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第17話「激闘の先に」

Last-modified: 2016-05-01 (日) 00:01:30

ガンダムビルドファイターズ side B
第17話:激闘の先に

 

「それでは皆様、お待たせしました。これよりガンプラ世界選手権
 準々決勝を行います!」
司会のお姉さんが威勢のいい声で叫ぶ。ついに出揃ったベスト8。
ベテランありニュージェネレーションありとバラエティに富んだ8人のファイター。
その8人が壇上に上がり、パイプ椅子に腰掛けている。
一人一人、緒戦の内容を織り交ぜて紹介されていく。

 

「あのメイジン・カワグチをギリギリで撃破、ポニテが似合う16歳!
 アルゼンチン代表、リーナ・レナートぉーっ!」
「粒子が無ければ作ればいいさ!驚異のソウルドライブメカニズム!
 日本代表、サトオカ・ソーラぁーっ!」
「長年の宿敵をついに打倒!フェリーニの3連覇を止めたのはこの人!
 アメリカ代表、グレコ・ローガンーっ!」
「ガンプラびっくり箱は健在、ガンプラバトルのエンターテイナー
 ドイツ代表、ライナー・ちょまぁーーっ!」
「今大会最年少の13歳、いいかげんバレバレの正体を明かして欲しいぞ(笑)
 日本代表、不死身のモック使い、レイラ・ユルキアイネンーっ!」
「九州の若き白狼、ストイックな求道者精神で天才ルーカスに雪辱!
 日本代表、マツナガ・ケンショウーっ!」
「騎士道精神に目覚めたか!?見事な剣裁きがギャンに似合いすぎるぞ!
 日本代表、サザキ・ススムーっ!」
「まるでキャストパズルのような変形オッゴ、独自のセンスでかつての世界王者を撃破!
 スイス代表、エマ・レヴィントンーっ!」

 

 こうして見ると戦術もガンプラの改造方法も、似たようなタイプがほとんどいない、
マツナガとサザキくらいか。
それだけに誰が勝ちあがり誰が敗退するのか、まったく予想できないメンツである。

 

「以上8人による準々決勝、まずは第一試合、リーナ・レナート選手VS
 サトオカ・ソラ選手、用意して下さいっ!」
他の選手が退場し、中央のバトルシステム筐体の左右に分かれるリーナと宇宙。
ステージが粒子に覆われ、両者がガンプラをセット、共に修理は完璧に出来ている。
そんな中、宇宙は試合前に兄、大地から受けたアドバイスを思い出していた。

 
 

「いいか宇宙、相手があの発光装置を使ったら、お前はまず『耳抜き』をするんだ。」
「え?耳抜きって、あの気圧差ができた時にする・・・アレ?」
「そうだ、耳に力を入れて鼓膜の内圧を調整するアレさ、お前は得意だろ?」
「そりゃまぁ、宇宙飛行士を目指すなら絶対必要だしね、でもどうして?」
「いいから、それを絶対に忘れるんじゃないぞ!」

 

 −STAGE SPACE−

 

「リーナ・レナート、リーディングリーオー、行きます!」
「サトオカ・ソラ、トリックスター、テイクオフします!」
両者のバトルが始まる。共に1回戦では謎の残る性能を見せた機体だけに
世界中のガンプラビルダー達の注目が集まる。
「先手必勝!」
トリックスターにチャージの暇を与えずに開幕マシンガンを放つリーオー、
両腕に抱えたその銃による乱射のせいで、トリックスターは防御に回るハメになる。
そのまま攻撃の手を休めずに、トリックスターの周囲を回るリーオー。
1回戦同様に中間距離を維持したまま・・・

 

「そうだリーナ、それでいい。ヤツをあまり飛び回らせるなよ!」
観客席からフリオが呟く。愛娘の戦術の良さに感心しながら。
「(さて・・・果たしてどこまであの戦法がバレずに使えるものか・・・)」
隣でマリオが顎に手を当て、神妙な顔付きで考える。メイジンを仕留めた『あの戦法』は
あまり多用して暴かれると問題になる。かといって今回の相手は粒子を生産するという
離れ業を持つ相手、できれば時間をかけずに倒したい。となれば『あの戦法』を
使わざるを得ない。

