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第16話〜それぞれの変化〜

Last-modified: 2013-04-22 (月) 18:37:20

「海か……」
ついにアークエンジェルは紅海に出た……つまり、ロドニアから離れたんだ。
俺は視線を北に向ける。そこに居るはずの彼女を思い浮かべる。
「ステラァァァ!」
今は何してるんだろ? それと何カップかな? やっぱりノーブラで……
「へぇ〜、ステラって言うんだ? ボウズの彼女」
また出た……俺の天敵。
「何ですか?」
「いや、なんか黄昏てんなって思って」
海上を航海する船の甲板の上で2人きり……コイツ、実は俺とのエンディングを迎えたいのか?
それは認めん! だからロドニアに……
「……ねえ、今からでも…」
「無理だって」
まだ、何も言ってないのに……つーか、この人にとってもステラは重要人物…
「何でアンタがステラの事、ほっとけるんだ!?」
「い、いや、ステラって子は知らんぞ? 俺の知り合いか?」
そりゃあ、まだ会ってないはずだけど……
「記憶じゃ無い! 魂で感じろ!」
「知るか! なに無茶苦茶言ってやがる!」
「お〜い! キラァ!」
そこへ、何だか慌てた様子の声……
「トール?」
「キラ、フレイが……」
ん? どうしたんだ?

第16話〜〜それぞれの変化

トールに言われて向かった先はMSの格納庫。
「じょ、嬢ちゃん……」
「な、なんか機嫌悪いんだけど……」
表情までは分からんが、バクゥを見上げる後姿は不機嫌オーラを発している。
そこから少し離れて、サイを始めとしたヘリオポリス組。みんな引き気味だ。
「じゃ、俺はこれで…」
「待て!」
逃げようとする少佐を掴むと、俺の声に反応したフレイが振り返る。
「あ、キラ、良いところに…」
「な、なんです?」
「ん? 何で敬語なの?」
「べ、別に……」
そんな人殺しみたいな目で見られたら……って、すでにフレイは童貞じゃ無いんだ……あれ? 女でも
殺した後って童貞捨てたって言うのか?
「まあ、良いわ。それより、さっき曹長に聞いたんだけど、この子泳げないってホント?」
フレイがバクゥを指差しながら訊ねる。つーか、MSにこの子ですか……
「うん。泳ぐのは無理」
「ストライクは?」
「基本的に無理だけど……少しは動ける」
ストライクで水中戦なんか避けたいが、いざって時のために調整はしてある。ちなみに装備は右肩に
ランチャーパックのコンポウェポンポッドに魚雷を詰め込んだのと、左腕にパンツァーアイゼン。
後は手持ちのバズーカー。ちなみにシュベルトゲベールを持たせるって案もあったけど、水中で
あんな長いものを振り回すのは難しいと判断して却下。別にアーマーシュナイダーがあるんだし。
「だったら、バクゥも…」
「無理なものは無理」
「じゃ、じゃあ、アレは?」
続いて指差したのは……ジン? 何であんなものが……あ! そうか、ミゲルが最初に乗ってたやつ。
OSを奪うために鹵獲したんだけど、まだ置いてたんだ。
「あれも無理。泳げない。つーか、あんな羽で泳げると思うのか?」
「だったら、私はどうするのよ!」
「あれ」
俺が指差す先には、スカイグラスパー2号機。
「……い、嫌よ! 私、モビルアーマーなんて! モビルスーツが良い!」
「いや、そんなこと言われても……」
「だったら、またパチってきてよ! 得意なんでしょ! MS盗むの!」
「ちょっと待て! お前は俺をどんな目で見てる?」
しかもパチって? お嬢様じゃ無かったのか? あ! サイが引いてる……
「だって……」
そう言いながら、バクゥとジンを見る……そりゃあ、たしかに俺が鹵獲したんだが……
「ねえ、モビルス〜ツゥ〜」
そんな甘えた声出されても、無理なもんは無理。
例え、水中用MSが出てきても、水中戦では鹵獲する余裕は無い。
「さっきから黙って聞いてたが……ここにアーマー乗りが居るってこと気付いてるか?」
ん? 気付いてたけど、それが何か?
「まあ、ちょうど良い。おい、お前たちも!」
「「「へ?」」」
ヘリオポリス組に向かって呼びかける。
「ちょっとした適正試験だ。みんなでシミュレーターするぞ」
「は? 適正試験って何ですか?」
「いや、まあな。艦長も中尉も嬢ちゃんの活躍に驚いてな。他の連中はどうだろ?って話が出てたんだ」
なるほどね……ま、気持は分からんでも無いが……さすがにムシが良すぎる。
だいたい、MSやMAに乗って戦うなんて、みんなは納得しな…
「やる! 俺やります!」
トール、遊びじゃ無いんだから……
「俺も、ぜひ!」
サイ? なに熱血してる?
「じゃ、じゃあ私もやってみようかな」
「え? じゃあ……僕も」
ミリィ、カズイまで……つーかカズイも嫌ならやらなくても……この空気じゃ無理か。
「ハァ……仕方ないか……MSじゃ無いと意味無いと思うんだけど……」
最後にお嬢様も参戦を決意……それにしても、何でそんなにMSに拘るんだろ?

