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第31話〜カガリの決断〜

Last-modified: 2013-04-22 (月) 19:44:47

「元はと言えば、終わりの見えない争いゆえの事件だと、わたくしは受け止めています。
 きっと、あの方も、今回の戦争の犠牲者の1人なのです」
画面の中のラクス様が、インタビューを受けている。プラントに戻る前の映像。
少しだけ残った顔の痣が痛々しいけど、それでも、微笑を浮かべ自らを傷つけた相手すら弁護する
姿勢は驚きをもって迎えられている……だが、その姿に感化され、戦争の終結を願う声も少しずつ
増えてきている。
「で、最初からこのつもりだったんですか?」
「はい♪ 計算通りですわ♪ ルナマリアも協力ありがとうございます」
プラントに帰ってきたラクス様に呼ばれて、来たのは良いけど……早く済ませて欲しい。私は何時
フリーダム追撃任務が来るか待ちわびてるんだから。
「でも、以前より人気が下がった傾向もあるみたいですよ。イメージの低下で」
「構いませんわ。それで離れたファンなど、何の役にも立たない連中です」
「役に立たないって……ファンに役に立つ立たないってあるんですか?」
「そうですわね………ある所に、1000人しかいない村がありました。この村人のうち、100人は隣の村と
 協力し合おうと言い、残りの900人はしたくないと思ってます。では、この村は隣の村と協力し合う
 関係になるでしょうか?」
「………しないんじゃ? だって、ほとんどは反対してるんだし」
「いいえ。この村は協力し合います。まあ、不満は抱えてますが」
「何故です? だって数の上じゃ…」
「これで、残りの900人がしたくないと、"思う"のでは無く"言え"ば話は違いますけどね」
「………え〜と、それがさっきの話と何の関係が?」
「つまり、わたくしが犯されたから嫌になったなんて言えないでしょう? そもそも、その様な方々は
 ラクスタンは俺の嫁とか、酷いのになると精液の詰まったビンを送ってくるような方々です」
「そ、そういうのあるんですね……」
「ええ、アイドルですから。つまり、支持をしなくなった者は大きな声を出せない陰険な輩の部類です。
 それよりも数は減っても、わたくしに同調し、自らが正義と思い込む方々の方が役に立ちますわ♪」
い、嫌な性格……
「で、ですが、正義と思い込む大声って意味では、ラクス様を傷つけたナチュラルは許せないって
 声もあります。その辺は?」
「それですわ♪ 今回は、その事で協力してもらおうと思ってますの」
嫌だ。協力なんてしたく無いです。でも言えない、弱い私……
「先程、貴女が言ったように、ナチュラルを討てと言う声。討つのは誰が適任でしょう?」
「それは…………アスラン?」
「はい♪ わたくしの婚約者にして、パトリック・ザラの息子。パトリックとしては、どう考えます?」
「……アスランに婚約者が辱められたんだ。ナチュラルを許すな……って、感じですか?」
「ええ、そして、アスランは本人の思惑とは別に、ザフトの強硬派の象徴的存在になりました。
 そして、わたくしが和平派の象徴……つまり、わたくしとアスランの人気の差が、和平と抗戦の
 勢力図に大きな影響を与えるのです」
「え〜と、今までの流れからすると、抗戦を主張しにくい、大きな声で言い難い状況を作る。
 そのためにアスランを支持し難い存在に貶めると?」
「正解ですわ♪ それに、今のわたくしにとっては、慰める婚約者など居ない方が、より同情を
