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第02話〜やるときはやります!〜

Last-modified: 2011-12-05 (月) 01:23:16

俺をブーステッドマンの手から守ってくれたのは……
「アスラン?」
まだ前髪が残ってるアスランだ……懐かしいな……

10年前……
「アスラン、何か前髪が…」
「気のせいだ!」
7年前……
「アスラン、何か前髪が…」
「……もう駄目かもな……なんで…こんな…いや、まだ…」
5年前……
「アスラン……」
「ああ、もう諦めた。ハハハ……笑っても良いぞ♪」
「そ、そんな…」
「いやな。ここまで来ると変に気を使われると辛いんだって」

あ、なんか目頭が熱くなってきた。
そうやって、懐かしい思い出に浸っていると、突然後ろに強い力で引っ張られた。
「シートの後ろに。この機体だけでも。私にだって動かすくらい」
「え?……ちょっと」
俺は油断している隙に再びブーステッドマンに捕えられてしまっていた……あれ?
なんか風雲急を告げるって感じです。
俺はブーステッドマンに捕まりストライクの中に押し込められ、お姫様ポジション……
ってことは王子様は……アスラン?
「勘弁してくれよ」

第2話〜〜やるときはやります!

さて、これからどうするべきか?
……俺はお姫様の如くストライクのコクピットで成すすべもなく……
「ん? サイ! トール! ……と、え〜と……カ、カズイ!」
そんな俺の視界……正確にはストライクのモニターに友人が映っていた。
そうだ。彼等を助けなくちゃ。
だが、彼等の姿を見つけて身を乗り出したとき、コクピット内を衝撃が奔った。
「くっ!」
「下がってなさい!死にたいの!?」
ジンからの攻撃。だが、すぐにPS装甲を起動したためダメージは無いようだ。
だけどジンの砲撃は続けられ、コクピット内の衝撃は収まらない。
このままではバッテリーが持たないぞ。
これからどうする?……このストライクに搭載されてるOSは書き換えの必要がありそうだ。
俺もOSの書き換えは苦手とは言え、薬中のブーステッドマンよりはマシな自信がある。
だが、それをやると戦闘後にこの人に殺され……あれ? この人ホントにブーステッドマン? 
なんか動きが鈍いんだけど?
先程の銃を持って戦ってたときとは別人みたいだ。それにさっき動かすくらいならって……
「あの……つかぬ事をお尋ねしますが……」
「なんなの! こっちは手一杯なんだから!」
「いや、え〜と、貴女……パイロットですか?」
さすがに機密である存在のブーステッドマンですかとは聞けずに、言い方を変える。
「……気落ちさせて悪いんだけど違うわ。技術者よ」
気落ちどころか安心! それなら!
「どいて下さい!」
「え?」
「早く! OSを弄ってみる!」
強引に彼女を押しのけコクピットに座る。そして調整を……
「マジかよ! ここまで酷いなんて、こんなのでよくMSを動かそうなんて!」
「まだ全て終わってないのよ。仕方ないでしょ!」
そんなレベルじゃ無いって罵りたかったけど、そんな暇は無い。
だが、ここまで酷いOSを戦闘中に書き換える能力は俺には無かった。
「どうする……ん?」
だったら何で未だに平気なんだ? 
もし俺がジンに乗っていたら今頃ストライクをスクラップに変えている自信がある。
「そうか……相手は素人か」
「え?」
「いえ! 何でもありません」
俺はストライクの片膝を付き、動きを止めてみせる。
「ちょっと、何を?」
「黙ってて!」
そう言ってブーステッドマン…改め巨乳女を黙らせると、OSの調整を開始した。
思ったとおりジンはすぐには攻撃してこない。
無理も無い。何と言っても相手はMS戦の素人。
今頃は戸惑っているだろう。
「……なんで?」
隣で驚いてるから少し説明しておく。
「彼はMS戦は初めてなんですよ。だから変な動きに戸惑っただけです。
 まあ、すぐに攻撃してくると思いますけど」
「え? あのジンのパイロットが初陣って……なんでそんなの分かるの? くっ!」
その時、再び攻撃が再開され、彼女は小さな悲鳴をあげる。
なんか勘違いをさせたみたいだ。
俺の知識が確かなら、あのジンのパイロットは初陣どころか黄昏の魔弾と呼ばれたエースパイロット、
ミゲル・アイマンのはず。
「初陣じゃ無いでしょうけど……でも、あのパイロットに限らずMS戦なんかやったことある人間は
 いませんよ」
そう唯一の例外、俺を除いては。
「よし、これなら!」
目的の動きを入力した俺はキーボートをしまい、操縦桿を握る。
そして俺の中で何かが切り替わる。
気弱な民間人キラ・ヤマト少年からネオザフトの軍人シン・アスカ隊長へと。
「運が悪かったな若造」
そして重斬刀を振りかぶって突進してくるジンに語りかける。
ミゲル・アイマン。
思えば彼は本当に不運な男と言える。
それまでは幾多のMAを撃墜し黄昏の魔弾と呼ばれた男は、この日を境に初めてのMS戦に敗れた男として歴史に名を残す。
ましてや、その相手が本来であったら人類最高のコーディネーター……
そして今回に限りは、CE史上最も多くのMSを撃破してきた男……
「だが同情はしない!」
俺は接近したジンの脇を潜るようにストライクを前転させながら、その間に抜いたアーマーシュナイダーで、ジンの動力ラインを擦れ違い様に切り裂いていた。
これなら、ジンを自爆させることも出来ない。
俺はコクピットから走って脱出していくミゲルを見ながら、ジンのOSを奪いストライク用に改造して使うため、ジンに近付いていった。
「ん?……あ!」
そして、俺は周りが静かになってる事に気付いた。MSで前転なんかしたものだから……
「どうしよう……これ?」
俺は気絶している巨乳女を見て背中に汗が流れるのを感じていた。

