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00-W_土曜日氏_06

Last-modified: 2008-09-08 (月) 17:31:43
 

「ちっきしょぉぉ、まんまとだまくらかされたぜ!」
「こんな嘘にだまされるほうが悪い」
「あーっ五飛お前、言うに事欠いてそんなこと!」
「事実だろうがデュオ。実際お前、こうしてノコノコとやってきたわけだしな」

 

 パトリック・コーラサワーがプリベンターの新メンバーになってから丁度一週間、ヒイロ・ユイに続いて二人目の犠牲者が五飛の罠にかかってやってきた。
 ガンダムパイロットの一人、デュオ・マックスウェルである。

 

「俺はなあ、ジャンク屋っていうフリーの仕事が気に言ってるんだよ! 何で今更宮仕えの身になんなきゃいけないんだ!」
「欲の皮をはり過ぎた罰だ」
「嘘こいたお前が言うセリフかよ!」

 

 ヒイロがリリーナ危機という嘘で針にひっかかったなら、デュオは儲け話という嘘に引っかかった。
 プリベンターが回収したMSを解体してほしい、という連絡を受けてやってきてみれば、
 いきなり身柄を拘束されて「プリベンターに加入しろ」「書類はすでに通してある」ときた。
 そりゃいくら世間慣れしててユーモアセンス抜群のデュオでも怒ろうてなもんである。

 

「ヤバイと思ったんだよなあ、解体ならいくらでも政府に繋がった大手のところがあるんだから」

 

 そう、最初はデュオもあまりにおいしい話にいぶかしんだ。
 だが、通信の最後に添えられていた「この依頼に他意はない、昔のよしみだ」という一文に気を許してしまったのだ。
 実際はこのように他意がありまくりだったわけだが。

 

「とにかく、もう書類一式は正式に受理されている。今日からお前は俺たちの仲間だ」
「くそぅ……覚えとけよ、五飛」
「もう忘れた。お前も忘れろ」
「無茶言うな! だいたいヒイロ、お前がいるならなんで止めてくれなかったんだよ!」
「俺一人がだまされたままなのは気にくわない」
「はあ?」
「昔のよしみだ」
「お、お前ぇぇ」

 

 最初はデュオと同じように拒否反応を見せたヒイロだったが、レディ・アンとサリィの説得を受け、結局プリベンターに入ることになった。
 色々複雑な思いはあれど、プリベンターにいればリリーナがピンチの時は確かに動きやすいし、世界平和のための裏方という仕事もやりがいはある。
 ただ、コーラサワーというあんぽんたんと真っ向から付き合うのだけは骨が折れるので、うっとおしさを分散させるためにさらにデュオを犠牲にするという五飛の策にあえて目をつぶったわけだ。
 つきあいのあったガンダムパイロットの仲で、一番デュオを信頼しているという真っ当な理由もあることはあるわけだが。

 

「五飛、ヒイロ……お前ら、本気で恨むぞ」

 

 涙目になるデュオ。
 しかし、すでに判子のおされた書類が手続きを通ってしまったとあれば、もう彼に出来る抵抗の術はない。
 ちなみに、デュオがいるならヒルデもいるわけだが、彼女の方は特に怒ることもふてくされることもなく、
 サリィと名刺を交換したりなんかしている。こういう時、女の方が気持ちの切り替えは早かったりする。

 

「つうか、何で俺を無理矢理プリベンターに入れるんだ。何か理由があるんだろ、こら」
「そうだな、それを教えないのはフェアではないな」

 

 嘘をついたこと自体が十分アンフェアなのだが、そのことに自ら触れるような五飛ではない。
 それを隠していかにも恩着せがましく述べ立てるところは、かなりずうずうしい上に腹黒い。
 ここら辺の頭の回転は、実は五人のガンダムパイロットの中で一番いいのが五飛で、オペレーション・メテオの真意を五人の中でいちはやく気づいたのも彼だったし、リリーナの平和論に「捨てられた武器のその後」が抜け落ちていることを指摘したのも彼だった。

 

          *          *          *

 

「口で説明するよりも、実際に見てもらったほうがいいだろう」
「は? 見る、って何をだよ」
「もうそろそろ来る。直接確かめろ」

 

 五飛がそう言った瞬間、ドドドドというけたたましい音が皆の居る部屋の外から聞こえてきた。
 そして。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 扉ではなく、窓を蹴破ってはい登場、天が呼んだか地が呼んだか、パトリック・コーラサワー君である。

 

「おいコラ五飛にサリィ! まあた新しいメンバーを入れたそうだなあ! 何だそりゃあ! 俺は納得しねぇぞお!」

 

 ガラスの破片をいくつか頭に突き刺したまま、コーラサワーは五飛に食ってかかる。
 血がどくどくと噴き出しているのだが、一向に気にしている様子はない。
 この頑丈さが、成る程スペシャルだと言えなくもない。

 

「ああん? 今度の新人はてめぇかこらこのミツアミ野郎! 男の癖にそんな髪型しやがって、ざけんじゃねえぞコラァ!」

 

 自分だって軍人時代からボサボサ頭だったわけだが、コーラサワーはそれを無視して怒鳴る。
 これは棚に挙げているのではなく、ハナから自分の髪型に思いが及んでいないだけである。
 つまり、『勉強が出来ない』のではなく『勉強をしていない』のと同じ理屈だ。

 

「おい五飛」
「なんだ」
「誰だ、この大声芸人」
「プリベンターのメンバーで、パチョレック・コーラサワーという奴だ」

 

 芸人呼ばわりするデュオに、またまたわざと意地悪く名前を間違える五飛。
 これでコーラサワーがキレないわけがあろうか以下略。

 

「なななっ、貴様らぁあ! 俺は芸人でもパチョレックでもねぇ!」

 

 先日ヒイロにやったのと同じように、人差し指をビシリとコーラサワーはデュオの眼前に叩きつける。

 

「俺は! スペシャルで! 模擬戦! 二千回無敗! 超エース! パトリィィック・コォォォラサワァァアだぁぁっ!」
「……それ、本名か?」
「本名だ! もう一回言ってやるから耳の穴かっぽじってよく聞け! スペシャルで! 模擬戦で! 二千回無敗、超エース!」
「パチョレック・コーラサワー、と」
「違あああああああうっっ!」

 

 デュオにまぜっ返され、さらにプッツンするコーラサワー28歳独身。
 人をおちょくることに関してスゴ腕のデュオと、人におちょくられることに関してスゴ腕のコーラサワー、ある意味相性抜群と言えようか。

 

「誰がパチョレックだ、誰が大洋と阪神の助っ人選手だ! 俺は、スペシャルな二千回、パトリック・コーラサワーだあ!」
「……五飛」
「なんだデュオ」
「まさかお前、コイツの相手をさせるために俺を呼んだんじゃないだろうな」
「そうだ」
「冗談きついぞ」
「気にするな、俺は気にしない」
「……ああ、そのセリフ、前世で言った記憶があるな」

 

「よろしくお願いしますね、デュオも友達にまた会えて本当は嬉しがってると思います」
「そうね、こちらこそよろしくね」

 

 とりあえず、真横の喧噪は見てみぬふりをするサリィとヒルデなのだった。

 
 

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