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舞乙337氏第04話

Last-modified: 2007-12-02 (日) 17:27:16

第四話 復讐の咆哮(後編)〜ふたりのオトメ〜



 そこは寒い場所であった。

 その寒さに目を開ける…。

死んでいるのか生きているのかもわからない。

そこには一人の男子がいた。彼は私に話しかける。



「君が失ったものはきっとかけがえのないものなんだろうね。でもここで寝て忘れようとしてもそれは無理さ、現実は変えられない。

だけど未来なら君には変える力が残っている。僕が君に力をあたえるよ。これを耳につけて…」



 彼の話し方は、何かひきこまれるものがあった。何日も現実から目をそらしてきた私にきちんと話しかけてくれた最初の人。

「…未来を変える力…私に…」

 私に力は無い。

 ずっとそう思っていた。

 レイは天才だし、シンのライバルでありたかった私もいつしかその差はかけ離れたものになっていて。

 私に力が無いからシンやメイリンを失った。

 それが原因。私にはMS乗りとしても才能が無い。

 でも、これに乗らないとみんなを守れない!守りたい…これ以上、もう何も奪われたくない。



「…ルナマリア・ホーク、汝の力を解放する。さぁ唱えるんだ。運命を変える力を解き放て…」



「…マテリアライズ」



 光につつまれルナマリアはその場から飛び立つ。



赤黒く輝く水晶のように透き通った鎧。

それによって胸元が見えそうになっている。

握られるのは長くその大きさはルナマリアと同じぐらいだ。



 ナギはその様子を眺めながら座りこむ。

「…血液検査を見たときは驚いたね。彼女に流れている血がオトメに必要なナノマシンがあったということ。

 さすがは普通の人間ではない、新人類と名乗るだけはあるね」

 赤黒いオーラに身を包んだルナマリアはさしずめ悪魔のようなものに見えるだろう。



「あ、みんなありがとね?」

 そこにはルナマリアを連れ出すことに協力したヨウランたちが疲れて倒れている。



 力がみなぎる。

 私の怒りや憎悪がそのままこの身体をとおしてエネルギーになっていく気がした。

 いつの間にか握られていたその巨大な剣は今の私の気持ちにぴったりだ。

 レイがやられている。

 相手はあいつ…。

 あいつも私の前から人を消そうとしているの?ならばあいつは敵…。私の敵なんだ!!