ジンを一旦退けた俺は、ジンのOSをベースにストライクのOSを仕上げていく。
今頃はアスラン達も母艦で解析とOSの強化をやっているはず……多分、向うも呆れてるだろうな。
「よし……これなら」
これで、本体に関してはある程度の動きは問題ないはず。
だけどストライクの場合は戦闘における基本武装がインパルスの様に換装で変わるから、それぞれの戦闘形態での設定を入力しておかないと。
……でも、ストライクのパーツらしいのは向うにあるのが見えるんだが、勝手にやったら不味いよな。
「キラー!」
ちょうど都合よくミリアリアが俺に声をかけてきた。連合の巨乳が目を覚ましたらしい。
「すみませんでした。なんか俺、無茶苦茶しちゃって」
今後の関係を考えても一応は謝っておかないと……って、よく見ると興奮したトールたちがMSや周りのパーツを見てはしゃいでいる……まあ、気持は分かるけどさ、不味いだろ?
「その機体から離れなさい!」
……ほらな。
その手には再び銃が握られている。正直パイロットとしては使えない、メカニックとしては未知数の女だが、こと白兵戦にかけては超一流だった。下手に逆らうとヤバイことになる。
だが、俺の予想では、彼女は基本的に善人だと思える。
MSに乗せたのだって、俺の力を当てにしたわけでは無く、単に民間人の少年の俺を守るための緊急手段だったんだし。
「あの、待って下さい! 彼らなんですよ。気絶してる貴方を降ろしてくれたのは」
よって、善意の押し付け。
こういうタイプはこう言われると怯むはず。まあ、降ろすときにカズイがどさくさに紛れて胸を触ってたけどさ。
「助けてもらったことは感謝します。でもあれは軍の重要機密よ。民間人が無闇に触れていいものでは
 ないわ」
うん。少し口調が柔らかくなった。
これなら話せる余地が充分にある。トールがまだ突っ掛かっているが大丈夫だろう。
そして、俺達は彼女に名前を告げさせられる……なんか学校で担任じゃない先生に怒られてる気分だな。
「私はマリュー・ラミアス。地球連合軍の将校です。申し訳ないけど、あなた達をこのまま解散させる
 わけにはいかなくなりました」
「「「えぇーーーー!」」」
「事情はどうあれ軍の重要機密を見てしまったあなた方は、然るべき所と連絡が取れ処置が決定するま で 私と行動を共にしていただかざるを得ません」
みんなが驚愕し、抗議しているが、俺は別の意味で驚いていた。
マリュー・ラミアスだと?……どうりで記憶にある顔だし、思い出したくも無かったはずだ。
アークエンジェルの艦長だった女。
まあ、この女が別にどうこうってわけじゃ無い。たださ……"あの男"の妻になるんだよな。

