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転移戦線_第05話1

Last-modified: 2013-12-23 (月) 20:02:29

 『転移戦線』第五話「宿敵の牙心」

 

 ―アバンタイトル―

 

 ムルタ=アズラエルは国防産業連合理事を勤め、デトロイトに本社を置く大手軍需産業の経営者であり、アズラエル財閥の御曹司であり……政治団体「ブルーコスモス」の盟主である。
 彼は現在多忙――例え戦争が無くても何時でも多忙なのだが最近は頓に――で、ナポレオンやドクター中松程度の彼の標準的な睡眠時間も惜む程であった。
 今彼は複数のプロジェクトの陣頭指揮を行っており、それは第2期GATと呼ばれる高スペックMSの開発、生体CPU、連合の量産型MSの量産計画とそのバリエーションの開発等々……。
 どれも対ザフト戦には欠かせない物であり、彼は経営者としてこのような莫大な利益を生んだり重要なプロジェクトには直接関わる事にしているからだ。
 それは彼が現場の状況と場の空気を自分の目で確かめ、押し引きのタイミングを機微に感じて指示する事で何度もプロジェクトを成功させた経験があったからだし、そう言う事に口を出す性格でもあったからである。
 そうやって彼は彼の関わる軍需産業とアズラエル財閥を成長に導き、地球連合や地球圏全ての産業に強力な影響力を有する利潤確保を目的とする影の業界団体“ロゴス”の中でも相当の地位を得るまでになったのだ。
 彼の若さでそんな地位に付けた事からも、彼自身の経営能力や判断能力や管理能力は相当な物だと言えるであろう。
 彼の有能さを証明するプロジェクトには事欠かない……例えば連合宇宙軍の主力MAである“メビウス”は“メビウス・ゼロ”から特殊兵装の“有線式ガンバレル”を取り除いて機体性能を強化し、それを一般兵にも使えるようにしたMAである。
 それまで主力であった“ミストラル”がザフトのMS“ジン”にまるで歯が立たない事が発覚してから約1年と言う短い期間で開発、量産、配備されたのだが……この機種転換の中心にいたのが彼であった。
 短い時間で連合宇宙軍の主力兵器を一新する事は相当の利益を彼と、彼の財閥と、ロゴスに齎(もたら)したと言う事でもある……だからこそ彼は裏の経済界の中でももっとも力ある男と称されているのだ。
 そんな彼はブルーコスモスの盟主である以上、当然ナチュラルである。
 彼の経営能力や判断能力や管理能力や危機管理能力はコーディネイターでも滅多に上回れる物では無く――経済や経営方面に特化するコーディネイトがあまり人気が無かったと言う話もあるのだが――地球圏で彼の経営手腕の右に出る者は居ないと言えよう。
 彼がそうなったのには訳がある。 彼がまだスクールにいた頃は今のような豪腕さの片鱗もまだ現していない良くある御曹司のボンボンで、彼の財閥が反コーディネイター運動に出資をしてきた事も関係してコーディネイターを侮蔑する一般人の一人でしか無かった。
 そこで取り巻き達とコーディネイターを虐めてやろうとしたのだが……たった一人のコーディネイターに逆に打ちのめされ、スペックの違いをまざまざと見せ付けられたのだ。
 だが、そこで折れる彼では無い。
 彼は確かに肉体的スペックではコーディネイターには及ばなかったが……肉体を鍛えてコーディネイターを上回れるるようになったとしても、その程度では彼の意趣返しは完結しない。
(実際には個人に付く筋肉量等は遺伝子で決まっているので誰もが鍛えれば必ず勝てるという訳では無く、その上限をいじったコーディネイターに勝つ為にはドーピング等の方法が必要になってしまうだろう)
 やろうと思えば誰でも出来る事――と彼は思っている――よりは、彼が生まれながらに持つ環境“アズラエル財閥の御曹司”を極める事でコーディネイターになんら劣る事は無い事を証明しようと考えたのだ。
 コーディネイターは確かに生まれる前に遺伝子操作でナチュラルより強力な肉体と明晰な頭脳と病気にかからない遺伝子を持って生まれてくるが……だがそれはズルをしてスタート地点が前にあるだけ。
 身体機能はともかく頭脳方面は学習しなければ知識は増えず、また判断力等は本人の資質や経験が無ければコーディネイトされたからと言って何もしないで優秀な物ではない……彼はそう考えた。
 こうして経営学を極める事に邁進――すぐ側にあり学習する事も吸収する事も実践する事も可能な環境だった――し、彼自身も優秀でありまた努力を怠らなかった事もあって、彼は地球圏を裏で動かす事が出来る程の人物に伸し上がった……この時点で彼の頭脳はコーディネイターを超えたと言っていいだろう。
 もちろん彼の意趣返しはまだ終わっていない……生意気にも独立を宣言したプラントとコーディネイター共を足元に跪(ひざまず)かせ、2度と大それた事を言わないように首輪をかけて躾けるまで、彼の戦いは終わらないのだ。