 吹き飛ばす…白い雪の下、無様な姿で倒れている。

 容赦はしない…止めを刺してやる。

 もう動けないようにして…。



「させないよ!!」



 後ろからの強烈な衝撃に、ルナマリアはバランスを崩し、宙を回転する。

 まだ戦闘に慣れていないルナマリアにとってみてバランスを維持するのも容易なことではない。

 後ろからのルナマリアに一撃をくらわせたのは5柱マーヤ・ブライスである。

 マイスターローブを着たマーヤは地面で倒れて気を失っているナオのもとに駆けつけ、かつぎあげる。



「逃がすかぁ!!」



 ルナマリアは巨刀を向ける。

 それと同時にGEMが輝き、その剣先から巨大な光の弾が放たれる。

 それはマーヤのいる場所にへとまっすぐにへと飛んでいき、巨大な閃光となってあたりを包み込む。

 爆音と光が周りを照らした。



アルタイ公国…黒曜宮



「僕がいない間、勤めご苦労だったね」



 ナギ・ダイ・アルタイは以前着ていた大公の服にへと着替え、慣れ親しんだ大きなイスに腰掛ける。

 その彼の前にいるのはナギ親派の軍隊である。

 そして彼の指輪にあるのは黒く染まったGEM。

「…それで確か補給物資、世界への帰還の件だったね」

 ナギの前にたち帽子をとるタリア・グラティスとレイ・ザ・バレルに話しかけるナギ。

「その前に、聴きたいことがあります」

 タリアの表情はあきらかに怒りに満ちたものであった。

 それもそうだろう。

 ミネルバクルーを拳銃で恫喝し無理矢理、ルナマリアを医務室内から運び出した挙句、ルナマリアを現地の技術で武装させ戦闘させたのだ。

「そう怒らないでよ。あーしなかったらやられていたのは君たちのほうだったのかもしれないんだしさ?」

「そういう風に仕向けたのはあなたでは?」

 戦闘を煽ったのはナギであろう。

 そうでなければこうして戦闘に発展する必要は無かった。

 こうなってしまっては既に遅いのだろうが。

「なら、どうする?僕らの支援なしにこのまま帰ってみる?」

 ナギはバカにしたような笑みを浮かべたままタリアを見下す。

「貴様!」

 レイは銃をナギに向ける。周りにいた兵士も一斉にレイに向けて銃を向ける。一触即発の状況だ。

「やめなよ?僕を撃てば、彼女も死ぬことになる」

「デタラメを!」

「…このGEMっていうのはオトメとマスターを結ぶ、いわば契約みたいなものでさ。これがある限りオトメとマスターは一心同体。

 彼女が傷つけば僕も傷つく。僕が傷つけば彼女も傷つく。意味わかるかな?だから僕が死ねば、彼女も、当然死ぬ」

 レイの元にゆっくりと近寄るナギ。

「…これ以上、仲間を失いたくは無いだろう?君たちも…」

 レイの銃を握る力が弱まる。

「ルナマリア・ホークは私たちザフト軍の一員です」

「…わかっているさ?でも僕のオトメでもある…わすれないでよね」

 タリアとレイは何も言い返せないまま、その場所を去る。ナギは笑みを浮かべたままイスに戻り腰掛ける。

「…陛下。今後は?」

「そうだね。とりあえず当分は様子見かな。あの設計図を例の連中にも見せてあげないといけないし、

 僕がいない間に好き勝手やってた奴にお灸もすえないといけないしね」

「あの戦艦は?」

「補給はきちんとしてあげてね。彼らにはまだまだ役に立ってもらわないといけないんだから」



 ナギの野望など知る由もなく、ベットの上で眠るルナマリア。

 自分が空を飛び、剣を握ってMSでは絶対に出せないようなそんな破壊力を持つ力を発揮したなどということは今の彼女にとって見れば夢のような出来事だった。



ミネルバ艦内

 重く静まり返った艦内では約束どおり、アルタイ軍からの補給物資が行われていた。

 指示は副長であるアーサーが行っている。

 皆、業務は行っているものも、その表情は暗く、やりきれないものがあった。これから自分たちはどうなってしまうのか、そんな漠然とした不安があった。

 ルナマリアはまだ黒曜宮から戻っては来ない。いや戻ってくるのかどうかも定かではない。

 レイはコクピットにのって点検を行っている。

 一見、彼はなにもかわっていないように見えるが、だがやはり動揺をしているのだろうか、どこかいつもよりかはイラついている感じがする。

 

