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第33話〜天敵の鼓動?〜

Last-modified: 2013-04-22 (月) 20:02:43

「何のつもりだ!? 自分がやってる事が分かっているのか!?」
「はい。もちろんです。お父様」
ついにこの日が来た。カガリの行動が隠しきれない、いや、隠す必要が無い状況まで進んだ時、
カガリはウズミから呼び出しを受けた。
随伴は今やカガリの両腕と言えるウナトとバルトフェルドさん。そして、何故か俺とキラさん。
一応の理由は、キラさんは今の複雑な立場を法文化するため、カガリの執事に任命されたから。
突然出来たこの身分は、要するにカガリの代理。間違っても男版メイドでは無い。
歴史上の有名人では高師直が居る……イメージ悪いな。
今回作られた立場では軍事面限定で、ある程度の便宜は図ってもらえるが命令権が無い。そのため、
シン・アシカの指示は断ることが出来るようになってる。
だから、何かやりたい事があれば頼め。先方が承知してくれたらやって良い。それがカガリのお達し。
まあ、いきなり将軍とかに任命されても困るしな。指揮能力は悲惨なほど皆無だし。
そして、俺は強奪犯だから……およびウズミはキラ・ヤマトの出生を知ってるし。
「カガリ、お前はオーブの民が戦争に巻き込まれて死んでも良いと言うのか!」
「まさか。そうならないための手筈は、出来る限り取ってますし、情勢を見ながら手を打つことも
 怠りはしません」
「だが、完全ではあるまい。強引な武力侵攻をしてくる可能性だってある。その時、確実に退けられる
 保障など、何処にもあるまい」
「そうですね。この世には完璧な策などありませんし、滅ぶときは滅びます。だからこそ、より良い
 道を選ぶ必要があるのです」
「お前の考えの何処がより良い道なのだ。オーブの民を戦争の危険に巻き込んだだけでは無いか!」
「戦争の危険はすでにあります。だからこそサハク家がMSの開発を独断で進めながら、咎めもせず、
 量産を認められたのでは無いですか」
「危険を予期して、それに備えるのは国主として当然の事だ。それに比べてお前の考えは何だ!?」
「私も同じです。このままではオーブの民が危険だからこそ、戦争を終結させる必要があるのです。
 現在のオーブの、そして世界の食糧事情をどう捉えてます?」
「たしかに食料が不足している事は聞いている。だが、本格的に不足してくれば戦争の継続も
 出来なくなる。わざわざお前が余計な事をする必要など無い」
「それでは手遅れだと何故気付かないんです!? そもそも、此度の戦争、何時終るとお考えで?」
「現状では終戦は遠いだろう。だが、だからこそオーブを戦火に巻き込むわけにはいかんのだ!」
「戦火が怖いから、かわりに飢えろと言われるのですか?」
「そうは言ってない! 人の言葉尻を捕えても意味は無いぞ」
「別に上げ足取りをしたいわけではありません。純粋にこのままでは民が飢える事を心配してるのです。
 食料だけでは無い、あらゆる物資が入ってこなくなる。そうなる前に戦争を終結させる。
 それこそがオーブを守る道だと思っています」
「先の事を考えて、今、攻められては意味が無い」
「状況によっては、Nジャマー・キャンセラーが無くても攻められます。中立だと言って、何時までも
 無関係を貫けるほど、此度の戦争は甘くはありません」
「だが、これまで中立を貫いてきたからこそ、戦火に巻き込まれずに済んだのだ」
「これまでは、です。中立という言葉、別に戦争に巻き込まれないための呪文ではありません。
 状況によってはオーブは攻撃される」
「その状況を作った本人が言う事か!」
「ところが、そうでも無いんですよ。ウズミ殿」
「横から口を挟まないでもらおうか」
「そうも行きませんな。私は元ザフトの軍人です。ですから断言しますが、パナマはじきに落ちますよ。
 その時は、どうされます?」
「何が言いたい?」
「パナマが落ちれば、連合は月へ物資を運ぶ事が不可能になる。だから、どうしてもマスドライバーが
 必要になるんですが、何処が一番取りやすいですかね?」
「オーブだと言いたいのか?」
「その通りです。まさか、オーブ一国でザフトの守るパナマ、ジブラルタル、カオシュン、これらの
 守りを超えるとでも思ってるのですか?
 確かにオーブ軍は精強です。同数ならばザフト軍をも上回りそうですが、それでも、ザフトの方が
 数も多く難敵です。そもそも、連合にオーブの強さは伝わってないでしょうに?」
