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00-W_土曜日氏_108

Last-modified: 2009-07-04 (土) 19:52:41
 

 ♪君は聞こえる? 彼のその声が
  尺に空しく削られた
  もしも不死身が意味を持つのなら
  少ない出番は無駄ではない
  他キャラに押しのけられて諦めてたんだ
  ラストシーンの逆転も知らないで
  一話からの想いが今でも
  この胸を確かにイヤフってるから
  コーラとカティが映画に続く
  彼らなりの未来を築いていく
  答えはそう いつも彼にある♪

 
 

 コラ色デイズ。
 ……って前にもやったっけか?
 歌詞ネタは考えた端から忘れていくので困る。
 まぁコーラサワーはとっくの昔に天も元も突破ということでイヤッフー。

 
 

「とうとう完成だ」
「とうとう完成か」
「ああ、とうとう完成なのだ!」
「よし、とうとう完成ってか!」

 

 何だこのW○Eの下手なマイク合戦みたいなの、と思わないでいただきたい。
 彼ら二人、つまりはパトリック・コーラサワーとグラハム・エーカーであるが、ちょっと興奮しすぎちゃってるだけなのだ。
 何故かというと。

 

「ついに我らの新しいMS(ミカンスーツ)が!」
「おうよ、出来上がりってな!」

 

 はい、そういうわけ。

 

   ◆   ◆   ◆

 

 どの時代だって、世界を動かすのはまず経済である。
 思想や宗教はガソリンには成り得ても、エンジンには決して成り得ない。
 金、労働、そしてそこから生まれたモノ、これらのために社会は動き、また動かされるのだ。

 

「諸君、忙しいところをすまんな」
「いいえ、会長直々のお呼びとあらば」
「そうですとも、我ら、月の裏側からでも駆けつけましょう」
「アロウズの……ホーマー・カタギリ会長の下に」

 

 OZが解体されて以降、限られた企業に利権が集中することはなくなった。
 OZは所謂囲い込み式に『使える』企業や会社を勢力下に収め、その権力を増大させた。
 第二のOZが誕生しないよう、また、経済競争が公正に行われるよう、現在の世界政府は細かい気配りを随所に行っている。
 だがしかし。

 

「本来ならリョーテイでゆっくりと話し合いたいところなのだがな」
「急ぎの事態ですかな?」
「そういうことだ」

 

 公平、平等、そういったものは富と力を持った者からすれば、邪魔にしかならないこともある。
 100あるうちの50を手に入れ、残りの50を他所に分けてやるより、100をまるまる一人占めしたいと考える。
 完全なる独占は長くは続かない、というのは過去の歴史が証明している。
 それでも、おそらく人類が滅亡するまで、100を求める行為は続くだろう。

 

「早速本題に入らせてもらおう」

 

 アロウズ。
 現在の地球上において、トップクラスの巨大総合企業。
 そして今、会長のホーマー・カタギリの元に、彼の子飼いとも言える人物が集っている。
 欧州地区マネージャー、アーサー・グッドマン。
 アロウズ・エレクトロニクス副社長、リー・ジェジャン。
 アロウズ・セキュリティ・サービス警務部長、アーバ・リント。
 いずれも、その手腕を持ってホーマー・カタギリに引き立てられた者たちである。
 彼らのいる会議室は会長のホーマー専用のものであり、いかに役職が高い者でも滅多に入ることはない。
 室内の調度品も質の高い物ばかりが揃っており、壁にかかっているのが絵画ではなく掛け軸という辺りに、ホーマーの趣味が伺える。

 

「つまり……“イノベイター”の?」
「そうだ。それも“ヴェーダ”絡みのな」
「それはそれは……」

 

 銀髪、狐目の男―――リントは口の端を釣りあげて笑った。
 アロウズ・セキュリティ・サービスは表向きは警備会社ではあるが、その裏ではアロウズに有利な工作を行っている、所謂隠し刀である。
 そして彼はここ数年、その陣頭に立ってきた。

 

「とうとう動き出すということですな、あの若造どもが」

 

 恰幅の良い体を揺らし、グッドマンも笑った。
 彼は欧州地区にあるアロウズの関連会社全てを指揮、管理する立場にある。
 権力的には、ホーマー配下の中で最大と言ってもよく、やや短気な面はあるものの、地位に見合うだけの実力を備えている。

 

「しかし、何故この時期に?」

 

 ジェジャンはリントやグッドマンと違い、先程から全くニコリともしていない。
 性格的なものなのだろうが、それだけに静かな威圧感を醸し出している。
 アロウズ・エレクトロニクスの副社長として、競争激しい電気製品部門を引っ張っている。

 

「さて、それはわからん」
「まったく、歌と踊りだけに集中していてもらいたいものですな、あやつらには」
「そうは言いましても、彼らあっての我らゆえ」
「何、今のうちですよ」

 

 リントの言葉に、ホーマーをはじめ、グッドマン、ジェジャンも頷いた。
 彼らには彼らの目的、そしてイノベイターにはイノベイターの目的がある。
 今は彼らの上位にイノベイターがいるが、全ての事が終った時、それが逆転していればいい。

 

「さて、仔細を説明したいのだが」
「会長、真に申し訳ありませんが、その前にご報告したいことがございまして」
「ふむ、私の言を遮る程の内容なのかね? リント警務部長」
「少なくとも、今回の件には絡んでいると断言は出来ます」
「うむ……よかろう、先に君の話を始めたまえ」
「ありがとうございます。……私だ、彼を入れてくれたまえ」