あの男の事を思い出してかなり動揺しながらも、俺はマリューの指示に従い、アークエンジェルへの
通信を定期的に行う。同時に敵襲にそなえて装備の設定を開始した。
「どれですか?パワーパックって!」
「武器とパワーパックは一体になってるの! このまま装備して!」
なるほど、ブラスト…じゃなくランチャーだっけ? これを装着するんだな……って、待てやオイ!
「ちょっと、コロニーの中でこんなもん使うって、アンタ正気かよ!」
え? もしかしてヘリオポリス崩壊の原因ってザフトの攻撃じゃなくキラさんなの?
「え? で、でも……素人の貴方に他の武装は」
……俺に気を使って?………そうだよな。コイツも、コイツが結婚するあの男も良い奴なんだよ。
それは知ってるけど、だけどさ……チッ、暗い思考に沈む前に頭を振り、冷静に状況を説明する。
「先程も言ったでしょ。向うはMS戦の経験無いって。だったら撃ち合いより、斬り合いの方が
 こっちに利があります」
「でも、貴方だって経験なんて」
え〜と、本当はたくさんあるんですよ。それもウンザリするくらい。でもそれを言うわけにもな……
「このMSはMSを倒すために作られたんでしょ? でもジンはMAを倒すために作られたんです。
 あの変な装甲もあるし、切り込んだほうが有利に働きます」
「なるほどね……ってことは、今後は斬り合いを主にした戦い方をすれば、こっちが勝てるって事…」
「今回だけですよ。向うだって馬鹿じゃないんだ。すぐに対MS戦の戦闘に対応してきます」
「それもそっか」
まあ、彼女も名案を思いついたと言うより、思ったことを口に出しただけみたいだから、変に固執は
せずに苦笑しただけで流してしまった。
「じゃあ、こっちのソードパックを装着してくれる!」
「了解です!」
「でも、これは遠距離装備が無いから気をつけなさいよ」
「……わかってます。多分、大丈夫ですよ」
俺は彼女のこちらを心配する優しい眼差しを真っ直ぐに見ることが出来なかった。
彼女でこれだ。これから会うはずのあの男と出会って、俺は平静でいられるんだろうか?
「俺、大丈夫かな……ステラ」
俺は近くで戦っているはずのネオ・ロアノーク…いやムウ・ラ・フラガのことを考え、唇を噛んでいた。

「あ!」
「どうしたの? お兄ちゃん」
「いや、なんでもないよ」
首を傾げながら僕を見つめるマユちゃんに萌えなが……ち、違う! そう。
可愛い妹を見守りながら、僕は今日という日を思い出していた。
ヘリオポリスが襲撃される日だ。
『僕』は上手くやってるんだろうか?
出来るなら、まだ若い僕に色々とアドバイスがしたいけど……
「出来た♪ お兄ちゃん。食べてみて」
「ん? うん。美味しそうだね」
マユちゃんが焼いたクッキー。うん。見た目は問題ない。
僕は1つ摘んで口に運ぶ。
「…………うん。美味しい。凄く美味しいよ」
噛み砕くと口の中にバターの香りと甘みが広がる。本気で美味しい。
なるほど、シンの携帯に彼女がクッキーを焼いた所を撮っていて、僕に自慢たっぷりに見せるのも頷ける……って、マユちゃんってまだ8歳だよね? 
それでこのクッキー……クオリティ高いよ。この子……
「よかったぁ〜♪ じゃあ、マユも」
嬉しそうに自分もクッキーを食べ始める。
そして、僕は再び考え始めた。
今の状況、僕がシン・アスカになっている状況が何時まで続くか不明だけど、それでも僕は知っている。この先起こるシン・アスカが辿る運命を。
この子が戦火に巻き込まれるなんて……流れ弾にやられたらしいけど、いったい誰なんだよ。そんな
酷い事するなんて、許せないじゃない!
「ん? お兄ちゃん?」
「いや、なんでもないよ。もっと食べていい?」
「うん。いっぱい食べて」
僕は礼を言いながらクッキーを食べ始める。この子を守らないと、だけど今の僕に何が出来る?
CE80年代、僕の知ってるシン・アスカは強い。僕が戦ったら勝てると言えない唯一の相手だ。
でも今はCE71年。今のシンはただの少年。
しかも僕と違い、彼の強さは血の滲むような長い訓練と数え切れないほどの実戦で手に入れたもの。
つまり今の僕は無力で、いざって時に役にたたない。
でも…だからって…それでも護りたいものがあるんだ。
キラでは無く、シンである以上は努力しなきゃ。
いざという時のために、鍛えとかないと……
「ねえ、お兄ちゃん……こうやって2人でお菓子食べてると恋人みたいだね」
「そ、そうだね」
「今日はのんびりしようねぇ」

……まあ、訓練は明日からで良いよね。

続く

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