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舞乙337氏第07話

Last-modified: 2008-12-12 (金) 10:05:06

第七話 終焉への始まり

 ヴィントブルーム、ひまわり城

「…世界各国は浮き足立ってしまっているみたいじゃな」
「ガルデローベでも正確な情報収集のためにアルタイに5柱が派遣されたみたいです。それ以外の国でもアルタイに宣戦布告し、軍を進めている国もあるようです」
 マシロは城の窓から地平線に落ちかける夕日を見つめる。綺麗なだけに今のこの状況が逆に信じられない。まるですべてが夢のよう…。
「アリカは大丈夫でしょうか?」
「アスワドまでそこまではかからないじゃろう。それよりもナギが軍隊を持ち、このまま黙っているとはおもえん。狙うのならば…やはり」
「…」
 ヴィント事変の際に狙われた場所…ガルデローベ、真祖のある場所。オトメシステムの中枢の占領があんな簡単に行われるとは思わなかった。勿論、それにはハルモニウムというものもあるのだろうが。
「ナギの狙いはオトメシズテムの崩壊、ならば狙うはここしかないじゃろ」
 ナツキはその後の対策として、いくつか講じている様だが…。異邦人の持つ超科学に対抗できるかは定かではない。
誰もが笑顔になれる国…それがいつになるのか、だが信じねばならない。アリカのように夢を諦めず進んでいくオトメがいる限り、その主である自分も諦めてはいけないのだから。
「陛下!フロリンス国王が艦隊の国境の入国許可を」
「なんじゃと!!?」

アルタイ
 既にかなりの艦隊が動き出していた、ミネルバは先頭、既に後続の部隊を置き去り、かなりのスピードをだしながら目的地にへと向かう。
「…いい席だね」
 艦長席に座るナギはその席から見る光景をまじまじと観察していた。隣にいるのは副長のアーサーである。彼らはなんの抵抗も出来ず彼の指揮下に入らざるをえなかった。タリア艦長は背中に重症を負い、今は艦内のベットで眠っている。
 険しい表情で前を見つめるルナマリア。彼女の服は黒いアルタイ国旗の入ったもの。それを周りのスタッフは呆然と眺めている。ルナマリアはアルタイに下りた、誰もがそう思うだろう。事実、冷静であるレイもそうかんじてしまっていた。
『君が言うことを聞かないと、元の世界には帰れない…わかってるよね』
 ナギの言葉にルナマリアは逆らえなかった。元の世界に帰らないといけない
 かえって私は…仇を撃たないといけないんだから。
 私には出来る…このローブの力があれば。
「目的地まであと30分ほどです」
「久しぶりだね…ヴィントブルーム、そしてガルデローベ」

アスワド

「ツイタネ。アリカ」
 ガル教授のスレイブに乗せてもらい降り立つアリカ。久しぶりのその地はアリカにとっては懐かし場所。少しの間とはいえ、ここにはすごくお世話になった場所なのだから。ガル教授はアリカを置いていくとすぐに仕事のためにガルデローベにへと戻る。アリカはアスワドの洞窟内にへと向かう。
「あ、アリンコだ!」
「アリンコ〜」
「アリンコいうな〜!!」
 だからこそ彼女が来ると皆が集まってくる。彼女の笑顔はこの場所に元気を与える。それはアリカにとってもアスワドにとってもそうだった。
「…かわらないな。お前は」
「頭領!」
 アリカの前に歩み寄るその赤みのかかった女性…ミドリは砂誇りから身を覆うように黒いマントを身につけていた。呪われた地と称され忌み嫌われてきた彼女たち。だがそれも過去のものになっていくのかもしれない。マシロ女王とアリカがいてくれれば。
「…お前に見せたい奴がいる」
「はい?」
 ミドリはアリカをつれて洞窟内の一室に連れて行く。そこにいたのは黒髪の一人の男子。身体を起こし、どこか遠くを見ている。それはかつてニナ・ウォンと戦い、親友であるエルス・ティンホーを失ったときの自分の姿。
「…彼は?」
「一週間前ほどに巨大な機械人形と一緒にここにおちてきた。本来ならこの地に近づくものは皆、殺すところだが、あの機械人形には我ら先祖の技術がある。解析や事情を聞くために生かしておくことにした。だが、ずっとこの調子でな。それに最近は異邦人といわれているこいつの仲間とおもうが、そいつらのせいで世界が動いている。何か役に立てばいいと思ったんだが」
「私に?」
「お前なら出来るだろう。かつて同じ思いをしたお前になら…。この男にお前のような前向きさがあればの話だが。できるか?」
「やってみます!」
「頼んだ。代わりといってはあれだがヴィントにはラドを送る。好きに使ってくれ」
「いいんですか?」
「我らヴィントとの手を結びし者、義には義をもって返すのが我らアスワドのおきてだ」
 ミドリはそういうとアリカを置いていってしまう。アリカはおそるおそる部屋の中にへと入っていく。男子と二人っきりなんていうのはアリカにとっては未知の領域だ。だがここで緊張などしている時間は無い。
「…あ、私はアリカ・ユメミヤ。えーっとヴィントブルームのマシロちゃんの、じゃなかったマシロ女王のオトメをしてるの。あ、オトメってわからないかな・・えーっとオトメっていうのは・・・」
 こうしてアリカの自己紹介がはじまることになる。

