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第二話「アドヴァンス始動」

Last-modified: 2014-03-06 (木) 19:57:26

「接近中のザフト艦に通告する!貴艦の行動はわが国との条約に大きく違反するものである。ただちに停船されたし!」
ヘリオポリス管制区に警報が鳴り響く。ザフト艦二隻が何の通告もなしに接近してきたのだ。
「ヴェサリウス」「ガモフ」共に停船勧告に従う気色はない。全通信にノイズが混じる。

 

「強力な電波干渉!ザフト艦から発信されています!――――これは、明らかに戦闘行為です!」
管制室の空気が、凍りついた。

 
 

時を同じくして、港に入港していた一隻の貨物船の艦橋でも、緊張が走っていた。

 

「敵は?!」
「二隻だ!ナスカ級並びにローラシア級。電波干渉直前にモビルスーツの発進を確認した!」
「ひよっこどもは?」
「もうモルゲンレーテに着いている頃だろう。」
「せめてもの幸いですな――ルークとゲイルはメビウスにて待機!まだ出すなよ!」

 

黒いパイロットスーツを着た男、ムウ・ラ・フラガは館内インターフォンに向けて指示した。
そして自分も格納庫へ向かう。そこには、モビルアーマー「メビウス」が並んでいる。

 

この偽装貨物船のクルー達の任務は、数人のG兵器パイロット候補をここ「ヘリオポリス」に送り届けることであった。

 

間もなく港口からザフトのモビルスーツ「ジン」が突入してくる。
核分裂を無効化するニュートロン・ジャマーと同じく圧倒的な物量を誇る連合に対しザフトが今の戦況まで持ち込めた要因の一つだ。
ジンの突入を認めたムウは艦長に通信する。
「船を出して下さい!港を制圧される。こちらも出る!」

 

――時は若干前に遡る。
ハルト達のエレカは「モルゲンレーテ」の社屋の中に入って止まった。彼らの指導教官であるカトウ教授のラボがそこにあるからだ。
また、ハルトに限っては三日ぶりに父親の顔でも見れればいいな、と思っている。父・スグルはここ三日家に帰っていないのだ。

 

「あ、キラにハルト、やっと来たか。」
部屋に入ると同じゼミ仲間のサイ・アーガイルが顔を上げた。
色付きメガネに派手なジャケットという服装だが、彼らの中で最も常識的で思慮深いため自然とまとめ役になることが多い。

 

部屋にはサイとこっちも同じゼミのカズイ・バスカーク、そして一人だけハルトの知らない人物が壁際に身を寄せるように座っていた。
(…キラ、知ってるか?)
(…いや、知らない。)

 

(…誰?)
トールがハルト達の疑問を代弁するかのようにカズイに小声で訪ねる。
(ああ、教授のお客。ここで待ってろと言われたんだと。)

 

(客…?)
口にこそ出さなかったが、ハルトは少し疑問に思った。教授の客というには少し幼すぎはしないだろうか。
(ま、人は見かけによらないというしな。)
そう勝手に結論づける。

 

「これ預かってる。追加とかって。渡せば分かると。」
「うぇ〜?まだ前のだって終わってないのに〜」
サイがキラに一枚のメディアを差しだすと、キラが情けない声をあげる。
キラは妙に情報処理が速いので、何かと教授にこき使われる。
「…まあキラ、俺でよければ手伝―『あ、ハルトにもだって。』―マジかよ」
…キラ程ではないがハルトも情報処理ははやいので結構こき使われてるのだが。

 

「そんなことより、手紙の事を聞けーっ!」
「「手紙?」」
トールがキラの後ろからタックルしてそう言う。期せずしてサイとハルトの声がハモる。
「な、なんでもない!」
「なに、トール?俺にだけ、俺にだけ。」
キラがトールの口を塞ぐとカズイも加わってトールにせがむ。何の話だかさっぱり分からない。

 

ふとキラが客の方に目を向ける。

 

「なあトール、さっきから手紙だの何の話――」

 

ハルトがそう訪ねようとした瞬間、

 
 

