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00-W_土曜日氏_05

Last-modified: 2008-09-08 (月) 17:17:54
 

 ヒイロ・ユイは不機嫌だった。
 いっつも不機嫌じゃないのか、という指摘もあるが、それは感情表現が不得手で無愛想に見えてしまうだけである。
「死ぬ程痛いぞ」「悪いが一発は一発だ」等の発言を振り返ればわかるように、結構お茶目さんでもあったりする。
 まあ、ドクターJが言うように「本当は心の優しい子」なのかどうかはちょっと怪しいが。
 で、何で不機嫌なのかというと、もちろんそれには理由がある。
 先日、コロニーを含む全宇宙に向けてひとつのニュース放送があった。
 リリーナ・ピースクラフトが行方不明になった、という内容のニュース放送が。

 

「えーと、久し振り……よね? ヒイロ」
「……」
「怒るな、所在地不明のお前自らこちらにコンタクトを取らせるために、こういう手段を使っただけだ」
「五飛、あなたハッキリ物事を言いすぎ」

 

 そうなると当然、リリーナの身の上が世界で一番気になる男が黙っていない。
 放送直後にプリベンターの本部にヒイロから連絡が入ったという次第。
 当然この放送はまったくの嘘っぱちで、十分程後に「事実誤認」のお詫びのテロップが流れてそれで終わり。
 つまり、ヒイロは五飛が仕掛けた一本釣りに見事フィッシュしたというわけである。

 

「五飛」
「何だ」
「この件、覚えておくぞ」
「俺は忘れた。お前も忘れろ」

 

 ヒイロのストレートパンチに真顔でカウンターを撃ち返す五飛。
 いやはやなかなか良い性格をしていると言える。
 それとも、朱に交わって赤くなったのかもしれない。

 

「でね、要件というのは他でもないの。あなたにもプリベンターに加わってほしいのよ」

 

 険悪な空気を緩和すべく、サリィが本題を切りだす。
 だが当然、不機嫌なヒイロがそれを聞き入れるわけもなく。

 

「断る」

 

 ヒイロ、右から左へ受け流し。

 

「お願いヒイロ、ほら五飛もヒイロに言ってあげて」
「ヒイロ、手を貸せ」
「その前に謝れ、五飛」

 

 思えば、五人のガンダムパイロットの中で最も相性が悪そうなのがこの二人だった。
 無愛想人間と頑固人間、意地の張り合いがっぷり四つだ。
 エンドレスワルツでどつきあったのは伊達ではない。

 

          *          *          *

 

「おいコラァ! このスペシャルな俺が味方になってやったってのに、すぐに新しいメンバーを入れるたぁどういうことだ!」

 

 ややこしい場をさらにややこしくする男登場。
 扉を蹴って飛びこんできたコーラサワー君だが、もとはと言えばコイツが諸悪の根源でもある。
 まあ、コイツをメンバーに入れたレディ・アンこそがそうだという説もあるが、それはさておき。

 

「おいてめぇがそうかこのちんちくりん! プリベンターはよぉ、俺がいる限り無敵で二千回だ! お前の出る幕なんざねぇ!」

 

 初対面の相手にこのがなり様。
 育ちが悪いことこの上ない話である。

 

「おい五飛」
「なんだ」
「誰だコイツは」
「プリベンターのメンバーで、パトリック・サワーコーラという奴だ」

 

 ジト目で睨むヒイロに、意地悪たっぷりに名前をわざと間違える五飛。
 これでコーラサワーがキレないわけがあろうか、いやない。

 

「なななっ、貴様らぁあ! 俺の名前はコイツでもサワーコーラでもねぇ!」

 

 先日五飛にやったのと同じように、人差し指をビシリとコーラサワーはヒイロの眼前に叩きつける。

 

「俺は! スペシャルで! 模擬戦! 二千回無敗! 超エース! パトリィィック・コォォォラサワァァアだぁぁっ!」
「……わかった。コーラサワーだな。記憶した」
「違うっ! もう一回言ってやるから耳の穴かっぽじってよく聞け! スペシャルで! 模擬戦で! 二千……」
「回無敗、超エース、パトリック・コーラサワー、だろう」
「そ、そうだ! わ、わかってりゃいいんだ! わかってりゃあよ!」

 

 ヒイロにあっさりと返され、逆にシドロモドロになってしまうコーラサワー28歳独身。
 あんだけ偉そうにしている割には、予想外の展開にとことん弱い奴である。

 

「スペシャルで模擬戦二千回無敗超エースのパトリック・コーラサワー」
「な、なんだ」
「お前を、殺す」
「なにぃーっ!?」

 

「やっぱりヒイロを巻きこんだのは間違いだったかしら……」

 

 このやりとりに、部屋の隅でうずくまって頭を抱えるサリィ・ポォなのだった。

 
 

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