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第32話〜意思表明〜

Last-modified: 2013-04-22 (月) 19:54:13

「意外とお客さん多そうですね?」
「そうですわね。まあ、少し客層は変わっていますが、充分ですわ♪」
ある意味、失礼な質問だったが、気にもせずに笑って返された。
今日はラクス様のコンサート。ここで大事なミッションがある。
「それでは行って参りますわ♪」
「はい、頑張ってください」
「ええ、ルナマリアも後は宜しくお願いします」
そう言いながら舞台へと向かわれた。さてと……

「失礼します」
もうコンサートも終盤に差し掛かったころ、私が待機している控え室にアスランがやってきた。
「初めまして。ルナマリア・ホークと言います。本日はラクス様の護衛を勤めていますので、
 お邪魔でしょうが、お許しください」
「あ、ああ、気にしないでくれ」
どうでも良さそうな返事……婚約者との逢瀬を楽しむ気は、微塵も感じられない態度。
予想通り、パトリックに言われたのと、ラクス様から招待されて仕方なくといった感じだ。
だが、これでやりやすい。本気でラクス様を心配してる態度を見せられたら正直怯むところだった。
「どうぞ、お茶を入れました」
「ああ…」
うん。相変わらず横柄な態度だ。さて、そろそろ終わりかな?
「ただいま戻りました」
ドアを開けてラクス様が戻ってきた。後ろには報道陣が大勢。
「お帰りなさい。コンサート、上手く行きましたか?」
「ええ、ファンの方々にも喜んでいただけましたわ。アスランもお久しぶりです。あの、インタビューは
 後ほど、少しで良いですから時間を下さい」
そう言いながらドアを閉める。これで、ここの会話は外には聞こえない。
しかし、報道陣にとっては興味深々だろう。ラクス様とアスランの再会は……
「お久しぶりですわねアスラン」
「ええ、何だか大変だったそうですね。大丈夫ですか?」
「はい♪ それで、お見せしたいものが」
「え?」
そう言いながら一枚の写真を取り出し、それをかざす。
「キィィィィラァァァァァァ!!!!」
うわっ! ビックリ! それにキモイ。
「何だ! それは! 何でキラが!?」
「はい♪ 抱かれました♪」
「うううううう、ウソだ! キラがそんな事をするはず無い!」
「じゃあ、もう1度、ハイ♪」
再び写真を見せる。
「違う! 何かの間違いだ!」
「激しかったですわ♪」
「そ、そうか! お前だな! お前もフレイと同じだ!」
「フレイ?……まあ、良いでしょう」
「何が良いんだ! お前がキラを誑かしたんだ! そうでなければキラが、そんな事!」
微笑みながら後ろに下がり、ドアを手に取る。準備だ……
「あら? わたくしが何をしたと? わたくしはキラに誘われて」
「ウソだ! お前の方が誘ったんだろ! この売女!」
後ろを振り向く……今頃は涙を浮かべてるだろうな………嘘泣きを簡単に出来るんだもんなぁこの人。
「……もう1度、言ってもらえます?」
「だから、お前の方が誘ったんだろ! この売女!」
その声の直前にドアを開き、走り去って行くラクスさま。つまり外の報道陣にはアスランの声だけが
聞こえ、泣いて走り去るラクス様の姿と、怒鳴るアスランの姿が映される。
「待て!…」
OK、私の出番!
「女の敵ぃぃぃぃ!」
後ろから蹴りを入れて報道陣の中に飛ばして失神させる。
「酷いです! ラクス様が可哀想です!」
ついでに追加攻撃。これでアスランは、レイプされた婚約者を罵る最低男と、私みたいな小娘に
失神させられたヘタレの二重の称号が与えられる……………制裁終了。
これで、また一歩和平に近付いたんだ。

