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第十一話「先遣隊」

Last-modified: 2014-03-12 (水) 15:48:44

ここの所、クルーや避難民の間にほっとした空気が生まれ始めていた。その原因は、やはり先遣隊派遣のニュースだろう。
後少しの辛抱だ。地上に降りたら離れ離れになった肉親とも連絡がとれるだろう。
そんな会話のはずむ食堂の中で、ハルトは一人憂鬱そうな顔で食事をとっていた。
「会える肉親がいるって、いいよな…」

 

その時、アークエンジェル艦内に警報が鳴り響いた。食べかけの食事をそのままにして、ハルトはパイロットロッカーへ走る。と、その途中、強い力で腕をつかまれた。
「ハルト!」
不安な顔のフレイだった。
「戦闘配備って、どういうこと?ねえっ、パパの船は!?」
事情がよく分からない。
「だ、大丈夫よね?パパの船、やられたりしないわよね!?ね!」
どうやらフレイの父親が先遣隊にいるらしい。
「やれるだけやってみる!」
そう言って腕を掴んでいるフレイの指を外し、また走り出す。
ただ、安心させるにはあの言葉では弱かったかもしれないとハルトは後悔した。

 

「遅いぞ!坊主二号」
「すいません!」
着替えて格納庫に飛び込むと、ムウのゼロは発進する所だった。
マードックの怒鳴り声に返しながら、アドヴァンスのシートにつき、システムを立ち上げている間にミリアリアが状況を教えてくれる。
<敵はナスカ級にジンが三機、それとイージスがいるわ!気をつけて!>
イージス…妙にストライク、キラと因縁のある機体だ。何かあるのだろうか?
<ハルト、先遣隊にはフレイのお父さんがいるんだ!頼む!>
サイから割り込むように通信が入る。どうやら自分の推測は当たっていたようだ。
「ストライクの予備のシールド出して下さい!」

 

シールドを装備し終えた時には既にゼロは発進し、キラが格納庫に到着していた。
アドヴァンスをカタパルトへ進める。
「アドヴァンス、行きます!」

 

ハルトが出た時には既に護衛艦「バーナード」は沈黙しており、イージスが「ロー」へ向かっているところだった。
一方ジンもアークエンジェルの砲撃で二機に減り、そのうち一機をゼロが相手どっている。
手の開いているジンがこちらに気がつき、バズーカを撃つ。それを回避し、サーベルを抜いて一気に近づく。
そしてバズーカを持つ腕を切り落とし、バズーカをアドヴァンスに持たせる。
そのバズーカをジンに向けて撃つ。ジンは皮肉にも自分の武器で撃墜された。

 

出撃したストライクはイージスを相手取っている。ゼロは損傷したらしく、一時撤退する。
ヴェサリウスからローに向けてミサイルが放たれる。とっさにバルカンで迎撃し、爆風はシールドで防御する。
「…ヴェサリウスをやらなけりゃどうにもならない!」
ゼロの攻撃で損傷したジンをすれ違いざまに切り裂き、ヴェサリウスへと向かう。

 

「見えた!」
ヴェサリウスの巨大な姿を目に捉える。さらに接近しようとするが、それをヴェサリウスの自動防御システムの迎撃が阻む。
「くっ…!」
シールドで防御した所に主砲での攻撃が来る。いくらアンチビームシールドでも防げはしない。
辛うじて回避する。だがそのビームの射線上には離脱するバーナードがいた。
「ああっ…!」
ビームが直撃し、バーナードが爆散する。ハルトは両目を見開いた。

 

また、誰かが死んだ。
『こんなやつら』のせいで―――!
その瞬間、ハルトの中で何かが弾けた。

 

何もかもが急にクリアに感じる。ヴェサリウスの主砲の動きも、ビーム粒子の軌跡もはっきり見える。
アドヴァンスを急上昇させる。そしてヴェサリウスの真上まで来ると、一気に急降下する。
迎撃システムが、主砲がアドヴァンスに向かい火を噴く。だがそれらをアドヴァンスは全て回避する。
砲塔のわずかな傾きから次の射線が面白いように読み取れる。

 

二つの距離が狭まっていく中、アドヴァンスがバズーカを撃つ。残っていた弾は一発だったが、それは主砲の一つに命中し、爆発を起こす。
弾がきれたことを知ると、ハルトはバズーカを捨てさせ、左腕のビームガンを構え、撃たせる。緑色のビームが迎撃システムを潰す。
さらに二つの距離が狭まった時、アドヴァンスが突然進路を変えた。アドヴァンスとヴェサリウスは激突することなくすれ違う。
すれ違いざまにもアドヴァンスはヴェサリウスの外壁にワイヤーシューターを撃ち込む。外壁に銛が突き刺さる。
そのまま振り子のように慣性で方向転換した後、ワイヤーを巻き取る。そして再びヴェサリウスへ攻撃をかけようとする。

 

が、それを邪魔する機体があった。イージスだ。ヴェサリウスが攻撃を受けているのを見て、咄嗟に戻ってきたらしい。
そのままビームサーベルで切りかかって来る。
「邪魔しやがって…!」
シールドでサーベルを受け止める。とほぼ同時にイージスに蹴りを入れ、間合いを取る。
イージスの介入で生まれた隙に、ヴェサリウスがモン残った主砲を発射する。一本の光条が宇宙空間を切り裂き、モンドゴメリへと向かう。

 

だが、ハルトの目にはモンドゴメリから射出される脱出ポッドが、はっきりと映っていた。

 

ビームが艦体に吸い込まれ―――次の瞬間、凄まじい爆発が起こる。ポッドもその煽りを受ける。

 

今はこいつらは後回しでいい。そう思ったハルトは、イージスを無視してポッドの方へ向かう。
イージスも追うが、援護に来たストライクがそれを阻んだ。
<ザフト軍に告ぐ!こちらは地球連合所属艦アークエンジェル!当艦は現在、プラント最高評議会議長――>
ナタルが全周波で呼びかけている。内容はこちらを撃ったらラクスを殺す、というものだ。
(いくら何でもこれは卑怯だ…)
先程までの感覚は既に消えていた。何だったのかは気になるが今はどうでもいい。

 

ポッドまで辿り着く。どうやら推進部に損傷があるようだ。
「…聞こえますか?」
接触回線で呼び掛けるが、返事はない。
(これは早めに連れて行った方がいいぞ…)
ポッドを掴み、アークエンジェルへと帰還した。

 

ポッドの中にいたのは、フレイの父、ジョージ・アルスターだった。
彼はポッドが爆風に巻き込まれた時に頭を強打したらしく、意識不明だ。だが一命はとりとめたようだ。
「よかったな…フレイ…」
パイロットロッカーで一人呟く。
「1と0じゃ、だいぶ違うもんな…」

 
 

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