「ん? お前ら、何してんだ?」
「あ、カガリ」
適正試験の最中に現れたのは、いかにもこういう類が好きそうなお姫様……
「みんなにMA乗りの適正があるかを見てるんだ」
「へ〜〜」
「ねえ、カガリもやってみる?」
そんなこと言ったら、やるって言うに決まってる。
「え?……ん〜〜、やってみたいけど遠慮する。私が出来ても意味ないしな」
「え!?」
アスハが拒否した? 思わず声を出して驚いた。
「じゃ、私、虎に餌やってくるから」
「じゃあね〜」
「おう、また後でな」
え? なんだ? どうなってる?
「どうしたんだ? キラ?」
「え? なんか態度が変かなって……」
驚いた俺が小声で話しだすと、雰囲気につられてか、トールとカズイが近寄ってきて、思わず小声で
話し始めた。
「何が? 前からミリィともフレイとも仲良いけど? なんかフレイとは色々と父親の話してるって」
「でも、カガリって王女様だろ? それ考えると変って言えば変じゃないかな? 僕たちにも普通に
 接してくるし」
いや、カズイ。俺が言いたいのは、そうじゃ無く……え?
「なあ、トール。父親って?」
「ああ、フレイのお父さん、大西洋連邦のお偉いさんだったろ? 興味あるみたい」
……アスハが政治に関心を? 何があったんだ? いや、ありえない。だってアスハだぞ?
「それにしても、ホントに変わったお姫様だよな」
「アンタ達、何コソコソしてるのよ?」
「いや……別に」
「ああ! そうだ。結局オーブに行くの決定したの?」
俺が誤魔化すために、トールに別の質問をする。
「ああ、ついに中尉が折れたって」
やはり、そうなったか。

オーブに立ち寄ってアスハを降ろすと言った艦長に、真っ直ぐにアラスカに行きたいと主張する中尉。
艦長の主張は補給無しじゃ持たない。
だからオーブでアスハを降ろして、代わりに補給をしてもらうよう交渉する。
まあ、人情的にアスハをアラスカに、連れて行きたくないってのもあるだろう。
一方、中尉の主張は、食料や水を切り詰めて、アラスカに直行。理由は、それが任務だから……
当然ながら艦長の意見を皆が支持。よって、相変わらず中尉は嫌われた。
だが、中尉の考えが実は正しい。俺もアスハのことを知らなければ中尉を支持しただろう。
それは、皆が知らない表立っては言えない理由。俺も聞かされてないけど、推測できる。
今のアークエンジェルにとって、オーブに行くのは危険極まりないと……
つまり、俺達は口封じで監禁される可能性がある。
悪けりゃ命まで……この可能性については論議出来ない。
何故なら張本人のアスハが、この艦に居るから彼女の耳に入れるわけにはいかない。
その理由とはオーブのお姫様の御乱行を知ってしまったから……実際に、中尉はアラスカに伝える
気だしね。
まあ、アスハなら大丈夫だと思うし、正直、このまま無事にアラスカまで辿り着けるとも思えない。
確率としては、アスハの人の良さに賭けた方が分がある。
そもそも、補給を送らない連合が悪いんだ。だから、今回は俺も艦長の味方だった。
いや、別にオーブに行ってマユを見たいとか、マユの声を聞きたいとか、マユの匂いを嗅ぎたいとかじゃ
無いからな。
あくまで冷静な計算の上で、艦長を支持した。
それに、副司令を早めに病院で見てもらいたい……あれ?
「ん? そう言えば、虎に餌って?」
「え? カガリはバルトフェルドの世話してるよ」
「マジ?」
「大マジ。何かプラントの話聞いてるって」
…………う、嘘だろ? アイツが、そんな……そうだ! きっとプラントの美味しい食べ物とかに
興味があるんだ。間違いない。
た、確かに未来のアイツは真面目に政治に取り組んでた。
でも、それはオーブが取り返しのつかない惨状になってからの……
「おい、次はトールの番だぞ」
「あ! はいはい。今行きま〜す」

