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第十話「コーディネーター」

Last-modified: 2014-03-12 (水) 15:46:02

「嫌よ!コーディネーターの子の所に行くなんて、怖くって…」

 

シュミレーターを終えたハルトが食堂に入ると、唐突にそんな声が聞こえた。見るとフレイとミリアリアが食事のトレイを前に言い争っている。
「…どういう状況?」
状況が理解できないので、近くにいたキラに訪ねる。
「いや、僕が拾って来た女の子の食事の事で揉めてるみたいで…」
「フレイっ!」
ミリアリアが慌ててたしなめる。フレイもキラ達の顔を認め、さすがに失言と思ったらしい。
「あ…もちろんキラとかハルトは別よ?――でもあの子はザフトの子でしょ?
コーディネーターって反射神経とかもすごくいいんだもの。何かあったらどうするのよ!――ねえ?」
と、よりによってキラに同意を求める。キラが困ったように黙ってしまったので、ハルトが答える。

 

「…そんなに不安なら、二人でいったらいいんじゃ?」
コーディネーターは化け物じゃない。武器もないのに相手が二人がかりではさすがにどうこうできないだろう。
「二人ともやられちゃったらどうするのよ!」
だが、フレイは頑として聞き入れようとしない。その時――

 

「まあ、誰が誰をやっちゃうんですの?」

 

おっとりした声が背後からかかって、キラ達は反射的に振り向いた。
そこには噂の当人、ラクス・クラインがにこにこして立っていた。
一同は、そのままの姿勢で凍りつく。
「あら、驚かせてしまったならすみません。じつはわたくし、喉が渇いて…
それに、はしたないことを言うようですけど、随分お腹もすいてしまいましたの。あの――」
「…ってちょっと待った!」
ようやく我に返った一同が慌てる。
「鍵とかってしてないわけ!?」
「やだあ!なんでザフトの子が勝手に歩き回ってんの!?」
「あら、勝手にではありませんわ。わたくしちゃんとお聞きしましたもの。出かけてもいいですかって…」
「で、行っていいと言われたんですか!?」
慌てふためいてキラが尋ねる。

 

「それが、お返事はどなたもしてくださらなかったんですの。でも三回もお聞きしたから…」
「それを勝手に出歩いているって言うんじゃないかなぁ」
カズイが突っ込む。だがラクスは全く意に介さず、にこにこしながらフレイの前に出た。
「――それに、わたくしはザフトではありません。ザフトは軍の名称で、正式には…」
「なっ、なんだって一緒よ!コーディネーターなんだから!」

 

それは違う、一緒にするな。そんな言葉が出そうになるのを、ハルトはこらえた。ラクスが反論する。
「一緒ではありませんわ。確かにわたくしはコーディネーターですが、軍の人間ではありませんもの。」
ラクスは可愛らしく首を傾げ、大きな目でフレイを見た。
「あなたも軍の方ではないんでしょう?でしたら、わたくしとあなたは同じですわね?」
見る者をとろけさせるような柔らかな笑みを浮かべ、ラクスは右手を差し出した。
だが、フレイは差し出された手を見てあとずさった。
「ちょっと、やだ…やめてよ!なんで私があんたなんかと握手しなきゃなんないの」
その顔にはまぎれもない嫌悪が浮かんでいる。彼女は金切り声で叫んだ。
「コーディネーターのくせに、馴れ馴れしくしないで!」

 

その言葉を聞いた瞬間、ハルトは思わず口を開いていた。
「フレイ…お前ってブルーコスモスだったか?」
ブルーコスモスは自然主義を掲げるロビィ団体の名称だ。コーディネーター迫害の先頭に立っているのもこの団体だ。
「なっ…違うわよ!」
心外だというようにフレイは声を荒げる。
「なら握手くらいできるだろ…別に手を握りつぶされる訳でもなかろうに。」
「…でも…」
「それとも、本当に奴らの言ってる事を信じているのか?
コーディネーターが自然の摂理に反した、間違った存在だっていう、あんな屑みたいな主張を。」
自然と言葉に怒気が入る。
もし彼女が肯定する言葉を言えば、殴りかかりたい衝動を抑える自信がなかった。
「…少し言い過ぎた。」
このままここにいると何をしでかすか分からない。ハルトは食堂を出て、展望デッキへ向かった。

 

ガラスに頭を当てる。こうしていると頭の中が冷えていくように感じた。
(…俺は何で、あそこまで怒ったんだ?)
自分が怒った理由が自分でも分からない。別に自分が名指しで貶された訳ではない。
というかその位ならいつもは軽くスルーしている。かといってラクスやキラのためでもない。
(…もしかすると、「あんな奴ら」と一緒にされたのが嫌なのか?)
妙にそれがしっくり来る。自分がザフトの奴らと同じように思われていると考えるだけで吐き気がする。

 

ふと、自分の腹が鳴ったので考えるのを止めた。
「…そういや、腹減ったから食堂行ったんだよな。」
だが今の状況で行くのは少し気が引ける。
(後2時間ほどしたら行くか…)

 

その後2時間、ハルトは宇宙空間をずっと眺めていた。胸に何かどす黒い感情を感じながら。

 
 

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