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第20話「夢見た試合」

Last-modified: 2016-08-23 (火) 23:20:46

ガンダムビルドファイターズ side B
第20話:夢見た試合

 

「ステージの通達?」
 準々決勝終了の夜、宿舎の宇宙たちの部屋に来ていた大会主催者の使いが答える。
「はい、準決勝からは選手にのみ、先にバトルステージが伝えられることになっております。」
「ふーん、で、どんなステージだ?」
大地がガンプラを直しながら聞く。確かにステージが分かれば武器や装備のチョイスが
よりやりやすくなる。
「準決勝第一試合、あなた方とライナー・チョマー様の試合のステージは
 『大気圏突入』でございます。」
「・・・は?」
「今回より初導入される特別ステージです。最初は宇宙空間から、徐々に地球に向かって
スクロールするステージになります。」

 

 ライナー・チョマーの部屋でも同様に、本部役員からの説明が行われている。
「なるほどねぇ、つまり宇宙から始まって、空気摩擦に焼かれる大気圏突入時、それを抜けてから
着地までの空中戦、最後に着地してからの地上戦と、4タイプのフィールドで戦闘するわけか。」
「理解が早くて助かります。どのエリアでのバトルに重点を置くかがこの戦いの
 ポイントになるかと思われます。」
「ふぅん・・・面白いな。」
アゴに手を当て、目を閉じて一考する、戦略をイメージしているのか。
「分かった、ご苦労さん。楽しい試合を約束するよ。」
役員を追い返してから、机の上の無数のガンプラに目をやる。
ザクレロ、ウォドム、ロト、アッザム、ジュアック、ズックまである。
「ま、あの兄ちゃんのほうが相手なら、使うガンプラは決まってるけどな。」

 

 翌朝、朝食を済ませた宇宙達の部屋を意外な客が訪れた。
「あんたら、この後ヒマあるかい?」
マツナガ・ケンショウだった。昨日の準々決勝でレイラ・ユルキアイネンに惜敗した彼が
わざわざ宇宙たちを訪問する理由が分からない。
「まぁ少しなら大丈夫だけど・・・何の用なんですか?」
「いーから、いーから。そんなに時間はかからねぇって。」
二人を連れ外に出る。明日の試合用のガンプラはほぼ出来上がっているし、特に問題も無いが。

 

 やって来たのは大会用のバスターミナルだった。しかし切符を買うでもなく、ただ
立って待っているだけだ。
やがて1台の大型観光バスがターミナルに入ってくる。
「お!あれだな。来たぜお二人さん。」
目の前にやってくるバス、そのフロントガラスにはこんな文字の紙が貼り付けてあった。

 

 ―サトオカ兄弟応援団一行―

 
 

「やっほー!宇宙君ひさしぶり〜」
窓ガラスから一人の少女が顔を出し手を振る。
「あ、ドラッツェの人、たしか滝川さん!」
「俺らもいるぜ〜すだちくん!改め緑の彗星、とでも呼ぼうか。」
「ベスト4進出おめでとう!世界の強豪相手によくぞここまで来たな。」
「岬さんに島村さん!わざわざ応援にきてくれたんですか?」
停止したバスから次々に見知った顔が降りてくる。大阪でロワイヤルを戦った第1ブロックの
ライバル達に加え、東四国予選で相対した3人組や河野選手、矢三布監督までいる。
「ガンプラを盗まれて、ケガまでしたって?大変だったな。」
「あの初心者が、あれよあれよと世界ベスト4だもんな、羨ましいぜまったく。」
「やはり私の目に狂いは無かった、ぜひ卒業後はグラナダ学園に・・・」
旧交を温める宇宙たち。その向こうではマツナガがやはり大勢に囲まれていた。

 

「あとひとつだったのに、何やってんだよマツナガ!」
「まったく、お前が負けたんでツアー名が変わっちまったじゃねーか。」
手荒にマツナガを迎えたのは、かつてのガバイ学園でのチームメイトだ。
「ま、でもルーカスに雪辱したのは誉めてやるよ。」
「仮にも俺たちのブロック代表だからな、ベスト8くらいは行ってもらわないと。」
どうもバスの乗客の半分以上は、『あっち側』の応援のようだ。
西四国、西中国、全九州エリアの日本第2ブロックエリアのツワモノ達。
 どうやら元々は、ガバイ学園がマツナガの応援にと組んだツアーらしい。
しかし肝心のマツナガが負けてしまったため、急遽同じ西日本の宇宙の応援ツアーに変更、
ネットで同乗者(ワリカン担当)を募ったところ、宇宙のライバル達が集まって
こうなったようだ。

 

