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舞乙337氏第06話

Last-modified: 2008-12-12 (金) 10:04:09

第六話 二つの世界を統べるもの

「お姉ちゃん!私も今日からザフト軍の一員だよ?」
「そんなはしゃがないの。だいたいあんたはオペレーターでしょ?常に冷静に報告してなきゃダメじゃない」
「はいはーい。もう!少しは喜んでよ〜?」
「あんたが戦場に出てこられたら心配でしょうがないよ、私は」
「もー、私よりお姉ちゃんのほうがMSパイロットなんだから危ないんだからね」
「なーにいってんのよ。私は赤服なんだから!」

「…無理はしないでね」
「あんたもね」

 私は戦った。だって私の艦にはメイリンがいるから…。あの子を守らなきゃいけない。そのために私は強くなりたかった。いつも冷静だったけど…本当は、すごく怖くて。あなたを失うのが怖くてしょうがなかった。

『アスラン・ザラ、メイリン・ホークが基地を脱走。これをシン・アスカ、レイ・ザ・バレルが追跡、撃破しました』

「うそ…メイリンが、アスランと一緒に…嘘、うそぉぉ!!!」

『まさか裏切るとは…。ルナマリア・ホーク、反逆者メイリン・ホークのことに関して何か知っていることがあれば話してもらおう』

「反逆者!?違います!!メイリンはそんなことできる子じゃ…」

『どうだか…姉妹だからこそかばうのはわかるが…』
『ならアスランに拉致されたか』
『いや、それこそ恋仲であった可能性も考えられますな』

「やめて…やめてぇ!!」

 耳をふさいでも聞こえてきた。私の妹を反逆者扱いし、私に妹のことを話させようとしている。妹は反逆者でありアスランと通じている。そういわせようとしていた。そんなこと絶対にない。私は言い切る。私まで敵と内通しているのではないか?そうまで言われた。

「ルナ!ルナ!!しっかりしろ!」
「…シン?」
「俺が…お前を守るから。もう誰も、傷つけさせはしないから」
「シン…私…」

 シンは優しかった。私の妹を撃ったのは彼…でも憎むべき相手は彼じゃない。それに誰かを憎んだとしてもメイリンは…もう帰っては来ない。シンは私を支えてくれた。精神が壊れかけた私を支え、いつもどおりの私を艦のみんなの前ではいさせてくれた。

『お前じゃ…ルナマリアを守ることなんか出来ない!』
「あ、アスラン!?」
『死ねぇ!!!』
「うわぁあああ!!」

 どうして?どうして私の前から大切な人が消えていくの?
 私が何かをしたから?
 私が弱いから?弱いからみんなを失ってしまうの?
 私ばかり…どうして!!

 こんな世界っ!!全部…なくして!!

『お姉ちゃん!!』

「?」

 目を開けるルナマリア。
 そこは先ほどのアルタイの城内…。ぼやけた視線が定まるとナギ大公がテレビを見ている。後姿があった
「私…」
「…おっと!意識が戻ったみたいだね?」
 ナギはテレビから視線を外してルナマリアのほうを見る。ルナマリアは頭を抑えて、意識を失っている間のことを思い出そうとしたが、思い出せない。
「君の知っている艦、沈んじゃったみたいだよ」
「え?」
 ルナマリアはテレビを見る。そこには巨大なクレーターと、数隻の各国の条約機構軍の艦が撃沈している姿が見えた。まるで戦闘でもあったかのような光景。
「…なにがあったの?」
「覚えてないのかい?」
「え?」
「…いや、なんでもないさ。なんでもね」
 ナギは笑みを浮かべたままテレビを消す。

 エアリーズ沖

「負傷者の搬送を急がせてください!被害の確認を…。残った艦で戦闘隊形に移行。部隊を整えてください」
 サラがあたりに指示を出しながら、状況を確認する。
 異邦人の艦があった場所はあとかたもなく吹き飛ばされ、もはや形も残っていない。
「…学園長、敵のGEMの反応は?」
 GEM通信…ガルデローベの地下研究所にいるナツキに連絡する。
『サラか?一体なにがあった?』
「たぶんとおもわれますが、ナオとマーヤ・ブライスと戦闘したと思われるオトメが現われ、異邦人艦を撃破しました。こちら側の負傷者も多数です」
『…敵のGEMはこちらでも確認しているが…アルタイから動いていない』
「そんなバカな!?ならあれはなんだったんです?」
『詳しいことはこちらでも確認してみないとわからない』
「…わかりました。こちらは事態の沈静化をはかり次第、随時撤収させます」
『すまない』

