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第14話〜〜強くなろう?

Last-modified: 2011-12-10 (土) 17:22:30

 

上空からバクゥ目掛けて降下しながら砲撃するスカイグラスパー。
「お? 全部かわしたか」
少佐の攻撃をかわすなんて大したもんだ。あの人は先読みが上手いから、逃げる方向に砲撃を加えて行く。
だからこそ反射神経に優れるコーディネイターとも互角以上に戦えるんだが……
フレイの臆病さと判断の良さはそれと渡り合える。
「でも、これじゃ少佐の訓練でフレイの訓練にはならないな……どうする?」
実力的には少佐の方が上だが、問題は機体の性能。ザフトの戦力は地上戦艦に戦闘ヘリ、そしてMS。
スカイグラスパーを相手にしていても、あまり訓練にはならない。
だが、シミュレーターは、すでにやりつくした感がある。まあ、元々砂漠戦のデーターなんて少ないから手持ちのパターンが少ない所為なんだが……
「まあ、機体に慣れるだけでもよしとするか」
何時もと違う攻撃を避けるだけでも練習にはなる。
あとは、接近戦の練習をどうするかだ。前回の戦闘で手に入れた後期型バクゥの頭部を取り付けたから、フレイのバクゥもビームサーベルが使えるようにはなった。
だが、所詮は後付け機能。人型の腕に比べバクゥの頭部は大して動かないから、格闘戦には不向き。
機能的には速さを生かした一撃離脱に向いている。
「まあ、贅沢な悩みなんだけどな」
本来なら現時点では、後方から支援させるか、精々囮になって敵を引き寄せるかくらいしか使い道が無いと思われていたフレイだったが、その頑張りが成果を出し、艦長と中尉が揃って戦力と計算し始めてしまった。
実際に俺も遊ばせる気は無い。とことん使わせてもらう気でいるし……
「まあ、感覚だけでも掴んでもらおうか……フレイ、メニューを変える。少佐は帰艦してください」
「へ? うん」
「はいよ……やはり嬢ちゃんは自分で面倒みたいか?」
「スカイグラスパーじゃ練習相手に不足してるからです」
「お、おい! この前から、えらく俺に厳しいな!」
当たり前だ! アンタには気を許すもんか! 絶対にアンタのルートは阻止だ。それにロドニアに行けない八つ当たりでもある。
「さあ、邪魔です。消えてください」
「うぐっ!…ふっ、まあいい……じゃあ、先に戻ってるぞ」
ん? なんか不穏な気配が?……まあ、いいか。

 

「で、どうするの?」
テクテク近付いてくるバクゥ……なんか可愛いな。
犬か……ステラ、どうしてるだろ? 訓練辛いのかな? もう薬とか打たれてるのかな?
「おい……アンタ何してんの?」
「え?」
「え? じゃ無いでしょ!」
ん?……何を怒ってる?……って、おお! なんだか、つい可愛くて頭撫でてた。
でもさ、MSに乗ってて、目の前にバクゥが居たら、頭撫でるの普通じゃね?
「で…ど う す る の?」
何か、凄い怒ってる……
「え〜と、次はだな、ビームサーベルに慣れてもらう」
「え? わ、分かった。どうすればいい?」
うん。流石に訓練の内容になると素直だ。
「俺が攻撃をするから、それをかわしながら接近してビームサーベルで一閃する。その後は直ぐに離脱。
 基本的にこれの繰り返し」
「ねえ? 私の攻撃が当たっても当たらなくても離脱なの?」
「そう。間違っても人型相手に足を止めるな。まあ、これは相手が人型に限った事じゃ無いけどな」
「そ、そうか」
あっさりと同意。バクゥの性能と特徴を把握してる証拠だ。優秀な生徒で助かる。
「今度の戦闘はザウートやジンオーカーが居る可能性がある。その対策は?」
「ザウートは格闘武器が無い上に動きが遅い。だから正面を避けて接近しながら砲撃。近付きすぎたらサーベルで斬る。ジンオーカーは……聞いたっけ?」
「いや。教えてない」
「あのね……」
「自分でも考えろ。それも訓練だぞ」
「うっ……ごめん」
「まあ、いいさ。ジンに関しては、ストライクと同じと思っていい。動きは遅いけどね。基本的にはザウートや戦艦と一緒。ただ接近したときに武器を持ち替える事がある。相手が剣を持ったら、迂闊に近付くな。バクゥの単調な斬撃と違って色んな角度から斬り込んで来るからな」
「相手が剣を持ったら距離を置いて砲撃で良いのね?」
「そう。ただストライクと戦うんじゃ無く、その辺を考えながら攻撃しろ。じゃあ始めるぞ」
「分かった」

 
 

第14話〜〜強くなろう?