「今日から決勝までこっちにいる予定なんだ、応援するから頑張れよ!」
「ねぇねぇ、メイジン・カワグチのサインって貰えないかなぁ。」
「うな重の美味しい店知ってる?」
・・・まぁ、目的はかなりバラバラであるようだが、それでも見知った顔が大勢いると
連帯感からか、気持ちがリラックスしていくのが分かる。

 

 ひとしきり会話を楽しんでから、宿舎に帰る宇宙と大地。
「あれだけのビルダーが集うと壮観だねー。」
「ああ、あれがこの3ヶ月、お前が通ってきたガンプラ道で触れてきた仲間たちってワケだ。」
「そんな大層なもんでもないと思うけど・・・なんか嬉しいね。」
「明日戦うライナー・チョマー氏なんかは、世界中にガンプラ仲間がいるらしいからな、
 ああいう友人なら多分、万人単位でいるんじゃねぇか?」
「・・・兄ちゃんもそのうちの一人なんだよね。」
「まーな、顔も覚えてないだろうけど、明日は嫌でも覚えてもらうさ。」
「うん!頼んだよ兄ちゃん、頑張って。」

 
 

「それではこれより、ガンプラバトル世界選手権、準決勝第1試合を開始します!
 サトオカ・ダイチ選手、ライナー・チョマー選手、配置についてください!!」
大地と、その後ろに宇宙、反対側からチョマーが壇上に上がる。
チョマーの前まで進み、右手を出す大地。
「よろしくお願いします、負けませんよ!」
真っ直ぐに相手を見据えて言う。握手に応じたチョマーはおどけた表情でこう返した。
「こっちこそ、10年前の借りは消させてもらうぜ、ダイチ君。」
「・・・っ!」
大地の表情が固まる。
「まさか・・・俺のこと、覚えてくれてたんスか!?」
「俺は一度戦った相手は絶対忘れねぇよ、ましてや不覚を取った相手ならなおさらだ。」
「よく言いますよ、一発の攻撃もしなかったじゃないですか。」
大地の目に光が増す。憧れの人が自分を覚えていてくれた、これ以上モチベーションの上がる
サプライズは無かった。
「この日を、ずっと待ってました。全力で行かせて頂きます!」

 

「里岡大地、ヅダ・セイバー、出るっ!」
「ライナー・チョマー、ザクレロホイシュレッケ、出撃いっ!」
2機が宇宙空間に飛び出したと同時に、聞き覚えのあるタイトル音と共に音声が流れる。

 

ちゃちゃちゃ〜、ちゃらら〜ん!
 ―大気圏突入―

 

 大いに沸く会場、世界中のガンプラファイターの中で、このステージで戦うのは
この両名が初めてだ。
「ヅダとザクレロか、どっちも宇宙がメインの機体だな。」
「短期決戦になるかな?大気圏突入までに勝負を決めるつもりか・・・」
会場の一角で、ツアー組が試合内容を推理する。特にザクレロはMA、地上まで到達してしまうと
不利になるのは明白だ。
「エンジン全開ぃっ!」
ヅダはザクレロの下、というか地球側を飛び回りつつ、背中のコンテナの中の機雷を撒いていく。
東四国予選で宇宙に対して取った戦法の再現だ。
「ほう、思い切ったな、背水の陣かい?」
「ええ、貴方にも水際まで来て頂きますがね。」
フィールドが地球に向かって動いている以上、嫌でもこの機雷地帯に差し掛かるコトになる。
右手でザクマシンガンを抜き、左手の盾のピックを立てるヅダ。そしてその身を背後の
機雷の海にダイブさせる。

 
 

「おおおっ!すげぇな兄貴のほうも・・・」
観客がヅダの見事な動きに沸く。ダッシュ&ブレーキ&アンバックで見事に機雷をかわしながら
縫うように高速移動し、ザクレロにマシンガンを放つ。
それを左右に動いてかわすザクレロ、だが徐々に機雷地帯が近づいてくる。下がればやがて
リングアウトするだけに、いつかはこの機雷地帯を突破しなければならない。
「んじゃ、行くぜ。」
そう言うとザクレロは機雷地帯に向き直る、と同時にスラスターを全開にし、フルスピードで
機雷源に突撃する。
「何っ!」
驚く大地、あのスピードで突っ込んでかわせる機雷密度ではない。しかも体よくすり抜けたとしても
止まりきれなければ地球の重力圏に捕まり、無防備に落下をはじめるハメになる。
「ここっ!」
ザクレロはただ一度、右手の鎌を振り機雷を払いのける。無論爆発するが、高速で通り抜けた
ザクレロはその爆風をかわし、機雷源を抜けきる。
「ひとつも喰らわずに抜けられないなら、ひとつだけ何とかすりゃ抜けられるワケだよ!」
振り向きざまに口の中のメガ粒子砲を発射する、1点を狙うのではなく、機雷源を薙ぐように。
熱エネルギーに当てられた機雷は次々に誘爆し、一帯が爆発の絨毯と化す。
そこから一機の機体が弾かれるように飛び出してきた、無論ヅダである。
待ち構えていたザクレロが、その両の鎌をヅダに向ける。ヅダもまたピックをザクレロに構え、
速度を落とすことなくザクレロに突っ込む。
それを見ていた宇宙が勝利を確信する。
「(いける!ここで兄ちゃんの新兵器を使えば勝てる!!)」
「スタン・ピックっ!」
「サンダー・ズィッヒェルっ!」
大地とチョマーが同時に叫ぶ、と、同時に両者が接触。その瞬間二人の間にイナズマが炸裂し
激しく弾かれ吹き飛ぶ両機。
「なっ!」
「考えることは同じかよ。」
大地が驚き、チョマーが分析する。