 

 そんな彼にとってここ一年は多忙な状況がずっと続いている、とりわけNJ投下により混乱の極みにあった地上の生産拠点を復旧するのには時間がかかった。
 核に代わるエネルギーの確保、インフラやライフラインの確保と再整備、工員や職員達の安全や食糧確保とそれをその周辺までに支援を押し広げる事で治安を回復させ、通信網の再整備に有線通信網を引き回し、資源や生産ラインの確保と生産設備の管理、監督、監修、必要な物が必要とする場所に正しく安全に届けられるロジスティクスシステムの再構築……。
 これらは慢性的なエネルギー不足と通信障害の中、彼が陣頭指揮に立って成し遂げた物なのだ。
 このもう一つの戦争は、ザフトでは無く彼に軍配が上がったと言っていいだろう。
 CE71年2月の地上は――支援の行き届かない地域や人々は存在するものの――不便さは有れど法治国家としての呈を成し遂げているからだ。 決して無政府状態には成っていない。
 そして、国防産業の一番のお客様である連合軍に対するサービスも忘れてはいない……これら彼らが成し遂げた成果を使わせている。
 これらを使う事でNJ投下や戦争当初MSの性能による敗北により混乱した連合軍も組織立った戦いができるようになり、カーペンタリア、ヤキン・ドゥーエ、カサブランカ沖、スエズ、グリマルディ、新星と来て……ようやく膠着状態に持ち込めるようになったのだ。
 現在低軌道会戦で第八艦隊の壊滅や第二次ビクトリア攻防戦にてビクトリア宇宙港の陥落等、ややザフト寄りに傾いてはいるが……指揮系統は回復し、工場からは新たな兵器が続々と生産されて来ている。
 結局、ザフトのNJ投下は連合と言う新しい軍組織に対して彼らロゴスの発言権を更に強化してくれたようなものだ……ロゴスの力無くして連合は戦闘を継続でき無かったのだから。
 戦争は軍事物資で莫大な利権を彼やロゴスに齎し、彼の地位や権利はますます強固な物となって行った。
 プラントには感謝しなくてはならない……もちろんご褒美とは鉛の玉を始めとする彼らに打ち込まれる攻撃の事である。

 
 

「旦那様、お夜食をお持ちしました……それと、本日届いたメールを纏めておきました」
「うん、ご苦労セバスチャン」

 