 
 

 

「疲れた……」
訓練を終えたフレイがヘルメットを取ると首を押さえながら呟く。
やはり、MSの機動はナチュラルの少女には辛いようだ。まあ、当たり前だけどね。
だからって、プロテインは如何なものか?
「今日の訓練は終わりだ。それと明日は休みだから、ゆっくりしていいぞ」
「え? 訓練は!?」
「無し。明後日は作戦を実行するからな」
「だから、作戦は明後日でしょ? 明日はどうするのよ?」
「体力の回復。もし敵が攻めてきても、余程の事が無い限りはフレイは出さない」
「ちょ、ちょっと…」
凄く不満そうな顔だ。まあ、気持は分かるけどね。でもこれは決定事項。艦長の許可も取ってる。
「訓練を始めて、もうすぐ2週間になる。正確には12日。その間休みも無しによく頑張ったよ。
 俺の予定では、もう少し前に熱を出すかしてダウンする筈だったんだが……意外と丈夫で驚いた」
「だったら…」
「全身がだるく無いか?」
「…………す、少しだけ」
「1日休めば、それが完全に回復する。その後は今より体力が付いてるから……これは明後日の作戦でフレイに期待してるって事だ。だから従ってくれ」
「……う……」
不満そうだ。何で、こんなに頑固なんだ? 最初は、すぐに休ませろ言ってたのに……
「キラは、平気なんだよね?」
「え?」
「キラこそ休んでないじゃない。私が訓練を始める前から戦い続けてる」
「それは……」
「コーディネイターだから? だから平気なの?……ズルイよ……」
力の無い者は全て思う事。俺だって、自分より才能を持った者を羨ましと思う。
そして、フレイでさえ例外では無かったってことか……
でもダメだ。お前は、そんなものに頼ってはいけないし、必要もない。
「もし、私がコーディ…」
「フレイ、お前はコーディネイターを皆殺しにしたいんだろ?」
「え!? そ、それは…!」
その様子だと、自分が言ったうわ言を憶えてお無かったらしいな。
「それは、どうすれば実現できると思う?」

 
 

フレイは困った表情で俯く。まあ、黙ってたつもりだった自分の企みが知られたのと、回答が困難な問題を出されては無理も無い。
「あのな…これは俺の考えだから、正解じゃ無いかもしれない。だからフレイは参考にするだけで良いから…」
そう前置きをしてフレイに聞かせる。そうしないと、フレイに自分の答えを出して欲しいっていう俺の目的が達成できない。
「本当だったらさ、コーディネイターは、すでに滅んでいなきゃおかしいんだ」
「え?」
「だってさ、ジョージ・グレンの告白の後、コーディネイターが作れるってなったけど、国際法では直ぐに禁止された。この時に我が子をコーディネイターにしようなんて思わなければ今の状態は回避できた」
「で、でも…」
「そう。でも産まれた。いや、作ったんだ。それが今のプラントの評議会の議長シーゲル・クラインを始めとするコーディネイター達。
 でも、彼等にしたって、実は問題はある。フレイはコーディネイターの生殖能力の話、聞いたことはある?」
「うん。子供が出来にくいんだよね。おまけにコーディネイターの子供同士は、もっと出来にくい」
「正解」
そう。だから、俺とルナに子供が出来たときは大騒ぎになった。
それと同時に、俺達の子供には友達がほとんど出来なかった。だって周りに子供が居ないんだから。
そこに目を付けた女帝…もとい、可哀想と思った子供好きな議長、ラクスさんは俺達が仕事で不在の時は面倒を見てくれた。
ルナが俺の元を出て行ってからは、忙しくなったルナの代わりに殆ど彼女が面倒を見てくれた。
本当に感謝してる……まあ、ルナに内緒で会わせてくれと頼んだら何故か殴られたけど。しかも椅子で。
笑いながら『顔洗って出直して来て下さい』と言われたときは、本気で殺られると恐怖した。
まあ、そんなラクスさんもキラさんとの間に子供は出来ない。アスランとだったら出来るらしいが、本人は死んでも嫌だそうだ。
そして、彼女はこれまで実施されてきた婚姻統制を廃止した上に、新たにコーディネイターを産む事を厳しく禁じた。
「キラ?」
「あ、ごめん」
少し思い出に浸りすぎた……
「要するにさ、本当だったらコーディネイターなんか、ほっときゃ滅ぶんだよ。わざわざ、危険を冒してまで、戦う必要は無い」