 集められます。つまり一石二鳥の策ですわ」
この人、怖い………………でも…
「やりましょう! で、どんな手を?」
アスランを貶める。何て素敵な企画なの♪
「ええ、この写真を見せます」
ラクス様の差し出した写真には………
「ちょっ! これ、ヤマトし…キラさんとの濡れ場?」
その……やってる最中の写真……こんなものまで用意してるなんて……
「これをアスランに見せれば……」
「え〜と、キラさんに怒りを抱くんじゃ?」
「逆ですわ。キラと寝た私に怒りを抱きます」
「へ?……」
「だって、あの人、キラのことをお慕いしていますもの」
…………そ、そうなの? 怪しいとは思ってたけど、あの人、そこまでガチだったんだ。
メイリン……辛かったね。でも、ここでは大丈夫だから。必ずアスランを社会的に抹殺してあげる。
「では作戦を聞かせてください」

第31話〜〜カガリの決断

アークエンジェルがオーブに入国して1週間が経過した。その間……
「暇だな」
「そうだね……フリーダム、何時になったら修理できるんだろ?」
無残な姿になった僕の愛機。早く元に戻してあげたいけど、事情を聞いたカガリは緘口令を敷き、
モルゲンレーテの人にさえ、見せてはいけない事になった。
「何でだろ? せめてシモンズ主任には言ってもいいんじゃないかな?」
「ダメだろ。サハク家の動向が気になる。家の…シン・アスカの両親さえ信用は出来ないさ」
「サハク家と連合の繋がりのこと?」
「多分な……カガリとしては、方向性を決めた上で、モルゲンレーテをサハク家から自分の物にしない
 限りは、Nジャマー・キャンセラーの存在は明かせない。
 無論、フリーダムもコイツも、手の付けようが無い」
シンの視線の先はドレッドノート。未だにコンテナの中から出されておらず、コンテナだけが、
アークエンジェルに運び込まれた状態で封印されている。
その間、誰も手を触れる事を禁じた上で。
「徹底してるね」
「それくらい、しないとな」
振り返ってみると、僕ってフリーダムの扱い適当だった気がする。オーブが渡せって言ったり、
ザフトが引渡しを要求したらどうなってたんだろ?
「八方塞になるよね……」
「どうした?」
「いや、それよりザフトからの圧力ってまだなのかな?」
「現在調査中ってところだろ。モルゲンレーテにも諜報員は紛れてるみたいだけど、怪しい緘口令の
 事しか判明してない。その状態だと圧力もかけ難い。これは、それ程厄介な代物なんだよ。
 今の時点ではフリーダムのありかはアークエンジェル艦内が最有力候補だが、破棄された可能性だって
 ゼロじゃ無いからな。万が一にでも逃亡中に破棄した場合は何処かの海の中だ。もしくはアレックスが
 逃走して、MIAになってる可能性だって考慮する。
 下手にオーブに圧力をかけて、連合に気付かれた場合、アークエンジェルにあれば良いが、違ったら
 連合が捜索して入手って事だってありえる。だから、オーブにある証拠を諜報員が掴むまでは下手に
 動けないさ」
「じゃあ、モルゲンレーテでフリーダムの修理を始めた途端に?」
「ああ、それが確証になる。間違いなくオーブにあるってな」
「カガリも大変なものを押し付けられたね」
「悪いとは思ってるけどな……今も忙しそうに飛び回ってるんだろうな」
「まあ、ある意味しっかりしてるって事で安心は出来るかな?」
「ああ、問題はコイツをどう処理するかだけど」
「検討は付く?」
「さっぱりだ。新型MSでも作るかな?」
「そうだね…」
「おい! シン、キラ、虎に会いたい! 案内を頼む!」
「カガリ?」
どうしたんだろ? 