 アズラエルは報告書を読んでいた端末から顔を上げると、立ち上がって背伸びをした。
 その間にセバスチャンと呼ばれた初老の執事は手早く彼の机の脇にサンドイッチが入った食器を置いて蓋を明け、紅茶を入れ始める。
 立ったままキーボードを操作して何かしらの許可を与えたのかそのままその報告書は返信される……それは然るべき場所へと送られ、彼の意のままに世界を動かす事となるだろう。
 どさりと椅子に腰掛けてサンドイッチに手を伸ばし、メーラーを立ち上げながら頬張りつつ、画面を見ながら手を横に差し出すと暖かな湯気の立つ紅茶がその手の中にすっぽりと納まり、そのまま口にする。
 アズラエル程の地位になると彼に届くメールは一時間で何万件にも及び、それをいちいち届く度に読むのは物理的に不可能な量になる。
 その全てを執事のセバスチャンとその配下が目を通し、アズラエルが目を通す必要が無い物は担当に転送し、必要な事であればそのメールだけでは足りない情報も収集して付け加え、本当に見なければならない物だけを必要な情報と共に届けるのだ。
 彼は通常の執事としての仕事もこなし、このようなサポートや秘書の様な事まで平然とやってのける。
 恐らく彼の下に優秀なスタッフが何万といるのだろうが、その辺の全権は彼に任せてあるのでアズラエルは詳しくは知らない。 彼が必要とする物や人が指示通り準備されているのでそこまで知る必要は無い。
 アズラエルはこの有能な執事を信用していた、なにせ物心付いた時から彼の側にいる執事なのだ。
 常に彼に付き添い、傅き、どんな命令も卒無く行い、時には彼に降りかかる暴力をその拳で排除し、必要な全てを取り仕切るフォーマルな守護者……それが彼の執事セバスチャンだ。
 時々この男が有能過ぎてコーディネイターなのではないかと思った物だが……彼が生まれたのは『ジョージ・グレンの告白』より前であるし、何よりコーディネイターを凌ぐナチュラルと言えばアズラエルもその一人なのだ、ここまで有能なナチュラルが居てもおかしい事では無い。

 
 

「ン……!? 異世界から来たMS……!?」

 

 有能過ぎるこの執事は、時々メールの中にとんでもない事や思わず笑みが洩れる記事やニュース等を紛れ込ませてくる。
 それはとても良い気分転換になるのだが、そういった物を必要とするタイミングをこの執事に的確に読まれている事にいつも驚かされていた。
 彼が生きている世界は虚虚実実、隙あらば足を引っ張り他人を蹴落とし少しでも這い上がろうとする人間の集う場所であり、相手に自分の考えを読ませないポーカーフェイスにかけても一流でなければ今の彼は無い。
 ……その筈なのだが、この執事には彼が少々疲れていて別な刺激が欲しかった事は見抜かれていたようだ……確かにサンドイッチもマスタードが効いている。

 

「笑えるじゃないかセバスチャン、異世界のMSなんて何処の三流スポーツ記事かインチキ偽科学雑誌だ!?
 このメールを寄こした奴はペテン師か? それとも権力者に擦り寄る道化師か?」
「第八艦隊所属のイアン=リー少佐です、旦那様」
「第八艦隊? 確か絶滅したんじゃなかったのか、ハルバートンの艦隊は!?
 あいつの物言いでMSとか新造艦とか作ってやったのに……儲けを出す前に死んでしまうとは情けない。
 おかげでこの僕が余計な骨を折るはめになったじゃないか」

 

 誰に向けるという風でも無く皮肉を込めた台詞と表情を浮かべるアズラエル。
 口調とは裏腹に興味が沸いたのかメールを読み進める……次第に小馬鹿にした表情が真剣に成って行く。

 

「AA――作ってやった新造艦か――が地上にて異世界のMSに遭遇、だぁ?
 画像は……ん、核…融合炉? ペテンにしては随分手が込んでるな……おいセバスチャン、これは本当なのか!?」
「はい旦那様、私の方で確認しておきましたが、確かに写真のようなMSの画像を受け取った模様です。
 その第八艦隊のイアン=リー少佐は現在地上にいるAAとの通信でその画像を入手しました。
 なにぶんAAは現在敵勢力下にいますので真偽の程が判りません。
 ですが旦那様を騙す事で利益を得るメリットもまた少なく、第八艦隊のイアン=リー少佐、その副官ハンツ=クレフェンバック大尉、そして現在AA艦長のマリュー=ラミアス少佐、次席のナタル=バジルール中尉もそういったペテンを用いる人物では無いとプロファイリングされています」
「マリュー=ラミアス……あの人がせっかく助言してやってるのに煩く反論したいけすかない女か!
 あの女ならあるいは……ふむ……AAにはこの異世界のMS三機の他にも、鹵獲したバクゥがあるか……なるほど」

