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第35話〜撤退戦〜

Last-modified: 2013-04-22 (月) 22:32:08

「来たぞ! ザフトの連中、今度はディンも混ざってる」
「ディンはスピアヘッドに任せる! MS隊はジンとバクゥを狙え!」
最進攻が始った……今度は下手な奇襲は通じないだろうな……
「さて、行こうか」
「はい」
キャリー少尉と私は前衛に立つ。正直、今回は退けるのは難しいだろうけど……
「一応は援軍も期待してみますか」
「そうだな……でなきゃ、やってられん」
「でも、撤退は頭に入れておいて下さい。少尉に死なれては困ります」
「撤退か……許されるかな?」
「援軍を出さなければしょうがありません」
援軍の要請はしつこいくらいにやらせた。それを盾に撤退を認めさせてやる。
「ここは、死に場所じゃ無いですから」
「わかった……では行くぞ!」
「はい!」
私とキャリー少尉がジンにぶつかる。さすがに前回と違って手強い。私は無理して撃墜せずに、撹乱しながら敵を引き付ける事に専念する。
そうやって後方のストライクダガー部隊に攻撃させた方が、私が一機で倒すより多くの敵を落とせる。
「ん? 上空、ザフトの増援か!」
「え? 降下カプセル……って、ジンと違う!?」
「新型だな。あれがゲイツか」
降下カプセルから飛び降りるMS。ジンを筋肉質にしたようなデザイン。
「撃ってきた! ビーム兵器を装備している!」
「やってくれる……」
ジンより動きが良い。しかもオレンジ色のゲイツは狙いも正確で、レベルが違う。
「アイツは不味い……少尉、ここは任せます。私は、あのオレンジ色を!」

