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鉄《クロガネ》SEED_2-4

Last-modified: 2008-02-28 (木) 20:53:31

駆動系、エネルギー出力、グリーン、

 

パイロット、リンゲージ率97.7パーセント、誤差修正範囲内

 

火器システム、異常なし、空間制御、現時点で修正の必要無し

 

奇妙なコクピット…… いや、それをコクピットと呼んでよいものか
半球体のような空間にモニターが浮び上がっているだけの殺風景な空間、
しかし、磔のように搭乗している仮面の男の存在がこの場所を異質なものに変えていた。

 

「さて、此方もカードを切るとしよう……」

 

両腕と下半身を機械に埋め込まれた形になっているにも拘らず仮面の男は至って冷静に機体のチェックを済ませてゆく。

 

全エネルギーチャージ完了、発進シークエンスへ、転移座標、X45・Y74・Z13

 

システム起動コード、入力

 

さぁヴィンデルよ、これが此方の宣戦布告だ!!

 

「コード、『ヘリオス』」

 
 

剣劇が続く…… かつてビル街であった廃墟を砕き、高架線を割り、大地を切り裂いてもなお、決着がつく気配はない。
鋼色の剣士、コゼンガーはその身の程の大剣を巧みに操り、
金色の巨人グルンガスト弐式はその一撃を片刃の剣で防ぎつつ、隙を逃す事無く反撃する。
双方の体格差は約三倍、本来ならば体格で勝る弐式の圧倒的有利な状況なはずなのだが、
ゼンガーの操縦技術と彼自身の怒涛の気迫が勝負を互角の世界に持ち込ませている。
両手に構える斬艦刀はその破壊的な重量を感じさせることなく、稲妻のような速さで振り回される。
グルンガストシリーズはその巨体ゆえ、関節部にTCSジョイントと呼ばれる重力操作機関を使用している。
この部分がグルンガストの所謂「アキレス腱」となっている。
コゼンガーはその部分を電光石火のごとき一撃で切りつけてゆく……
見た目にはダメージの少ない弐式だが、その実着々とダメージを蓄積していた。
弐式のコクピット内では関節部へのダメージが警告レベルまで達していることを示すメッセージが引っ切り無しに現れていた。

 

「ぐっ、ふふっ…… 楽しい、楽しいぞゼンガー・ゾンボルト!!
 このグルンガスト弐式に乗ってなければ命が幾つあっても足りはせん!!」

 

サトーは己が内に潜む闘争本能にみを任せていた。
剣と剣がぶつかり合い、一瞬でも気を抜けば待っているのは己の死、
このスリル、緊張感、サトーのような生粋の武人にとっては夢の様な、
いくら大金を叩いても得ることの出来ない『生の充実』が其処にあった。

 

「どれほどの死線を抜ければ……
 どれほどの死地に赴けば貴様のようになれる!!
 貴様の強さは何処に在る」
「笑止!! 本当の強さとは、剣の腕や骸の数ではない!! 貴様の進む道に真の強さは…… 無い!!」

 

コゼンガーはスラスターを一気に吹かし、弐式の頭上に舞い上がった。狙うは肩口、右肩と胴体の付け根!!

 

「チェストォォォォ!!」

 

一閃!! 弐式の持つ太刀をも叩き割り、地響きと共に巨人の右腕が地に落ちる
その衝撃は弐式の巨体を数歩後ずさりするほどのものだった。恐るべしコゼンガー、恐るべしゼンガーゾンボルト!!
が、コゼンガーの攻撃は続く。振り下ろしを切り上げ、そのまま剣自機の後方いわゆる下段の構えに直し、大剣を薙ぐ。
しかし次の瞬間、弐式の胸部が光り輝き始める。
とっさに剣を盾代わりにする。

 

「マキシ・ブラスタァァァァッ!!」

 

撃ち出された光線はコゼンガーを吹き飛ばしながら直線に数十メートル地面を溶解させ、
その跡には茹で上がった様に大地から湯気が上がっている。

 

「まだだっ!!まだ、俺は証明しなければならない…… このユニウスセブンで散った妻と娘の為にも……
 この欺瞞に満ちた偽りの平和の象徴を、地球に落下させなければならない!!
 この狂った世界に、もはや安息の場所は存在しない事を証明させねばならない」

 

「……だから、アンタはコレを落とすってのか?」

 

背後で瓦礫が崩れる。
其処に現れたのはシンのインパルス、だがそのボディは表面のところどころが傷つき抉れ、
背部に装着してあったフォースシルエットは四枚の翼を根元から失っていた。
そんな状態でもインパルスはその両手に持った長剣の赤く輝く刃を金色の巨人に向ける。

 

