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第37話〜命の価値観〜

Last-modified: 2014-08-10 (日) 21:09:52

「しかし、本当に強くなったな」
「ダメ出しされましたけどね」
私とオルガ達との戦闘。結果は私が回避に専念してたらアイツ等の薬切れで終了。こっちは最初からそれを狙ってたんだけど、理事は不満らしい。
そこで、一週間後に再戦が決まった。キャリー少尉たちと満足な別れを惜しむ間も無く、ドミニオンに移り、部下をやっつける準備をしている。何だかね……
「あの連中相手に、そこまで生き延びれば充分なんだがな」
「私としては、その価値観じゃ困るんですよ。むしろ、薬物での強化は失敗だって思ってもらわないと」
「そうなんだろうが……だが、次はどうするのだ? 逃げが認められないとあれば」
「大丈夫です。前回の戦いで、動きは見極めました。確かに動きは速い。でも雑です。むしろ私にはやりやすい相手ですね」
「やりやすい? 相性の問題か?」
「ええ、ナタルさんはジュール隊の事、憶えてます?」
「ああ、忘れたくても忘れられん相手だ」
「アイツ等、最初は4機居たのにキラ1人に翻弄されてました。少佐のMAは充分な戦闘が出来ず、私もパイロットになっていなかった。
 それでもキラには余裕がありました。
 でも、私のパパが死んだ頃からは強くなってきて、地上に降りた頃は私や少佐の援護無しでは、逆にやられかねなかった。
 これは個人の技量のアップもありますが、それ以上に連携が取れるようになったからです。
 オルガ達は最初の頃のイザーク達と一緒です。実力を発揮しきれていない」
「まるで、お前がキラ並のレベルだと言ってるように聞こえるが?」
「そこまで自惚れてはいませんよ。ただ、私はキラの弟子です。ああいった戦い方は教わってます。 相手を見極め、敵の嫌がることをしろ。敵の実力を発揮させるな。その前に潰せ……最悪な奴」
キラのことを思い出すと胸が締め付けられる。そんな私をナタルさんはそっと抱きしめてくれた。
「フレイ、お前は強くなった……だが、無理はするな。良いな」
ナタルさんとは、何時の間にかお互いを名前で呼び合うようになっていた。多分、アークエンジェルの空気を懐かしんでるのだろう。
「……はい」

第37話〜〜命の価値観

「お久しぶりです。そっちの準備は出来てますか?」
再戦の日、パイロットスーツを着て格納庫へ向かう途中、アズラエル理事と会った。
「ええ。もう暫くお待ちください」
そう言って、視線を移した先には……
「な、何をしてるんです!?」
のた打ち回って苦しむオルガ、クロト、シャニの3人。何を…
「前回があまりにも不甲斐なかったので、今度同じ事になったらどうなるか、少し分からせてあげてるんですよ。彼等、お馬鹿さんです…グッ…!? 何を…?」
襟倉を掴んで締め上げる。この人は……
「アンタ……何処まで…」
「止めろ! フレイ!」
「…………ハイ」
ナタルさんに止められ手を放す。
「貴女、僕にこんな事をして……」
「失礼しました。アズラエル理事。アルスター大尉は勝負前で気が立ってるんです。ご容赦を」
「………まあ、良いでしょう。今回は大目に見ますよ。もっとも、ここで負ければ少しは大人しくなるでしょう」
「負けませんよ。貴方と違って私は諦めてませんから」
「諦める?」
「貴方はナチュラルがコーディネイターに劣っていると認めている。絶対に勝てないと諦めてるんです」
「本当に失礼な人ですね! 貴女は! 実に不愉快だ!」
「図星だからですよ」
「止めろフレイ。お前の目的は口で言っても分からん。証明しろ」
「……了解。まずは倒してきます」
「……目的? 証明? 何の事です?」
「彼女の戦いが終るまでお待ち下さい。私は貴方にも理解して頂きたいのです。フレイ・アルスターの選んだ道を」