試験が終って、今は男だけでお茶会。ちなみに女性陣は別の場所でご一緒らしい。
空しいとか言うな。男同士の付き合いは重要なんだぞ。
それにしても……
「な、なあ、何でサイは落ち込んでるんだ?」
「察してやりなよ」
「フレイに勝って、男を見せたかったんだよ」
そ、そんな無茶な……アイツは、一種の化け物になってきてるのに……
「でも、トールは結構良かったじゃん」
「え? まあ、俺はアークエンジェルの副操縦士やってるし……」
ある意味、あのアーノルド・ノイマン氏の愛弟子だ。凄くもあろう。
だが、パイロットとして戦場に出るには危険なレベル。
「でも、フレイの成績みたらな……」
「凄かったよね……」
「どうせ、俺なんか……」
「げ、元気出しなよ。サイ」
ちなみに結果はフレイが断トツで、大きく離れて、トール。
そこから結構離れて、サイ、カズイ、ミリィの順。
ちなみに後ろ3人は混戦で誰が勝ってもおかしくない。
つーか具体的に言えば、出撃した途端に瞬殺された。
「まあ、ああいうのは慣れだよ。フレイはパイロットだし、トールは操縦をやってる」
「じゃあ、俺も出来ると思うか?」
「フレイほど努力すれば、あるいは」
そう言えば沈黙するしかない。
努力なんて簡単に言うけど、フレイのそれは鬼気迫るものがあった。
「何かさ……彼女、変わったよな」
「それは認める」
「昔はさ………」
サイの口から語られるフレイの思い出…………それは紛れも無いお嬢様。うん。別人だね。
「なんだかなぁ〜」
「元気出せよ。女はフレイだけじゃ無いって」
何で男同士で集まると女の話になるんだろ?

僕は教官になったけど、教えるのは得意じゃ無い。
そんなわけで、馬場さんには僕のサポートをしてもらってる。
本物のシンだったら、厳しいけど理に適った教え方をするし、戦術やフォーメーションも上手い。
でも、僕はそういうの苦手だから……その点は馬場さんが優秀だった。
だから、基本は3機の小隊が馬場さんの指導の下考えたフォーメーションで、僕と戦う。
まあ、僕に勝てるよう努力すれば自然と強くなれるって寸法だね。
そして小隊同士でも戦闘する。むろん欠損時の訓練もしてるけど、僕はその辺はノータッチ。
「さて……」
目の前にはオーブのパイロットが整列してる。これから訓練前の儀式を行うんだけど……
ちなみに発案者は馬場さん。
僕はオーブのパイロットと言えば馬場さんってイメージがあったけど、この頃は違ったようだ。
でも、僕が馬場さんにMS隊のリーダーを任せるようになってからオーブは変わってしまった。
元々、素養はあったんだけど、それでも……
「教官! 準備終了です!」
正直、気が重い……オーブのこの空気には慣れないけど……マユちゃんもオーブ人なんだな……
こういうの好きらしい。
頑張れ僕……よし、やるぞ!
「我々は何だ!」
「「「オーブのMSパイロットであります!!!」」」
「オーブの理念とは何だ!」
「「「他国を侵略せず・他国の侵略を許さず・他国の争いに介入せず!!!」」」
「ならば、オーブに侵略する愚か者はどうする!」
「「「叩き潰します!!!」」」
「貴様等にその力はあるか!」
「「「あります!!!」」」
「では見せてみろ!」
「「「了解であります!!!」」」
……汗くさっ! オーブ軍全員が…3人娘まで馬場さんみたいになっちゃった……
僕は取り返しのつかない事をしてしまったんだろうか?

続く

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