 

「宇宙、忘れるなよ、俺が言ったことを・・・」
反対側の観客席から大地が呟く。リーナの戦法は分かっている、しかし彼女の戦法は
『分かっていても防げない』ところに恐ろしさがある。そのまま宇宙に伝えても
結局意味が無い。そこであえて宇宙の得意な『耳抜き』を指示したのだが・・・

 
 

 主砲で反撃するトリックスター、もともと盾が大きいトリックスターに
中間距離でのマシンガンはそれほど驚異ではない。開き直って動き出せば
ペースを掴めると考えたのだ。
リーオーが主砲を避けたその一瞬を利用してバーニアを吹かし加速、操縦桿をデタラメに
動かし、乱軌道移動に持ち込む。
「(彼のソウルドライブは、水平姿勢維持装置(ジャイロ)の役割も果たす。それはつまり
 あれだけ動いていても、こちらが見えているということ・・・好都合だわ。)」
相変わらず中間距離を維持したまま、今度はバスーカを手にするリーオー。
狙いをつけず、ボールの行動範囲に数発を打ち込む。
と、その弾がトリックスターの周辺で次々と爆発する、ただの弾ではない、炸裂弾だ。
「うわぁっ!」
爆風を受け、弾かれるトリックスター。彼の乱軌道移動はこのテの『置いておく』武器に弱い、
下手をすると自分から突っ込んで自滅のケースすらある。
「くっ!」
乱飛行を止め、弧を描いてリーオーに突進するトリックスター。しかしリーオーは相変わらず
近づけば離れ、離れれば距離を詰めてくる。攻防をしながらではあるが、どこか時間稼ぎの
ような気配すらある。

 

「相変わらず、か。」
選手席からメイジンが呟く。彼ですら未だリーナの戦法を理解してはいなかった。
もっとも実戦向きの性格なので、いざリベンジして見破りたい、と思う分が強いのだが。
「今更だがよーメイジン、あのときお前さん、なんで左に斬りつけたんだ?」
チョマーが質問する、壇上に上がっていた選手もすでにこちらに移動していた。
「・・・勘さ、それだけだ。」
そう答えるメイジン。嘘ではない、あの時メイジンの勘はニュータイプのごとく冴えていた、
だからこそ、その勘が外れたことが不思議でならなかった。
その会話を聞いて、ややいぶかしい顔をした選手が一人、グレコ・ローガンである。

 
 

 リーオーがバスーカのマガジンを入れ替える。次に放ったのはワイヤーミサイルだった。
ワイヤーを引いたミサイルを連射し、トリックスターを追いかける。
獲物を絡め取るクモの糸のように。
「そんなの県大会で経験済みだよっ!」
機体を回転させ、あえてワイヤーを巻きつけるトリックスター、県大会の準々決勝で
アシュラジオング相手にやったように、ワイヤーを巻き込んで相手との距離を詰める。
慌ててバスーカを離すリーオー、ヒートシミターを抜き、迎撃体制を取る。
突進するトリックスターに交差斬りを繰り出すリーオー、皮肉にもその一太刀は
トリックスターに巻きついたワイヤーを切断してしまった。
至近距離で同時に振り返る両者。

 

「この距離なら!!」
シールド先のビームダガーを点火し、リーオーに突撃しようとしたその刹那、
リーオーの腰にある発光装置が景色を白一色に染めた。
「っ!・・・上かぁっ!!」
宇宙の意識が上に向く。と、その時、彼の脳裏に思い当たる言葉があった。

 

 ―いいか宇宙、相手があの発光装置を使ったら、お前はまず『耳抜き』をするんだ―

 