タリアは艦長室にはいったきりだ。



「…私は、部下を守れないのね…彼女になにもしてあげられなかった」



 かすれた声で暗い部屋に声が漏れた。



 弱音を吐くつもりなど無い。



 だけど…今回ばかりは。

 まったくわからない場所に来て、そして利用された挙句、仲間を人質同然として捕らえられるなんて。

 危険性は重々承知していたのに。なのに…。





 ガルデローベ、地下研究室

 オトメ同士の戦闘が行われたということで学園長でもあり5柱でもあるナツキ・クルーガは情報を集めることに全力を挙げていた。

 またナオとマーヤの応答がなくなったことからガルデローベは防衛体制に移行。

 残っているサラ・ギャラガー、シズル・ヴィオーラをガルデローベに召集させるよう指示する。

「…ナオとマーヤからの連絡は?」

「まだ、ありません」

 イリーナはGEM通信で呼びかけ続ける。

 通信が途絶してもう二日になる。

 各国の状況はまだ混乱しており、情報も錯綜している。

 アルタイでは既に防衛体制にはいっており、むやみに近づけない状況だ。

 ナツキは5柱二人を任せて、この状況に陥るとは想像もしていなかっただけに、それだけこのGEM反応に出ているロストGEMの所有者が誰なのか気になる。

 ロストGEM…かつて行われた竜王戦争や、それ以前の戦争で消失したGEM。

 それぞれ希少価値は高く、しかもその力はどれも強力なものだ。

 だが取り扱いは勿論、オトメとしての要素であるナノマシンを体内に持ち、そして純潔であるもののみがそれを使用することが出来るのだ。

 しかもオトメであったものはすべて、登録されているのだから、使用者がいればそれが誰なのかすぐにデータとして割り出すことが出来る。

 だが、今回はそれがない。こんなこと今まで無かった。一般人が使用したなんていうことはありえないのだから。

「しかも、まさかあのGEMだというのか…」

 ナツキはアルタイの国に映し出されているそのGEMを見つめる。



運命の黝廉石…漆黒の金剛石と並んで忌まわしき記憶を持つ石



 その昔、竜王戦争以前に行われたハルモニウムをめぐっての各地の戦争。

 そのときにオトメが使用したGEMのひとつ。

 ハルモニウムがオトメの心とともに絶望と憎悪によって黒く変えてしまったGEMである。



「…それにしてもサラのいっていた異邦人の戦艦というのも気になるな」

 エアリーズに突如、現われた巨大戦艦。その戦力は未知数であるということ。

 話し合いを行ってはいるようだが…エアリーズだけで収められる話ではないのかもしれない。

 これもハルモニウムのせいだというのか。

 究極兵器ハルモニウムの残り火がまだこうして残っているとは…。



「学園長!!」



 それは研究主任のヨウコ・ヘレネだ。ナツキは考えを中断させヨウコのほうに視線をやる。ヨウコの隣にいる人物にナツキは一瞬、言葉を失う。



「ニナ、ニナ・ウォン…」



「お久しぶりです。学園長」



 ニナ・ウォン…かつて漆黒の金剛石を用い、アルタイのナギ大公に利用されハルモニウムを使用し世界を壊滅寸前までおいやってしまったオトメ。

 今は彼女の義父であるセルゲイ・ウォンとともに各地を転々としていたはず。



「…アルタイにいました。あの地は私たちにとってやはり最初の場所でしたから。でも…」

「いったいアルタイでなにがあったんだ?」

「空を飛ぶ船、それと大きな人型の機械人形によるアルタイ攻撃、ナオお姉さまたちはそれらと戦ったとのことです」

 空を飛ぶ船、巨大な人型機械人形?新しいシュヴァルツのスレイブロードか?

 ナツキはさまざまな場合を把握しながら話を聞く。

「私はただ逃げることしかできませんでした。ナオお姉さまはもしもの場合と私たちをアルタイ国外まで脱出させてくれる手はずまでしてくださったのに…」

 ニナの話を聞く限り、ナオの意外な優しさが垣間見える。いや、元々はそういうところがあるんだろう。ナオも…。だからこそ、今通信が無いというのが心配だ。



「私に、もう一度オトメとして戦わしてください!」



 ニナはナツキに訴える。

「私は、恐れていました。オトメを…。そして自分が起こしてしまったことを。

 だけど…いえ、だからこそ。オトメとして、やれるべきことをしたい。大切な人を守りたい…私にその力が残っているなら…」

 

ニナは知らず知らずのうちに握り締めていた。

昔コーラル時代のとき三人でとったあの写真のはいった時計を…。



 自分が愛する人のために、してしまったこと…。

 大切な友人をこの手にかけてしまったこと…。

 エルス…。



ニナの訴えかける、その表情は以前とは違っていた。

いろいろなことを経験し考え、悩んだ、そして自分の中で答えをだした。

今のニナには迷いは無かった。

「…だが、私がお前に渡せるGEMは…。それにニナ、お前まだ処…」

「…」

 ジーっとにらみつけるニナ。

「コホン…。だが我々がお前に渡せるGEMは」

 ニナは荷物からあるものを取り出す。

「これは!」



彼女のあけた箱…それは緑色に輝くGEM



「…海神の翠玉、ナオお姉さまがもしものときと私に託していたものです」

「ナオのやつ…勝手なことを!」

 今まで褒めていた自分がバカらしくなり怒りに満ちた目で肩を震わすナツキ。

「学園長!お願いします!」

 ニナは頭をさげ、ナツキに頼み込む。

「だが、マスターがいないことには…」



「話はすべて聞かせてもらったぞ〜!!」



 その声に振り返るナツキ、ニナ。

 扉をバーンとあけたそこにいたのはヴィント女王マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム、そしてそのマイスターオトメのアリカ・ユメミヤ。

「ニナちゃん…ニナちゃーん!!」

 アリカは潤んだ目でニナの元に駆け寄る。

「…アリカ」

 ニナもまたその懐かしい友人の姿にどこか安堵した表情を浮かべる。

「どういうことですか?マシロ女王」

 ナツキは突然現われたマシロを見る。マシロはニナのほうを見て

「ニナ、わらわと契約しろ!」

「え?」

 ニナは驚いた表情でマシロを見る。

 マシロはそんな驚いた顔をしているニナを見たまま

「マスターがほしいのじゃろ?わらわがなってやる!それでいいじゃろ?学園長」

「そんな!いきなり…」

 ナツキが何か言おうとするが、



「…ありがとうございます!マシロ様!」

「うむ。アリカばかりではちと不安での。そなたがいてくれるといろいろ助かる」

「ひっどーいマシロちゃん…」



 久しぶりの三人のそのごちゃごちゃと騒がしい三人の声がそこには響き渡る。

 ナツキはそんな三人を見て、何もいえなくなってしまっていた。ヴィント事変以来、決して見ることのなかった三人の再会。

 よく見るとアリカとニナに関しては涙を頬からつたわらせながら笑い合っている。

 そんな光景をみれば…誰だって三人には話しかけられない。

 ガル教授の隣でイリーナも眼鏡をとって涙をふいているのが見えた



「ようし!決まったのなら話ははやいぞ!学園長、各国の代表をあつめてすぐに対策会議じゃ!

 このまま、また世界を戦争に巻き込むわけにはいかないのじゃからな。行くぞ!!アリカ、ニナ!」

「はい!」

「うん!」





 勇気が願い〜かなえるのよ



 DO YOU MY BEST



 負けないように進みましょう〜♪







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