 
 

「あいつら、電池を内臓してやがる・・・」
選手席から見下ろしていたヤンがそう語る。ネーデルの最後もそうだったが、電気の類を粒子に
通すとそれに反応して放電する、大地はピックに、チョマーは鎌に、それを仕込んでいたのだ。
「だが、これでヅダが有利に立ったぞ!」
ルワンの指摘どおり、宇宙側に弾かれたヅダより、地球側に弾かれたザクレロのほうが
大気圏突入までの時間が無い、ヅダにしてみればザクレロが摩擦熱で焼かれだしてから
悠々と上から狙えばいい。
「ちいっ!」
やむなく大気圏突入のため、地球側を向くザクレロ。この機体の装甲ならマシンガン程度は弾ける
そう考えて宇宙での戦闘を終了した。多少のダメージは覚悟の上で・・・
「ヅダの突入まで耐えりゃ、摩擦圏を抜けるのはこっちが先だ!そしたら下から狙い打ってやる・・・!」
だが、その思惑は外れた。ザクレロに全力で突っ込んできたヅダは、なんとそのままザクレロの後方に
取り付いてマシンガンを押し当てた、勝利を確信して宇宙が叫ぶ。
「勝った!」
ザクレロが摩擦で火の玉となり、その後ろでヅダがマシンガンを突きつける。
だがマシンガンは発射されなかった。
「(兄ちゃん・・・どうして?)」
その疑問はすぐに氷解した、いつのまにかヅダの腰にハリガネムシ、いやウミヘビが
巻きついていたからだ。
「おーあっぶね、なんとか対処できたか。で、どーするねダイチ君。」
「今マシンガンを撃ってもすぐには破壊できないでしょう、お互いに、ね。」
マシンガンがザクレロの心臓部を貫くのが早いか、ウミヘビの電撃によってヅダが破壊されるのが早いか
しかも大気圏突入の真っ最中、勝負に出るにはリスクが高すぎる。
「・・・んじゃ、摩擦で燃えてる間は休戦といくか。」
「ええ、大気圏突入をシュミレートできるなんて、滅多にありませんから。」
手を止め、仲良く火の玉になり燃え上がる両者、それを見て宇宙飛行士志望の宇宙が一言。
「・・・いいなー。」

 
 

 やがて2機を包んでいた火の玉も消え、背景の色が紺から青に変わる高度8000メートル。
ここからは空中戦の開始である。
「それじゃ、いきます!」
ヅダがザクレロから離れる、ザクレロは左右の巨大なスラスターを切り離し、ヅダに向き直る。
「悪いなダイチ、俺の勝負エリアはこの空中戦なんだよ!」
スラスターのなくなった部分から翼を生やすザクレロ、その羽根で風を受け落下速度を落とし
ヅダの上方に位置取る。
「空中戦ってのは、上を取った方が有利なのは知ってるかい?」
真上から急降下してヅダに襲い掛かるザクレロ、ヅダもマシンガンで応戦するが
おかまいなしに高速でヅダの脇をかすめ、すれ違いざまにヅダの右腕を
マシンガンごと鎌で切断する。
「くぅっ!」
腕を落とされながらも、下方に行ったザクレロに向き直る。が、ザクレロは翼とバーニアを使い
下降から反転、急上昇し、あっという間に再度ヅダの真上に位置取る。
「な・・・」
「地上に降りるまでにカタをつけてやるぜ!覚悟しな!」
再度急降下するザクレロ、今度はミサイルを放ち、自身はヅダの足元方向から突進、
ミサイルこそかわしきったものの、足元に突っ込んできたザクレロに今度は左足を
持っていかれる。
「ヅダの特性である機敏な動きは、手足についているバーニアの補助も大きい、
 片手片足じゃあもう俺の動きについてこれまい!」
それでも残りのバーニアを使って、ザクレロを常に正面に捕えるヅダ。
そしてまたザクレロは急上昇し、3たびヅダの直上を取る。