第35話〜〜撤退戦

「なんて奴!」
ストライクダガーの群れに突っ込んだオレンジ色のゲイツは、草食獣を追い立てる肉食獣みたいに、ストライクダガーを狩り続ける。
もっとも、一匹しとめれば満足する動物と違って、コイツは殺戮を楽しむかのように未熟な連合のパイロットの命を奪っている。
「これ以上、好き勝手に!」
エールの推進器を全開にして突っ込み、シュベルトゲベールで、袈裟切り……避けられた?
「良い踏み込みだ……だが、勝てると思うな! ナチュラル!」
シールドからビームサーベル? 少し反応が遅れたが回避には成功……性能を見極めるまで、無理は禁物か……
「お前だけに構ってる暇はねえ! さっさと消えちまいな!」
右手のビームライフルを撃ってくる。撃ちあいに応じるか? いや、バッテリーの消耗は出来るだけ避けたい。
だったら、前にでるしか無い! ビームを回避しながら接近して斬撃……
「へえ……本当にやるね」
……渾身の踏み込みでの斬撃をシールドで止められた。でも!
「くっ!……力比べか……面白い!」
向うもシールドを右手で抑えて弾き返そうとする。だけど、対艦刀の切れ味は、そんなに甘くない。
その前にシールドが持たないはず。
「なるほど、こりゃヤバイかな……だけどな…」
え! ゲイツの腰のサイドアーマー…なんか変! 逃げなきゃ…
「ジンとは違うんだよ! ジンとは!」
とっさにステップバック……サイドアーマーが追いかけてきた!? くっ! ロケットアンカーなの!?
違う、多分、もっとヤバイもの……迎撃…シュベルトゲベールじゃ間に合わない! だったら!
シュベルトゲベールを手放し、背中のマイダスメッサーを2本とも抜いて振り下ろす。
捕まる寸前でワイヤーを切断。そのままマイダスメッサーを投擲……
「おっと! すげえな、おい!」
1つはビームライフルに撃ち落され、もう1つはシールドに阻まれた後、シールドから発生するビームの刃で切り落とされる。
でも構わない。すでにロケットアンカーでシュベルトゲベールを掴まえ、引き寄せながら接近を図ってる。後は掴んで斬り込むのみ!
「ハハ……本当にやるね……マジでナチュラルか?」 
またもやシールドで止められた。さっきと同じ……いや、違う! 
支える右手の位置が変わってる。しかも少しずつ角度を変えて銃口を此方に向けている。
………このままじゃ、押し切る前にビームライフルを喰らってしまう。
「いや、ナチュラルとは思えないな」
さっきから、お喋りな奴…………それとも会話して、こちらにビームライフルの狙いに気付かせないようにしてるのかな?
「だったら、お前、裏切り者のコーディネイターだな?」
ふん! 強ければコーディネイターですって? そんな考えがムカつくのよ!
「お生憎様! 私は正真正銘のナチュラルよ!」
片膝を付いて、左手の逆手でビームサーベルを掴む……さっきまで斬り降ろしを計っていた私に対し、オレンジのゲイツは持ち上げていた。
それが急に私がしゃがんだから対艦刀の圧力から逃れた代わりに上体が伸びた。
「何!?…」
しかも、私が女だと気付いて動揺したか? 隙だらけに……
そのまま、左手のサーベルを振り上げる……股間から切り上げようとしたんだけど、咄嗟に下がられてそこまでは届かなかった。でも……
「右手は貰った! 今度こそ仕留める」
ビームライフルごと右手を失った以上は、もう左手の盾のビームの刃しか武器は残ってないはず。
「お前…その声……」
でも油断したからと言って、こちらが見逃してやる理由にはなら…
「すげえ好み! もうピンポイントで俺のハートに直撃だぜ!」
………また、変なの出た。
「俺はハイネ。ハイネ・ヴェステンフルス。お前は?」
「え? フレイ・アルスター……」
何か凄い勢いで聞いてくるから思わず返事しちゃった。
「そうか。うん。良い名前だ。それで、年齢は? それに趣味と普段、休みの日は何してる?」
「歳は15歳……って、何聞いてんのよ!」
「15歳か……ちょっと若すぎるか? いや、プラントでは成人だし、俺は気にしないから安心しろ」
「気にしなさいよ……じゃ無くて、アンタ、私はナチュラルよ?」
「それがどうした? 良い声にナチュラルもコーディネイターも関係無い!」
声オタ?
「いや、アンタ、思いっきりナチュラル見下してたでしょ?」
「あ? だって違うだろ? 俺は別にナチュラルを下等でコーディネイターは優劣種だと考える差別主義者じゃ無いが、ナチュラルとコーディネイターは別もんだ。
男と女が違うようにな。
 だから区別してるだけさ。事実、ナチュラルはコーディネイターには勝てない」
「片手で言っても説得力が無いわよ。負け犬」
「キツイな……だが、お前の存在は特殊なんだよ、現に……周りを見ろよ」
「え?」
すでに、戦局が決まっていた。私がハイネに集中してる間に、連合のMS部隊は敗走寸前に……
「そんな……」
これがナチュラルとコーディネイターの差だって言うの?
「これが現実だろ? まあ、そんな事よりさ…」
「認めない! 今は無理でも…」
「あ?」
「アンタに構ってる暇は無い!」
「あ! おい! ちょっと待てよ!」
ハイネを無視して、ザフトに押されてるダガー部隊の救援に向かう。
「邪魔ぁぁぁ!」
途中のジンを切り伏せ、ゲイツを叩く……こんな事が出来るのは私が特殊だから?
「違う! 絶対に!」
私だって最初から出来たわけじゃ無い。みんなだって、ここを生き延びれば……
「後退して! 下がって立て直します!」
「中尉! しかし!」
「マスドライバーはすでにザフトが取り付いてます。ここは、もう!」
ここで死んだらナチュラルはコーディネイターに勝てないって現実が残るだけ、そんな事は認めたく無い。
「全軍に通達! 各自撤退を開始! 責任はフレイ・アルスターが取ります!」
ナチュラルとコーディネイターは別の存在……そのハイネの言葉を振り払う様に、私は声を張り上げ、剣を振るい、殿に立った。
「全員、これ以上は死なないで! 絶対に! 絶対に生き延びて!」
そうすれば……今度こそは……でも自信を失いかけてる。ハイネの言った事は正しい。彼はウソをついてない。本当に差別主義者じゃ無いんだろう。
そして、冷静に判断して両者は違うもの。コーディネイターが優れてると断言した。単なる差別主義者だったら反発出切るけど……
「……認めない……絶対にそんな価値観を変えてやる!」
自分に言い聞かせるように声を張り上げた。そうしないと立っていられそうにないから……