「そんなことしたって、アンタみたいな人間が増えるだけだってコト!?判らないのかよ!!」
「黙れ小僧!!貴様に何がわかるというのだ!!」
「……判るさ」

 

シンの脳裏にはっきりと映し出される光景……
両親は爆風に消し飛ばされ、妹も左腕だけしか残らなかった。
あの時の自分には、あの頭上に舞う鋼の巨人達を如何する事も出来なかった……
シンは静かに続ける。

 

「大切な人を失う気持ちも、力の無い悔しさも、みんなみんな判る。だから、だからこそ俺はアンタを止めなくちゃいけない。
 アンタの悲しみが判るから、こんな事を止めさせなくちゃいけないんだっ!!」

 

インパルスの目に輝きが増す。
まるでシンの感情の高ぶりに機体が応じるかのような唸りがインパルスから放たれる。

 

「……まだ解らないか? ジン・サトー」

 

いつの間にか瓦礫の上、インパルスの隣に立っていたコゼンガーが、大地に突き立てていた剣の柄を握る。

 

「同じ過ちを再び繰り返そうとする貴様と、二度と繰り返させぬようにするシン・アスカ、
 剣の道とは仁の道…… どちらが正しいか? 今の貴様に理解できるか?」

 

コゼンガーは剣引抜き天高く構える。切っ先が太陽に重なり後光の様に大剣を映す。

 

「聞け!! 我はゼンガー!! ゼンガー・ゾンボルト、悪を断つ剣なり!!」

 

コゼンガーの大剣が刃の部分から二つに裂け、内側から排気口のような四角い穴が幾つも現れる。
さらに噴射口一つ一つから赤い輝きが吹き出し、刀身をビームが包み込む。

 

「シン、行くぞ!!」
「了解!!モードをニュートラルに」

 

シンの斬艦刀が再び細長い四角い棒状となる。

 

「コード、『エクスカリバー』!!」

 

四角い棒が音叉の様に二つにわかれ、その間から液体金属が噴射される。
重金属の霧は巨大な片刃の刀身に固まる。
全長と幅はは先程の長刀形態時のさらに倍程にまで膨れ上がっている。
コクピット内では最終形態時のアラートメッセージが表示される。

 

「制限時間はあと45秒、一撃で決める!!」
「それがお前たちの最後の一手か……ならばっ!!」

 

グルンガスト弐式が背後から取り出したのは剣の柄。
刀身は無く、本来それがあるべき根元にはジェットエンジンのファンのような物体が取り付けてある。

 

「これが最後の勝負!!」

 

柄もとのファンから刀身が伸びる。陽炎の様に不定形なその刃を振り、隻腕の巨人は力を溜めるように体を沈める。

 

沈黙…… そして

 
 

「「「いざ!!」」」

 
 

青白い噴射光が尾を引きながら三機は一斉に加速する。
先の先も後の先も関係ない、純粋な速さの勝負、如何に早く奴に刃を喰わせるか、単純にして明快、唯一つにして絶対の勝利の方法。
速く、速く、奴より…… 速く!!

 

「「「おおおおおおおおおっっっ!!!」」」

 

「「斬艦とおおぉぉっ!!」」
「罫都瞬獄剣!!」

 

「斬!!」

 

一瞬の交差……斬り抜いた体勢のまま微動だにしない三機。

 

「くそっ……」

 

最初に膝を突いたのはインパルスである。
両手に構えた両刃の大剣が幻の如く霧散する。内蔵のエネルギーが度重なる消費で底を付いたためだ。
剣を杖代わりにインパルスが崩れた。

 

「ふ、ふふふ……」
「サトー……」

 

サトーのグルンガスト弐式の胴体には十字の切り傷、一瞬を制したのはシンとゼンガーだった。

 

「あのまま貴様が剣を振れば、俺かシン、どちらかを斬ることもできた筈だ」

 

ゼンガーは知っていた。弐式がその刃を振る直前、その剣筋を緩めていたことを……

 

「貴様の言う通りだ、最後の最後に気付いてしまった……
 俺が望んで進んでいた筈の道に俺が望んだ強さが無いことにな」

 

サトーは自機の後方、片膝を着くインパルスを見つめた。

 

「あの小僧なら…… たどり着けるのでは無いか、そう感じた…… ぐっ!!」

 

弐式の各所から爆炎が上がる。どうやら機体の限界らしい、お互いの全力をかけて放った一撃である。
こうして弐式が原型を保っていることだけでも奇跡に等しいのだ。

 

「貴様も…… そうなのだろう?
 あの小僧に…… 希望を感じた…… 人を護るための、人殺しの剣ではない、本当の強さを……」
「ああ…… 奴には才能がある、この戦いを乗り越えることが出来ると俺は信じている」
「……そうか」

 