「たしかに、その可能性はある」
「だったら、連合に降伏します?」
「それは出来ん!」
「では、ザフトと組みますか?」
「オーブの理念は中立だ。それを曲げる事まかりならん!」
「話しになりませんな。国土を戦火に晒すと言ってるも同じでは無いですか?」
「その時は、マスドライバーを破壊する。そうすればオーブを攻める理由は無い」
「だったら、今すぐ、それをしましょう。そして、物資を止められて怒り心頭のロンドと戦いましょう。
 これで、めでたく連合の後ろ盾を得た、サハク家がオーブの国主です」
「ウナト! 口が過ぎるのでは無いか!?」
「あまりにも呆れて、つい。ですが、マスドライバーの放棄はそういう事です。そもそも、何故
 連合が早急にマスドライバーを必要とするか? それは月基地を干上がらせないためです。
 その関係、そのままオーブ本土とアメノミハシラの関係と同じなのです」
「おまけにサハク家のロンドは連合の軍部と強い繋がりがあり、貴方の中立の考えに異議を唱えてる。
 状況によっては、いつ反乱を起こしてもおかしくない一族です。
 つまり、オーブが今まで平和だったのは、中立だったからでは無い。たまたまなんですよ」
「それにウズミ様、何もカガリ様は中立政策を捨てて、どちらかに付くと言ってるのでは無いのです」
「オーブの理念の他国の争いに干渉しないに反している! これまでオーブを守ってきた理念を
 簡単に捨てろと言うのか!」
「理念、理念と、お父様は国より理念が大事なのですか!?」
「理念無くして国は成り立たん! どうしても破るなら私を殺せ!」
すげえ、頑固……話には聞いてたけど、予想を遥かに上回る。流石にウナトもバルトフェルドさんも
呆れ顔。カガリは悔しそうにしてるし、キラさんは……あれ?
「それを子供に押し付けるんですか?」
……キラさんが意見を?
「何が言いたい?」
「そうやって、自分の考えを子供に押し付けて、カガリがどう考えたか、少しは悩んでから返事しても
 良いんじゃ無いですか?」
「私の意見は変わらんよ。子供に分かる事では無い」
「分かりますよ。貴方はユーレン・ヒビキと同じだ。自分の理想を子供のためと言い、実際は子供の
 事なんか少しも考えてない。
 ユーレン・ヒビキが最高のコーディネイターを作る夢に呪われて狂ったように、貴方は理念に
 呪われている。そして、その呪いをカガリにまで!」
「なっ! 私が、あの男と同じだと言うのか!」
「だって、そうじゃ無いですか! 今、貴方が死んだら、カガリには選択肢が無くなる。
 絶対に貴方の理念を守らなきゃって、そうなったら、例えそれが間違いだと分かっても、その道を
 進むしか無くなってしまう」
「そ、そんな事は、そもそも、カガリは私と意見を違えてるではないか!?」
「カガリは、そんな器用じゃ無いですよ。自分の所為で貴方が死にでもしたら、どうなるか?
 それすら分からない親なんですか?」
「い、いや……さっきは殺せと言ったが」
だよな。あれは覚悟っていうか……話がずれてる。
まあ、この話の晦まし方は天性なのかな? 実際にその気は無く真剣に考えてるんだろうし……
でも、泣く子には勝てない。つーか、キラさん、アンタも本当は30過ぎてんだし、泣くなよ。
いい加減、助け舟出すか……
「あの、カガリの考え、少しは検討してくれませんか? すぐにじゃ無くて良いから、何事も決め付けは
 良くないでしょう?」
「…………だが…」
「カガリ、1日だけ待てないか? 今は冷静な判断は無理だろう」
強引に意見を変えさせるのは不可能。考えを変えさせたいなら、自分から変える状況を与えるしか
方法は無い。
論破して喜んでいては、相手を頑なにするだけで効果は無い。
「………ああ、それくらいなら、待てる」
「ああ、それと、もう1つ……お前はウズミ・アスハの子供で良かったか?」
「え?……あ、ああ…うん」
照れながら返事。この辺は変わってない。
「そっか、俺もハルマ・ヤマトとカリダ・ヤマトの子供で良かったよ」
これはキラさんの分。
「は?……なに言ってんだ?」
「気にすんな……じゃあ、今日は解散しよっか」
ウズミは分かってるから問題は無い。
「そうだな……良くは分からんが、ウズミ殿も考えてくれそうだし……ウナト殿」
「ああ。……ウズミ様。これが現在のオーブと各国のエネルギーの現状です。後で目をお通し下さい」
「全く、戦争なんてしてる場合じゃ無いんだがね」
全員が席を立ち、退席する中、ウナトが渡した資料を読むウズミの声が聞こえた。
「たしかに、酷い有様だ……」

