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第39話〜ロドニア〜

Last-modified: 2013-04-22 (月) 23:58:53

ゆっくりと右の突き。続いて引くと同時に左足でローキック。そして、足を戻さずにハイキック。
更に降ろした足に重心をかけ脱力で軸移動しながら左フックでレバー打ち、顔面にストレート。
それを繰り返して身体に覚えさすと、次は速く…
「シュッ!」
……うん。上手く行った。やはり身体を動かすのは良い。洗脳による苦悩を忘れさせてくれる。
「頑張ってるね……ところで格闘には向いてるの? その身体?」
トレーニング中にキラさんが声をかけてきた。
「ああ、充分だ。ただホント、厄介な身体だよ。すぐに覚えるのは良いけど、間違った動きをしたら、
 矯正が大変だ。正確な動きを叩き込まないとな」
「身体でも、そういうのあるんだ?」
「あるよ。本当に速い相手と戦うときは考えてたら間に合わない。身体に覚えさせて、身体が勝手に
 動く。そのレベルにしないとな……」
「やるんだね?」
「ああ……ステラのためだ」
そう。今までコツコツと訓練をしてきた。だが、まだ足りない。
俺のターゲットはロドニアのラボ。そこに侵入してステラを奪還すること。MSの操縦より、白兵戦の
トレーニングが必要だった。
「さて……行ってくる」
「勝てるの?」
「…………厳しいかな? だが、強い相手とやれば、それだけ強くなれる」
「そう……頑張って」
「ああ」
待ってろバリー・ホー! 格闘戦最強の座。俺が貰う!
そして、待っててくれステラ! 今は無理だけど、もうすぐ助けに行くから……必ず!

第39話〜〜ロドニア

「目的地まで、あと30分ほどです」
「分かった。フレイ」
「はい」
ドミニオンのオペレーターの知らせを聞いた私は、部下に準備の指示を出すため、通信機を手にする。
「スウェン、30分後に到着するわ。準備をよろしく」
「了解です」
「だから敬語は良いって」
「は、はい」
「……まあ、良いわ。じゃあ、よろしくね」
通信機を置くと、私は溜息を吐いた。
「はあ……真面目すぎ。もっと、砕けられないのかな?」
「だが、砕けすぎもどうかと思うが?」
「でも、年上の人に敬語使われるの苦手です」
「軍とは、そういう所だ。諦めろ」
ナタルさんみたいに割り切れないよ……
「それにしても、今度はどんなのが居るのか……ロドニアのエクステンデッドか」
ロドニアのラボか……ロドニアって確かキラの彼女が居るって噂が有った。キラはそれに関しては
否定してたけど……ロドニアに何があったんだろ?
「そのエクステンデッドとやらは、話しだとまだ未完成らしいが、強いのか?」
「さあ? アズラエルさんは知ってます?」
「それがね……あそこはジブリールさんの管轄ですから詳しくは……もっとも、僕の管轄だったら、
 スウェンさん達同様、何も条件付けずに任せますよ」
「それはそうでしょうが……オルガ達とスウェン達、ああも違うと気になります」
「ははは……」
「笑い事じゃありませんよ。何なんですかブルーコスモスって」
「いや……スイマセン」
オルガたちに比べ、アズラエルさんが新たに連れてきた3人は、物分りが良かった。
スウェン・カル・バヤン、ミューディー・ホルクロフト、シャムス・コーザ。オルガ達みたいな強化人間
では無く、洗脳と英才教育で鍛えられた兵士。だが、英才教育と言っても人権なんか無い、子供の頃から
無理矢理作られたと言う意味ではオルガ達と同様。ブルーコスモスが運営する孤児院の知られざる実態の
犠牲者ではある。
「そう怒るな、施設は今後からはマトモな運営がされると約束してくれたのだ。それに、今から行く
 施設でケリを付ければ、人の強化など無くなる。そうですよね?」
「ええ。ジブリールさんは駄々を捏ねてますが、約束は取り付けましたから。後はフレイさん次第」
「その施設で育てられている3人を倒せか……やりますけどね」
私は施設の破棄を願い、アズラエルさんも了承してくれた。ただ、スウェン達は今更、普通の暮らしと
言われても困ると言う事で、結局、この部隊に編入。
そして、今回は、アズラエルさんに従わないジブリールは、ラボの破棄の条件として、そのラボで
育てられている兵士を倒せと要求してきた。
「お願いしますよ。まあ、一応情報だと潜入工作等にも対応できる兵士を育ててるみたいなんで、
 行き過ぎた強化はしてないはずです」
「でも、スウェンみたいなのも居るかもしれないし」
ミューディーとシャムスはそれほどでは無いけど スウェンは大した投薬を受けてないのにオルガと
互角にやりあえる実力。投薬が少なくても油断は出来ない。
「正直、スウェンたちが3人がかりで来たら勝てなかったでしょうね。オルガ達みたいに連携に隙が
 無いし、バランスが取れてる」
「個々の実力ではオルガ達の方が上なんだがな。連携ともなると、そうは行かんか」
「ええ。ですから、今度の3人。必ず勝てるって保障は……」
「それでは困りますね。ジブリールさんは貴女を認めてない。それに正直、彼は僕ほど強烈な
 コーディネイターに対する嫌悪感で戦ってるわけじゃ無いんですよ」
「どう言う事です?」
「彼は倒したいんですよ。自分の手でコーディネイターという化け物をね。まあヒロイックな願望です」
「迷惑な人ですね」
「そうですね。だからフレイさんの考えに賛同はしてくれませんよ。彼には敵が必要なんです」
「つまり、大義は関係ない。ただ、コーディネイターと言う化け物を退治した英雄になりたいだけだから
 フレイの存在はむしろ邪魔と言う事ですか?」
「その通りです。これでも苦労したんですよ。彼を説得するの」
「まあ、話の内容は検討が付きます。大方、理事はナチュラルにコーディネイターを倒せないとでも
 言わせるように誘導して、それなら証明しようって所ですかね?」
ああ、何か想像つくな。アズラエルさんに挑発されて、つい勝負に乗ってしまう……
「ご名答です。さあ、そろそろ準備しますか。ナタルさん、留守をお願いします」
「了解です。お気をつけて」

