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00-W_土曜日氏_111

Last-modified: 2012-07-22 (日) 04:33:08
 

 人類は争い続けることで人類であり得る。
 戦争と平和を交互に繰り返す終わらないワルツのようなもの、それが人類の歴史である。

 

 かつてマリーメイア・クシュリナーダは、リリーナ・ピースクラフトにそう言った。
 確かに、競争意識や様々な欲望がある限り、人は争い、気付付けあうだろう。
 だが、マリーメイアの言は全てが正しいわけではない。

 

 人は進化する。
 いつの日か、戦うことで自身を保持せずともよくなるように、人類が種としてステップアップを果たす時が来るかもしれない。
 無論、そうなる前に滅ぶ可能性もあるのだが……。

 

 人は争いを求める。
 同時に、その争いが起こらぬことを望む。
 矛盾を抱えたエンドレス・ワルツは、全ての人間の心の中に流れているのだ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「暑いなぁ……」
「そうですね」

 

 デュオ・マックスウェルは前髪をかきあげると、額の汗を指で拭った。
 その横で言葉を返すのはカトル・ラバーバ・ウィナーだが、彼のうなじや頬にも汗が滲んでいる。

 

「なんだってまあ、しかし」
「こんな真夏にあんなことするんでしょうね、彼ら」

 

 二人は今、海岸を望むとある小高い丘に立っている。
 そして、その海岸には。

 

『あーあーあー、わりぇら、えー、我ら“SSGM”はこの海岸を当面に渡って占拠するものである!』

 

『我らの要求はシンプルである! 世界中の砂浜、海岸から観光客を排除せよ!』

 

『彼らが出しているゴミは、確実に地球を汚染している! 我らSSGMはそれを看過し得ない!』

 

『この要求が通らずんば、我々はここを動かない! 当然人質も解放するつもりはない!』

 

『世界統一政府に告ぐ、期限は設けない、だが早急に回答を発表せよー!』

 

 過激派が屯しているのであった。

 
 
 

「環境保護運動はもう少し穏やかに行うものだな」
「目的のみが肥大化した組織にありがちな暴走だ」
「ああいうのは団体とは呼ばんな、不良の集まりとそう変わらん」

 

 ヒイロ・ユイ、トロワ・バートン、張五飛の三人も丘の上にあがってきた。
 海から吹きあがってくる風が、潮の臭いとともに五人を包む。

 

「連動はありませんか?」
「ああ、声明等はまったく出ていない。あのSSGMとかいう連中の単発行為だな」

 

 この五人は、かつてガンダムパイロットとして地球を守った少年たちである。
 若年ながら身についた戦闘スキルは、生半可な軍人や傭兵を遥かに凌駕する。
 現在は政府直属の組織“プリベンター”のメンバーとして、世界の裏から平和を守っている。
 例えば、今日のように。

 

「ところで、SSGMって何の略だ? 知ってるか、ヒイロ?」
「……世界の砂浜をゴミから守る会」
「は?」
「せ(S)かいのす(S)なはまをゴ(G)ミからま(M)もる会、だ。デュオ」
「……」

 

 デュオは額を指先で抑えた。
 何となく、頭痛を覚えたからだ。

 

「……バカか」
「紛れもなくバカだ」

 

 ヒイロの声に容赦はない。
 ガンダムパイロットとして、またプリベンターとして幾多の騒動を乗り越えてきた彼にとってみれば、SSGMなんぞという連中は、それこそ鼻で笑い飛ばすようなものに過ぎない。

 

「もうとっとと片づけようぜ」
「ダメですよデュオ、サリィさんからはまだ何も指示が出ていません」
「人質がいるからな、向こうには」
「MSで乗り込むわけにもいかないだろうしな」
「なら、生身だ」

 

 五飛の言葉に、四人は頷いた。
 潜入工作にも彼らは長けている。
 ヒイロとデュオがまず撹乱し、拳法の使い手である五飛、軽業が得意なトロワが蹂躙、その間にカトルが逃げ道を塞ぐように手配をすれば、まあSSGMとやらは10分かそこらで全滅であろう。

 

「どうせサリィも似たようなこと考えてるはずだ」
「まあ、もうしばらく待とう。サリィにはサリィで現場のリーダーとして責任があるからな」
「でも早くしないと、誰か日射病になっちゃわないか?」
「……人質が倒れたら問題ですね。ですけど、あのSSGMが日射病でバタバタいったりしたら」
「楽でいいな、それはそれで」

 

 五人は丘から降りはじめた。
 おそらく、下に降り切ったところで、時間的にもサリィ・ポォから何らかの指示があるはずである。

 

「ほんと、海にはレジャーで来たいもんだぜ」
「しかし、海と言えば何時ぞやの密漁騒動を思い出すな」
「……あれは大変でしたね」

 

 カトルは小さくため息をついた。
 事件は解決したものの、犯人を逃してしまった。

 

「そういえば」
「ん? 何だ、カトル」
「いえ、別に」

 

 日差しを手で遮りながら、カトルは思った。
 あの時活躍した二人は、今プリベンターにはいない。
 一人は修行の旅に、そしてもう一人は新婚旅行に。
 彼らが帰ってくるまで、まだ当分ある。
 その間は、残ったガンダムパイロットだけで事件を解決しなければならない。
 もっとも、そっちの方が作戦を立てるにしても実行するにしても、スムーズっちゃスムーズに進むのだが。

 

「遅くても、夕飯までには終わらせたいもんだな」
「サリィもそこまで時間をかけるつもりはないだろう」
「人質の中には女性も子供もいる。この炎天下だ、さっさと解決した方がいい」

 

 五人の耳に、彼らの名前を呼ぶサリィの声が聞こえてきた。
 丘の向こうの砂浜では、未だにSSGMのリーダーが声高に演説を続けている―――

 

 

【あとがき】
 コンニチハ。
 コーラさんもグラハムもいませんがとりあえず第三部の導入ですサヨウナラ。

 
 

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