀裂が広がっていく。

 

「ヘリオポリスが…消えていく…」

 

空気の急激な流出による乱気流がコロニー全体を吹き荒れ、瓦礫やエレカが木の葉のように舞い上がる。
あちこちで爆発の炎があがり、消えていく。

 

「うわああああああっ!」

 

ここ数ヶ月で見慣れた町並みが、人々の暮らしの跡が崩壊していく。そう思うと叫ばずにはいられなかった。

 

機体に流出物が打ちつけられ、激しい音を立てる。
乱気流により、機体の制御がきかなくなる。

 

「くっ…制御が効かない!」

 

バーニアを吹かしても全く意味がない。
気流に押され、宇宙空間へと引きずり込まれていく。

 

見ると、ストライクとその近くにいた赤い機体もアドヴァンスと同じ運命を辿っている。

 

三機のモビルスーツは、散っていく隔壁と共に宇宙空間に押し出されていった。

 
 

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