 

「あのヅダ・・・何か変だわ。」
選手席でリーナ・レナートが呟く、戦いに違和感を感じるのだ。
「どうした?」
付き添いの父フリオが問う、他の選手も耳を傾けている。
「動きは単調だけど、常に相手の正面を向いている、私と同じように。」
確かに、移動はほぼせず自然落下のままだが、常にザクレロに体の正面を向けている。
「確かにな・・・状況によっては斜に構えたり、背中を向けて誘うのもアリだが。」
「正面を向き続けてる、というよりは・・・背中を隠してる!?」
そのリーナの言葉を聞いた選手全員が、再度試合会場を見下ろし、そして悟った。
「あ・・・」

 
 

 3度目の急降下攻撃、拡散ビームを盾で防ぐのが精一杯のヅダ、その右足を
ザクレロの鎌がもぎ取っていく。
その『気付き』が無い者にとっては、もはや勝敗は明白に見えた。
フルバーニアで急上昇、4度目の直上を取るザクレロ。
「残り高度1000メートル、このまま自然落下しても壊れるだろうが、そいつはしのびない。
 きっちりトドメを刺してやるぜ!サトオカ・ダイチ!!」
「望むところです!これが最後の勝負ですよ、ライナー・チョマーさん!!」
残った左腕の盾からシュツルムファウスト(ミサイルランチャー風の武器)をザクレロに向けるヅダ。
ザクレロが降下を始めるその瞬間に引き金が引かれる。
「当たれえぇぇぇっ!」
火を噴くシュツルムファウスト、が、ザクレロは急降下しながら、そのスレスレ脇をすり抜けた。
「終わりだあぁぁぁぁっ!」
今までに無いほどの高速でヅダに突撃するザクレロ、その鎌を振り上げ、そして振り下ろす・・・
その前にザクレロはヅダを通り過ぎていた。
「んなっ!?」
振り返り、後部モニターを見るチョマー。今通過したヅダの背中には、あるべきモノが無かった。
「ヅダの土星エンジン・・・バックパックが無い!どこだ!?」
聞くだけ野暮だった。自機ザクレロのこの異常な加速と照らし合わせれば答えは明白だ。
案の定、土星エンジンはザクレロの背中に、『第二のエンジン』として張り付いていた。
大地の遠隔操作によってレッドゾーンぶっちぎりにまで加速している。
「さっき、大気圏突入の時、取り付けてやがったのかあぁぁぁ!」
「エンジンカットは出来ませんよ、念のため。」
翼を使い、方向転換を試みるザクレロだが、重力+ザクレロの加速+土製エンジンの加速が生み出す
空気抵抗に耐えられず、無残にへし折れる両翼。
そのまま一筋の火の玉となったザクレロ、チョマーはコロニー落としに続いて、2度目の
コードレスバンジーを仮想体験する羽目になった。

 

 ―BATTLE ENDED―

 

「やられたよ、若いのに落ち着いてるなと思ったら、えらいもん仕掛けてくれたな。」
チョマーが両手を広げて賞賛する。
「チョマーさん言ってたでしょ、青写真通りの結果になるのが一番楽しい、みたいなコトを。」
「ヅダといえば土星エンジンの暴走による自爆か、まさかそれを押し付けられるとは・・・」
がっちりと握手を交わす両選手、すぐ後ろで宇宙が全力の拍手を送っている。
いつも兄の部屋にあった色紙、その名前の選手と名勝負を演じ、ついに勝利を収めた兄に。

 
 

「ガンプラバトル世界選手権、決勝進出の最初の一組は、ガンプラの本場、日本代表、
 サトオカ・ダイチ、ソラ組に決定しましたーーっ!!」
万雷の拍手が会場に鳴り響く。観客席の一角で固まっていた応援ツアー組も大歓喜状態だ。
退場する途中、観客の一部に小突き回されるチョマー、どうやら彼の応援団も大挙して
この会場に来ていたようだ、誰もがバカ笑いしながら手荒にチョマーの健闘を称える。

 

「さて、次は私たちですわね。」
選手席でエマ・レヴィントンがレイラ・ユルキアイネンに向き直る。
両脇にレイジとアイラを従えて、レイラが返す。
「おねーちゃんのガンプラじゃ、わたしのモックには勝てないよ!」
不敵に笑うレイラ。脇でププセが呆れて言う。
「せめて、私たちのガンプラと言って下さいよ、姫・・・」

 
 

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