「なあ、隣にいる未来のアスランみたいな髪型の奴って」
シンが小声で確認してくる。
「うん。ウナトさん。ちなみに髪型じゃ無く抜けただけだから」
言われて見れば似てる。いや、まだアスランの方がマシかな? でもアスランには無限の可能性が
秘められている。まだ若いし、ウナトさんを超える潜在能力があるんだ。
「ところでカガリ、虎ってバルトフェルドさんのこと?」
「ああ、アークエンジェルの留置所に居るんだろ?」
「留置所って……まあ、良いけどね。じゃあ、付いてきて」
「頼む。キラも付いて来い」
「ああ」

「なあ、コイツ等は拘束されてるんだよな?」
「そうだよ」
何故か呆然としてるカガリ……まあ、本当は理由は分かる。ウナトさんも呆れた表情だし。
「お? 誰かと思えば、久しぶりだな♪」
「ん? 誰? コイツ?」
「ああ、この国のお姫さん」
「マジで?」
「ディアッカ、その態度は失礼ですよ」
「なあ、しばらく見ない間に、アークエンジェルは随分と捕虜の人権に気を使うようになったんだな?」
嫌味な発言ありがとう。でもね……
「そうは言うがな、僕達は何時までここに居れば良いんだ? 聞けば亡命したって言うし、前代未聞
 じゃ無いかね? 捕虜を抱えたままの亡命って?」
そうなんだよね。おまけにアークエンジェルは緘口令が敷かれてるし、困ったものだよね。
「あ、それはだな……すまなかった。その、色々あって、そこまで手が回らなかった」
「俺達は報告したからな。行動が遅れてるのは、オーブの落ち度だから」
「お前が言うな! 誰の所為で忙しく飛び回ってると思ってるんだ。この強姦魔は!」
「強姦?」
「何だキラ、お前、フレイが居ながらカガリに手を出したのか?」
「酷い人ですね……フレイさん可哀想に」
「ホントだぜ。良い女だったのにさ」
「待てよアンタ等! そんな訳無いだろ! それより、カガリ、バルトフェルドさんに用なんだろ?」
「ああ、そうだった。実は相談…と言うより頼みごとがあってな、少し付き合って欲しい」
「え? バルトフェルドさんだけかよ?」
「あ、うん。そうなんだが……なあ、ウナト、警備就けて外出許可を出すって出来ないか?」
「そうですな。確かにこちらの落ち度ですし、かと言って、すぐに解放と言うわけにもまいりません。
 とりあえず、範囲を限定した上で散歩という形なら」
「助かる。正直ここは息が詰まりそうだ」
「そうですね。ラミアス艦長が気を利かせて色々と持ってきてはくれるんですが……」
趣味や暇潰しの道具はあっても、所詮は牢屋みたいなもの。太陽は当たらないし、空気も悪い。
こんなところにずっと居たら気が滅入るのも仕方ないよね。
「いや、本当にすまなかった」
こんな時期に捕虜になった彼等も大変だ。

カガリに促され、俺達は移動…………で、カガリが普段から使ってる執務室らしい部屋に移った。
「さて、僕に頼み事があるって事だけど?」
「ああ……だが、その前に礼を言わせてくれ。お前に色々と話を聞けたお陰で視野が広がった。
 本当に感謝している」
頭を下げるカガリ………俺は感謝された記憶が無いんだが? 俺だって結構役に立ってなくないか?
「お役に立てて何よりだ。それで、どう広がった?」
「うん。何を守るのかが分かった気がする。一番大事なのはオーブの国民なんだ。彼等の生命と財産を
 守る。そんな当たり前のことを気付くのに、随分と遠回りした」
「そうか……だったら、オーブ以外の国が戦争するのは仕方が無いって考えに到ったか?」
「いや、そうも行かないんだ。お父様は、その辺が分かってない。いや、見ない振りをしている。
 あの後、色んな人と会って、話を聞いたけど、大きな問題がエネルギー不足から来る混乱。
 それは深刻さを増している。例えば食料にしたって、小麦を作るのにも畑を耕してから収穫するまで、
 機械の力が必要になる。その機械の力が有ったから、生産量が増えて、結果的には人口も増えた。
 機械が誕生する前の10倍以上だ。
 逆に機械が使えなくなったら食糧生産量は10分の1以下に減る。それって人口も10分の1に
 減るって事だ。ハッキリ言って戦争なんてしてる場合じゃ無いんだ」
そう。そして食料を輸入に頼ってるオーブのダメージは計り知れない。いきなり減るって事は無いが、
自国に食料が無いのに輸出するほど奇特な国は少ないしな。
「だから、私は戦争を終らせたい。実際に私以外にも、そう思っている人間がたくさん居たんだ。
 ロゴスにも」
「そうか……だが、それが難しいんだよ。君が努力したからって、叶えられる問題では無い」
「ああ。それを痛感した。私は何も出来なかった。オーブ内では多くの人が私を支持し出している。
 お父様の中立の考えは、現状にそぐわないって思う人が大勢居て私に知恵と力を貸してくれている。
 それでも、光明は見えなかった。この前までは……」
「ん? 何があった。自信有り気な顔じゃないか?」
「ああ、実はザフトがNジャマー・キャンセラーを開発し、MSに搭載した。そして、それをキラが
 強奪した」
「…………な、何を………」
バルトフェルド副司令も唖然としている。確かにショッキングなニュースだ。それをカガリは黙って
見ている。相手が落ち着くのを待ってる。
………大したもんだ。で、カガリはどう使う?