第33話〜〜天敵の鼓動?

「気が済んだか?」
「うん。ゴメン」
あの後、心配するカガリと別れ、シンと2人になった。
「いい歳して泣くなよな」
「うん。反省してる。それとアリガト」
シンに助けられた。でも、あの時は我慢できなくなって思わず……
「カガリが、ああなった事……やっぱり、ウズミの所為って思ってる?」
「うん……あの時も言ったけど、オーブの理念って、カガリや僕達にとっては呪いだったんだよ。
 ウズミさんの死に様は、それほど衝撃的だった」
「神格化ってやつ?」
「そうだね……うん。その通りだよ。オーブの理念は神の言葉で、僕等はそれに従う狂信者になった」
「全然守ってなかったけどな。介入しまくりだし、他国に攻め込むし」
「そうだよ。だからこそ狂信者って言ったじゃない。神の言葉を正確に実行できるのは狂信者とは
 言わないよ。どこか歪めて捉えてる……まあ、余程、変な宗教は別だけどね。そもそも、大昔の
 神の定義なんて今守ったら生きていけないよ」
「都合の良い言い方だな」
「うん。認める。でも、だからこそ、カガリにもウズミさんにも、同じ事を繰り返して欲しくない」
「ユーレンの件は?」
「あれは前々から思ってた。それにフレイにも言われた。コーディネイターは親の欲望を押し付けられた
 存在だってね。結構当たってる」
「そうか……アイツは答えを出したのか?」
「うん。コーディネイターより、強くなるって言ってた」
「…………なるほどね、随分と茨の道を選んだもんだ」
「それだけで分かるんだ?」
ちょっとだけジェラシー……
「まあ、俺ってフレイに愛されてるから」
「やっぱり、ムカツク」
絶対に阻止してやる。

これはアスランの呪いだろうか? なんで私がこんな目に……
『ええ、幻滅しました』
『最低です』
『ああ、どうなんでしょうね?』
『酷い! 最悪!』
インタビューに返事してる人はほとんどがアスランを罵倒……でも……
「予想より上手く行きませんでした♪ ルナマリアってばお茶目ですわね♪」
「なんで……」
テレビを見ながら、インタビューの様子を観察するラクス様。
「あ♪ さあ、例のシーン、またやりますよ♪」
「や、止めてぇ〜〜!」
テレビ画面に私に蹴飛ばされるアスランの映像が、そしてアスランが倒れると当然後ろから蹴りを
入れた私の姿が……
「本当に可愛らしい下着ですこと♪」
「言わないでぇ〜〜」
うん。お茶の間の皆様にパンツ見られた。
「まあ、表立っては言う方はいないでしょうが、一部では評判みたいですわ。ミニスカの軍人の
 正体は?って感じに? いっそアイドルデビューでも狙います?」
「嫌です……何で、こうなるんですか?」
「そう言われましても、貴女の服装の所為としか……」
「ううう……」
「今回は確かに一部の殿方が、良いもの見れたし、アスラン、グッジョブ! などと言ってますが、
 アスランにダメージを与えたのは間違いありませんし、よしとしましょう」
「そ、それでアスランは抹殺完了ですか? 世間的に死亡?」
「そうも行かないでしょう。これを…」
ラクスさまから一冊の雑誌を渡され、それを開く…………
「な、なんです! これ!?」
「コーディネイターの暗部とでも言いましょうか……世の中には貴女のような考えの持ち主ばかりでは
 ありませんわ」
「つまり、この本の編集をしてるのって?」
「はい。ナチュラルは下等な生物。コーディネイターを新たに進化した種と考えてる方々ですわ」
そこには、今回の事件に対し、ラクス・クラインはナチュラルに犯され穢れた存在になった。
アスラン・ザラは当然の事を言ったまで、ナチュラルに抱かれ、しかも弁護する女などを婚約者に
持ったのが彼の不幸だ。そんな事が書かれていた。
「彼等にとっては、アスランは自分が言えないことを言ったヒーローですわ。ますます反ナチュラルの
 象徴になりましたわね。もっとも、アスランには迷惑でしょうが」
「ここまで……」
「そう思ってる人は大勢居ますわ」
「では、まだやります?」
アスラン潰しなら協力する。
「いえ、あまりやりすぎては逆効果ですわ。ですから、次の段階に備えます」
「次、と言いますと?」
「パナマ攻めが決まりました。すでに軍は動いてます。そして、今回の戦闘にはザフトが勝ちますわ」
「でしょうね」
「問題はこの後です。パナマのマスドライバーを奪われた連合は、早急にマスドライバーを確保する
 必要に迫られますわ。そこで狙うのが……」
オーブ! ついにこの時が来た! 待っててねシン!
「おそらくはビクトリアですわ。そこでザフトは敗れます。ですから…」
「ちょっと待って下さい!」
「何ですか?」
「オーブじゃ無いんですか?」
「あら♪ さすがにルナマリアは頭が良いですわね。そうですわ。意外と見落としがちですが、実際に
 落としやすいのはオーブです。まあ、普通なら中立国だから攻めるのは…と、考えるのですが、
 大西洋連邦に強い影響を持つブルーコスモスの盟主、ムルタ・アズラエルなら、ここはオーブを
 攻めるでしょう。そのような方ですわ」
「だったら、オーブが?」
「ええ、ですから、そちらには手を打ってます」
は? ナンカイッタ?
「ここで、オーブを落されたら困りますから、Nジャマー・キャンセラーをオーブに流しました♪
 もし、連合が攻めてきても核で脅せます。まあ、後が大変でしょうが、そちらはフォローできます。
 取りあえず凌いでくれれば良いのですから。
 まあ、そう思ってたのですが、予定外の行動に出てるようで……カガリさんって、楽しい方ですわ♪」
「あ、あえ?」
ちょっと待て……だったら私の計画はどうなるの? 
「そこで、まずはお父様を使ってパナマ陥落後に停戦を持ち掛けるように言っていただきます。
 まあ、これは現在の議長のパトリックには却下されるでしょう。当然です♪
 ですが、戦闘継続した場合、支配域を広げすぎたザフトは各拠点の守備がどうしても手薄になり、
 逆にMSの生産体制を整えた連合に痛い目に合います。
 連合のリーダー格の大西洋連邦はユーラシアの機嫌を取るためにも、最初にビクトリアを奪い返し、
 続いて北上を開始、ユーラシアのザフトに攻撃します。残念ながら、こうなってはザフトは連戦連敗、
 誰から見ても、滅亡まっしぐらですわ♪
 そこで、再び和平派の出番。あの時、こちらの言う事を聞いて停戦しておけば良かったと騒ぎ、
 パトリックに不信任案を提出。そこで和平派が実権を握ったときこそ、貴女の出番……って、
 聞いてますか?」
ワタシ、イママデ、ナニヤッテタンダロ?
「ルナマリア? どうかなさいました?…………てい!」
「痛っ!……ラクス様?」
デコピンされた。
「ボーっとされては困ります。話を聞いてましたか?」
「え、え〜と……パナマにグングニールが落ちる?」
オーブの事なんか聞いてない!……現実逃避って言うな!
「聞いてなかったのですね。今回はグングニールを使わずともパナマは落ちます。戦力は充分に
 ありますし、連合のMS、間に合ったとしても、数は多くありません…………残念ながら」
「は?……残念って?」
「……ええ、グングニールは取っておいた方が後の計画が楽で良いんですが……何故か、パナマに
 グングニールを落して欲しいんですよ。それで虐殺なんかも一緒に」
「ちょっと、なに言ってんですか?」
平和の歌姫の言う事か?
「自分でも分かりませんわ。ただ……今のパナマは嫌いですわ。むしろ死ね?」
「お〜い」

