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舞乙337氏第08話

Last-modified: 2008-12-12 (金) 10:05:55

第8話 黒い波動〜戦士再び〜

 陽はもう既に落ちているというのに、ヴィント周辺では赤い炎の光が満ちている。フロリンス艦隊の炎、ガルデローベの地下研究所での火災、そして黒い谷周辺で行われているマイスター舞衣、そしてルナマリア・ホークの戦いの影響である。
 その様子を傍観するように戦艦ミネルバはヴィントブルームに少しずつ進んでいく。それは勿論、先ほどフロリンス艦隊を壊滅させたタンホイザーという名の破壊兵器をガルデローベの射程にあわせるため。それかつてヴィント事変において出来なかったことである。
「…あなたは人間の心理を無視しオトメシステムなどという無茶苦茶なシステムを作り上げた罪人だ。だからここで永遠の眠りについてもらおうか。そして僕この世界に真の科学力をもたらすのさ」
 ナギは艦長席にふんぞり返りながらつぶやく。タンホイザーの標準が向けられていく。
「エネルギー充填開始」
「前方、巨大なエネルギー反応確認、小型ですが…」
 ナギはメインモニターにまわされるその姿を見て目を細める。かつて自分の作戦をすべて無駄にしたその一番の原因。
「…アリカがいない以上、今は私が全力であなた方を止めて見せます。すべてのハルモニウムの兵器は消滅させなければならないのです」
 そういうと青い帽子とマントを脱ぎ捨てた水色の髪と冷めた瞳で頭上にあるその巨大な戦艦を見つめるミユ。
「…一番から三番までの拘束式を解除。ミスリルドレス、モード…スカーレッド」
 ミユはそのまま戦艦に向かって脚部からのミサイル、そして手をガトリングにへと変えて攻撃を仕掛ける。
「機銃で応戦、しょうがない…機械人形には機械人形だ」
 格納庫のMS、レジェンドで既にコクピットに乗り込んでいたレイ・ザ・バレルはそのGOサインを聞き、操縦桿を握る。
 このような異世界で自分は何をしているのか、そんなことはもはやどうでもいい。だがアークエンジェルが目の前で葬られたことはあの映像を見る限りは事実。それがルナマリアであったとしてもこれでラウ・ル・クルーゼの仇は討てた。自分で討ちたかったところだが。だが…目的は達した今度は元の世界に帰り、議長とともに真の世界を見ること。そのためなら異世界の住人の命令であろうと効いてみせる。
「レイ・ザ・バレルだ。レジェンド…出る!」
 飛び出していくレジェンドは上空からミユに向けてバルカンを照射する。ミユはそれを走りながらなんなく回避する。だが対空攻撃が少ないミユにはこうして数少ないガトリングなどを撃つほか術がない。
「大公。増援部隊到着しました」
 ミネルバの後方から現われるその艦隊。そして巨大な影。
「まさか…あれは!?」
 アーサーがその影を見て驚く。それはアーサーだけではないほかのクルーもその姿に驚き震える。
 巨大なMA、円盤のようなものが頭部につきそしてその円盤状のものから主砲を思われる二個の砲門がついている。そう、それはかつて地球連合が戦略レベルの兵器として実践に投入した『デストロイガンダム』
「君たちの設計図からつくっちゃった。まぁ作り方はジュヴァルツから聞いてよ」
 ナギはその黒い巨大なMSを見ながらミネルバの前方に進み、二個の砲門から光の閃光が飛び出すのを見つめる。光の閃光はヴィントブルームの町並みスレスレをかすめ、後方に再び巨大な光の玉をつくりあげる。それは夜明けのようだ。
「すごいじゃん。アハハハ…オトメなんかなくったってこれさえあれば誰でもオトメ以上の力を出すことが出来る。狂った世界とはこれでお別れだよ」
 舞衣とルナマリアもその状況を見ていた。ルナマリアの銃剣をはじき向きを変え、なんとか攻撃をしのぐ舞衣。
「あなたにはわからないの!あんなことをしている人の仲間にいて、何も感じないの!?」
「私にはもう何も無い!!あなたになんかにわからない!!」
 ルナマリアは舞衣をローブの紐で吹き飛ばす。舞衣はそのまま黒い谷に叩きつけられる。
ルナマリアは追撃するために黒い谷に急降下していく。
「はぁー!!」
 そのルナマリアの横から錫杖のようなものでルナマリアの身体は宙にうく。
「大丈夫か、舞衣」
 それは黒く二つ分けられた髪が特徴的な猫神様ことミコト。
「ミコト!」
「…あいつの力は危険なものだ。次元と時間を越えるもの」
「私の邪魔をするな!!」
 ルナマリアの体から湧き上がる巨大なオーラ。舞衣とミコトはその姿に、ルナマリアの光を失った瞳から涙が流れるを見た。