「来たわね」
格納庫で待機してると、オルガたちが到着。3人とも殺気に溢れてる。
「クソクソクソ……何でこんな目に…」
「舐めやがって……」
「コイツの所為で……」
なるほどね。さっきのお仕置きで私に八つ当たりする方法を選んだんだ。
「じゃあ、始めましょうか。私が先行するわ。アンタ等も出たら、好きに攻撃してきなさい。 合図は要らないわ」
そう言い残してコクピットに乗り込む。さてと……
「あまり離れると1機ずつ相手しなきゃいけなくなるし……」
本来なら各個撃破は正道なんだけど、正直、一騎打ちなら互角か下手すれば向こうが上。だから今回は向うの連携の悪さを突かせて貰う。
「来た来た……ぞろぞろと…………おまけに単純!」
行き成りカラミティが砲撃。当たるもんか! そしてレイダーがMA形態で強襲……接近するとMSに。
「うあぁぁぁ! 死ねよ! 滅殺!」
ハンマー……利用させて貰う! 回避すると、引くタイミングでハンマーを掴む。
「何!?」
「大物振り回すなら不意を付きなさい!」
「うるせえ!」
途中で強引にハンマーを振り回す……凄い反射神経!
「おら! 邪魔だ!」
カラミティの砲撃……レイダーが居ようがお構い無しね。
「お前こそ邪魔なんだよ!」
レイダーの砲撃……上手くカラミティの射線に誘導したいんだけど、簡単にはいかないか……なんか味方から撃たれるのに慣れてる……おいおい! どんなチームなの?
「コイツ……」
フォビドゥン! 撃ってきた……シュベルトゲベールを左手で持ち、右手にはビームライフルを。
「どれ……」
フォビドゥンに連射、弾かれるけど、弾かれる方向を計算…………
「そこだ!」
場所を大きく変えて射撃……この角度なら!
「チッ! シャニ! てめえ何やってる!」
掠っただけか……でも、オルガは冷静さを失い連射を開始。これなら……
「まずはアンタよ! オルガ!」
カラミティとの間合いを詰める。
「舐めんじゃねえ!」
ビームの濁流……当たったら終わり。パンツァーアイゼンの盾じゃ防御も不可……でも、だからこそ!
「釣られ過ぎなのよ!」
射線にレイダーで無く、フォビドゥンを誘導したのが上手く行った!
「うわぁぁぁ!」
角度もピッタリ! 弾いたビームの雨がレイダーに……
「まず1つ!」
直撃こそしなかったが、態勢を崩せば充分。振り返ってビームライフルを撃ちレイダーを落す。
「次!」
味方を落として、躊躇ったのかカラミティの射撃が止んだ。その隙にビームライフルを捨て、一気に間合いを詰める。
「チッ! このアマァ!」
悪態を吐きながらも、距離を取ろうとするオルガ。
ビームライフルを捨てた相手に砲撃戦用のMSで接近戦をするほど馬鹿じゃない。
さすがに一番マトモな奴。でも……
「一番イカレタ奴が残ってる」
自分が弾いたビームがクロトの撃墜の原因。失敗=お仕置きの連中にとっては冷静じゃいられない。
「コイツ! コイツは!」
乱射しながら接近してくるフォビドゥン。射線にカラミティが来るように誘導……
「何やってやがる! シャニ! 乗せられんな!」
「ウルサイ! コイツの所為で!」
泣きそうな声で攻撃してくるシャニ……素直に怯える事が出来れば良いけど、薬の効果は恐怖心を強引に奪ってしまう。
結果、狂ったように攻撃するしか道は残されてない。
「そんな冷静さを欠いた攻撃……」
動く先の予測もせずに、闇雲に私目掛けて撃ってくる。
巻き込まれないように避けるオルガは、もうビームライフルを捨てた私の事より、シャニの方を警戒している。そろそろ……戻ってきた。
先程捨てたビームライフルが近くに……ロケットアンカーを飛ばして、それを掴む。
「油断してっ!」
「なに!?」
接近戦になる事だけを警戒していたオルガは、私のビームライフルの攻撃に不意を付かれ、避ける間も無く直撃を喰らった。
「後1つ!」
「コイツはぁぁぁ!」
直ぐに楽にしてあげる……シュベルトゲベールもビームライフルも捨てて接近。
「だから、そんなんじゃ当たらないって」
「クソッ…」
高度を上げる程度の理性は残ってるか……でも!
「終らせる!」
マイダスメッサーを投擲。両サイドから飛来するブーメランを迎撃するため、動きが止まった。
すかさず、ロケットアンカーでフォビドゥンの足を掴んで引き寄せる。向うは下がりながら、私は引き上げられながら距離を縮めていく。
「ウ、ウオォォォォォオ!」
真下から上がってくる私。両サイドから襲うマイダスメッサー。同時に迎撃をするのは不可能。
……なんだけど。
「何て奴……」
身体を回しながら強引にマイダスメッサーも私も切り裂こうと動く。
私の予測を遥かに上回る動きの良さ……
「……ホント、あと少しだったね」
「あ、あぁ……?」
2本のマイダスメッサーとダガーの左のロケットアンカーのワイヤー、ビームサーベルを握ったままの右腕を奪ったけど、そこまで。
最後はエールの推進器を全開にし、飛び込んだ私が左手で持ったビームサーベルを突き刺した。
この機体じゃ無かったら危なかった……少尉に感謝しなきゃね。でも……
「私の勝ちよ」
「ウソだ……」
「シャニ…いくら強くても、そんな精神状態じゃ勝てないよ。悪い上司を持ったわね」