「耳抜き・・・んっっ!」
いくら宇宙ステージとはいえ、リアルに耳抜きの必要は無い。それでも律儀に兄の
指示に従う宇宙。
その瞬間、コックピットの警報装置が鳴り響いた。下方向の敵の姿を表示して。
「下っ!?うああ・・・」
嘆きながらも反射的に操縦桿を動かしたおかげで、リーオーのヒートシミターは
カスるだけで済んだ。
「よけた!?っていうか上に動かなかった・・・どうして?」
リーナも目を丸くして驚いている。

 

「よっしゃ!よく避けた宇宙!」
「バ、バカな!効いてないだとっ!!」
観客席の左右で逆の感想を叫ぶ大地とフリオ、叫んだせいでお互いの目が合う。
焦りの表情で大地を見るフリオ、ドヤ顔で返す大地。

 
 

「・・・やっぱりかっ!」
選手室でそう叫んだのはグレコだった。他の選手が一斉に彼を見る。
「みんな、気付いたか?今リーオーが発光した瞬間、上を見たんだ。
 ・・・お前ら全員が、そして観客全員がなぁっ!」
「「「な・・・!?」」」
思わぬ言葉に驚愕する選手たち。
「あれは・・・間違いない、サブリミナル効果だっ!!」

 

「なんて・・・コトだ。」
主催席で青くなっているのはニルス・ヤジマだ。隣のキャロラインが心配そうに視線を向ける。
「・・・確かに、ガンプラバトルのルールでは禁止の明記は無かった、だけど、まさか・・・
 サブリミナル効果を使ってくるなんて!」

 

  ーサブリミナル効果ー
 見る人の視覚にそれと気付かせないように見せ、意識下に擦り込ませる技法。
一例として、アメリカのある映画ではフィルムの中に数分に1コマだけ、コーラとポップコーンの
画像を挿入しておいた。映画を見た人はそのシーンを認識してはいなかったが、
映画の後、売店にはコーラとポップコーンを求める人の列が出来た。
このように、映像による洗脳効果のあるこの技法は、現在の映像作品では規制、自粛されている。
ただし、ガンプラバトルのルールブックには、この明記は無い。

 

 サブリミナル効果発祥の地、アメリカ人だからこそ、グレコとニルスはその謎に気付いたのだ。
そして抜群の反応速度を誇るメイジンだからこそ、この仕掛けにハマってしまった。
だが、宇宙は大地のアドバイスにより、発光直後に耳抜きをし、ワンクッション置くことで
反射的に誘導されるのを防いだのだ。

 

「だがよ、どうやって?どこで見せているんだ?」
「決まっているだろう、リーオーのカタチをよく見りゃ、自然にある部分に目が行くだろ?
 お前さん家にテレビは無いのか?」
「あっ!・・・頭のモニターか!!」
「・・・考えたな、リーオーのデザインを逆手にとって、無意識に注目する頭部カメラに仕込むとは。」
選手たちが次々に謎を解いていく。その声を聞きながら、メイジンがサングラスを取り、呟く。
「罠を張っていたのは・・・わたしの意識化に、だったのか、見事だ。」
その呟きを効いて、グレコが呆れて返す。
「おいおい、あんなやり方で負かされて、クレームの一つもないのか?」
「ガンプラは自由だからな。」
さらりと返すメイジン、ぶれないなぁ、と呆れる周囲。

 
 

「見抜かれた以上、この戦法に拘ってても仕方ないわ。」
ヒートシミターをもう一本抜き、二刀流で構えるリーオー。突撃してくるトリックスターに
剣を合わせようと構える。
トリックスターは高速でリーオーの回りを回っている。相手のスキを伺って突撃技を狙う宇宙。
やがてトリックスターから粒子が溢れ出し、緑色の尾を引く彗星となる。
同じ軌道をまわっているせいで、まるで土星のリングのような輪が出来上がる。
「・・・待てよ、粒子が多いほど出力が上がる、でもそれだけじゃなくて粒子が演出する
 効果も上がるってことか、それなら!」
何かに気付いた宇宙、リーオーの周りをさらに回転、しかも座標をずらして、円から球の軌跡を
描くように飛び回る。結果、リーオーの周囲に出来た輪は、球状にリーオーを取り囲む。
「な、なに?何をする気?」