「バッテリーが……」
バッテリーが、もう残り少ない。でも撤退中の今は交換は不可能。
「中尉、下がれ!」
「でも!」
キャリー少尉が私に下がる事を勧めるが、現状で私まで下がれば、もう支える事は不可能。
基地の人間や、動かなくなったMSから脱出してジープに便乗した兵士が殺されてしまう。
「自分の立場を認識しろ! 君はここで死んではならない人間だ!」
「そんな立場!」
「軍の地位の事では無い! 君の理想に希望を抱いた人間が私だけと思うな!」
「少尉……」
「行け!」
なんで……もっと上手く行くと思ってた。撤退は覚悟していたけど、こんなに人が死ぬなんて……
何処で間違ったの? ハイネとの戦闘に気を取られすぎたから? それとも、前もって準備を……
「きゃっ!」
ビームライフル? 左腕を失った! 
「中尉! 早く下がれ! ぐっ!」
「少尉!」
少尉まで被弾した! 右足が……
「私は無理だ! 君は…」
「援軍だ! 援軍が来たぞ!」
「え?」
気付くより先に、少尉を撃ったゲイツが吹き飛ばされる。何て火力! さらに強力なビームの束が続き、ジンとゲイツを破壊していく。
「あれって……」
砲撃をしているのは、黒いMAの上に乗った緑色のMS……Gタイプ?
「撤退を援護する。全軍、今の内に下がれ!」
「この声!……」
覚えがある凛々しく、力強い女性の声……あれは?
「黒いアークエンジェル?」