「そ、それで、君はNジャマー・キャンセラーを、どう使うつもりだ?」
「原子力発電所に付ける。オーブには少ないけど、増設する。幸い島国だし、トリウム型を作れば
 危険も少ないしな。ウランより安いし」
「それは、連合にも渡すって事か?」
「いや、連合には渡さない。あくまでオーブ国内で原子力発電所を作り、そこで生産したエネルギーを
 バッテリーに詰めて、エネルギー不足で苦しんでいる人々を支援する」
「……呆れた話だな。無茶苦茶だ」
「何処が?」
「まず、オーブだけで世界中のエネルギーを賄えるはずが無い。次に連合が黙っては居ない。必ず
 Nジャマー・キャンセラーの設計図を要求する。それをどう断る?」
「だからこそさ。バルトフェルドが言うように、連合は要求する。だが、戦争を継続している以上は
 渡せないと断る。そもそも、連合が核を使った事が発端なんだ。そう言って突っ撥ねる。
 そして、支援が行き渡らない人には戦争が終ればエネルギー不足は解決すると言い聞かせる。
 それで、戦争終結を望む声が高まる」
「理想論だな。肝心な事が抜けてる。断れば武力侵攻してくるぞ。それだけの価値はある」
「お前は核を撃たれると分かって攻めるのか? しかも、そっちは使えないんだぞ?」
「お前……」
「すでにユウナを始めとした私の側近に、プルトニウムを集めさせている。オーブの分と、いざって時は
 マスドライバーで宇宙に打ち上げられるだけの量を集める。それをプラントが手に入れる」
「それは、一方的な虐殺に手を染めるって事だと自覚はあるのか?」
「私だって撃ちたくは無い! でも、いざとなればやる。私にはその責任がある」
手を汚す覚悟は出来ているか……そこまで腹を括ってるなんて予想以上だった。
「………なるほど。それじゃあ連合も下手は出来んな♪」
「ああ、大丈夫。ちゃんと警告はするし、後の事を考えない馬鹿が出るかもしれないが、その場合は
 兵士に反乱を起こすように仕向けてみるさ。私だって本当に撃ちたく無いんだ」
「悪かったな。だが、お前さんの覚悟は伝わった。だが、まだある。逆にザフトが攻める可能性も
 ある。悪いがザフトにとってはオーブは信用できない国だ」
「それは分かってる。今までの流れから言って当然だ。だから、それも頼み事の1つなんだ。
 お前にザフトとの交渉を頼みたい」
「俺が?」
「ザフト内の和平賛成派を探し、協力を頼みたい。筆頭はクライン親子。特にラクスだ」
「ラクス? 彼女は、和平に賛成だろうが、所詮はシーゲル・クラインの娘だぞ? 人気はあるから、
 象徴としては良いが、実際に動くとなると…」

「そうでも無い。現在のラクス・クラインは、ザフト地上軍を全滅から救った恩人であると同時に
 連合兵に暴行を受けながらも和平を望む聖女扱いだ」
「恩人? 暴行?……僕が拘留されてる間に何があった? どうなってんだ?」
「あの女が今回のシナリオを裏で操っている。とんでもないペテン師さ。私の周りにも監視の目が
 あるみたいだ」
え? ターミナルの影に気付いてたのか?
