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第18話「宇宙と大地」

Last-modified: 2016-01-17 (日) 14:25:13

ガンダムビルドファイターズ side B
第18話:宇宙と大地

 

「会場出口に手荷物検査体制、幹線道路に検問の手配、急げぇっ!」
ガンプラバトル世界選手権、主催席は蜂の巣をつついたような大騒ぎだ。
本戦の真っ最中に騒乱、盗難、傷害事件。世界大会始まって以来の不祥事に、
主催のヤジマ商事関係者は顔面蒼白になりながら事態の収拾に当たっていた。
「(うかつだった・・・あのトリックスターの粒子増幅は、他社にとっては
 喉から手が出るほど欲しい物、こうなる可能性はあったハズなのに・・・)」
ニルスが痛恨の表情で指揮をとる。

 

「世界中のガンプラGメンに連絡、特別待機と情報収集を依頼しろ!
 あとガンプラマフィアの動きにも探りを入れろ!!」
「(もし、あの機体の効果を確認したいなら、必ずバトルフィールドで起動する、
 そうなったらエマージェンシーシステムが発動して、どこでやっているのか
 ラボに情報が入る、そこを押さえれば・・・)」
皮肉にも、粒子の秘密を守るためのエマージェンシーシステムが捜査の鍵となる、
社外秘のシステムゆえ、犯人たちは無警戒にトリックスターを起動させるだろう、
いや、起動させてほしい。世界大会の成功のため、純粋に戦うファイター達のため。
「(皮肉なもんだ・・・予選まではサトオカ選手の退場を願ってたのに、今は彼のために
 ヤジマ商事の総力をあげて動くコトになるなんてね。)」

 

 医務室から大地が出てくる、中では宇宙が手首の治療中だ。
「どうだった、弟クンは?」
廊下に集まっていた選手たちが心配そうに大地に問う。
「軽いネンザですんでる、シップで3〜4日で直るそうだ。」
骨に異常が無いことにほっとする面々、しかし幸い、という状況でもない。
「準決勝は3日後だろ、ケガしてちゃあ影響出るだろうな・・・」
ヤンが暗い表情で呟く、1回戦以来すっかり宇宙の支持者になっている。
「主催に掛け合って、日程を延ばすコトはできませんの?」
いかにもお嬢様なエマの問いにリーナが答える。
「できるわけないじゃない、世界中から観客が集まってるのよ、
 タイムテーブルの変更なんて今日ので精一杯よ、きっと・・・」
本日予定されていた第2試合、グレコVSチョマーは、安全上の理由から明日に延期になった。
観客にも、選手にも、それぞれの生活がある。規模が大きくなったガンプラバトルは
タイムテーブルの変更が極めて難しくなっていた。
「・・・にしても胸糞悪い話だ、一体どこのどいつだ!」
グレコがそう吐き出す、争いはバトルフィールドの中でやれよ、と付け足して。

 
 

 ほどなく宇宙が出てくる。選手たちが居てくれているのを見て、一礼する。
「あ、どうもご心配をおかけしました。」
「とにかく、トリックスタ−が無いことには話にならない・・・俺達はガンプラを探して
 作り直すことにするよ。」
大地が宇宙を連れて病院を後にする、他の選手もその場で解散した。

 

「くそっ!ここもかよ!!」
吐き捨てるように嘆く大地。トリックスターのベース機である
『ベストメカコレクション・ボール』がどこにも売っていない、既に6店は回っているのに。
不人気機体、販売魅力の無い低価格商品、しかも世界大会開催でかき入れ時のショップにとって
売れるアテの無い商品は軒並み撤去されていた。
 結局、夕方まで10件以上を回ってもベース機は見つからなかった、
ネット通販なら何とかなるだろうが、届く頃には大会は終わっているだろう。
2人の表情はいよいよ沈みがちだ。

 

「・・・帰ろう、兄ちゃん。」
宿舎に引き返す、という意味なのだが、大地の耳には、もうガンプラバトルなんか止めて
徳島に帰ろう、と言ってるようにすら聞こえた。
初めてガンプラバトルを経験した時、惨敗した上に邪魔者扱いされた時と同じ表情だったから・・・
無理も無い。15歳の少年が、遊びのはずのガンプラバトルでテロまがいの
目にあってるんだから。
・・・こうなったら盗まれたトリックスターが無事に帰ってくることを期待するしかない。

 

 食事を済ませ、風呂に入っていた大地が上がってきた時、宇宙は大会ルールブックを熱読していた。
大地に気付いた宇宙が顔を上げこう言った、すっかり晴れやかな顔で。
「ねぇ、兄ちゃん!準決勝、頼んでいいかな?」
「・・・は?」
ルールブックを反転させて大地に見せる宇宙。
「ほら、大会のルールで選手変更のトコ、3親等までなら認められるって書いてある。
 過去にも一例、10年前に準決勝で選手交代した事例もあるし。」
「・・・それはつまり、俺に出ろ、ってコトか?準決勝に。」
「うん!どのみちこのケガじゃ、トリックスターが帰ってきても勝てそうに無いし、
 それにもしかしたら、準決勝の相手、チョマーさんになるかも知れないよ!」

 
 

「・・・っ!」
思わぬ宇宙の提案に固まる大地。
「・・・それで、いいのか?」
半分は宇宙に、もう半分は自分に言い聞かせるように問う大地。
「うん!その代わり絶対勝ってよ、決勝はまた僕が行くつもりだから。」
満面の笑みで頷く宇宙。
「(ああそうだ、コイツはこういうヤツだった。初めてのバトルの時もあっさり立ち直って
 それがトリックスターの原案を生み出すキッカケになったんだ。)」
やれやれ、と肩を落として笑う大地、そして心のスイッチを入れる。
「よし!任せとけ、チョマーだろうがグレコだろうが蹴散らしてやるよ、
 まずはヅダを徹底改造するぜ、手伝え宇宙!」
「うん!でも・・・その前に、パンツくらい履こうよ。」

 

 大会主催者ルーム改めガンプラ盗難事件対策本部、24時間体制での調査は続いていた。
メイジンやイオリ・タケシ、ラルさんと呼ばれる中年ファイターも詰め掛け、対策を協議している。
コトは今回だけではない、これからのガンプラバトルの運営にすら関わる事態なのだから。
「観客の手荷物検査までしたが、盗まれた機体は出てこなかった。
 すでに会場外に持ち出されていたのか・・・」
「検問にも引っかかりませんでした。大会の最中に会場から離れる車はそう多くないから
 漏れてるとも思えませんが・・・」
会議の最中、外から入ってきた役員がニルスに耳打ちする。
「(未だエマージェンシーコールは入ってきていません、残念ですが。)」
「(そうか、引き続き監視を頼む、絶対見落とさないように。)」
進展の無いまま、時間だけが過ぎていく。明日は準々決勝残りの3試合、明後日は休養日、
それまでに何としても取り戻さなければ・・・

 

「(頼む、起動してくれ、お前たちの欲しいのは情報だろう!好きにデータを回収していい
 その後、機体を無傷で返してくれればそれでいいから!)」
研究者の目でもなく、企業の重役としてでもなく、純粋にガンプラバトルを愛する者の目で
ニルス・ヤジマは祈っていた。準決勝第一試合まであと60時間ー

 
 

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