「随分と大胆なことを考えられましたな」
「お恥ずかしい。若輩者の戯言と笑ってくださっても構いません」
「いや、面白いとは思います。特に戦後の光景が朧げながらも見えただけでも価値はあります」
「そう言って頂けると恐縮です」
カガリと対談するのはロゴスのメンバーの1人。こうやって、連合が気付く前に物分りの良さそうな人から順に、今回の構想を打ち明けて、協力を仰いでいるんだってさ。
こんな場所に呼ぶなら僕よりシンの方が向いてると思うけど、一応シンは連合の脱走兵の1人だし、今は隠しておきたい。
「では、オーブで作ったエネルギーに関しては?」
「そちらで配分をお願いします。形としては、かつての石油を輸入していた要領でお願いしたいのです。
 まあ、エネルギーの価格は無料にしますが、輸送費は」
「まあ、当然でしょう。そちらは負担します」
「ありがとうございます。それで、他の方々にも口添えをして頂きたいのですが」
「ええ、現状ではエネルギーは、かなり不足してますから、配分には揉めると思いますが…」
え〜と、要するに、エネルギー不足の地域の支援をロゴス関連企業を中心にお願いする。
下手にオーブが出ても、何処から手を付けて良いか難しいし、優先順位はロゴスに任せる意向。
まあ、自社の利益を優先するだろうけど、ロゴスを敵に回すよりは良い選択。それに、どうせ満足に行き渡らないし、下手すれば不満の矛先をオーブに向けられる。
その点、ロゴスを味方に付ければ、その辺は安心できる。
「後の問題は終戦への手筈だが、プラントの和平派との接触は可能なのですかな?」
「はい。今回、捕虜…我が国へ亡命した連合の船に居た者を送還するために、ユウナを向かわせました」
「ユウナ? ウナトの倅ですか?」
「ええ、彼に例の提案を打診するように伝えてます」
「ふむ。後は戦争の推移だが……」
「それは……バルトフェルド、説明を」
「ハイ。現状ではザフトが優勢で、パナマの陥落は目前です。そこで停戦になれば良いのですが、これは無理でしょうな。ですが、ユウナにはクライン派に停戦を持ち掛けるようには伝えてあります」
「なるほど、布石か」
「その通りです。まあ、我々が口を出さずともクライン派は、そう提案すると思いますが……まあ、どちらにせよ、現議長のパトリックは停戦には応じないでしょう。そこでパナマを奪われた連合はどうしてもマスドライバーが必要になる」
「アズラエルは恐ろしい男だ。奴はオーブを攻撃するように提案するぞ」
「ええ、仰る通りです。だからこそ、そのタイミングでNジャマー・キャンセラーの存在を公表します。 1つはオーブ防衛のため。もう1つは、停戦後の世界を考えさせるために」
「……パナマを奪われ焦った政治家連中に、停戦後のメリットを与えるか」
「はい。現状で停戦後の姿を想像できない理由に、例え戦争に勝ったとしても、今回のエネルギー不足の影響が解消されないからです。
 何しろ世界中に打ち込まれたNジャマーは、止めたくても止める事が出来ない。
 つまり、ザフトを滅ぼし、プラントを全て破壊しつくしたところで、エネルギーは増えはしません。むしろ、プラントから手に入れられなくなった以上、より酷くなる一方です」
「かと言って、プラントに媚びてエネルギーを請うなど出来はしない。だったら、怒りをぶつけるしか無いか……実に下らん戦争だ。もっとも被害者の前では口が裂けても言えんがね」
「同感ですな。しかし、勝敗に関係なく、戦争が終わりさえすればエネルギー不足が解消に向かう。
 この事実は、復讐に滾る人の前では何も言えなかった者にも、言葉を発する力になります」
「そして、復讐を叫ぶ者は、例え続けたくともその行為が、今を生きる人間を苦しめるという足枷が出来るか……」
「はい」
「だが、問題はアズラエルだな。奴は必ずNジャマー・キャンセラーの提供を声高に叫ぶぞ。
 連合が手に入れれば核の撃ち合いで勝てる。そうすれば戦争は終ると考える者も少なからず出るだろう」
「そして、戦争が終った後の姿を想像できる人間の数は、さらに減る。真っ先に狙われるのはオーブでしょうな」
「そうだ。核の撃ち合いでボロボロになったプラント。コーディネイターが黙ってるわけは無いし、奴等が自爆テロでも起こしたら、どうなるか」
「コーディネイターは、その気になればナチュラルに紛れて暮らすなど造作も無い事です。そしてNジャマー・キャンセラーのお陰で復活した原子炉辺りを爆破、そんな所でしょうな」
え? それって不味いんじゃない? そんな事になったら普通に戦争を続けるより悲惨な状態になるような? 
「私は、それを理解してるから、オーブの考えに賛同した。正直に言えばNジャマー・キャンセラーは欲しい。それこそ軍を動かしてでもな」
「その事に関しては重ね重ね感謝しています」
「いえ、アスハ代表が頭を下げる必要はありません。ですが、アズラエルとジブリールの2人は、頭では分かっても、納得しますまい。それこそ、その時こそコーディネイターを刈り尽くすなど、出来もしない事を言い出しかねないのです。
 そして、アズラエルはオーブに不穏な動きがあると警戒をしてる様子。奴の厄介なところは狂人の人格と鋭い知性が同居しているところなのです」

「もう1人のジブリールは?」
「奴はアズラエルに比べれば小さい。奴の当面の目的はアズラエルに代わってコーディネイター殲滅の立役者に成りたいといったところでしょう」
え? それって、ある意味、何やるか分かんない危険な人って事じゃ無いの?
「では、当面の敵はアズラエルか……」
「こちらも、出来るだけ抑えてみますし、大西洋連邦の政権もコープランドが奪えるように尽くします。
 ですが、プラントの動き如何では、全てが水泡に帰すという事、決して忘れずにおいて頂きたい」
「ご助言、胸に叩き込みます」
「いや、そう恐縮しないで頂きたい」
は、話しに付いていけないんだけど……困った。シン、助けて。
と、取り合えず、アズラエルとジブリール以外のロゴスのメンバーは協力してくれそうだけど、だからって安心してんじゃないぞ! ってことでOK?
まったく、政治の話は苦手だよ。戦争が得意って訳でも無いけどね。
「それでは、プラントの件は重ね重ね、お願いします」
「はい。取り合えず、和平派の象徴と言えるラクス・クラインと1度会おうと考えています」
本当に嫌な事を考えたもんだよ。
「ほう?」
「彼女は、表向きは単なる歌手に過ぎません。よって、中立国でコンサートを開くのに支障は無いでしょう」
「だが、実際は和平を願う歌姫と、和平を実現させようとしてる女王が面会、なるほど、大衆が好みそうな筋書きですな。どうせなら友情を交わされたら、なお良い」
「表向きには私とラクス・クラインは大親友になるでしょう。歳も同じですし」
「表向きと言わず、是非、友人になって頂きたいですな」
「ハハ……ど、努力します」
ラクスの事を情報だけでも知ってるカガリは、正直、そんな奴と友達に成りたくないって思ってるみたい。
まあ、この世界ではフレイと仲良かったみたいだしね。
それに前の世界でも、とても友人には見えなかったな……