施設の研究員だろうか? 白衣の男性に奥へと案内される。
「ヤナ雰囲気」
ミューディーの呟きに同感。この暗い廊下に無機質な壁。異様な圧迫感を感じる。
でも、私たちより……
「大丈夫?」
クロトとシャニの様子が少しおかしい。怒りや悲しみ、そして怯えが混ざった表情。
一見分かりづらいがオルガも同様だろう。
「う、うん……」
「平気だよ」
やっぱり硬いな。それなら…
「何なら手ぇ繋いであげようか?」
「いらないよ」
「子供扱いすんじゃねえよ。バァ〜カ」
OK。少し元気が出てきた。オルガも苦笑してるし、良い感じだ。
「こちらです」
案内していた白衣の男性が、ドアを開けると……
「おいおい」
「あれ?」
……シャムスとミューディーが呆れる理由はアレだろう。信じたくは無いけど。気障な服装をした
顔色の悪い男の後ろに控える3人。あの子供が私の相手。
「ようこそ。アズラエル理事」
「こんにちは。ジブリールさん。念のためにお尋ねしますが、その3人ですか?」
「ええ。彼等をただの子供と侮ってもらっては困りますな。総合能力では、貴方のところの兵器より
 上だと自負しています」
「兵器?」
彼が兵器だと言う3人を見る。一番年長らしい少年で私と同じくらいで、女の子にいたっては、明らかに
私より年下。
「大尉」
「……分かってる」
思わず掴みかかりそうになったけど、スウェンに声をかけられ、呼吸を整える。
「それで、フレイ・アルスター大尉と言うのは、その少女ですか?」
「はい。私です」
礼儀もあるし、一応、一歩前に出て敬礼をする。ジロジロと見て……ムカツク。
「なるほど…では、こちらも紹介しようか。右からスティング・オークレー、アウル・ニーダ、
 ステラ・ルーシェだ」
私と同じくらいの歳の鋭い目つきがスティング。幼く見える方がアウル。そして女の子はステラか。
「ん?」
ステラは私と目が合うと首を傾げる……可愛い。思わず笑いかける。
「…うん♪」
こちらの笑顔に反応……可愛い♪ いや待て! それより、ホントにこの子を戦わせる気なの?
「ソイツが僕等の相手?」
アウルが進み出て私の前に立つ。
「そうだ。アウル。君が倒す相手だ」
「ふ〜ん。強そうには見えないな……」
「やってみれば分かるわよ」
「MSだろ? でもさ!」
アウルの手にナイフが!……逃げは…間に合わない!
「……なんだよ?」
「慌てるなよ。小僧」
……間一髪、割って入ったオルガがナイフを持った少年の手を握り止めてくれた。
「邪魔なんだよ。テメエから殺す…ぐっ! つぅぅ!」
「慌てるなと言ったろ。それともここで死にたいのか?」
反抗しようとした少年の腕を全力で握り締めてるんだろう。この馬鹿力は。おまけに痛みに顔を顰める
少年の顔に、凶悪な笑みを浮かべながら顔を近づける…………アンタ、悪役みたいだから
止めなさいよ。
「アウル!」
「止めなさい。オルガ。それからシャニとクロトも」
アウルの手を握るオルガと、彼を助けに入ろうとした2人の後ろに素早く回り銃を突きつけるシャニと
クロトを制止する。
「ジブリールさん。教育が成ってませんね」
「くっ…………」
まさか、コイツが不意打ちを命じたとは思わないけど……
「そんな顔をされてもね……まあ、折角の自信作が、こうも簡単に制圧されて悔しいのは分かりますが、
 謝罪くらいされたらどうです?」
ああ。なるほどね。
「そうですな。アウル! 私に恥をかかせるな!」
「おやおや。ご自分でなく彼に、ですか」
アズラエルさんの嘲笑。たしかに、この期に及んで虚勢を張る姿は失笑ものだ。でも…
「そんなことより始めましょう」
こんな奴のとこに居るから、こんな子に育つんだ。さっさと解放しよう。
「アンタ達も良いわね?」
「ああ」
「MSで倒せば良いんだろ?」
「ん…?」
……ちょっと、ステラ。アンタ、キョロキョロして、事態を飲み込めてないんじゃ?
「MS戦だよ。それで、アイツを倒すのが俺達の任務」
スティングがステラの頭を撫でながら説明……やっぱり分かってなかった。
「え?……なんで?」
「倒さないと怒られるんだよ。ヤだろ?」
「……でも」
…………何コレ? この子、どう見ても戦いに向いてない。それを……でも、ここで戦わなきゃ
勝負は中止になりかねない。そうなったら、この子達はずっとこのまま……
「おい!」
スティングの制止を無視してステラの頭を撫でる。
「ステラ、大丈夫。模擬戦だから」
「………うん」
「よし、良い子だ。じゃあ、外に出るわよ」
「うん♪」
自信が無いとか思ってたけど、そんな事は言ってられない。オルガ達と会った時の怒りが再び湧いてきた。
絶対に勝って、この子達を解放してやる。
外に向かいながら、オルガに耳打ち。
「さっきは助かった。アリガト」
「気にすんな。それより、あのクソガキ共を倒してやれ」
「OK」
倒せ、じゃ無く、倒してやれ、か……うん。負けれないな。絶対に。

続く

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