サトーはその言葉の意味を知っていたため、深くは問わずただ首を縦に振るのみであった。

 

「最期に一つだけお前に聞かなければならないことがある」
「何だ?」

 

ゼンガーの問い、それは『この戦い』における最大の謎……

 

「奴はヴィンデル・マウザーは今どこに?」

 

ヴィンデル・マウザー、世界を混沌に導く存在、『シャドウミラー』の首領、
世界のバランスを保つため、あえて戦乱を呼び込もうとする男。
最後の戦い、彼等はアインストと呼ばれる存在の出現時の混乱に紛れ行方を眩ました。
その彼を追って、ゼンガー達はこの世界にやってきたのだ。
作り上げた男が罪の象徴と呼ぶ『あの装置』を使って。

 

「あの男はどこに?」
「……俺達は元来脱走兵が集まって出来た小さな武装……組織の一つに過ぎなかった。
 俺たちに接触をしてきた男は…… ノアロークと名乗った……
 奴は俺たちにASRSというステルス装置とこの機体を与えた……」

 

ノアローク…… これが奴に繋がる新たな手がかり、という事なのか

 

「どうやら別れの時のようだな……
 この、妻と娘の眠るユニウスセブンに骸を晒すのならば、
 悪い気は…… しないな。
 さらばだ、ゼンガー・ゾンボルト、鋼鉄の侍よ……
 最後に本物と死力を尽くせた……を剣士とし……誇りに……」

 

爆炎に包まれながら巨人はゆっくりと崩れ落ちた。ゼンガーはその光景を唯黙したままその光景を見つめていた。

 
 

「シグナルロスト…… サトー師範が…… 撃墜された……」

 

トウゴウは未だにその事実が現実として認識できなかった。師範に弟子入りして腕を磨き、
師範がザフトに志願した時は彼の片腕として存在したこの自分が言うのだ。
ジン・サトーは刀を握らせればかなう者無しだと……
基より、ザフト初のMSの武装、重斬刀自体彼自身の動きが元になっているのだ。
その彼があの鬼の如き機体に乗って誰に負けるというのだ!?
その時、彼の機体のコンソールに映し出されたタイマーが時間になったことを知らせた。
同時に辺りから強い振動と共に大地から炎が上がる。

 

「いまさら遅い、たった今ユニウスセブンは阻止限界点を超えたのだ!!」

 
 

シン・アスカが意識を取り戻したのは最後の一騎打ち(正確には『1機』ではないのだが)を終えて暫く経ってからだった。

 

「……此処は? ……そうだ!! ユニウスは、どうなったんだ!?」

 

モニターをみわたせばデブリ漂う宇宙に放り出されていた。いや、正確には何かに牽引されているのだ!!

 

「相変わらず騒がしい少年だな…… 目が覚めたら覚めたで面倒なことこの上ないな」

 

通信越しに聞こえる声にシンは聞き覚えがあった。

 

「アンタは、アーモリーワンの……」

 

声の主は最初の戦闘で自分を助けてくれた赤いMSモドキのパイロットであった

 

「アンタが何でこんな所に!? それにゼンガー教官と他のみんなは!? それにユニウスは……」

 

インパルスのモニターに映し出されているのは緑の軌跡を引く鋭角的なシルエットの機動兵器、
この機体もシンが見たことも無いタイプだ。

 

「此処に来たのはその少佐の機体が損傷が激しくて貴様の機体を牽引できなかったからだ。
 それに他のパイロットは既に母艦に帰還している」

 

青年は口早に説明を終えると、溜息を一つ吐いて少し憮然とした表情で続ける。

 

「ユニウスセブンは…… 阻止限界点を突破した」
「突破したって…… そんな!!」

 

インパルスの機体状況をチェック…… ダメだ、戦闘はおろか移動すら今のインパルスには荷が重過ぎる。
とても破砕作業を行なうことは出来ない

 

「くそっ、動いてくれ!! このままじゃユニウスが!!」

 

しかし、無情にもインパルスのシステムは警告を発するのみである。再び前方の機体から通信が入る。

 

「全く、貴様は現実を見ないところや自らを省みない所はあの男ソックリだな…… 最も、口の悪さでは貴様が上だが」

 

やれやれとばかりに頭を振る青年に対しシンは怒りを露にする。

 

「アンタこそ…… ユニウスセブンが地球に衝突するかもしれないんだぞ!! 
 沢山の人間が死ぬかもしれないってのに、何でアンタはそんなに冷静なんだよ!!」

 

と、機体が急停止した。ゆっくり振り返りインパルスの正面を向く。
鋭角的にデザインされたその機体は、MSというよりも人型の戦闘機といったほうが正しいか?
先の尖った顔が猛禽を思わせるような姿である。

 

「なんだよ…… やるってのか?」

 