「見事だったな」
MSを降りるとナタルさんが微笑んできた。
「どうも。まあ、戦闘前に変なことを…」
「素晴らしい!」
え? ちょっと、嫌味を言おうとしたんだけど……この人が、変なお仕置きしてなかったら、シャニはもっと上手くやれたはず。そうすればオルガだって……
「バジルール艦長から聞きました。貴女の考え……」
「はあ……」
そうか、じゃあ認めてもらえたんだ。良かった。ブルーコスモスの盟主が私に賛同してくれたのは、凄く嬉しい。
「あの、ありがとうございます!」
これで良い。もう、恐れて殺したり、人を改造したり、そんな馬鹿な事はして欲しく無い。
「聞いたときは夢物語と思いましたが……現に彼等を倒したんです。本物ですよ」
項垂れるオルガ達……でも、予定より苦労した。連携の悪さを補って余りある能力には驚いた。
これで、少しでも連携が……いや、少なくとも戦闘前に変なことをされてなければ、結果は違ってたかもしれない。
まあ、これからは私の部下になるんだし、その辺を直していこう。
「ところで、フレイさんは搭乗MSに何か希望はありますか?」
「へ? 希望って?」
「だって、コレ? 基本的に量産機でしょ? 貴女でしたら、専用機を用意しますよ」
専用機か…………正直、汎用性と多彩な武装があれば良いんだけど……でも、これからは…
「別に専用機で無くても構いませんから、管制能力が高い奴ってあります?」
…コイツらの面倒を見るんだし、それを優先よね。
「え? そうですね……まあ、見繕ってみましょう。お任せください」
「お願いします」
大変そうだけど、頑張ってみますか…
「さて……そんなわけで、貴方達は用済みです」
……え?……どういう事?
「まあ、金喰い虫を処分できるんです。良しとしますか」
「待ってください!……どういう事です?」
何か嫌な雰囲気……もしかして?
「フレイさんは気にしないで下さい。彼等は分かってますから。自分の立場ってやつをね。
 そうですよね?」
「……ああ。使えない兵器に価値は無え」
「お利口さんです。それにナチュラルがコーディネイターを超える。その輝かしい未来に、貴方達は邪魔なんですよ。貴方方も化け物ですから。ねえフレイさ…」
「フレイ!」
ナタルさんが慌ててるけど……もう、気付いた時には殴ってた。それに後悔もしてない。
「何で、そんな考えになるんですか! そうやって人の命をオモチャみたいに……それと、子供をコーディネイターに改造して! 産まれたら希望通りじゃ無いって騒ぐ親と何処が違うんです!?」
「そ、そんな……僕は」
「一緒です! 私はそんな連中が大嫌い! それと同じくらいコーディネイターを恐れる奴も嫌い!
 昔の私がそうだったから! だから私は恐れない! 皆にも恐れる必要なんて無いって、そして憧れる理由も無いって教えたい! 私は…!」
「フレイ! 落ち着け!」
ナタルさんに抱きしめられ、言葉に詰まる。自分でも何が言いたいか分かんなくなってきた。
「……アンタ等も、簡単に生きるの諦めないで」
「……俺達はテメエと違うんだよ。記憶も何も無い。道具として生きるしか道はねえんだ」
「でも、生きてるじゃない。そして私はアンタ等を知ってしまった……死んだら悲しいよ」
「悲しいって……知るか」
「知りなさいよ!」
「……無茶苦茶な女だな」
「アズラエル理事。当初の予定通り、サブナック、アンドラス、ブエルの3名は、ドミニオンでフレイ・アルスター大尉の部下とします。よろしいですね?」
「……お願いします。それにしてもバジルール艦長……僕は……その、一緒なんですかね?」
「……申し上げ難い事ですが、私もアルスター大尉と同意見です」
「そうですか…………自分では違うと思うんですが……自信が無くなっちゃいましたよ……」
「人は容易く過ちを犯します。だが、同様に過ちを正す事が出来ます。フレイもそうでした。  おそらくは私も……」
「そう……そうですね……少し考えてみます……」