 
 

俺の答えに納得出来なかったんだろう。フレイは反論しようとする。
「そ、そんなの!」
「そう。残念ながら、そうはならない。何故か?……俺の両親はナチュラルだ」
正確には違うけどね……でも、キラさんの存在は、説明するのに助かる。
「それって……」
フレイは俯いて、続きを言えずに黙り込んだ。俺の言いたい事を察してくれたんだろう。
「そう。コーディネイターは人の欲望の産物。さっきのフレイみたいな考えが無くならない限り、コーディネイターは滅びはしないんだ」
そう。ラクス・クラインもコーディネイターを作る事を禁止したにも関らず、コーディネイターを作ろうとする者は無くならなかった。
ラクスさんはコーディネイターの緩やかな消滅を願っているようだ。
副司令のように未来へのビジョンがあったわけでは無い。それでも第2次ヤキン・ドゥーエで戦ったのは、そのためだったんだろう。
おそらく彼女に言わせれば、どうせ滅びるのに何で戦ってるんだ? って、とこだろう。でも彼女は知らない。人は、もっと欲深い生き物だって。我が子をコーディネイターにしたいナチュラルは未だに居る。
それだけじゃ無い。コーディネイターによる人工子宮の開発も秘密裏に進める奴がいる。
自らの滅亡を享受するほど、諦めがいい人はコーディネイターにも少ない。
そう。世の中は彼女みたいに達観した人間だけで構成されてはいないって、よく理解していない…
つーか、その前に、あの人は自分が非常識の塊だって気付けよ先に! 
なんか考えが分かんないんだよ。不思議ちゃん!
キラさんは、まだ理解できる。あの人は欲望に忠実だし、ずぼらだし、適当だし、そんで能力だけは高いから始末に終えない。
まあ、そのキラさんを尻の下に敷けるのは、ラクスさんくらいじゃないと無理なんだろうな……
他の人では、あの人を動かす事すら不可能だ。ほっとけば絶対にニートするし。
「キ、キラ?」
「あ、ごめん」
いかん。また思考がぶっ飛んだ。どうも、ラクスさんのことを考えると脳がおかしくなる。
「え〜と、とにかく、フレイはそのままで良いんだ。フレイは自分がどれだけ凄いか理解してないよ」
「え? 私が?」
「そう。フレイは強いよ。多分、今なら1対1でやり合えばザフトの一般のパイロットと互角以上に戦える」
「……う、うそでしょ?」
まあ、条件付だけどね。でも、彼女の乗るバクゥに勝てるジンやザウートが少ないことも確か。

 
 

信じられない様子だな。まあ、あの後は戦ってないから分かってないのも当然か。
「フレイは天才だよ。そして、その強さの秘密はコーディネイターでは、決してありえない種類のものだ。君はナチュラルに産まれた事を誇って良い」
「私の……強さの秘密?……それって?」
「………う〜ん、言葉では説明が難しいな」
いや、臆病で残酷なんて言えないだろ? あと判断力を褒めれば自然とラクス・クライン人質事件に触れなきゃいけないし……それって褒めづらいよな?
「と、とにかく保障する。フレイは強いから、明日は安心して休んで。その分、明後日の戦闘では期待させてもらうから」
「うん。分かった。それにしても……」
「ん?」
「キラって、年寄り臭いね」
…………あ? 今、サクっと心臓にナイフが刺さったイメージが……まあ、確かに本当は30過ぎのオッサンだけどね……
「い、いや! あのね! 別に貶したわけじゃ無いのよ!」
「あ、ありがと……」
「お、落ち込まないでよ。そ、その……なんかさ、パパを思い出しちゃって……」
「パパ?」
そう言って、黙り込むフレイ。そう言えばフレイってファザコンだっけ?…………つーことはだ。
フラグ起った? 禁断の親子プレイ再び? おめでとう俺!……あっ! でも、彼女サイの婚約者。
……でも、終ったって言ってたし……でも、サイは未練が……でも、親子プレイ……
「おーい、キラァ!」
そんな難問に取り組む俺の思考を中断させる声。
「トール? どうした?」
おまけにサイとカズイも……何の用だ?
「お前さ、ロドニアに彼女が居るって本当か?」
「へ?」
「さっき少佐に聞いたんだ」
あ、あのオッサン! 変な仕返し考えやがって!
「じゃあ、私、部屋に戻るから」
そう言い残して、さっさとこの場を離れるフレイ……しまった!
「なあなあ、どんな子なんだ?」
「ど、どんなって……」
今日こそ確認した。ムウ・ラ・フラガはやはり俺の天敵だったと。
何時か始末しちゃる!