 

「いかん、リーナ、そこから脱出しろっ!」
マリオが叫ぶが、それより先に宇宙が行動に出る。
砲塔のマガジンを外し、それをリーオーに投げつける、粒子の球に差し掛かったところで
バルカンでマガジンを破壊する。
その瞬間、リーオーを囲んでいた『球』が、派手に誘爆を起こす。
「きゃあっ!・・・あれ?」
一瞬ひるむリーオーだが、別に爆発の威力が上がってるわけではない。視覚的にハデになった
だけではあるが・・・一瞬のスキを生むには十分だった。
「スパイラル・ドライバーっ!!」
リーオーの側面から突撃するトリックスター、相手のお株を奪う目くらまし攻撃から
一番の必殺技がリーオーのわき腹に突き刺さる。
「決まれえぇぇぇぇっ!!」
リーオーの機体にビームダガーが食い込む、そしてそのまま機体を両断し、突き抜けるトリックスター。
ちょうど上半身のリーオー部分と下半身のドム部分を綺麗に切り分ける形となった。
そしてそれが同時に爆発、四散する。

 

 −BATTLE ENDED−

 
 

 湧き上がる歓声、ガッツポーズを取る宇宙に、観客席から大地が飛んでくる。
リーナは下を向き、少し目を閉じていたが、やがて顔を上げ、宇宙に近づいてくる。
「完敗よ、よく見破ったわね、わたしの戦法。」
「・・・戦法?」
ハテナ顔で握手に答える宇宙。大地が横で、いーんだよ、と嗜める。
リーナがきびすを返すと、そこには父と叔父の姿があった。
「残念、負けちゃったわ、父さん、叔父さん。」
リーオーの頭部モニターに仕込んだ”↑”のシールをはがし、舌を出してウインクするリーナ。
頭内部に発光ダイオードを仕込み、それをごく一瞬光らせて、↑矢印を一瞬だけ見せていたのだ。
「素直に俺たちの作品を使っときゃいいものを・・・」
「いらないわよ、あんなテム・レイ回路。」
「誰がテム・レイだ、誰が。」
笑いながら通路を引き上げるレナート親娘。

 

「これでいよいよベスト4だ、スゲーじゃねぇか、宇宙。」
「兄さんの治してくれたコレのおかげだよ、ホントに凄いよこの機体。」
兄弟で通路を引き上げる。周囲の歓声に答えながら。

 

と、もうすぐで通路出口というところで、二人の足元にジュースの空き缶が転がってくる。
「なんだぁ?マナーの悪いやつがいるもんだ。」
「誰かが落っことしたんじゃないの?」
宇宙が少しかがんで、空いた右手でその空き缶を拾おうとした、その時ー

 

 スバァァァンブッシャアアァァァァァーー!!
いきなりその缶が爆発し、白い煙が猛烈に噴出する。瞬時に煙に飲み込まれる2人。
「な、なんだぁー!?」
「きゃあぁぁぁーーっ!」
「うわっ!やべぇぞアレ!!」
騒然となる会場、警備員が笛を吹き鳴らし飛んでくる。毒ガスかとパニックを起こす客もいる。
選手一同も、主催のキャロライン、ニルスも現場に向かう。
まさか、テロ行為?こんな場所で??

 

 現場にニルス達が到着した時、既に煙は収まっていた。
爆発地点から少し離れたところで、少年が左手首を抑えてうずくまっている。
その少年に心配そうに声をかける青年。
「大丈夫か、しっかりしろ宇宙!!」
「痛っ・・・た、大変だよ、兄さん。」
宇宙が搾り出した次の言葉が、周囲の人間を凍りつかせた。

 

「トリックスターが・・・盗まれた・・・」

 
 

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