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第8話「ココロをカタチに」

Last-modified: 2016-08-23 (火) 22:49:25

ガンダムビルドファイターズ side B
第8話:ココロをカタチに

 

「ホワイトベース!!!」

 

 会場のほぼ全員が一斉に叫んだ、岩肌を削ぎ落とされたデビルガンダムのボディは
純白の、そして会場内の誰もが知る戦艦の形をしていた。
その艦の各部分から首が伸び、先っぽにはガンダムヘッド、
造形の見事さと相まって、一層不気味さを掻き立てる。
「なんて悪趣味な・・・」
思わず呟いたのは、敗退して脇のパイプ椅子に腰掛ける鳥谷、隣の滝川もうんうんと頷く。
「ふっ、これで全てやないで。」
言って右手のコントローラーを回し、あるスイッチを入れる松岡、
その瞬間、8つのガンダムヘッドに十字の裂け目が入り、中から光が溢れ出す。
「な、なんだぁー!?」
8つのガンダムヘッドが一斉に外れ、中から別の『顔』が姿を表した。
「これがガンプラ心形流、松岡忠のガンプラ。レビルガンダムやあぁぁーーーっ!!」

 

「「「ぶーーーーーーっ!」」」

 

 参加者全員が、そして観客の大部分が吹き出した。
ガンダムヘッドの中身はなんと、『機動戦士ガンダム』に登場する連邦軍司令官
レビル将軍その人の顔だった。

 

 笑いに包まれる会場内、レビルとデビルを引っ掛けるためだけに
どんだけ労力をかけてるのか、それだけでも失笑ものであるが
さらにその造形の見事さ、戦艦の重厚さに対して軽薄にふよふよ漂う
巨大なレビル将軍のシュールさ、そしてそれを世界大会出場をかけたこの一戦に
わざわざ使用するその考え方、どこから突っ込めばいいのかすら分からない。

 
 

「ほな、いくでぇー!」
大ウケけしたことで満面の笑みを浮かべた松岡がホワイトベースを降下させる、
狙いはほぼ真下にいたザメル、
「島村さん、よけてー・・・え?」
肝心の島村はというと、どうやらレビルガンダムがツボに入ったようで
腹を抱えて笑い苦しんでいる、彼はもうダメだ。
どおおおおおおん!という擬音と共に踏み潰されるザメル。

 

 その隙を突いて、ビギナ・ギナ・オレンジがガンダムヘッド・・・いやレビルヘッドに狙いをつけ
その眉間にビームサーベルを突き立てる。続いてもう一本抜刀し、首を落とそうとする。

 

ーがぶー

 

次の瞬間、ビギナ・ギナ・オレンジはレビルヘッドに食い壊された。

 

「ムチャクチャだよー!」
次々に繰り広げられるシュールな光景に、すでに涙目の宇宙。
「慌てるな、接近しなければかみつかれる事は無い、遠距離戦でいくぞ!」
遠い間合いからビームを放つ三島ガズエル、その返礼は戦艦ホワイトベースからの
メガ粒子砲を含む一斉掃射だった。
周囲が火の海に包まれ、三島のコックピットはその役目を終えた。

 

「宇宙、デビルの弱点は体内に入られることだ、内部に突入しろ!!」
大地が観客席から声を張り上げる。

 

その時、レビルヘッドの一つが電撃に包まれた、ハンブラビがその首に取り付いている。
「ウミヘビか!」
他のレビルヘッドがハンブラビに襲い掛かる、しかしハンブラビはMA体型に変化して移動
MSに戻って攻撃を繰り返し、レビルヘッドを翻弄していく。
「首は4本くらいがええんちゃうかったんか??自分の首が邪魔で砲撃できんやろ。」
「それはおもたけどな、8本が俺的にいちばん笑えると思たんよ。」
「「そこがメインかいっ!」」
大谷と宇宙が同時にツッコむ。と同時にハンブラビの戦い方を見て、宇宙もデビルに突撃する。
「ようは動きを止めなきゃいいんだ、スキを見てアイツの体内に突入すれば!」
ハンブラビとトリック・スターは縦横無尽に動きながら、体内、いや戦艦内に入るスキを狙う。
やがて2つの首を落としたハンブラビは、ついにホワイトベースの右ハッチに取り付く。
が、その瞬間絶望的な事実に気付く大谷。
「ち、小っさ!」
接近してみないと分からなかったが、1/144サイズのハンブラビに比べてホワイトベースは
さらにその半分くらいの縮尺比しか無かった、このまま進入するには相当狭い。
それでもあきらめずに開閉レバーを回し、ハッチをこじ空けようとする、
しかしハンブラビのパワーを持ってしても、そのハッチはビクともしない。

 
 

「くっ!」
一瞬のスキをついてレビルヘッドがハンブラビを咥える、万事休すか。
「へっ!ガンプラ心形流ともあろうもんが、ハッチの開閉も作ってないとはな!」
捨てゼリフを吐く大谷。
「・・・ほれ」
松岡がコントローラーを操作する。と、戦艦のハッチから小窓に至るまで
一斉に開け、そして閉められる。
「こぉのいけずぅ〜〜!」
技術力を誇示された挙句、噛み砕かれるハンブラビ。
「このホワイトベースは徹底して作りこんであるんよ、ホンマに連邦軍のいち戦艦としてな。
一年戦争時の連邦軍のモビルスーツでもない限り、ハッチは絶対に開かへん!」

