Top > 夢に向かって
HTML convert time to 0.011 sec.


夢に向かって

Last-modified: 2014-03-07 (金) 22:48:53

夢に向かって

 
 

学校の帰り道を逸れて、少年ラーガンはちょうどケージより高いくらいの木に登りゆっくり動く機械の人間を見つめる。
周りが暗くなったのに気付いたのは機械人間のお腹から人が出てきた時だった
急いで家に帰ると母がキッチンに立ち、鍋を突いていた

 

少年の帰宅に気づいた母はやれやれといった表情で背中を向けたまま説教を始めた。
うつむいて謝ることしかできなかったが、母親に「ロボット」と言われるたびに
「モビルスタンダードだよ」と小さく愚痴った

 
 

母親の説教と晩御飯を済ませるとラーガンはすぐ自分の部屋に入り机の上の雑誌を手に取る
表紙には大きく「生まれ変わるMS」と書かれている。
ベッドに転がり雑誌を読むうちに眠くなりついにそのまま目をつぶってしまった。

 

沢山の楽器が勇ましい音を奏でながら大きなステージ車で行進し、その後ろをMSが歩く。
ラーガンがまだジュニアハイに通うより前の光景を彼は夢で見ていた。
銀の杯条約によって本来の「MS」は存在しなくなり、このころは図書館の本に載ってる
古い写真を思わせる「モビル」カテゴリー黎明期のような人型で大きいだけの作業用メカのみ
稼働を許されていた。それでも幼いラーガンにとっては夢を形にしたものだった

 

パレードの1団が過ぎていくうちに目を覚ますと部屋の明かりは消されていた

 
 

スクールの教室で一人黙々と分厚い本を読むラーガンに友人が話しかけ、いつものように友人と話し合う
毎日動くMSを見るために木に登り誰よりもMSに詳しいラーガンはスクールでも知名度が高く
よく笑われもしたが気にしたことは無かった

 

コロニーでは季節が極端だがその分わかりやすく、寒さを感じ始めたころスクールの終わるときにはすでに
辺りは暗くなって工事現場を眺める時間も少なくなる、そういうときが学年の終わりが近い時だ。
先生がしきりに進路の話をするが2年生のラーガンは「パイロットになる」の一点張りだった。

 

ある日いつものように学校を出ていつもの木に近づくと、普段やかましく響く作業音が聞こえなかった。
みると4階建てのビルが立派に立ち上がり、辺りには何も残っていなかった

 
 

家に帰ったラーガンは夢が自分を置いて行ったように思えて寂しかった
ふと思い出し本棚から先週買って読みかけて眠ってしまった雑誌を取り出した、ページをめくるとこれまで見てきた
作業用とは打って変わってまるでパワードスーツを着た人間のような姿が載っていた。
コクピットがガラス貼りじゃない頭があって大きな楕円のバイザーが着いていて銃まで持っている

 

よく記事を読むとコロニー近辺を浮遊するデブリとの衝突事故を防ぐためそれらの除去など安全の為にのみ
一部技術の使用許可が連邦議会で採決されたとある、そういえばテレビでそんなこといってたかなぁと思い出し
先ほどまでの寂しさを忘れニヤニヤしながら雑誌を読み進めた

 

母親にドアをノックされいい加減寝なさいと言われたのは日付が変わってからだった。
すっかり夢中になってしまっていたラーガンはあわてて授業の課題を探し始めると、鞄の中から進路についてのプリントが出てきた

 
 

週末を利用してラーガンは駐屯基地に訪れた、コロニーでは軍隊が警察と消防を管轄しているため
エントランスは多くの人が苦情や被害を訴えていた。数種類のパンフレットが山積みになった
テーブルを見つけるとその中から一つを取る「士官養成スクール」とでかでか書かれたパンフレット
には説明会が今日行われると書いてある、ラーガンもそれが目当てでここに来たのだ

 

時間より早く2階の会場に入ると自分と同じような年齢の人もいて少し安心した
時間どおりに職員が説明を始めるとみな真剣な表情になって聞き入ってたがラーガンは違った
自分が思ってたのと何か違う、コロニー間紛争鎮圧の指揮とか連邦軍本部勤務とか
説明会の終わりに質問がある人は、と聞かれ真っ先に手を挙げた

 

「MSには乗れないんですか?」

 

どうやらMS乗りは危険な作業が多くなる見通しが立ち、人手不足で名乗り出ればなれるような状態であるらしい
ラーガンは家に帰るとその場で書いた申込み用紙を親に見せてMS乗りになると言った
思いのほかすんなり親は納得しスクールの同級生や教員に惜しまれながら中退、念願のパイロットに志願した

 
 

家に帰ると両親が怯えているように見えた、なにがあったか聞くと少し前にニュース速報で
コロニー「エンジェル」が崩壊したという、しかも原因は人為的なテロ行為でありMSのような
巨大な兵器が使われていた。

 

天使の落日と言われるこの事件の後MS乗りとそのラーガンのような訓練生までもエンジェルから
近いコロニーへ順番に転属の辞令が下った。
ラーガンの配属先は「ノーラ」だったエンジェルを中心とした警戒網の外縁でありエンジェル居住者
の難民収容も行っていた。

 

数日後、宇宙港でシャトルに乗ろうとしたとき、小さな男の子が話しかけてきた
「その軍服本物のパイロットでしょ?かっこいい!」
照れ臭くなってすぐシャトルに乗り込むと窓から船外で活動するMSが見えた
「待ってろよ、俺もノーラで1人前のパイロットになるからな!」
親指を立ててシャトルの発射許可サインを送るMSが自分を応援してるように見えた

 

おわり

 
 

 
 

URL B I U SIZE Black Maroon Green Olive Navy Purple Teal Gray Silver Red Lime Yellow Blue Fuchsia Aqua White