 ガルデローベ

「…さっきの戦闘でのデータはどうなっている?」
 ナツキはモニター画面にうつる、先ほどの映像を見る。その黒きオーラを身に纏ったオトメの強烈な一撃が戦艦を一撃の下で消し去る。
「今解析中よ…少し時間がかかるわ」
 ヨウコ・ヘレネ技術長がコンピューターに手をかけながら告げる。
「にしても変どすな。ラウラはんとカーラはんの攻撃、ぜんぜんきいてませんなぁ。というよりも…これは」
 シズルが画面を見つめながらつぶやく。
「…フォログラフね」
 ガル教授の言葉に振り返るナツキ。
「実体ではないというのか?…これがあのローブの能力」
「…以前のヴィント事変でのニナさんが起こしたハルモニウムの竜巻。あれも巨大なニナさんの幻影を用いた攻撃によるものだった。もしあのGEMにハルモニウムの影響がでているのならば、説明がつくわ」
 ヴィント事変で、ニナ・ウォンはその強大な漆黒の金剛石とハルモニウムの力を用いて各国を進撃、大損害を与えた。それは巨大な自分の分身と竜巻による攻撃。その前に各国の防衛軍はなすすべなく大敗した。
 それが…再び今回起きたということになるのか。
 あのGEMにもそれほどの力が…。
「学園長!エアリーズから連絡です」
「まわしてくれ」
 ナツキは受話器を受け取り、画面にうつるユキノ・クリサントを見る。今回の事件での大きな被害をこうむったのは紛れも無い彼女であることは確かだ。
「学園長、再び緊急の会議を開くことをお願いしたいのですが」
「わかっております。ユキノ大統領。ですが今すぐにとなると、各国の被害がはっきりされていませんし。敵の戦力図も定かではありません」
「そのことに関しては問題は解決しています」
 ユキノの言葉にナツキはよくわからないでいた。

「学園長!!」
 それはニナ・ウォンだ。
「では会議のほうについては後ほど連絡します」
『わかりました』
 ユキノとの通信をきり、ニナのほうを見るナツキ。
「あの攻撃方法…もしかして以前の私のような」
「…おそらくは。あのオトメが使っているGEMはハルモニウムと一度接触しているものです。元は白翼の月長石といわれたGEMでした。戦争によって絶望と憎悪に満ちたのでしょう」
 ナツキは忌々しげに告げる。戦争はもう起こしてはいけない…そうおもっていたというのに。人がこうして争うことはとめられないものなのだろうか。
「…彼女を説得する方法はありませんか?」
「可能性が無いわけではないが、あのオトメはガルデローベに登録されていない。だから彼女がどこの何者なのか、なぜ彼女がオトメなのかわからないんだ」
「異邦人…」
「なんだと?異邦人がオトメになったというのか?」
「ですが、エアルの人間でそれは不可能だったはずです。ならば、ここ数日で世界を激変させている存在、異邦人こそがその技術をもっているとしか」
 ニナの言葉に考えるナツキ。確かに可能性としてみればそれしかない。だがもしそういうことになれば、異邦人の技術は想像以上ということになる。
「やっぱりアルタイの状況、つかまないとあきませんな」
「シズル…」
 シズルは笑顔で微笑みナツキを見つめ
「サラはんと一緒に行かせてもらいます」
 ナツキはしばらく考えていたが、どうしてもそうするしか方法が無いということに拳を強く握り締め、己の不甲斐なさをかんじる。
「ナツキ…えぇんよ。うちはナツキのためやったらなんでもしますさかい」
 シズルはナツキを見つめたまま優しく微笑んでいる。いつも学生に見せる笑顔とは違い笑顔。きっと学園長にしか見せないんだろうな。ニナはそうおもった。
「…すまない。シズル。だが、相手はナオとマーヤを打ち破った奴らだ。戦闘は極力控え、情報だけを集めてきて欲しい」
「わかりました。せやったら早速準備せなあきませんな。ニナさん。あんたを連れてきた人、コンタクトとれます?」
「は、はい…ヴィントに今はいると思いますけど」
「なら案内頼めます?」
 ニナは頷く。
「…学園長、頭領カラ連絡ツイタネ!」
 次はなんだといわんばかりにナツキはガル教授の声のほうを見る。頭領…黒い谷、アスワドの実質的指導者の役割を果たしている人物。現在はヴィントブルームとは同盟関係にあたる。
「ミドリからか!」
「至急、ミセタイ物ガアルラシイヨ!」
「…わかった。そっちに関しては教授、頼めるか?」
「OK!」
 事態を把握しつつ、だんだん自分たちがやるべきことを確認していくナツキ。ただイタヅラに時間をすごしてはいけない。自分たちのやれることをやらなくてはいけないのだ。

ヴィントブルーム城(通称ひまわり城)
「それでなんでアリカが必要なんじゃ!!」
 怒鳴るマシロにガル教授はクールにいや顔が無い以上、どういった感じで言っているのかは想像でお任せするしかないのだが。
「ヴィントブルームトノ同盟関係ノタメニ、頭領ト会ウナラ、ソッチノ代表者ト一緒ジャナキャ意味ガナイイッテルネ」
「もうよい!アリカ、いって話を聞いて参れ!」
「いいの?もしマシロちゃんになにかあったら」
「ニナもおるし、お前も久しぶりに頭領には会いたいじゃろ?」
「うん!わかった!じゃマイスターアリカ!いってきます!」