 

 リントはホーマーに頭を下げると、インターホンで会議室の外に控えさせていた部下を呼んだ。
 本来なら彼とホーマーとの間には大河の如き地位の差があり、さらに上司より先に話を進めるのも本来なら失礼の極みなのだが、あまりそれを気にしている様子は彼にはない。
 ホーマーの度量の広さを理解しての行為であるものの、こういう部分が『自己顕示欲が強い』と同僚たちに思われ、嫌われる一因にもなっている。

 

「失礼いたします、バラック・ジニンであります」

 

 リントに呼ばれて入ってきたのは、長身でがっしりとした体格の男だった。
 セキュリティ・サービスの制服越しに分厚い筋肉がわかり、いかにも荒事に慣れているといった感じである。

 

「彼は私の部下で、実に優秀な“成績”を残しております」
「ほう、ブジュツに長けているのかね?」
「ジュードーやカラテ、その他諸々のマスター・クラスです」
「頼もしいな」

 

 ホーマーの視線を受け、ジニンは背筋を改めて伸ばした。
 彼の立場なら、まず会うことのない、会えるはずのない人間が、目の前にいる。

 

「緊張しているようだぞリント、お前の部下は」
「彼は武骨者でしてね……ではジニン隊長、例のデータを出したまえ」
「……はっ」

 

 ジニンは胸のポケットから極薄型のデータ・カードを取り出した。
 世間一般には流通していない、アロウズだけの、しかも限られた人間だけが使える特別な記録媒体だ。
 それを壁のモニターに直結している差し込み口に差し、キーボードからコードを入力してデータを表示させる。

 

「実は、極東の某所でとある事件があったことを、嗅ぎつけましてね……」

 

 リントの声が、薄暗い会議室に響く。
 彼の指示通りにキーボードを操作しつつ、ジニンは思った。
 アロウズのために、家族のために彼は働いてきた。
 今、自分は何か大きな“裏の動き”に関わり始めている。
 願わくば、この行いがアロウズと世界に正しき結果をもたらすように、と。
 よしんば咎を受けるとて、自らのみに留め、愛する彼の妻に、生まれてくる我が子に余波が及んでくれぬように、と。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「……では、男らしくジャンケンで勝負をつけようではないか」
「ジャンケンだあ? そんなの実力もクソもないだろ、完全に運任せだろうが」
「天運を味方につけてこそ! そうは思わんのか?」
「いいのか? 俺には女神がついてるんだぞ、強運さでも負けねーぞ!」

 

 ええと、彼ら二人が何をしているかというと、ビリー・カタギリがようやっと完成させたMS(ミカンスーツ)の試運転をどちらが最初に行うか、を決めようとしている次第。
 アホか、同時に一緒に乗ったらいーじゃん、と普通は思うだろう。
 が、仮にもどちらも軍でエースを張った男、そこは譲れないこだわりがあるらしい。

 

「では将棋だ、将棋で決めようではないか!」
「ショーギ? ルール知らねーぞ俺は」
「ならばよし! さあ勝負!」
「待てよ、何がよしなんだよ!」

 

 さっきからずっとこんな調子でずっとやりあっている。
 あまりのアホらしさに呆れたのか、デュオやカトルも突っ込みを放棄して、隣の部屋に出て行ってしまった。
 今頃はヒルデが作ったホットケーキで皆と一緒にお茶を楽しんでいることであろう。
 ガンダムパイロットにとっても新型が出来たことは嬉しいが、誰が一番最初に乗るかなんてことは正味のところーでもいいレベルの話。
 それよりも、どれだけ自分に合った機体か、という方が重要なのだ。

 

「では剣玉ではどうだ!」
「なあナルハム野郎、お前はガキの遊び事でしか勝負を決められないのかよ?」
「笑止! 子供の遊び事と見る方が愚か者だぞ、自称エース!」
「自称じゃない! 模擬戦2000回無敗、リアルにスペシャルなエースだ!」
「ならば見事受けてみせるがいい! 如何なる勝負でも!」
「って、ショーギとかケンダマとかはないだろ普通!」
「ならば、センゴクブショーの名前を出し合って、多く言えた方が勝ちというのはどうだ!」
「マジでお前、有利な土俵に持っていこうとしやがるのな。なら落とした女の数で勝負ってのはどうだ!」

 

 三十過ぎた大人がやるこっちゃないと思うが、まぁこれも彼ららしいと言えば彼ららしいかと。
 性格はばっちり合わないし、かけあいも合っているのか合ってないのかわからない二人だが、これでも世界の隠密同心プリベンターのメンバーです。
 何と言うか、同じステージでもやっている演目が違うと言うか、同じ氏家でも卜全とト全の違いと言うか。
 まあそんな感じでやってます、二人とも。

 

「都道府県の県花と県鳥の言い比べというのはどうか!」
「あー、昔居たなあ、世界の山や川のデータを全部覚えている奴とか。あれって正直、何かの役に立つか?」

 

 プリベンターは平和です。
 あともう少しだけ。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――

 

 

【あとがき】
 コンバンハ。
 アロウズはまあパト○イバーのシャ○トのようなものだと思ってもらえればサヨウナラ。

 
 

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