ガルデローベ
 フロリンス率いる艦隊がアルタイの艦隊が向かう先であろうヴィントブルームに侵入するという状況になり、マシロ女王が説得をしているという情報がはいってきていた。フロリンス王は激怒しており、ヴィント事変以上、竜王戦争を起こしかねない状況である。
「サラとシズルは?」
 ナツキはモニター画面を見ながらヨウコに聞く。
「アルタイにはいったみたい」
「…無理はさせるな。ナオやマーヤたちの二の舞には…」
「ひっどーい。まるで私たちは死人みたいじゃない?」
 その声に振り返るナツキたち。そこに立つのは赤髪、そして露出の高いマイスター服であるジュリエット・ナオ・チャン。アルタイにての防衛任務中に謎のオトメとの戦闘、そして行方不明となっていた彼女が今ここに。
「ナオ!お前無事だったのか!?」
 ナツキは思わず大声を上げる。
「あったりまえでしょ?そんな簡単にくたばるかっつーの」
「連絡もなしにお前は、私がどれだけ心配したことか」
 ナツキは怒りながらもどこか安堵した表情でナオを出迎える。イリーナは画面を見ながらなぜ、GEMに反応が無かったのか不思議に感じていた。

アルタイ
 5柱のローブを身に纏うシズルとサラはとおり行くアルタイの艦隊を目にしていた。その数はヴィント事変の非ではない。空を飛ぶ戦艦…あれがきっとナギのいるであろう艦であろう。
「…どうしますか?シズルお姉さま」
「本当なら奇襲でもかけたいとこなんどすけど、相手のオトメがなんなのかわからん以上、勝手な行動はできへんからね」
 シズルとサラは岩山から見つめるアルタイ艦隊を見つめる。車列の向こうからは巨大な機械人形までもが見当たられる。なかなかの戦力。だがナギが正攻法でくるとはおもえない。正攻法でいけばヴィントブルームや条約機構軍からの総攻撃による反撃にあいいくらこの戦力といえど敗北は必至。ならば再びあの呪われたオトメを使うか。いや例え使ったとしても…ある程度、原理の予想はつく。それともまだあのオトメの力には奥の手が。
「…深読みのしすぎではありません?」
「かもしれませんけど。それだけ用心でも損はないどす」
 振りかえるシズル。サラはシズルが振り返った先を見る。そこにはマーヤ・ブライスの姿が。
「ようやく見つけた。…えらい目にあったよ」
 マーヤは大きく息をつきながらマイスター服の姿でサラとシズルのほうにへと近づく。
「マーヤ!」
 サラはマーヤにへと近づこうとするが、そのサラの前に手を出すシズル。
「ホンマ久しぶりどすな。まるで何事もなかったよう」
「…やっぱりあんたには通用しないかシズル?」
 マーヤはマイスター服を脱ぎ、既にその下に着ていたローブで攻撃を仕掛ける。
「マーヤ!?」
 サラの驚きが一瞬、回避を遅らせた。サラは岩肌に激突してしまう。それを狙うマーヤ。しかしそのマーヤも彼女の前を通り抜けたシズルのエレメントの前に後ろに下がる・
「危ない危ない…」
 マーヤはクスクスと笑いながらエレメントであるマラカスを出す。
「マーヤ!これは一体…しっかりなさい!」
「…なにかやられはったみたいやね」
「私はただの足止め。今頃ガルデローベは煙を出していることだろうね」
 マーヤの瞳の色が赤く輝く。シズルはGEM通信をつかい連絡をとる。
「学園長?聞こえます?」
『…』
「ナツキ、返事をし!」