「そうだろ? キラ?」
「…………ああ、ラクスはカガリのことを気にしていたな。調べてるみたいだ」
「なんだ? キラは知ってるのか?」
「ああ、ラクスを暴行した連合兵がキラだ」
「は?……その何だ……お前さん、本気で刺されるぞ?」
「俺だって、好きでやったわけじゃ…」
「心配しなくても実行犯は死んだ事になってる。それにキラはラクスと共犯だ」
「詳しく聞かせてもらえるかな?」
「ああ………」
大まかな事情を説明する。話していると、段々バルトフェルドさんは笑い出し、やがて同情的な
視線を……欝だ。
「その、まあ、貴重な体験だったな。めったに出来る経験じゃ無いぞ」
「永遠にしたくなかった」
「フン! フレイに何て言う気だ?」
「知るか!」
そこでフレイを出されてもな……キラさんの嫉妬の視線は心地言いくらいだけど。
「要するにだ。オーブの目的を伝えて欲しい。オーブは今後、原子力発電所を作り、地上のエネルギー
 不足を少しでも拭うために動く。
 それを邪魔するならば、連合の場合は核を打ち込むし、ザフトが攻撃してくれば、Nジャマー・
 キャンセラーの設計図は連合に渡す。その後、プラントに大量の核を打ち込まれようが知らん。
 それと、戦争中の核兵器の使用も認めない。使った方、または使おうとしたらオーブの敵だ。
 それが基本姿勢。
 同時にオーブは終戦を希望している。そして終戦が実現すればNジャマー・キャンセラーの
 設計図を世界中に公表する」
「なるほど、事情は分かった。そして問題点もな」
「ああ、1つは私の身分。所詮は元代表の娘だ。これに関しては準備が出来次第、ホムラ代表に
 地位を譲ってもらいように交渉する」
「断られたら? クーデターでも起こすか?」
「最悪な。悠長に交渉する時間も無いし、断られて諦める気も無い。だが、クーデターと言っても
 騒ぎにはならないさ。お父様を拘束して終わりだ」
「そこまで手が回ってるのか?」
「ああ……特に軍部は掌握済みだ。行政もウナトを始めとした者が手を回している。混乱は起きない。
 単にお父様が納得して引退するか、拘束されるかを選ぶだけだ」
「なるほどな。だが、そこは納得させるんだな。それすら出来んようじゃ、これから先が思いやられる」
「分かった……そうする」
辛そうな表情のカガリに気を使ったんだろう。この辺はカガリもまだ甘い。
まあ、冷たい奴になるよりはマシかもな。
「では、もう1つの問題、それは停戦といっても、簡単には応じないよな。その辺はどうする?」
「ああ、最悪、連合が停戦に応じたフリをして、Nジャマー・キャンセラーを入手した途端に、再び
 戦争を仕掛ける事だってありえる。
 だからこそ、双方に納得できる形で条約を纏めたい。多少の時間はかかるだろうし、その間も
 戦争は続く。だが、後の事を考えれば適当な条約は結びたくない。単なる停戦条約じゃダメだ」
「だろうな。それで?」
「お前には、ここに居るウナトと一緒に和平案を纏めて欲しい、ウナトは連合に顔が利く。逆に
 お前はザフトにだ。頼めないだろうか?」
「…………やりたいくらいさ。だが、僕はこれでも捕虜の身でね。プラントの人間と接触した途端に
 拘束される可能性だってある」
「え? そ、そうか……困ったな。なあ、ウナト、先に終戦案を纏めてもらうって無理かな?」
「無理ですな。時間がかかります。やはり、ザフトの和平派との接触は、他に任せましょう。
 バルトフェルドを今ザフトに連れて行かれるのは困る」
「うんうん♪ 僕も当分オーブに居たいしね。だが、出来るなら自由な身で居たい。亡命って手筈を
 取りたいんだが…」
「難しかろう。砂漠の虎は名将で、今は戦争中。ザフトとしてはハイとは言えんな。強引に拘束したと
 思われるやも知れん」
「そうだな。ザフトにとって、オーブは連合の仲間って見てる向きもあるだろうし」
「相当な手土産があれば話は別ですが……」
「あるぞ。手土産」
「本当か?」
「ああ、僕のルームメイトの2人、彼等は最高評議会の現議員のご子息だ。現在、ザフトではMIAに
 認定されてるだろうし、それをオーブが返せば高感度アップになる。使えるだろ?」
「え? いや、しかし2人を返して欲しければ、バルトフェルドの亡命を認めろとか脅すのか?」
