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第9話「揺れる世界」

Last-modified: 2016-04-30 (土) 23:55:07

ガンダムビルドファイターズ side B
第9話:揺れる世界

 

 7月25日、徳島
「おーい、来たぜ。ガンプラバトル大会主催者からの案内状。」
「ホント?」
 待望の世界大会出場通知、それが今、里岡家に届いた。
分かってはいたけど、いよいよ世界である、期待に胸が躍る兄弟。
「お!一緒にガンバトの世界大会号も入ってる・・・気が利くねぇ。」
兄が1冊の雑誌を封筒から取り出す、ヤジマ商事発行のガンプラバトル雑誌。
その表紙を目にした瞬間、大地の表情がさっ、と曇る。
「・・・どうしたの、兄ちゃん?」
「三代目、メイジンカワグチ、世界大会に復帰・・・?んなバカな!」

 

 7月2日、アルゼンチン・ブエノスアイレス
 ガンプラバトル世界大会予選、アルゼンチン大会決勝の会場は、
今、まさに決勝が終了。その結果に会場中が騒然となった。
「まさか、まさかのレナート兄弟、決勝敗退っ!こんなことが・・・
 世界大会出場は、大会初出場の・・・リーナ・『レナート』ーっ!」
 ガッツポーズを掲げて飛び跳ねるのは、15〜6歳の長身の少女、
対面の二人と同じ、青い髪をポニーテールに結んでいる。
 深いため息をつく弟のフリオ、まさかこいつに敗退する日が来るとは・・・
その弟の肩をぽんっ!と叩く兄、マリオ。
「たいしたもんだ、お前の娘はな。」

 

 7月10日、東京
 20代半ばの青年と、30半ばに見える赤毛の男が公園で向かい合っている。
「久しぶりだね、レイジ。ちょうど10年かな?」
「俺にとっちゃ20年だがな、変わらないなぁ、セイ。」
10年前、コンビで世界大会初出場、初優勝を成し遂げた二人。
当時、同い年くらいだった二人には、明らかに齢の差が現れている。
「アリアンって時間の流れが速いんだね、本当に『異世界』なんだなぁ。」
「まーな。しっかしよくわかったな、俺の子供だって。」
「バレバレだよレイジ、名前が『レイラ・ユルキアイネン』なんて
 そのまんまじゃん。」
ケラケラ笑うセイ、対面にいる王子様(中年)は、ちぇ、と子供みたいに嘆く。

 
 

 ガンプラバトル第4ブロック決勝日、関東のベスト32が雌雄を決する日、
その中にレイラの名前を見つけたセイはまさか、と思って会場中を探したが
会場内に旧友の姿は無かった。で、ふと思い立って近くのこの公園に
探しに来た、二人がはじめて出会った思い出の公園、ビンゴだった。
「娘さんベスト32なんて凄いね、この地区は世界屈指の激戦区なのに。」
「けどよ、サザキの名前が無かったな、あいつもうやめたのか?」
「サザキは就職して北海道に行ってるよ、資源開発だって。
 すでに世界大会出場を決めてるよ。」
相変わらずだなぁ、と遠い目をするレイジ。
「でも、応援に行かなくていいの?娘さん出てるのに。」
「見たら俺も出たくなるじゃねーか。」
笑い合う二人、話のネタはいくらでもある。
アイラのこと、チナのこと、ラルさん、メイジンのこと・・・

 

 7月15日、スイス、ジュネーブ
 ガンプラバトル、スイス大会決勝。ガンダムXXが電光石火の早業で飛び回り
ビーム、ミサイル、サーベルを撒き散らす。
その圧倒的な火力、機動力を持ってして、相手を沈めることができない。
「このXXが、負けてたまるかよ、オッゴごときにいぃぃぃっ!」
XXを操る青年が吠える、3年連続世界大会出場を目前にして思わぬ大苦戦。
相手は円筒状のモビルポッドから、様々な形状に変化し、巧みに相手を翻弄する。
「モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差でない事を教えてやる、でしたわね。」
お約束のセリフを返すエマ・レヴィントン。
「ぬかせえぇぇぇぇっ!」
ビームを束ねてオッゴを誘導し、ミサイルで逃げ場をふさぐ、
側面から突撃しサーベルを振りかぶるXX。
「変形モードY」
エマがコントローラーを操作、オッゴの本体が巻き寿司のように3分割し、砲身の形を取る。
側面を突いたと思ったXXは、一瞬にして主砲の正面に立ったハメになった。
「ヨ、ヨルムンガンドだとおおおっ!」
「ファイア!」
大蛇の咆哮がXXを包む、ダメージレベルAのバトルで主砲に飲み込まれたXXは
跡形すら残らなかった。

 

 同日、東京
「本当に出場を決めるとは・・・恐るべし、だな。」
ネット配信のライブ映像を見ていた3代目メイジン・カワグチが
言葉とは裏腹に、嬉しそうな表情で携帯を操作する。
「もしもし、ヤジマ商事ですか?ええ、私です、メイジン・カワグチです。」

 
 