「ついに完成! 俺専用機!」
フラガがなんか叫んでる。でも、俺もキラさんも構いたくない。
「どうだ? 羨ましいか?」
「専用機って、ただのライトニングストライクじゃ無いですか」
「おいおい、ちゃんと下半身を見ろよ」
「下半身って……嫌な言い方ですね」
「腰だよ! サイドアーマー!」
「はい。スゴイスゴイ」
何でコイツのMSは完成したのに、俺のドレッドノートは手付かずなんだよ?
「何だか2人とも機嫌が悪いな?……お前ら、さっきまではラクスの映像見て喜んでたじゃないか?」
だから機嫌が悪いんだよ! テレビに映るラクスを見て、俺もキラさんも大喜び……ミーアのライブを見てたザフト軍みたいに、はしゃいでしまった。
そして、映像が変わると素に戻って自己嫌悪……泣きそう。
「ん? なんだ、ひょっとして愛しいラクスに会いたいのか? このエロ魔人は。フレイが泣くぞ」
あ? 今、言っちゃならないことを……プチッときた。
「ムウさん。折角だから模擬戦しましょうか? フリーダムは、まだ模擬戦じゃ使えないからM1で相手しますよ」
お? キラさんもか。
「ん? そいつは構わんが、俺とライトニングの組み合わせは強いからな。M1じゃ役不足だ」
「アハハ…自信ありそうですね?」
「そうだな。なんだったら2人まとめて相手しても良いぜ?」
……調子こきやがって……たしかにプリスティスは厄介だが……
「それでしたら、そうしましょう。状況は僕たちがオーブを攻める側。ムウさんは……そうだな、
 マスドライバーの守備で良いですか? 怖いなら止めときますけど?」
おいおい……それだとプリスティスが使えねえ…
「おお! 良いぜ。相手になってやる!」
馬鹿だ。コイツ忘れてやがる。つーか、キラさん八つ当たりする気だな。
まあ、良いや。俺もムシャクシャしてたし……
「じゃあ、殺るか♪」
「そうだね♪」
そして模擬戦を開始。開始早々プリスティスを出そうとしたようだが……
「お、おい! ちょっと待て! プリスティスが使えねえぞ!」
今頃気付いたか、馬鹿め!
「戦闘中に、そんなこと言っても、相手は止まってくれません♪」
「問答無用で襲ってくるな♪」
「てめえら!……ええい! 武器は……」
しょせんは狙撃と補給用のストライカー。こうなったら勝ち目は無い。
「じゃあ、行くよ! コンビネーション攻撃!」
「おう! そっちに合わせる!」
「待て! 何する気だ!?」
危険すぎて、実戦では使った事が無い必殺のコンビネーション。昔、オーブとの合同訓練でアスランに使ったら泣いてたな。
「行くよ! ダァルゥマァァッ・スラァァ―ッシュ!」
「コォクピットォォッ・クラッシャァァー!」
「鬼か! お前らぁぁ!」
あっさりと終了……空しい戦いだった。
「何やってんだろ? 俺達……」
「現実逃避」
そうハッキリ言うなよ…………近いうちに、ラクスがオーブに来るって聞いたけど、ヤバイって! それまでに元に戻れるかな?

続く

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