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00-W_水曜日氏_04

Last-modified: 2008-11-15 (土) 19:16:07
 

 今日のプリベンター本部はやけに静かでした。
 何故って?答えは簡単。人が2人しかいないから。
 1人は張五飛、もう1人はグラハム・エーカー。
 因みに、他のメンバーは何をしているかというと…
 ヒイロはリリーナの護衛の為単独で任務遂行。
 デュオ&ヒルデは昔のジャンク屋仲間と同窓会。
 トロワはサーカスの公演。
 カトルは溜まったウィナー家のお仕事を片付けに実家へ。
 アラスカ野は故郷のアラスカが恋しくなった為帰省。
 我らがコーラサワーさんはというと、カティ=マネキンファンクラブ会員限定ライヴに参戦中。
 今頃物販で限定グッズを買い漁ってる頃でしょう…
 さて、残った1人のサリィさん。実は出勤してるのだが、2人と居るのが気まずい為、買い出しを理由にこの場から逃げてたりします。
 2人と居るのが気まずい理由。グラハムは滅茶苦茶真剣顔でガンプラ作ってるし(因みに00関連のガンダムは作りきったのか、只今1/100フリーダムの塗装中)、五飛はメガネをかけてインテリモード全開で読書に没頭中。
 煩い事に慣れてしまうと、沈黙した雰囲気ほど辛くて気まずいものは無いです。
 例えるなら、友人と萌えについて熱く語っていたのに、お互いの萌えポイントが微妙に違うと分かった途端の沈黙(話題無い!さっきまでの勢いは何処に!?みたいな)。
 という訳で、サリィさんは買い出しに出掛けて行ったのでした。
 さて、話を再び男2人に戻しましょう。
 只今部屋の中には、本をめくる音とエアブラシのシューシューする音とM●.リニアコンプレッサーL5(エアブラシに接続するエンジンみたいなやつ)の音、換気扇の回る音しかしてないです(リニアコンプレッサーの音って意外と煩いんだけどね、プチ工事現場って感じ)。
 2人の間に会話は一切無い。本当2人とも真剣です。

 

 そして、数分後――

 

「あ゛あ゛っ!!」

 

 先に沈黙を破ったのはグラハム。青ざめて絶叫。

 

「どうした?」

 

 メガネをクイッと上げながらグラハムに視線を向け、五飛が聞きます。

 

「力んでし…って、ムラが…ダマ…出来てしまっ…」

 

 マスク越しで何喋ってるかよく分かりませんが、ガクッと項垂れるグラハム。
 どうやら塗装に失敗したようです。

 

「そうか」

 

 分かったのか分かって無いのか、それだけ言うと五飛はまた本に目を落としました。
 が、また直ぐに視線をグラハムに向けます。

 

「面白いのか?」
「え…」

 

 ちょっと涙目になりながらグラハムが聞き返します。

 

「その、『ガンプラ』というやつは面白いのかと聞いている」

 

 厚塗りしようか、いやいや、乾かして研磨剤で削ってもう一度塗り直すべきだ!そんな事を考えていたのでグラハムは一瞬何を聞かれたのか理解出来なかったのですが、理解した途端にマスクを外し、得意気に答えました。

 

「勿論だとも!!そうかそうか。うむ、ちょっと待っていたまえ」

 

 一人で納得すると、グラハムはたかたかと部屋から出て行き、大きな段ボール箱を抱えて戻ってきました。段ボールには黒マジックで大きく

 

『まだ作ってないやつ入れ』

 

 と書かれています(因みに『もう作ったやつの空き箱入れ』と書かれた段ボールもあるらしい)。
 そして、フンフンと鼻歌を歌いながら段ボールから幾つか箱を取り出しました。

 

「君の愛機はシェンロンとアルト――」
「ナタクだ」

 

 言い終わる前に、思いきり睨みつけて訂正する五飛。
 流石、アイ ラヴ ナタク

 

「で、君はそのナタクを壊してしまったんだろう?」
「あ、嗚呼…この時代に…ナタクは必要無いからな…」

 

 自爆風景を思い出して少し涙ぐむ五飛。
 ナタク愛は伊達じゃない。

 

「だが、ガンプラならナタクと何時でも一緒に居られるのだよ!」
「な、何だと…!?」

 

 グラハムは段ボールから取り出した箱の一つを五飛に私ました。パッケージには格好よくポーズを決めたEW版アルトロンのイラストが描かれています。

 

「1/144アルトロンいや、ナタク。しかも限定クリアカラーバージョンだ!」
「ナ、ナタク…」

 

 パッケージイラストを凝視する五飛。

 

「そして、こっちは1/144シェンロンいや、ナタク。で、これが1/100アルトロンいや、あーもう面倒臭いな!兎に角、ナタクだ」

 

 次々に箱を手渡すグラハム。

 

「ナタクが、こんなに沢山…」
「そう!沢山!ガンプラなら自分の大好きな機体を幾らでも量産可能なのだよ!幾ら作っても罪にはならない。部屋中にガンダムを並べる喜び…素晴らしくないかね?」
「ぁ…い、いや。ナタクは1機だけだ。こ、こんなもの、何処が良いのかさっぱりわからん」