 

 リラックスしてヨタ話を読む筈だったアズラエルの顔は、今や経営者として物の真偽を見極め損得を弾く表情が浮かんでいた。 そしてセバスチャンに声を掛ける。

 

「セバスチャン、直にJOSH−Aのサザーランド少将に繋げ」
「現地時間は深夜二時でございますが……」
「かまわん、僕直々に連絡するんだ、出ない訳が無い。
 ……異世界のMSがペテンだったとしても、バクゥの完動機は欲しいな。
 それに、もうとっくに沈んだと思っていたAAとGATの生き残り……モルゲンレーテもナチュラル用OSは完成させて無いし、案外重要なデータかも知れない……」

 
 

「旦那様、サザーランド閣下がお出になられました」
『アズラエル様、こんな時間に何か御用でしょうか…』

 

 深夜にも関わらず軍服着こなしたサザーランド……だが既に寝ていたらしく、寝ぼけているのかナイトキャップを被ったままだ。

 

「ああ、ちょっと小耳に挟んだものでね……ハルバートンはもう戦死したんだったかな?」
『はっ、数日前の低軌道会戦で旗艦“メネラオス”と運命を共にしたと……』
「それじゃ今はハルバートン中将なんだな……最後の最後で抜かれたなサザーランド少将」
『……で、何の御用でしょうか?』

 

 少々ムッとしつつナイトキャップを剥ぎ取りながら丁寧に聞き返す、どうやら完全に目が覚めたようだ。

 

「まぁそう気を悪くするな、死んで二階級特進した奴より生きている将の方が偉く、功績を更に積み上げられると言う物だよ。
 所で……そのハルバートンの忘れ形見とも言えるAAは今何処にいる?」
『それは……』

 

 予想された通りの困惑の表情を見てアズラエルは心の中でニヤリとする、だが臆面にも出さずに不機嫌そうな声と表情で言葉を続けた。

 

「おいおい、例えハルバートンに作ってやったおもちゃとは言え、金を出したのは僕なんだぞ!?
 持ち主が居なくなっただけでコーディネイターを殺す道具には違いないだろ。
 風の噂ではまだ生き残って盗まれなかったGAT一機と共に地上に降りてきたって言うじゃないか……是非見たい。
 残った一機のデータは“ダガー”のOS開発に貴重なデータになる事だし。
 で、どこにいるんだ? アラスカにいるのか? それともジブラルタルか?」
『えっと…あの……それは……』

 

 顔面蒼白になってしどろもどろなサザーランド少将。
 確かに地上に降りたと言う報告は聞いたが……あくまで第八艦隊所属の艦船だからこちらから援護や補給してやる事は無い、と切った以後は気にも留めていなかった。

 

『敵勢力圏内に降下して援護できない状況にあるのですが……』

 

 だから場所は覚えていない、覚える気も無かった。 そのまま沈んでもらう船だったのだから。

 

「サザーランド君、君は配下の艦船がどこに居るかも判らないのかね? これは立派なサポタージュじゃ無いのか!?」
『いえ、そう言う訳では……』

 

 これはある意味言いがかりである。
 一軍の将が全ての艦船の場所をいちいち覚えている必要は無いし、所属部隊が違えば知らなくとも当たり前だろう。
 だがそれを承知の上でアズラエルは問い詰める……そうやって相手より優位に立って交渉を進めようとしているのだ。
 この程度の事はアズラエルにとっては駆け引きとも言えない事だが、アズラエルを前にしたサザーランドにとっては蛇に睨まれた蛙の如く駆け引きをする前から飲まれてしまっている……彼が今の地位に居るのはアズラエルの助力があればこそだったのだ。
 もっとも、そのような策を用いずともサザーランドがアズラエルに逆らえる筈が無い。
 それでも他人より優位な位置に居たいとする本能なのか、アズラエルは十分にサザーランドを精神的に痛めつけてから本題を切り出すことにした。