「そこまでしなくても良いさ。返そうと思ってるが僕が駄々を捏ねているって言えば充分。
 ザフトだって、仕方が無い、取り合えず2人だけ戻せって事になる。後はアイツ等に言ってもらうさ。
 バルトフェルドはオーブで終戦に向けて活動してるってね。そうすれば、オーブの目的がシーゲル・
 クラインに伝わる。後は向うから接触してくるさ」
「なるほど、同時にその2人の親も、和平案に興味を向けると言う訳か?」
「その通り、ウナト殿は察しが良いな。僕が行くよりよほど適任だよ彼等は。
 なにしろ2人の親は中立のタッド・エルスマンと、強行派でも無いが連合を危険視して
 和平に反対してるユーリ・アマルフィ。どちらも和平派では無いけど、和平派に転がせる人物だ」
「それは都合が良いな。カガリ様、バルトフェルドの意見に乗りましょう」
「ああ、そうだな……じゃあ、あの2人には何処まで話す?」
「あまり、突っ込んだ事は話さないが良いでしょう。特にラクス・クラインの暗躍。あまり気持の良い
 話でもありません。特にプラントの民にとっては。むしろ足を引っ張りかねない」
「ウナト殿と同感だね。今の状況から察すると、ザフトの最大の関心はオーブに渡ったと思われる
 Nジャマー・キャンセラーだ。それを、どう使うつもりか。それを早急に伝える方が懸命だ」
「ザフトでは、戦々恐々ってわけか……わかった。まずはオーブの目的を先にザフトに伝える。
 連合には向うが感付いてからで充分だろ?」
「はい」
なるほどね……よく考えたもんだ。これでどの陣営もオーブには攻める事は出来なくなった。
そして終戦に向けても動ける。おそらくラクスもここまでは予想できなかったんじゃ無いか?
だが……
「カガリ、さっき言ったオーブの目的で、核兵器を使う、使おうとしたらオーブの敵ってやつなんだが、
 民間人を巻き込む大量破壊兵器に変えてもらえないか?」
「え? ああ、そうだな。確かに、そっちの方が良いかもな。どうだ?」
「そうですな。オーブの目的を単なる終戦では無く、カガリ様の望みである国民を守るという
 主張には、その方が自然やも知れませぬ」
「ああ、分かった。そうしよう」
「助かる」

「驚いたね……君は予想できた?」
再びシンと2人きりになって、さっきの会議について話す。
「まさか、自分が所詮は軍人なんだって思い知らされた。核動力をMSの動力や兵器としてしか
 見れなかった」
「僕もだよ……それにしても、カガリ、頭良くなりすぎじゃない?」
「ほとんどはウナトを始めとしたブレーンの案だろ? ウズミに不安を抱き、サハクでは危険だと思う
 連中が結構いるみたいだ。そんな連中がカガリの元に転がり込んできた。
 まあ、それを纏めきれるアイツの器量には驚きだけどな」
「そうだね……それと最後の修正はやっぱり……」
「ああ、ジェネシスだ。下手すればレクイエムだって無いとは言えないが……どっちにしろ、民間人を
 巻き込む兵器だ。アンタだって、出てきたら破壊する気満々だろ?」
「うん。壊す。……それで、その場合の大義名分が必要だから修正したんだね?」
「ああ、カガリの案は優秀だ。これでオーブ解放作戦は発動しない。同時にこっちからも攻める事が
 出来なくなったけどな」
「ホント……僕が今までやってきた事ってなんなのさ?」
M1の開発協力とか、訓練とか……
「だからこそ、条件を付け加えたんだ。その時は思う存分暴れる。それまでは黙って訓練だな」
「でも、連合とザフトの戦争は当分は続くよね?」
「ああ、簡単に落とし所が見つかるとも思えないし……」
「その間、僕達はオーブに引きこもるんだ? フレイが頑張って僕達はオーブで訓練三昧の日々」
「そ、そうなるかな?……え〜と」
「君は前半に暴れられたけど、僕はまだ実戦は君と戦っただけなんだよね」
「そ、そう言われてもな……」
まったく、また当分は出番が減りそう……この身体の所為かな?
「取り合えず……MSの準備かな?」
「そうだね。他に何か無かったっけ?」
「あるぞ。ステラの件、俺は諦めてないから」
そうだった……でも、ロドニアか……どうすれば?

続く

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