「黒い谷で大規模爆発…」
 ナギは報告を聞きながら寝そべっている。
「戦艦をヴィント城に向け」
 そのとき銃声が艦内を響き渡る。
 そこにいるのはふらつきながらも銃を握り締めているタリア・グラティスの姿、制服をなんとか着た格好で壁にもたれながら銃を艦長席に座っているナギにへと向ける。
「艦長の席を返してもらいます」
「艦長さん、元気そうで何よりだね」
 タリアに向けて銃を向けるアルタイの近衛兵。だがそれも後ろからアーサー率いるメンバーによって抑えられてしまう。そのまま倒される近衛兵。
「動くな!ナギ・ダイ・アルタイ!!」
 タリアは銃を抜こうといたナギに一喝する。驚き言葉を失うナギ。
「お前の行ったこと断じて許さない」
「そうかい?もう少しで君たちを元の世界に帰そうというのに」
「…世界に帰すといいながら、私たちの世界までもを狙おうとするつもりであったことわかっている!」
 その言葉にクルーの誰もが視線をナギに向ける。ナギは大きく息をついて
「なるべくならあなたは手にかけたくなかったんだけどね」
 艦首のガラスが吹き飛ぶ。タリアはそのガラスのほうを見る。そこにはもうルナマリアの姿をした黒いものがそこにいた。
「ルナマリア…」
 つぶやくタリア。そのタリアの体が大きくゆれ床に倒れる。ナギは艦長席から立ち上がり銃を握っている。そしてその銃はアーサーや他のクルーにも放たれた。ルナマリアの登場でそっちに皆が視線を移してしまったため、誰も反撃が出来なかったのだ。
「さ、戦艦をヴィントにへと向けようか…待っていてね、マシロちゃん」

ガルデローベではナオとニナが死闘を繰り広げていた。城内でナオのクローをかわしながら防戦一方のニナ。
「なんだい?私を助けるんじゃなかったのかい?」
「くぅ!」
 ナオのクローを避けることで精一杯のニナだが、飛び出す赤いワイヤーがニナの肩を貫く。
「あぁ!!」
 ニナはその場でうずくまる。
「もう終わり?もっとたのしませてよね」
「いえ…まだです。まだ私は…」
 ニナは身体を震わせながら立ち上がる。顔を上げ目の前にいるナオを見る。
「私はエルスやアリカたちに誓いました。もう二度と誰も悲しませない。誰も…失うわないと。だからナオ先輩を救うまで私は絶対に諦めない!」
「バカだね、ホント。そんな意地張らずにやればいいじゃない?」
「え?」
 ナオは苦痛の表情を浮かべながらニナに言う。
「ニナ…私に後輩を殺させる真似なんか…させないでよね」
「ナオ先輩!!」
「…ニナ。ほんとあんた変わったね…昔じゃ躊躇や迷いはなかったはずなのに」
 ナオはクローを壁に突き刺し自ら動きを封じる。
「…やりな」
 ナオは小さな声で告げる。
「ダメです!!ナオ先輩!!諦めるなんて…」
 ニナは顔を横に振る。ナオ先輩はなんだかんだで私のことを気にかけてくれていたこと、知っていた。それが最初はイヤだったけど、でも今は…それがありがたく受け取れる。この心境の変化もアリカのおかげなのかもしれない。ナオ先輩は私にとって大切な先輩なのだ。それを手にかけることなどできない。
「勝手に勘違いすんな!気を失わせるだけでいいから…はやく…」
 ナオは顔をあげてニナを見る。汗をかいたその表情からナオの限界がうかがい知れる。
「は、はい」
 ニナは海神のエレメントをナオに向ける。
「いきます!!」
 海神のローブが輝き、ナオを吹き飛ばす。城内の一部が爆風とともに吹き飛ぶ。
「ニナ!」
 ニナのダメージを受け、肩を抑えながらやってくるマシロ。
「マシロ様。申し訳ありません」
「よい。ナオは?」
 ニナは壁に倒れ気を失っているナオを見る。
「大丈夫です。それよりもはやく各国に救援の通達を…」
「もうしてまいったわ!」
「では…」
「ナギめ、ここからが反撃開始じゃ!!」