 7月22日、オランダ、スキポール空港
 ロビーにて、一人の青年が大勢の若者に囲まれ、激励を受けている。
「たのむぜ、オランダの星!」
「ぶっつぶしてやれよ、メイジンだろうと誰だろうと。」
「思い知らせてやれ、俺たちはお前を否定しないからな!」
口々にかけられる言葉。ただ、その端々には少しだけ暗い感情が込められている。
青年はカバンからひとつの箱を取り出し、空ける。
中には胸の部分に巨大な風車をあしらった異形のガンプラ。
「いってくるよ、日本の連中に思い知らせてやる、俺たちオランダ人の怒りを!」
箱を仕舞い、みなの応援に背を向け搭乗口に向かう。
「待っていろ、メイジン・カワグチ!日本を代表するガンプラファイター、
 貴様を絶対に倒す!完膚無きまでにな!!」

 

 7月3日、静岡、ニールセン・ラボ
「出てきたかー・・・」
 日本第1ブロック代表の名前を見て頭を抱えるニルス・ヤジマ。
「で、どうしますの?難癖をつけて出場取り消し、なんてのはヤジマの名にかけて
 許可できませんわよ。」
「わかってるよキャロライン・・・しかし、なんとかしなきゃいけないのも事実だ。」
 ―サトオカ・ソラ―
ヤジマ製ガンプラバトルシステムに秘密裏に組み込まれたエマージェンシーシステム、
開発のごく1部しか知らないこのシステムの、最重要機密にあたる『タイプZT』
この秘中の秘を発動させたガンプラ使い。
「できれば、予選でなす術もなく敗退してほしいね・・・幸い彼は初心者らしいし
 彼が勝てない予選のルールを考えますか。」
「あくまで表向きは公平に頼みますわよ。」

 

 7月10日、東京
 日が沈み始めたころ、セイとレイジのもとに駆け寄ってくるふたつの影。
「パパーっ!」
「おうレイラ、どうだった、一回くらいは勝てたか?」
返事の変わりにトロフィーを掲げる少女。
「うそっ!まさか・・・優勝!?」
セイが驚くのも無理はない、ベスト32にいたのは世界でも名を知られる強豪メンバー、
カミキ・セカイにキジマ兄妹、アドウ・サガ、コウサカ・ユウマにスガ・アキラ・・・
それをことごとく撃破してきたというのだから。
「イオリ・セイさんですね、父や王子から噂はかねがね聞いております。」
少女に付き従うように歩いてきた青年が挨拶する。
「レイジ、こちらは?」
「申し遅れました、レイラ様の執事でププセ・マシタと申します。」
「マシタ!?まさか。」
「察しの通りだよセイ、あのマシタとベイカーの息子。」
はー、と感心するセイにレイラが話しかける。
「お兄ちゃんがイオリ・セイね。あたしレイラ、よろしく!」
握手代わりに手に持っていたガンプラ、モックを突き出す、見た目はアイラによく似てるが
奔放なところはレイジそっくりだ。
しかしモックで優勝とは・・・見ておけば良かったな、とも思う。

 
 

 7月17日、ドイツ、フランクフルト
「ついに完成だー!」
天に向けて拳を掲げるライナー・チョマー。周囲にいる大勢のビルダーたちが
追随してガッツポーズを取る。皆、塗料と接着剤だらけだ。
彼らが囲んでいるのはガンプラ・・・には見えない、どう見ても円筒状の建物だ。
直径5m、高さは20mほどもある。
しかし周囲にいるのは建築家ではない。皆、ドイツの有名な
ガンプラファイター&ビルダー達。
「ありがとうな、みんな。こいつで世界大会を沸かせてみせるぜ!」
「嫌でも沸くだろこれは。」
「世界大会、応援に行くからな、こいつを使う前に負けるなよ!」
わいわい賑わうチョマーの周囲に、給仕たちがビールやソーセージを運んでくる。
「さぁ、前祝いだ!みんなご苦労さん、どんどんやってくれー!」

 
 

 7月25日、日本、徳島
「メイジン・カワグチ、とある約束を果たすため、優勝者権限で世界大会出場、か。」
ガンバトに目を走らせる大地。
「そんなに凄い人なの?」
宇宙が問い掛ける。知らんのか、という表情を隠す大地。
この世界で彼を知らない者はまずいない。第8回から第10回まで3年連続世界大会優勝、
世界初の『ガンプラバトル殿堂入り』を果たした伝説の王者。
「強い、っていう次元じゃないぜ。対抗できるのは昨年、一昨年2連覇で、
 今年殿堂入りを目指すイタリアの、リカルド・フェリーニくらいじゃないか?」
宇宙は分かっていないだろうが、もし宇宙がこの二人と戦ったら一体何秒持つやら・・・
ため息をつきながらページをペラペラとめくる大地。
「おっ!チョマーさん今年も出場か、やったぁ〜〜〜、会えるかなぁ。」
深刻だった顔がぱっと明るくなる、少年の顔に戻る大地。
「あの例の、兄さんの尊敬する人?昔初めてのガンプラバトルで対戦したっていう・・・」
「ああ、感謝するぜ宇宙、もう一度あの人に会うのが夢だったからな。」

 

 世界大会開幕間近、各国のファイターが様々な思惑を乗せて日本、静岡に集結する。
その先にある栄光を目指して。

 

 しかしその結末は、誰もが予想しない方向へと向かっていく・・・

 
 

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