第32話〜〜意思表明

カガリがモルゲンレーテ制圧に水面下で動いてる。後はアイツを信じて準備だけでも。
「で、どうする? このMS」
「ドレッドノートね……機体はゲイツがベースみたいだし、本体の性能はフリーダムやジャスティスに
 劣る感じかな?」
キラさんのフリーダムは別に良いけど、問題はコイツ。核動力機はバッテリー切れの無い点は
ありがたいけど、問題は性能。
「俺、こんなの使えねえぞ」
プリスティス……てっきり、ゲイツのエクステンショナル・アレスターだと思ってたら、ドラグーンの
一種だった。
それを抜いたら、ビームライフルと使いにくいシールド内蔵型のサーベル。
「これは装備を増やす必要があるね。シンは何か希望ある?」
「ん〜、無い。正直言って、ストライクの方が良いかな」
こんな事なら回収したストライクを少佐に譲るんじゃ無かったかな……でも、コイツを少佐に譲る方が
もっと嫌だし……
「でも折角だし、取り合えず対艦刀でも付けようか? 好きでしょ?」
「うん。後は機動性さえあれば文句は無い」
「じゃあ、プリスティスは?」
「捨てるか?」
「まあ、あっても使えないし……」
「よっ! お前さん等は何してんだ?」
「少佐?」
「ムウさん?」
何、この狙ったタイミングの登場の仕方? コイツに渡せって言うのか? 嫌だ…
「ムウさん、これ要ります?」
「あ、おい、なに勝手に…」
「何だ?」
俺を無視か!?
「ガンバレルの仲間。ワイヤー無くても動きますよ」
「本当かぁ! 要る要る♪」
「ま、待てよ! だって、そいつはエネルギー消費が!」
「じゃあ、動力ごと…」
「待てよ! それはダメ!」
「ん〜、あ! そう言えば開発中のストライカーパックに味方機への補給が出来る奴があったな」
「味方機への補給?」
「うん。大型のバッテリーパックを背負った奴。腰のサイドアーマーをプリスティスに付け替えて、
 そのストライカーパックを装備すれば、結構使えると思う」
「おお! 良いなそれ!」
なあ、おい…今は俺のMSをだな……
「ちなみにストライカーパックの名前は?」
「ライトニングです」
「おお! 何だよ。そのGで血を吐きそうな名前は! いっそ白い仮面でも被るか」
「赤い軍服にして?」
「止めろよな……」
「でも、高機動型じゃ無く、狙撃タイプですよ。でも、プリスティスを使うなら距離が有った方が
 いいし、それで行っても良いですか?」
「ああ、頼む」
「なあ、俺のMSは?」
「う〜ん、でも今は何も出来ないに近い状態だし……そもそも急いで戦力を整える理由すら無くなった
 からね……フリーダムもあのままだし」
「なあ、本当にフリーダムはシンに回すのか?」
「ああ、コイツの方が上手く使える」
「ふ〜ん、高性能機を他人に渡すなんか太っ腹だな」
そういう訳じゃ無いけどね……それにしても…………
「平穏すぎる」
「この前まで、人生最大のピンチを経験してたから余計だろうね」
まったくだ。誰の所為だと思ってやがる。

ロングダガーの射撃をギリギリで回避。こっちもビームライフルで牽制をしながら接近。
それにしても速い……いや、それ以上に正確なんだ……実戦でコクピットを狙うのを避けてるって
聞いたけど、それも頷ける命中精度……でも!
「行って!」
マイダスメッサーを投擲……大きく回避して戻ってくるのにも対応してる。でも、まだ…
「次!」
パンツァーアイゼンを発射……ロケットアンカーを避けるけど、最初から目標はマイダスメッサー。
マイダスメッサーをロケットアンカーで掴む。
後はマイダスメッサーをコントロールして、ワイヤーをキャリー少佐のロングダガーに巻き付ける。
「完全には無理ね」
やはり、簡単に行く相手では無い。ワイヤーの拘束から逃れられた。でも隙が出来れば充分……
「いやぁぁぁ!」
懐に飛び込みながらビームライフルを捨て、持ち替えたシュベルトゲベールで横薙ぎ……
「良い踏み込みだ。だが!」
少尉がロングダガーの強化装甲、フォルテストラを外す。
「く…」
眩い閃光が視界を奪う……近付いてきてる……でも、それは前に喰らった。
横薙ぎのシュベルトゲベールをしゃがみながら擦り抜けて踏み込んできた。それは予測済み…
「貰い!」
途中で左手だけはシュベルトゲベールから放し、腰のビームサーベルを逆手に握った。
後はそれを…
「惜しかったな、中尉」
「あれ?」
空振り?………倒れたロングダガーがライフルの銃口を向けてる。対するこっちは空振りの後で
バランスが……
「終わりだ」
「ま、また負けた……」
うん。未だに一度も勝ってないのよね。ライフルの直撃のアラームを聞きながら思わず溜息。