 城内の爆発はナギの戦艦にも見えた。
持っているラジコンのコントローラーのようなものの反応が消える。
「…ナオちゃんもよくまぁ…この分だとマーヤちゃんのほうも長くはもたないかもしれないね。怒ったシズルさんを相手にはしたくないな」
 ナギの乗るミネルバがヴィント上空を飛んでいく。その先頭には既に自我をなくしてしまっているルナマリアの姿。
「大公、条約機構軍がこちらに向かってきます」
「そのMSを使って長距離から攻撃。さすがのオトメもここまでの長射程を持っているのはナツキちゃんぐらいだろうからね」
 ヴィントの街を楯にしミネルバはそのままヴィント城の前で止まる。
「さてと…じゃ、扉をあけようか?」
「…」
 ルナマリアにそう話、近衛兵に後を任せナギは艦首から出て行く。

 黒い谷のクレーターに倒れている舞衣はなんとか身体を起こす。
「ミコト!ミコトしっかりして」
「う、う…」
 ミコトは頭を上げる。
「まずいぞ舞衣。あいつがあのオトメを奪おうとしている。また前みたいになってしまうぞ!」
「こんなときに限って他のみんなはなにしてるのよ!!」
 舞衣はミコトを背中に乗せ、ミネルバを追う。

 ミユをおいかけるレイ・ザ・バレル。
「よく持つ。だが!!」
 レイはビームサーベルを取り出し、ミユめがけ振り下ろす。ミユはそこで飛びレジェンドの機体にとりつくと、そのままコクピットの胸部ハッチまで目にもとまらぬ速さで走り、コクピットハッチに手をかけると体が軋む音をだしながら、それをはがしとる。コクピットにいたレイがはがされた瞬間に銃を握り撃つが、その銃弾もミユの前にはパチンコ玉のように、片手でとられてしまう。
「くぅ…」
「…そのような巨大な機械では私を倒すことは出来ません」
「俺を殺すか?」
「あなたに聞きたい事があります」
 ミユはコクピットで既に戦意喪失のレイに聞く。
「あなた方はどうやってここに送られてきたのですか?」
「…光だ。光が俺たちを飲み込んでいった。それ以外はわからない」
「光。そのときの映像はありますか?」
「不鮮明のでいいのならあるぞ」
 レイの呼び出した映像をミユは食い入るように見る。
「…わかりました。あなたにもう用はありません」
 そういい残すとレイの機体から飛び去るミユ。自分の命を奪うかと思っていたのになにもせず立ち去るミユを不思議に思うレイ。だがもう彼には戦意はなかった。レジェンドはそのまま地上に落着してしまう。
「…俺は…」

 デストロイガンダムはレーダーに映る敵艦隊に対して主砲を発射させようとしていた。
「主砲発射用意!!」
「了解、アウフプラール、ドライツェーン!!主砲用意!!」
「敵対象目標!条約機構軍、エアリーズ旗艦『キクカワ』発射!!」
 巨大な赤い光が放たれる。その巨大なエネルギーは触れたものすべてを蒸発させる。それはたとえオトメであろうが例外ではないだろう。
「着弾確認!」
「爆発しないぞ!?」
「どういうことだ!」
 光の先、旗艦『キクカワ』にめがけ放たれている光はその前にいるMSによって封じられている。
「こちらアカツキ、敵の攻撃は防いだ!ユキノ大統領…指示を」
 それは金色に輝くMS。すべてのビーム攻撃を無効化できる力を持つ最新鋭MSである。
「了解。各国にも通達。これよりミッション、サイレント・シーを開始します。可及的速やかに敵を殲滅。ナギ・ダイ・アルタイを拘束してください」
 ユキノは夜という闇の中、ヴィントから見える巨大な戦艦を眺めていた。彼らが来たことでこの戦争は始まった。なぜ人と人の出会いは戦争になってしまうのか。それが人間の性なのか。ユキノはふと考える。だが彼女は同時に始めてであったある少女から力をもらったことを覚えている。人間は戦争をするために生まれてきたわけじゃない。だったら、この戦いも…とめることができるはず。

 砂漠の中から高速で浮上してくる戦艦…潜砂空母『スズシロ』
「准将。射出します」
「了解。マリュー艦長。あとはしっかりと頼むわよ」
 マリューはどこかかわっているその艦長席に座り、目の前の戦闘を眺める。その先にあるのはミネルバ…。この世界に来てもなお戦争を繰り返すというのか?それとも…タリア・グラティスは…。
「各部ハッチ展開」
「「展開します!」」
ミリアリアとラクスがどうやく慣れてきたそのコンピューターを手にし、調整する。
 そこから飛び出してくるハルカ・アーミテージ准将、そしてデルタオトメ隊。
 彼女たちとともに後方からはMSが展開している。それはストライク・フリーダム、インフィニットジャスティス、アカツキ、ガイアがそれぞれ出撃している。
「キラ君、バルドフェルド機は前方、デストロイの撃破、ムウはそのまま待機、アスラン君はそのままミネルバ攻撃にあたって」
「「了解」」
 インフィニットジャスティスに乗っているのはアスランだけではなかった。そこにいたのはメイリン・ホーク。ルナマリアの妹だ。
「いいんだな?」
「…お姉ちゃんをとめないと!」
 アスランはモニターにうつる。既にルナマリアの面影を失ったそのドス黒いものを見る。説得できるかどうか…だが、賭けてみるしかない。
 インフィニットジャスティスはミネルバにへと向かって突き進む。