轟音と凄まじい揺れが彼らを襲った。

 

「―何だ!?」
「隕石?」

 

彼らは慌てて部屋を出てエレベーターを目指す。足をすくうような振動が何度も襲ってくる。

 

エレベーターが動かないため、非常階段に走る。丁度走ってきた職員にサイが訪ねる。

 

「どうしたんです?」
「ザフトに攻撃されている!コロニー内にモビルスーツが入ってきてるんだよ!」
「ええっ!」
「モビルスーツが!?」

 

皆、一瞬立ち竦む。中でもハルトは一瞬だけ思考がフリーズした。

(まさか…「あれ」と関係あるのか?)

 

時は三日前に遡る。
ハルトは家に帰り、カトウ教授から頼まれた事を終わらせようとしたが、運悪くパソコンが故障した。
仕方ないのでスグルのパソコンを使うことにした。

 

普段は使うことは禁止されているが、丁度スグルは帰って来ていなかった。
そして運良くパスワード入力は必要ない状態になっていた。
さっさと終わらせればバレないと思い起動させると、「G」というファイルが目に入った。

 

好奇心に駆られて見てみると、そこにはジンと思われるモビルスーツの内部構造や操縦系統などの細かいデータ、
そしてまだ見たことのないMSの設計図らしきものが大量に記録されていた。
そしてそれら全てに考察点や感想などがびっしりと書かれていた。

 

非常に興味がそそられたので、スグルが帰ってこないのをいいことにここ三日間でほぼ全てのファイルを閲覧した。
幾つか、特に操縦系統や新型と思われるMSのデータではある程度暗記してしまったものもあった。

 

そのうち、一つの仮説が生まれた。
あれは恐らくモビルスーツ開発用のデータであろう。
もしかすると今スグルが携わっているのは連合のモビルスーツ開発なのではないか。
そう思えて仕方がなかった。が、確証は持てずにいた。

 

(まさか、本当にそうだったのか!?)
もし本当にそうなら、本当にここでモビルスーツが開発されているのなら、父親が急にヘリオポリスに越す事になったのも、
今回のザフトの襲撃も辻褄が会う。

 

「――先に行っててくれ!」
逆方向の工場区に向かい走り出す。
後ろから自分を呼ぶ声とこちらに走り出す気配がしたが、構っている余裕はなかった。

 

爆発の起こる中、彼はひたすら走り続ける。今ハルトの頭の中にある事は二つだけ。父の安否と、ここで本当にモビルスーツの開発が行われていたのか。
だが、そのうちの一つはそう時間をかけずに知る事となった。

 

「―これ…は…」
格納庫のような開けた場所。銃声や爆発音が聞こえるが、彼の意識は目の前のものに奪われていた。
鋼の色をした装甲、四本の角を生やしたかのような頭部、すらりとしたボディ―明らかにザフトの「ジン」とは異なった形状の――

 

「機動兵器…地球軍の…やっぱりここで…」
確かあの機体は父のファイルにあった。うろ覚えだが、「ストライク」という名前だったはずだ。
「――お父さまの…裏切り者っ…!」
うめくような叫び声が聞こえた。みると先程の「お客」とキラがそこにいた。

 

きら、と光ものがこちらに向けられるのが見えた。

 

考えるより先に体が動いた。
気がつくと、ハルトは手すりを乗り越え、キャットウォークから身を躍らせていた。

 

幸い何の問題もなくモビルスーツの上に着地できた。

 

危ないと感じると考えるより先に体が先に動く事は彼の癖のようなものだが、今回はかなり危険だった。
モビルスーツの上から降り、まだ流れ弾に当たる可能性の低そうな格納庫奥へと走る。

 

その途中、倒れている作業員服を着た男を見かけた。
足を怪我しているようだ。それでも、必死に這って先に進もうとしている。

 

見捨てる訳にはいかない。そう思ってハルトは男に駆け寄る。
「大丈夫で―――」
顔を見た瞬間、言葉を失った。
何故なら、その顔はハルトがとてもよく知っている人物―――

 

父・スグル・カンザキだったからである。

 