アルタイ…黒曜宮

 ナギは玉座につき、肩肘をついて報告を聞いている。
「…それで彼らからの答えは?」
「解析は完了し、現在製造に着手したとのことです」
「間に合えばいいんだけどね、あーあと彼女たちのほうはどうだい?」
「はい、そのことに関しては…」
 その報告の最中、タリア・グラティスがはいってくる。
「貴様!勝手に!」
 兵士がタリアを取り囲む。
「…かまわないよ」
 ナギは兵士たちをどかし、タリアを見る。
「どうしたんだい?艦長さん。補給は終了したみたいだし…時期がくれば君たちを元の世界に返すことも出来るんだから」
「…アークエンジェル、あれを破壊した理由を教えてもらいましょう」
「あー、そのこと?それは僕の知ったことじゃないよ。この世界も一枚岩じゃないからね。彼らは他の国にとって見れば邪魔者だったのかもしれないね。科学技術の開放には消極的だった見たいだし」
 まるで人事のように話すナギ。
「…私たちはこれ以上、あなたたちに利用されるのはごめんです。一刻も早く帰還させていただくか、それが出来なければ我々はこれ以後単独行動をとらせてもらいます」
 タリアが出した答え…。目の前で自分たちの知っている人間が無残にも殺害されるのはたとえ敵であってもやはり辛いものだ.この世界では少なくとも同じ同胞であり、仲間である。タリアはそう考えていたからである。
「それは心外だね。僕らだけが利用してるって…」
「…」
「…うまくいけば君たちの世界も丸くおさめてあげようというのに」
 ナギはタリアを見つめ、言葉を続ける。

「君たちも見ただろう?あのオトメの力。戦艦を一撃で沈めてしまうあの力。彼女は特別だよ。君たちの世界がいかに科学が発達しているかは知らないけど、僕の見る限りオトメには勝てない。あのオトメの力を使えば君たちの世界も平和になると思うんだけどね」

 確かにオトメの力は強大だ。あのアークエンジェル、戦闘態勢にはいっていなかったとはいえ、一撃で葬ってしまう。確かにMSでは考えられない力だ。だが過ぎた力はやがて世界のバランスを崩す。戦争は力によって解決されるべきものではない。それでは地球連合軍と変わらない。そしてデュランダルも望みはしないだろう。
「…結構です、私たちの世界は私たちで守ります」
「立派な艦長さんだね。でも困るんだよな〜今、君たちに抜けられちゃうと」
「私たちはあなた方の戦争に加担させられる義務はありません!」
 タリアは銃を取り出すとそれをナギに向ける。
「そんなことをして、僕になにかあったらってわかってやってるのかな?」
「撃ちたくはない。だが…これ以上、私たちのクルーを危険に晒すようなら私は!」
「貴様ぁ!」
 ナギの護衛の一人が銃を抜き、タリアを狙うが、タリアの銃が先に護衛を撃つ。グラリと身体をよろめき倒れる護衛。タリアはナギに銃口を向けたまま
「一緒にきていただきます」
「…しょうがないな。僕の負けだよ。艦長さん…」
 ナギは両手を挙げて玉座から立ち上がる。だがその瞬間、後ろから強烈な一撃がタリアを襲った。意識を失いそのまま前のめりに倒れるタリア。
「おっそいなー。危ういところだったじゃない」
 ナギは倒れたタリアを見下ろしながらやってきたその人物を見る。
「まぁいいや。君たちにはこの後、大いに役立ってもらうからよろしく頼むよ」
 コクリと頷くその影…。巨大なクローが光に反射して、まぶしく輝く。

「…艦長さん、僕は君たちの世界の技術にとても興味を持ってさ。双方の世界の解放のために協力してよ」

 ナギは薄ら笑いを浮かべながらそのまま玉座を後にする。ナギが玉座から出て黒曜宮の外を見るとそこには巨大なMSが数機配備され、アルタイの艦隊が動き出している。その大きさはミネルバに匹敵する。そしてミネルバには既にアルタイの大きな旗が吹雪の中、大きくなびいている。

アスワド…黒い谷

「…もう少しで私の知り合いが来る。彼女たちならお前のことたくせるだろう」
 アスワドの頭領、ミドリは部屋の中、ベットに座る一人の黒髪の男を見る。
「…」
 疲れきった表情の男は何も口にはしない。ミドリはそのまま部屋を出て、自分たちの住処である洞窟の外に砂まみれのまま、放置されている巨大な人型人形を見る。それはかつて『運命を切り裂く』と名づけられたMSであることを彼女は知らない。