 

 −ウイーン−

 

「あ、開いた。」
「ボールがいたああああああああー!」
頭を抱えて絶叫する松岡、自慢している間にトリックスターがハッチ前に来ていたようだ。
「せやけどそのサイズじゃ内部には入れんやろ、所詮は無駄な・・・」
トリックスターは外殻を開き、内部の小さいジャイロボールが分離、悠々と内部に侵入していく。」
「ボールの中に小さいボールがああああああああああ!」
反り返って絶叫する松岡、閉まったハッチの外で6つのレビルヘッドが
困った顔をしている。

 

「おじゃましま〜す。」
内部に侵入するミニボール、外も外なら中も驚きの完成度だ。
ハッチ内部にはガンダム、ガンタンク、ガンキャノンの3機、整備員までいる。
どうやったらこんな小さなの塗装できるんだ・・・。
 宇宙のコックピット映像が会場の外部モニターに転送される。
その出来栄えに思わずあがる観客のどよめきと驚嘆の声。
さらに内部徘徊し、艦内の各部を見て回る、人間用の通路は狭いのでアームでパージしながら。
別ブロックに到着するたび、観客から驚きとヤンヤの歓声。
「ガンペリーまであんのか。」
「ちょw牢獄にコズンいるしww」
「タムラさんいたーーー!!」
「あ、艦橋でアムロがブライトに殴られてる・・・」

 

 ちなみに全て1/255のサイズである、かつてアルゼンチンのレナート兄弟が1/144のジオン兵を
爆弾要員として使用したことはあったが、そのさらに半分近いサイズでここまで仕上げるとは。
稼動パーツでないとはいえ異常な精密さ、しかも壊れるのが当たり前のガンプラバトルで
見えないところをここまで仕上げるとは。
松岡も得意満面の笑みで映像を見ている、ガンプラ心形流恐るべし。

 
 

「あの〜、そろそろ破壊してもいいですか?」

 

宇宙の情け容赦ない提案に、松岡が、そして会場中が絶叫する。
「ええーーっ!」
「鬼かおまえはーーーっ!」
「やめたげてー、もうレビルのライフはゼロよ!」
「せめてギブアップを進めろよ〜」

 

 バトルシステムにはギブアップ設定もある、武器を全て失ったり、勝ち目が無いと判断した時
無駄にガンプラを壊さないように配慮されたシステム。
「じゃあ、それでお願いできますか?」
「へん、いややね!ワイはこのガンプラで世界を震撼させたるんや、それまで絶対に負けられへん!」
観客から拍手、そして宇宙に対するブーイングが上がる。
「どや、この空気の中、内部からこのガンプラを破壊できるか?観客を全部敵に回して。
 あんたも男なら正々堂々、表に出てきて最後の勝負といこうやないか!」
ずいぶん勝手な言われようだし、外に出て勝ち目は無さそうだが、それがガンダム世界の正義なら
従うしかない、と諦めのため息をつく宇宙。
「わ、わかりました、じゃあ外に出ますね。」
そう言って今来た道を引き返す宇宙、しかし・・・

 

「あれ、迷ったかな?」
パージしていない通路に迷い込む。まぁ進めばそのうち外に出られるだろうと進むミニボール、
やがて通路の壁をひとつ外すと、1枚の張り紙があるドアに行き着いた。
”忠ちゃんのお部屋”
「なんだここ?」
「ちょ、ちょいまてー!そっちは出口ちゃうっ!逆や逆ーーー!!!」
「でも気になるので開けますね〜。」
「やーめーろー!!!」
絶叫する松岡を無視して扉を外す。

 

ーBATTLE ENDEDー

 

内部は外スクリーンに映ることは無かった、ドアを外した瞬間、松岡がギブアップボタンを
強打したらしい。息を荒げながらレビルガンダムを抱えるように回収する。
あまりに呆気ない結末に静まりかえる会場。

 

「ガンプラバトル世界選手権第1ブロック代表決定戦、優勝は、さとおかー、そーらぁーーーっ!」
司会の少女が宇宙の手を掲げるべくバトルスペースに歩いてくる、会場が拍手に包まれ・・・

 
 

 どさっ!

 

 その場に仰向けに倒れる宇宙、鼻血を大量に吹いている。
「ちょ、一体どうしたの?」
大地が舞台に駆け寄る、弟の惨状を見てため息ひとつ。
「あー、気にせんでください、思春期の正常な反応ってヤツです。」

 

 会話から空気を呼んだ司会と参加者、そして観客が一斉に松岡に注目する。
「ねー松岡選手、そのガンプラの中身、もっと見・た・い・な。」
「うむ、心形流の真髄、もっと見たいものだな。」
「ケチケチしなくてもいーじゃん、大阪人ならレッツオープン。」
「よ、よせ・・・やめろーっ!」

 

 ガンプラを抱えて逃げ回る松岡、それを追いまわす一同、そんな光景を観客席の隅から
一人の老人が眺めていた。
「ほっほ、若いのう忠。」
隣にいる細目の青年が相槌を打つ。
「まぁ、忠なりに『心を形に』した結果でしょう、さすがに公開処刑は可哀想なんで
 助けを出してやりましょうか。」
ステージに駆け出す青年、それを見た老人が一言洩らす。

 

「やれやれ、あれでは『下心を形に』じゃわい、まったく。」

 
 

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