「父さん!?」
「ああ…ハルトか…丁度…良かった…」
傷の痛みのせいか、途切れ途切れの声だ。

 

聞きたいことは山ほどあった。
だが父のこのような姿を見ると全て吹き飛んでしまった。

 

「父さん、肩貸すから速くシェルターに…」
「いや…私の事はいい…それよりも…速くアドヴァンスを…」
「アドヴァンス?」

 

スグルの指が差す先には、先程見た機体とほぼ同型の機体が横たわっていた。
「アドヴァンス」という名前には心当たりがある。
スグルのパソコンにあったデータの中でも一番多く考察や感想が書かれていた。
よく分からない文章の中に「高機動型としては充分」「あの欠点さえ直せれば」という単語が多く並んでいたのが印象に残っている。

 

「システムの解凍プログラムと…私なりに改良してみたOSだ…これである程度は…」
フロッピーディスクを渡される。

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう…ほら、早くここから離れよう。」
スグルを立たせようとするが、スグルはそれを拒否した。

 

「いや…いい。この銃撃戦やら爆発やら起こっている中…怪我人を支えた人間が無事目的地に辿り着ける確率は非常に低い…」
「――っ」

 

ハルトの知る限り、スグルは非常に論理的な人間だ。
自分を叱ったり諭したりする時も感情的にはならず、理屈で説明する。
そしてそれは大抵正しい。それが分かっているからめったに反論できない。

 

「それに…まだアドヴァンスで運ばれた方が…生存率も高くなるはずだ…」
「――分かった。」
スグルの手からフロッピーディスクを受け取り、「アドヴァンス」と呼ばれる機体へと向かう。
「システムが起動したら…まずフェイズシフト・システムを起動させろ…」
そんなスグルの言葉に、ハルトは後ろ髪を引かれる思いだった。

 

コクピット内は狭かった。少なくとも、人二人が入れるだけのスペースはない。
(手に載せて運ぶしかないか…)

 

フロッピーディスクを挿入し、シートの横からプログラム入力用キーボードを引き出す。
そして解凍プログラムのインストールを開始する。

 

このプログラムは万一意図しないタイミングで機密保護処理――凍結が行われた場合に備えて構築されたものだ。
悪用を避けるため一度しか使えない。
アドヴァンスの機密保護処理は7割が完了していた。
データやOSの大半は消去されていたが、駆動系の制御などのデータが消去されていなかったのは幸いと言える。

 

銃声は比較的聞こえなくなったが、爆発音は依然聞こえる。
時々振動がアドヴァンスにも伝わってくる。

 

「くそっ…まだなのか!?」
ハルトの声に焦りが混じる。いくら基礎が残っていてもOSの大半が消えているので機体を動かせない。
なのでスグルが改良したOSをインストールしているのだが、それがまだ終わらない。その事に焦っているのだ。

 

その時、一際大きい爆発音と振動が来る。

 

「何が起こってるんだ…? 頼むから早く終わってくれ…」

 

そんな願いが通じたのか、OSのインストールが完了する。
計器類に光が入る。モニターが明るくなり、外の風景が映し出された後、文字列が浮かび上がる。

 

―General
Unilateral
Neuro-Link
Dispersive
Autonomic
Manuver…

 

「…ガンダム…?」
そう読めたが、今は関係ない。
まず機体を起きあがらせる事から始める。

 

機体の動かし方は父のファイルにあったコクピット周りの資料のおかげである程度は分かる。
両目に光が宿り、指がピクリと動く。エンジンが低い唸りを上げ、巨大な四肢がぎくしゃくと動き始める。
そしてついに立ち上がった。

 

「フェイズシフト・システム…これか?」
コンソールのボタンの一つを押し込む。
すると、鋼色の装甲は瞬くように背部の黒いスラスターユニットを残してグレーに変わっていく。
「これで一通りは―――!!」
一通りの手順を終えた彼がモニター越しにみたものは
「―――嘘だろ?」

 

崩落した天井と天井だった瓦礫、そして
その下からはみ出た人間の手だった。

 
 

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