「う〜ん、やっぱりソードだと回避が遅いな……でもエールだと攻撃のバリエーションが……」
それにシュベルトゲベールは手放したくない。アイツが振るってる姿が焼きついてる。多分エールを
装備していた方が多いはずなのに、何故かアイツのイメージは、この巨大な剣だった。
それに身体能力に上回るコーディネイターに勝つには、工夫が必要になる。良い手無いかな?
「今日は危なかったよ。戦うたびに強くなるな君は」
先にMSを降りて悩んでる私にキャリー少尉が話しかけてきた。最近では敬語も止めてくれたので、
益々話しやすい。……正直、年上の人に敬語を使われると逆に萎縮するから苦手だ。
「まさか、あそこで倒れてしまうなんて……」
「他に避けようが無かったんだ。正直、こっちが驚いたよ」
「でも、負けは負けです。実戦なら死んでました」
「自分に厳しいのだな」
「死にたくないなら強くなれ。そう言われながら訓練してきました。私、臆病だから……厳しい
 訓練をしないと、眠れないんです。自分が弱くなるんじゃ…そう考えて怖くなって」
「だったら、何故パイロットに? 確かに強いが……」
「う〜ん……まずお昼食べに行きません? お腹減ったし食堂に行きましょう」
「あ、ああ……そうだな。たまには一緒に食べるか」
今はお昼時だから食堂は賑わっているだろう。そして、キャリー少尉は複雑な立場の所為で、あまり
そういった所には行かないみたいだ。
それを、ちょっと強引に連行してみる。
「さて、何にします?」
「……ああ、私はAランチで」
「じゃあ、私もそうします」
2人揃って、トレイを持ってテーブルに、周りの奇異の視線が痛いけど、私以上に少尉は辛いだろう。
「少尉は何で連合に入ったんですか?」
周りに聞こえても良い……いや、むしろ聞こえるように話しかける。
「……私はプラントに暮らしていたんだが、盛り上がる戦争の機運に嫌気がさしてね。それで地球に
 降りたんだ。そこでエイプリール・フール・クライシスが……馬鹿げてるよ。
 そして、戦争による憎しみの連鎖を拡げないために入隊した……」
「連合に、ナチュラルに協力しようと?」
「そんな所かな。開戦当初からザフト有利で動いていたし、ナチュラルのコーディネイターに対する
 憎しみは増大していった。だからコーディネイターの全てが酷い人間では無いと証明したかった」
「でも、黙ってたら伝わりませんよ」
周りの反応を見れば分かる。明らかな戸惑いの表情だ。皆には言わなかったんだろう。
「そうだな……で、君はどうなんだ?」
「パイロットになった理由ですか?」
「ああ、父親の敵討ちは分かるさ。だが、何もパイロットは……後方勤務だって有るし、お偉いさんは
 そっちで宣伝したいのでは無いか?」
「そうみたいですね。今でも変に優遇されてますし……実際、階級以上の権力があります」
「だったら?」
「え〜と、最初は誤解からです。それで、何時の間にかMSに乗ってました」
「誤解?」
これはシンには教えたけど、流石に他の人には言い難い。
「でも、今ではパイロットになって良かったと思ってます。後方勤務では無く、この立場でしか私の
 目標は達成できないから」
「君の目標っていうのは?」
「コーディネイターを世界中から消し去る事です」
うわぁ〜、少尉が悲しそうに……おまけに、周りもみんな引いてる。
「でも、誤解しないで下さい。私はコーディネイターを殺したいわけじゃ無いんです。少尉の事は
 尊敬してますし、他にも仲良くなった、戦争が終ったら会おうって約束したコーディネイターも
 います。コーディネイターと友人になれたんです」
「だが、それは矛盾してるだろ?」
「いえ、だからすぐに殺しつくそうなんて考えは持ってないんですよ。
 ただ、別に殺さなくてもコーディネイターは滅びますし、いくら殺してもコーディネイターは
 殺しつくせません」
「随分と哲学的な話だな」
「もっと単純ですよ。単にブルーコスモスなんかのやりかたじゃ無理なんです。コーディネイターへの
 恐れって、憧れと表裏一体なんですよ。コーディネイターは凄いから怖いと、凄いから憧れる。
 つまり特別視しすぎです。
 私も昔は怖かった。そして自分がコーディネイターだったらって思ったこともあります。
 そんな考えが、コーディネイターを恐れる人こそ、子供をコーディネイターにするんです。」
少尉以外の人も聞き入ってる。でも私は言葉を止める気は無い。
「だから、私はコーディネイターにも負けないナチュラルが居るって証明したいんです。そうすれば
 子供をコーディネイターにしようなんて誰も思わなくなるし、コーディネイターは出産率が低いから
 自然と滅びます。それにナチュラルの人間の可能性も信じてます」
食堂が静まり返った。でも、決めたんだ。ここが私の最初の一歩だって。キラを失って、1人になって、
それでも進むと決めたから。 
キャリー少尉には嫌われるかもしれないけど……黙り込んでいた少尉が顔を上げる。
「君の戦い方、ソードストライカーの装備を生かした変則的な戦法。だが、機動性に不満がある。
 そうだね?」
「え? は、はい」
「だが、エールだと装備に不満……だったら、両方を合わせた装備を作れば良い」
「そんなこと出来るんですか?」
「ああ、ダガーには腰にビームサーベルが最初から装備されてるからね。そこでエールストライカーの
 ビームサーベルの接続パーツを改造してマイダスメッサーを付ける。後はシールドをパンツァーアイゼン
 にすれば要求を満たせるのでは無いかな?」
「それなら! あ、でも……」
「私は元々、プラントでは工学博士だったんだ。その程度の改造は簡単だ。それに新装備では無いからね
 OSの調整なんかも難しくは無いさ。後は君の影の権力を振るって、整備員に作らせれば良い」
「良いんですか?」
「ああ、変な気分だが……君に負けたくなった。君にコーディネイターが別に恐ろしい存在では無いと
 証明して欲しい」
嬉しそうに言われた。この人に認められたと思って良いんだろうか?
「でも、手加減は困ります」
「分かってる。だから強くなってくれ、私よりも、他の誰よりも」
「はい!」
周囲が困惑した視線を送ってくる。さすがに安っぽいドラマみたいに、簡単に感動して拍手喝さいを
浴びたりはしない。身の程知らずも馬鹿な小娘と思われてるかもしれない。
それでも、みんなに私の考えを知って欲しいから……今は馬鹿と思われようが
少しずつ進むしかないから。

続く

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