 

「まぁいい、それでも僕は君を買っている。 とにかくAAには生き残って貰わないと……少なくともデータを回収するまではね。
 掛けた費用分ぐらいは何か利益が無いと、GAT四機分コーディネイター共に得をさせたままじゃ身震いするほど腹が立つじゃないか!
 補給だの援護ぐらいしてこちらの勢力圏内に来させるぐらいの事はしてやれ、これ以上失望させないで欲しいな」
『はっ、さっそく手配します……どのような方法に致しましょうか?』

 

 軍人である彼が非軍人であるアズラエルに尋ねるのは屈辱的な事であり、また軍の規律を無視した物であるが……このようにアズラエルは気になった事柄についての軍事行動には必ず口を出してくる。
 どうせアズラエルに逆らえないサザーランドは最初から尋ねる事にしていたのだ……この時点で好きにしろと言われたのであればそれは彼に全てが委ねられ、結果だけを――もちろん望まれるのは成功の報告である――示せばいい……が――

 

「そうだな……まぁデータを持って来れればいいのだから小規模でいいだろう。
 いや、鹵獲したバクゥは回収したいな……バクゥを積めるサイズの輸送機、中型輸送機か。
 行きは積荷を最低限にして…最低限の武器弾薬食料と消耗品だけ積んで高速で……それだけで奴らの勢力圏内に行って帰れるか…難しいな……。
 ん、奴らが居たか。 サザーランド少将、前にコーディネイターと鹵獲MSで作った特別輸送部隊があっただろ」
『不要になった鹵獲MS部隊を再編成した部隊ですか? あの白いMSが居る……』
「そうだ、その部隊を使え。 輸送機の他に自前のMSがあるから交戦しても生き延びれるだろ」

 

 ――と、大抵は使用する部隊やその内容まで指示してくるのだ……それに従う他に無い。
 それにサザーランドも知らなかったバクゥを鹵獲した事を知っているという事は既にかなりの情報を掴んでいるのであろう、黙って従った方が良さそうだ。

 

『しかし……あの部隊は元々すり潰す為に作った部隊なので……』
「そうだが今この目的を達するには奴らを使うしかないだろう。 部隊を整備してできる限り早くやるんだ」
『判りました』
「そう言えば……奴らの隊長は通り名があると聞いたが……なんて言うんだったかな?」
『確か……“煌めく凶星「J」”と呼ばれていた筈です』
「“煌めく凶星”!? はっ、コーディネイターが大層な名前を……これが終わったら文字通り潰してやる!」

 

 いやそう呼んでいるのは周辺で、本人はJとしか名乗ってません……と彼にしては珍しくコーディネイターに同情的に思ったのだが、もちろんそれを口に出す事は無い。
 こうして特別輸送部隊のAAへの補給行動が決まった。
 その後いくつかの指示を与えて通信を切ると、冷えてしまった紅茶を一気に飲み干してセバスチャンに空のカップを差し出しておかわりを要求する。

 

「異世界のMSに核融合炉……はペテンとしても、バクゥとGATのデータは手に入れなければな。
 “ダガー”のナチュラル用OSもまだ仕上がってないし……GATのデータがあれば少しは進めるか?
 “モルゲンレーテ”にもプレッシャーを掛けておくか……開発に横槍を入れた癖にグズグズと……」

 

 背もたれに体を預けて天井を見ながらやるべき事をまとめて行く。
 インチキ偽科学記事から大事になってしまったが……ひょっとするとこの有能な執事は、ウィットに富んだ記事に包んでAAとその状況こそ自分に伝えるべき情報と判断したのではないだろうか?
 ……まぁその辺はどうでもいい、伝わるべき情報が伝えられただけだ。
 今はあの砂時計に住む遺伝子をいじったバケモノ共を地上から追い落とし、宇宙服無しで地球圏から追い出すのが優先だ。
 羽クジラの餌にでもなってしまえばいい。 その羽クジラという物が本当に存在していればの話だが。
 アズラエルの夜は、まだ始まったばかりであった……。

 
 
 

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