機体のパフォーマンスから言って勝ち目は無に等しい。
しかも自分の知らない機体が相手、それでも精一杯の虚勢を張ったシン。だが

 

「貴様も見たいだろう? メテオブレイカーが足りず、最後の最後で取り逃してしまったユニウスセブンが…… どうなるのかを?」
「……貴様」
「まぁ落ち着け、奇跡を見せてやろうというのだ」
「奇跡?」
「ああ、正しく奇跡だろう、何せ『高度に発達した科学は魔法と同じ』というからな」

 
 

それは明らかに異質な機体……
MS?
違う
戦艦?
サイズが違う
MA?
この世界で当てはめるならまぁ近いのかもしれない

 

それは突然、まるで空間を割ったように現れた。最初に気がついたのはシンの母艦、
ミネルバの管制オペレーター、メイリン・ホークだった。

 

「あれ……」

 

その小さな疑問はレーダー上に現れた不審な反応…… 普通ならばデブリの一つとして
認識されるほどの60〜70メートルほどの物体、だが

 

「どうしたんだい?メイリン」

 

破砕作業をつつけるべきだとデュランダルに上申し続けるグラディス艦長に代わり副長であるアーサーが問い尋ねる。

 

「あの……ユニウスセブンの進路上に変な反応が……」
「デブリの一部じゃなくてかい?」

 

アーサーの問いにツインテールのオペレーターは頷き返す。

 

「うん、さっきから反応が消えたり現れたり。まるで幽霊みたいに……」

 

その瞬間、ミネルバのブリッジ全体に『声』が響き渡った

 
 

『ユニウスセブン周囲半径十キロ以内の全ての人間に告ぐ……私の名はアポロン』

 
 

「アポロン?オペレーター、周波数の特定を!!」

 

声を聞いた直後、グラディスがオペレーターであるメイリンに命じる。
流石この最新鋭艦を任されるだけあって的確にして素早い反応である。
しかし、オペレータからの反応は想像を上回る答えであった。

 

「周波数、反応ありません、発信源、特定不可、艦内のスピーカーチェック…… 嘘……」

 

メイリンが悲鳴を隠すように口に手を当てた

 

「どうしたの!? 報告は正確に……」
「艦内スピーカー、作動していません!! これって一体……」

 

『この付近における全ての戦闘行動を中止せよ。同時にユニウスセブンへの接近も禁止する。
 この勧告が破られた場合、いかなる障害もこの『XNガイスト』によって排除させてもらう』

 

モニターには全長70メートルほどの蛇の頭のようなMAが映し出されている。
どうやら先程の反応がこの機体のようだ。
三角錐を横にしたようなフォルム、後部から伸びるパイプのような器官、各所から発せられる赤い光……
すべてが不気味で禍々しく得体の知れない力を感じる。
あれは違う、断じてMAではない、誰もがそう感じるほどの何かがあった。

 

「XNガイスト……」

 

グラディス艦長はその呟きと共にこの声の主の名前を必至に思い出そうとした。
どこかで聞いたことのあるこの声、確か……
ダメだ、思考に靄がかかって、思い出せない……

 

「アンノウン、ユニウスセブンに接近!!」

 

XNガイストと名乗るその機体はゆっくりと相対速度に合わせるようにユニウスセブンに近付いてゆく。
モニターを見ていたグラディス艦長が背後のデュランダルとアスハ代表が座る座席に向き直る。

 

「どう致しますか? 先方、このまま何をするか推測がつかめませんが?」

 

半ば投げやりに問いかけるグラディスに対しデュランダルは余裕とも取れる仕草で肩をすくめる。

 

「ああ言っているんだ。素直に従うしかないのではないかね?」
「そうですか…… 各員、ユニウスセブンの破砕作業を続行!!
 これはザフト再考司令部の命令ではなく、
 私一個人の独断であり諸君に対する責任は存在しない」

 

しばしの沈黙の後堰をを切ったように動き回るクルーを満足げに見回し、最後にデュランダルを見つめた。

 

「何をお考えかは理解できかねませんが、奇跡を期待することは私には出来ません」

 

その言葉の裏に隠されたもう一つの意味を含め、デュランダルは静かに頷いた。

 

「知っているさ、君はそういう人間だ」

 
 

「やはり向かってくるか…… 無理も無い」

 

赤いマスクで顔を隠した男が呟く。その視界が何を映し出しているのかはバイザーに隠れて知ることは出来ない。

 

「この時代にとっても…… この機体は呪われし異邦人なのだからな」

 

コード入力、座標X99・Y99・Z99
有効半径、対象を中心に半径三キロメートルを空間転移

 

「悲しき墓標よ…… 今は唯、眠るがいい」

 

転移!!

 

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