 

『嗚呼』と言いそうになって思い止まる五飛。
 このまま乗せられれば自分は変態と同等という事になると気付いたのです。
 というか、簡単にいえば、五飛の中のツンデレ心がストップかけた感じ。

 

「そう言うと思ったので、今日はこんな物も用意したのだよ五飛君。見たまえ」

 

 そう言って、テレビの通販番組のお兄さんの様にグラハムが五飛の前に置いたのは、台座の上で固定されたエクシアとカスタムフラッグ。それだけでは普通なのだが、問題はポーズ。

 

「フラッグが、エクシアに勝ってるように見えるな」

 

 そう。
 塗装で絶妙に傷付けられたエクシアが、今まさにフラッグ(こちらは擦り傷程度の塗装がされてます)に最後の一撃を食らわされる。
 そんな臨場感溢れる舞台が台座の上で繰り広げられていました。
 これぞ職人技!といっても過言ではない出来です。

 

「そう、ガンプラならこのように、作り手の技量次第でどんな戦いでも再現する事が出来るのだよ」
「あちらの世界で、お前はここまでエクシアを追い詰めていないと思うが」

 

 五飛の鋭い突っ込み。
 そういえばあちらの世界では、何時もガンダムに逃げられてますね、グラハム。

 

「う…しかしだな、君の対決も再現可能という訳だよ。丁度良くここに1/100ウイングゼロがある」

 

 ササッとウイングゼロの箱を差し出すグラハム。今日はどんな突っ込みにも負ける気0のご様子。

 

「このウイングゼロとそこにある1/100のアルトロンいや、ナタクを使えば」
「ウイングゼロとナタクの戦いが出来る…」

 

 少し考え込む五飛。やはりヒイロとの戦いには心残りがあったようです。

 

「そう、しかも舞台上の神は君だ。どんな場所でどんな戦いをさせて、どちらを勝たせるかも君の自由」
「トールギス兇箸癲」

 

 やっぱり、トレーズとの戦いにも心残りがあったようです。
 そういえば五飛って悔いが残る戦いしかしてないような……

 

「愚問だな」

 

 ニヤリと笑うグラハム。

 

「沢山のナタクに…夢の戦い…」

 

 グラハムの悪魔の囁きにどんどん翻弄、いや洗脳されていく五飛。
 ヤバいです五飛さん、顔がうっとりしてますよ。
 まるで宗教の勧誘の如く、グラハムも最後の一押し。
 五飛にチェックをかけます。

 

「そう、そしてガンプラの一番の良いところは全て手作業。凝れば凝るほど味が出る。何より一から丹精込めて組みあげた時の喜びはなにものにも代えられないのだよ…。素晴らしいとは思わないかね…五飛君? 私と共に充実した生活を、さぁ君もガンプラを作ろうではないか」
「嗚呼…グラハム…いや、今日から師匠と呼ばせて下さい!!」

 

 はい、チェックメイト。そして洗脳完了。
 ガンプラ仲間の弟子をゲットしご満悦のグラハム。
 何せ彼、今まで『せっちゃん』(HN)というメル友しかガンプラ仲間が居なかったのです。
 やっぱり趣味友はOffでも欲しいよね。うん。

 

「ではこのシェンロンとアルトロン達とウイングゼロは君にあげよう。私と君の友情の証だ」
「謝謝、師匠!」
「今日は私のニッパーを貸してあげるからまずはBB戦士、SDサイズのシェンロンから作ってみたまえ、塗装は初心者向きのガンダムマーカーだな。後、墨入れにも挑戦してみようか」
「はい、師匠!」

 

 ナタクと訂正を入れるのも忘れ、パンドラの、じゃなくてガンプラの箱を開けてしまった五飛。
 おめでとうございます。君はもう一般人には戻れません。
 まぁ、初めから一般人では無いか。

 

          *          *          *

 

 夕方、買い出しから戻ったサリィは自分の目の前の光景を疑った。

 

(何故?いつの間に五飛までプラモデルを作ってるの!?しかもグラハムと仲良く! いやいや、私の見ているのは夢、そう夢なのよ。最近疲れてるのね…。だって五飛があんなにニヤニヤしてるなんてあり得ないもの。今日は早く寝ないと)

 

 サリィは自分に暗示をかけるようにしてその場を離れました。
 それが正解。
 変なものとは関わらないのが一番です。
 変態達と触れ合う内に少しずつおかしな方向へ向かっていく、思春期真っ盛り、他人の影響力大のガンダムパイロット達。
 彼等は一体何処に向かっていくのでしょうか…

 
 

 今日も地球はバカを除いて平和でありましたとさ…

 

 

【あとがき】
 今回はあえてコーラを出さないでみました。
 因みにエアブラシの塗装は見た事有るだけで未体験の為、嘘入ってるかもです。ごめんなさい。
 でも、ガンプラ組むの楽しいよね!こないだ1/144サンドロックとヘビーアームズ、今更買ってしまいました。
 ハムのフラッグが改造中のまま2期にいきそうな気がするのは、私だけでしょうか…
 では。

 
 

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