「どうした? アルスター中尉? 落ち着かない様子だが……」
「え? いえ……別に、ちょっと寒気がしたけど大丈夫です」
何だろ? 今、背筋がゾッとしたんだけど?
「だったら良いが、身体には気を付けてくれ」
「はい。キャリー少尉」
「まあ、アルスター中尉は頑丈だから、心配いらんだろ。風邪のほうが逃げる。
心配してくれたキャリー少尉に笑いかけると、最近仲良くなったウィルマー中尉がからかってきたので
睨みつける。
「それにしても、平和の歌姫ね……こんなのも居るんだな」
慌てて雑誌に目を通し、タイトルを音読……それで、誤魔化したつもりか?
「ええ、ラクス・クライン、正直世間知らずのお嬢様の戯言だと思っていたが……」
「暴行されても、変わらぬ思いね………こうなってくると、こっちが悪者になった気分だな」
雑誌の内容は、あのラクス・クラインについて……今ではユーラシア連邦の軍人にまで評判になってる。
それも、好意的な評価で……まあ、アラスカでの出来事を考えれば分からなくも無い。
私だって、アークエンジェルはオーブに亡命したって聞いたけど、事件を聞いたときは本気で切れた。
今でも上層部には不満が残ってるし……
「アルスター中尉は、どう思う?」
「別に……」
「ん? 機嫌が悪いな? さっきのなら悪かった。軽い冗談だ」
「そういうわけじゃ……」
機嫌が悪い理由は、ラクス・クラインの写真を見たから、彼女と会った頃の私は思い出すのも恥ずかしい
コーディネイターを無闇に恐れていた時期。ハッキリ言って反省する事が多くある。
でも……ラクス・クラインに対する行動だけは、全然罪悪感を感じない。
むしろ殺っとくべきだったって後悔してる……何でだろ?

続く

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