 

 

僕がトレーニングを始めて一週間が過ぎようとしていた。
「シィン! ペースが落ちてるぞ! もうへばったのかぁ!」
「まだまだぁ!」
「よぉし、その意気だぁ! お前は世界を取れる器だ!」
「まかせな! とっつぁん!」
そんなことを言いながらジョギングを続ける僕とマユちゃん。まあ、マユちゃんは自転車なんだけどね。
今日の設定は、僕はチャンピオンを目指すボクサーで、マユちゃんはトレーナーのおじさん。
毎日、違う設定でやってるから飽きない。つーか楽しい♪ 
「へへ……とっつぁんにピカピカのベルトをプレゼントしてやるぜ」
「なっ! 生意気言ってんじゃねえ! ひよっこがぁ!」
甲高い声でオッサンの口調のブルマ少女……意外と萌える。
そして、ジョギングが終るとマユちゃんをお腹の上に乗せてブリッジ。もちろん腕は使わず首と足で体重を支える。ちなみに手はマユちゃんがずり落ちない様にマユちゃんの手を握って支える。
「さあ、動くぜぇ〜」
マユちゃんが、そう言いながら身体を揺すり始める。
「ぐっ…」
歯を喰いしばって、耐える……頑張れ僕! 変形の騎乗位と思えば……雑念禁止!
「よし、1分経過。30秒の休憩だ」
「はあ…はあ…はあ…」
ブリッジを止め、お腹にマユちゃんを乗せたまま横になる。呼吸は苦しいが、この重さが心地よい。
「2セット目!」
「ふぬっ!」
そして再びブリッジして耐える。これを毎日1セット増やして行ってるから、今日は残り6セット。
この身体も悪くは無い。僕の身体に比べると伸びは遅いけど、それでも一般のコーディネイターよりは早いと思う。
それに、普通に訓練するのが最近では面白くなってきている。
前の身体じゃ経験できなかった事だ。
「よし! 次は腕立てだ!」
「おう! きやがれ!」
次はマユちゃんを背中に乗せて腕立て伏せ。この腕立て伏せも奥が深い。掌を置く位置で付加のかかる場所が変わる。

 
 

それに、背中にマユちゃんを乗せて高い負荷を与える事で、腕を曲げて固定する訓練がはかどる。
普通は腕立てって言えば、プッシュアップなんだけど、元々Gに耐える訓練だから、腕を動かす筋肉より固定する筋肉が必要だ。
つまり、僕が腕を曲げた状態で固定し、背中の上でマユちゃんが暴れる。
「くっ……」
腰から肩まで動かれ、負荷が掛かるのを実感する。これもブリッジと一緒で毎日増やしてる。
そして筋力の基礎である腹筋と背筋も鍛える。
それらに耐えると終了の時間がやってくる。
「お、終ったぁ〜〜」
もう1歩も動けない……それどころか指先まで震えてる。乳酸プリーズ!
でも、これが重要。限界まで鍛えて筋肉の繊維を傷つける。そこから回復する筋肉が新しい力になる。
……って、マユちゃんが教えてくれた。
うん。実はトレーニングのメニューはマユちゃん任せ。
「お疲れ様、お兄ちゃん♪」
素に戻ったマユちゃんが、完全にグロッキー状態の僕の汗をタオルで拭いてくれる。
そして膝枕をしてもらった状態で、栄養ドリンクのストローを咥え飲んでいく……至福♪
いや。本当の至福はこの後だ。
「落ち着いた?」
「うん……よっ…と」
僕は立ち上がると身体を伸ばしてみる。体中が痛い。でも動けるようになった。
「大丈夫」
「じゃあ、帰ってお風呂は入ろ♪」
「う〜動けないから身体洗えない」
「もう! 汗臭いからダメ。今日もマユが洗ってあげるから」
そう真の至福は、この後のお風呂タイムにある。これでこそ今日も頑張った甲斐がある。
「ところでマユは達磨って可愛いと思わない?」
「え?……うん」
「良かった♪」
「ん?」
ふっふっふっ……待ってろよ3人娘。マユちゃんに達磨って花をプレゼントしてやる。

 
 
 

続く

 
 
 
 
 

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