「お待たせ、帰ろうか」
「ああ」
キラさんが仕事を終るのを待っていた俺は、キラさんが来ると車を運転して家路につく。
「ところで、どうだった?」
「僕に聞かれても上手く説明は出来ないかな」
「あのな……」
「僕には向かないんだよ」
「ま、良いか。だいたいの予想は付くし、キラさんに言わせれば、取り敢えずは平気そうだけど注意することが沢山あるから気を付けろ。って感じだったろ」
「うん。その通り」
良く分かったね。
「さて、今日の晩ご飯は何かな?」
「……なあ、本当に良いのか?」
「何が?」
「いや、一緒に暮らす事。本当はマユと2人で居たいんだろ?」
シン・アスカの家はオノゴロ島にあるけど、最近は俺とキラさんはカガリと一緒に居る事が多い。
つまり、オーブ本島のヤラファス島で働いてる。そこでカガリが家を提供してくれたんだけど、そこは無駄に広い家だった。
「うん。でも、2人じゃ広すぎるし。それにマユちゃんも喜んでるし」
同じく広い家に唖然としていたキラさんの所にはマユも一緒に暮らしてるけど、それでも広いからって俺を一緒に暮らすように誘ってくれた。
俺としてはマユと一緒に居れることは凄く嬉しいし、キラさんには感謝している。
「正直、あの家は広すぎるよ。君も困ったでしょ?」
「ああ、防犯設備のある小さい家が無いと言われてもな。一応、俺達はオーブの重要人物らしいけど」
「困るよね。カガリ、気が回るようになったのは良い事なんだけど、ちょっと窮屈かな。マユちゃん
 にまで護衛を付けてるみたいだし」
「まあ、マユが人質にでもなった日には……」
「うん。カガリが警戒するのは分かるんだけどね」
そんな事にでもなれば、俺もキラさんも何をしでかすか分かんない。
「まあ、とにかく、感謝してる……その、アリガト///」
改めて礼を言うのも恥ずかしかったけど……マユと一緒に居れる時間を作ってくれたキラさんには凄く感謝している。

「げっ!……」
テレビに映るラクスの姿を見て引き攣るシン……まるで昔の僕を見てるようだ……って、外見は僕なんだけどね。
「綺麗な人だね」
マユちゃん、そう言うけど、見掛けに騙されたらいけない見本だから。彼女は。
「俺、風呂に行く」
「あ、マユも!」
「ああ、じゃあ、行こうか」
「うん♪」
「良いか?」
「うん。どうぞ♪」
夕飯の後、テレビを見るのを止めて、シンは少し申し訳無さそうに、マユちゃんとお風呂に向かった。
悔しいけど、残念だけど、ここは我慢だ。
「さて……」
僕は自分の部屋に戻ると、最終仕上げに入った装置の調整を行う。
「これで良し……大丈夫。フレイは僕が守るから」
フレイをシンみたいなケダモノに抱かせはしない。この睡眠学習マシン1号をマクラに仕込めば、低周波で耳では聞き取れないけど、確実に脳に訴える音が頭に刻み込まれる。
さて、ではシンの脳裏に刻む言葉を録音開始。
「ラクス可愛い。ラクス最高。そんな彼女が君の物。羨ましい立場。彼女の肌を思い出せ。
 こんな素晴らしい女性は他に居ないよ。お似合いのカップル…………」
さあ、これで君はラクスに心を奪われフレイも、やがてマユちゃんにも見向きはしなくなる。
シン、君は良い友人だったけど、恨むなら君の妹を恨むんだね。君ほどの人間がこうも無警戒なんて、未来の君を知る人間が見たら驚くよ♪

続く

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