「…ストライクフリーダムだと?」
 通信ではいってきたものを傍受し、先ほどまで戦意を失っていたレジェンドが動き出す。レイのコクピットには注射器が転がっていた。
「亡霊がまだ俺の前に姿を現すか!!」
 レジェンドが再び立ち上がり、コクピットをそのまま露出しまま上空にへと飛び上がる。
「フハハハ…この前の戦いの決着、つけさせてもらうぞ!!」
 レジェンドの出現はデストロイと交戦していたストライクフリーダムにもすぐわかった。
「バカな!ここでレジェンド!?」
「死ね!ストライク!!」
 ビームサーベルでその狂気に満ちたレジェンドのビームサーベルを受け止めるストライクフリーダム。腰部についたレールガンを撃ち相手を突き放そうとするが、レジェンドはストライクフリーダムから瞬時にはなれかわす。キラには見えていたそのコクピットにいるものの姿が…。

「…さてと、城内はだいぶ落ち着いたかな」
 ミネルバから降り立つ前にミネルバからヴィント城にめがけての機銃掃射。これにより反抗精力を一掃したのだ。誰の良心もとがめない。スイッチひとつでの簡単な行動。
「この世界なんかより彼らの世界のほうがよっぽどまとも。そこにいくのは僕とマシロちゃんだけで十分さ」
『大公!接近するMSとオトメです!指示を願います!指示を!』
 鳴り響く音をナギは踏み潰す。
「うるさいな。そんなことは言われなくてもわかっているさ。ルナマリアちゃん」
 飛び上がるルナマリア。
 ミネルバと戦闘をしているのは舞衣とミコトである。機銃照射により接近できないのでてこずっているようだ。そしてMSはインフィニットジャスティス
「ルナマリアか!」
「お姉ちゃん!!」
 ハッチをあけてルナマリアを見て叫ぶメイリン。変わり果ててしまった自分の姉を見てメイリンは言葉を失ってしまう。黒いオーラは一瞬、霞みルナマリアの姿が見える。血の涙のようなものが頬を流れ、無表情。
「…お姉ちゃん、お姉ちゃん!!」
 何度も叫ぶメイリン。自分のことを何度も勇気付け励ましてくれたルナマリア。自分の自慢の姉だった女子では珍しいパイロットでしかもエリートの赤服。クールで男勝りで、そんな姉が大好きだった。自分もいつか姉のようになりたいって…ずっとそう思っていて。
 でも私はそんなお姉ちゃんを裏切ってしまった。初めてお姉ちゃんと違うことをした。それが怖かった。それがどんな結果になるかなんて私にはわからなかった。
「…」
 ルナマリアの首が動き、メイリンを見つめる。
「…メイリン?」
 ポツリとつぶやくルナマリア。
「お姉ちゃん…帰ろう?みんなで…ね?」
「みんな…」
 蘇る記憶。自分がなにをしたのか、関係の無い人間を巻き添えにして何をしたのか、目の前でタリア艦長が撃たれてしまっこと…。
「私…」
 メイリンから離れていくルナマリア。頭を抱え声を出すことなく嗚咽を漏らす。
 もうメイリンの手は握れない。私の手は汚れてしまっている。血だらけ…。私はメイリンの元にはいけない。

絶望…憎悪…。

 ルナマリアを覆う真っ黒いもの。身が包まれる。もう何も見たくない…そんなルナマリアの心のように。
「…」
 エレメントである銃剣を握り、それをインフィニットジャスティスのコクピットにへと向ける。
「メイリン!戻れ!」
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」
 大声で何度も叫ぶメイリン、そのメイリンをめがけエレメントが輝く。

「?」
 次に目を開けたとき、メイリンはそこに大きな影があるのを見た。それはどこかなつかしいもの。
「…ディスティニー」
 アスランはその機影を見てつぶやく。ディスティニーが頭上からルナマリアの攻撃をとめるために間に入ったのだ。