 ガルデローベ研究所は、炎に包まれていた。無残にも倒れているヨウコ、そしてイリーナ。ナツキもまた炎の中、頭から血を流しその場に倒れている。扉を開けてその場から出て行くローブを纏うナオの姿。
「ミッション1クリア…次の作戦に移る」
 ナオはクローを天井にかかげ吹き飛ばす。崩落する研究室。ナオは真祖の間に向かう。

 ミネルバ艦内
 ナギは作戦が無事に進んでいることを確認すると隣にいるルナマリアを見つめる。
「…じゃ、次はじめようか?ルナマリアちゃん」
「…」
 ルナマリアは何か言いたげな表情でナギを見る。ナギはそのことを察するように
「君たちを快く思わない連中がいるということはここにいる誰もが知っていることでしょ?元の世界に帰りたいならば、障害は取り除かないと…帰りたいんでしょ?」
「…認証、してください」
「運命の黝廉石ルナマリア・ホーク、我が名において汝の力を解放する…」
 ナギはルナマリアの耳にあるGEM
「マテリアライズ…」
 赤黒く輝くルナマリアの姿は黒きオーラに包まれるようにしてその姿を変える。露出の高い騎士といった感じだ。その様子を艦内のクルーは呆然と見ている。こんなすぐ傍で見るのははじめてだ
「…」
 ルナマリアから湧き上がる赤黒きオーラ…その凄まじい力こそがこのローブの力。漆黒の金剛石には劣るものも、普通のオトメでは歯が立たないであろう。
「複数の艦艇を確認、メインモニターに出します」
 そこに映し出された映像はフロリンスの艦隊である。どうやらヴィントに向かうであろうアルタイ軍の先回りとして向かってきていたのだろう。混乱する各国状況の中、感情だけに支配されたおろかな国。ナギは目を閉じ、膝を組む。
「主砲発射」
「…」
 アーサーがナギのほうを見る。タンホイザーのことであろう。あの威力がわからないわけではないはず。それを初めて指揮する人間が躊躇も迷いも無く言えるものか。
「聞こえなかったのかい?」
「…タンホイザー発射準備」
「僕の力が健在であることをすべての国々に教えてあげないと…少しは考え方もかわるかもしれないしね」
 ミネルバ先端にあるハッチが開かれその巨大な主砲が現われる。陽電子砲タンホイザー、ミネルバにおける全攻撃武器の中で最大の破壊力を誇る。
「エネルギー充填完了」
「…発射」
 ナギの一声とともにその閃光が前方のフロリンス艦隊にへと突き刺さる。巨大な光がうまれすべてを飲み込んだ。

「な、なんじゃあれは…」
 マシロ女王はその昼間に輝く巨大な輝きに驚きを隠しきれない。遠い砂漠の向こうからはっきりとわかるその巨大な光からもその一撃がいかに恐ろしい破壊力を持っているかは言わずもがなである。
「マシロ様、ここは危険です。どこか安全なところに」
「ナギの奴め」
 苦々しくいうマシロ。ニナはマシロとともにその部屋をでようとする。だが一つの殺気にニナはマシロを抱きかかえその扉から離れた。
 打ち破られる扉。そこにたつのは5柱、ジュリエット・ナオ・チャン。目の光は無くマイスターローブの姿でそこに立っている。
「ナオ…お姉さま」
「マシロ女王を渡してもらうよ」
「…そんな」
「邪魔立てするなら、遠慮はしない」
 ナオはクローから赤いワイヤーのようなものを打ち出す。ニナはマシロを抱きかかえたまま窓から飛び降りる。
「あ、あれは確か…」
 マシロはニナに問いかける。ニナはナオの変わり果てた姿に悔しさが沸く。自分を守ってくれた彼女と戦えるのか…私に出来るのか。ニナはそのままマシロを抱えたまま、城内の庭をかける。
「ニナ!認証じゃ」
 マシロは抱きかかえられたままニナに告げる。
「…」
「どうした!ニナ!お前は決めたのじゃろう!自分のなすべきことをなすと!」
「私は…」
「答えよ、我がオトメ!ニナ・ウォン」
 ニナの足が止まる。そして肩膝をつきマシロの前に座る。
「…申し訳ありません。マシロ様…私に認証を」
「それがそなたの意思か?」
「はい、命令でもなにもない。私の意志です」
 マシロは笑顔で頷く。
「海神の水玉を持つ我がオトメ…ニナ・ウォンよ。我が名において汝の力を解放する」
 GEMに口づけするマシロ。
 巨大な煙とともにナオのクローから再び赤いワイヤーが飛んでくる。
「マテリアライズ!!」
 水面に映し出されたオトメたる自分とかさなり、姿を変えるニナ。白と青、そして緑の色が特徴的な、露出の高いローブ、ニナは向かってくるそのワイヤーをエレメントである大太刀で弾き飛ばす。
「…へぇ、やるじゃない。でも私と戦って勝てるとでも思ってるの?」
 ナオはニナを見つめながら余裕に満ちた笑みをこぼす。
「私は自分の意思で…ナオお姉さま、あなたをとめて見せます!」

 ヴィント周辺に現われる赤黒きオーラ、それこそルナマリア・ホーク、その人であるルナマリアはエレメントである銃剣をヴィントの市内にあり、高い丘の上にあるガルデローベ、真祖の元にその矛先を向けた。矛先からはエネルギーが収束されていく。
「…これもすべて私たちの世界にへと帰るために」
「はぁー!!」
 今まさに発射するという瞬間、下から蹴り飛ばされたルナマリアは発射の角度がぶれる。ルナマリアはその自分を襲ったものを見る。それは伝説の悲劇のオトメもとい、猫神ラーメン屋の店主、鴇羽舞衣。
「ナツキったら自分にもしものときは頼むだなんて…簡単にいってくれるわよ」
「…オトメ」
 ルナマリアはオトメ同士の戦いは始めてである。しかも相手はかなり手馴れている感じ。舞衣はそのオーラに身を包むオトメを見る。
「見ない顔ね。あなたは誰?」
「私は…もとの世界にかえるの!!邪魔をしないで!!」
 ルナマリアはそういうと巨大なその銃剣をふりまわし舞衣を近づけないようにする。舞衣はその巨大な銃剣を前に間合いにはいれない。
「あなた、まさか別の世界からやってきた人!?」
「私はこの力ですべてをやり直す。あの世界で失ったものを取り戻すの!!その邪魔は誰にもさせない」
 赤黒きオーラがたちこめる。舞衣は間合いをとりはなれる。ルナマリアは銃剣を握り、舞衣に狙いを定める。
「私の邪魔は誰にもさせない…」
「あなたが元の世界に帰るのなら協力するわ!だからこんなことやめて!」
「信じられるものか!!」

 アスワド
「…えーっとだから、オトメっていうのはすごい力を持っていて…」
「うるさい」
「え?」
 ようやっと言葉に答えた男子はそういってアリカを見る。
「もう俺のことなんかほうっておいてくれ。俺は…なんにもできないんだ。誰にも勝てない。誰も守れない。誰も救えない…」
 シンはうつむきつぶやく。
「そんなことないよ!!あなたにはあなたの出来ることがあるんでしょ!お願い!みんなが困ってるの。協力して!」
 アリカはシンに抱きつかんばかりの勢いで近づく。
 シンにはそれがかつて彼が失った妹、マユの姿と重なる。
「マユ?」
「???」
 その言葉にアリカはなにをいっているのかわからない。シンはまるで妹に励まされているような気がした。それがたとえ違う人間だとしても、シンにとってそれは何よりも大きい励ましだ。
「…協力したくても俺のMS、砂に埋まっちゃってるし」
「そんなの!みんなでなんとかするもん!」
「お、おい…」
 そういうとアリカは部屋から出て行く。シンは彼女のそのせいいっぱいの前向きさがとてもまぶしく見えた。もうどうでもよくなっていたはずなのに、なぜだろう。俺にはまだやらなくてはいけないことがあるみたいだ。こうなればヤケだ。俺を必要としてくれる奴がいるならば、俺は…。