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00-W_土曜日氏_121

Last-modified: 2009-10-20 (火) 10:07:49
 

「そう言えば、スペシャルさんはコーラサワーのまんまなんですかあ?」

 

 ミレイナ・ヴァスティがそうパトリック・コーラサワーに質問したのは、お茶の時間が始まってすぐのことだった。
 シーリン・バフティヤールの後を継いでレディ・アンの秘所、じゃない秘書を務めている彼女は、午前の仕事が終わるとプリベンターの本部に顔を出し、午後のティータイムを皆と共にするのが日課となっている。
 歳は未だ15を越えず、趣味がとにかくオタクロードまっしぐらな彼女であるが、各種資格を数々モノにした才女であり、十分立派にレディ・アンの秘書という大役をこなしている。
 こうやって遊びに来るのは、プリベンターのメンバーの大半が彼女と年齢が近いということもあるが、彼女にとってそれなりに居心地がいいからであろう。

 

「どういう意味だ、オデコ娘三号」
「だってスペシャルさん、結婚をしたですぅ」

 

 つまりは、姓が変わっていないのか、ということ。
 コーラサワーの妻であるカティ・マネキンは、元AEU軍の優秀な戦術予報士として名を馳せた女軍人。
 果たしてカティ・コーラサワーになったのか、それともパトリック・マネキンになったのか。

 

「別に二人ともそのまんまだ。強いて言うなら、パトリック・コーラサワー・マネキンってとこかな」

 

 この時代、夫婦の別姓は当たり前のことになっている。
 無理にどちらかの姓に統一しなくても、社会制度上問題はない。

 

「そうなんですか。てっきり、奥さんはコーラサワーって姓を嫌がっていると思ったですぅ」
「そんなわけねーだろが」

 

 胸を張るコーラサワー。
 しかし、周囲の面子、デュオ・マックスウェル、ヒイロ・ユイ、張五飛、カトル・ラバーバ・ウィナー、トロワ・バートン、ヒルデ・シュバイカー、ジョシュア・エドワーズは心の中で瞬時にツッコんでいた。

 

 いや、嫌がりまではしなくても迷いはしただろうよ、と。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 現在、プリベンターで妻帯者はコーラサワー一人のみ。
 レディ・アンを含むメンバーの中では最も年齢が上なので、その点は別におかしなことではない。
 おかしなのは、このどこまでもマイペースな唯我独尊男が『結婚出来た』ことにある。
 しかも相手が美人の上超才女とくれば、いくら恋愛が理屈ではないとは言え、もうお前そりゃ詐欺だろの範疇である。

 

「コーラサワー家は別に名家じゃないんだろ? 姓にこだわる必要もないだろうが」

 

 デュオがややイジワルな口調でコーラサワーを突くが、そんなもんでダメージを受けるコーラサワーではないのは周知の事実。
 そもそも、コーラサワーという姓自体、全人類を探しても彼の一族以外にどれだけあるか。
 あっても、おそらく片手の指で足りるであろう。

 

「何言ってやがる、コーラサワー家は超名家だぞ」
「そうなのか?」
「ああ、人類始まって以来続く由緒正しい血統だ」
「……そりゃそうだな、間違いない」

 

 デュオは素直に頷いてみせた。
 茶々を入れる気力も失せたからだ。
 腎臓人間、じゃない人造人間でもない限り、どの男も女も、人類誕生からずっと血は繋がっている。

 

「婆ちゃんの話だと、先祖の一人はあのナポレオンの将軍として活躍したらしいぞ」
「……マジかよ」

 

 ナポレオンの部下というと、軍事と行政に手腕を奮ったダヴー、勇猛な騎兵指揮官であったミュラ、勇者の中の勇者と言われるネイ、ナポレオンに最も優れた指揮官と評されたスーシェ、フランス史上六人しかいない大元帥の一人であるスルト、ナポレオンに信頼され最大の親友とまで言われたランヌ、参謀長として高い能力を誇ったベルティエ等、錚々たる面子が揃っている。
 そんな中に『コーラサワー』がいたというのだから、驚きである。
 あっ、何か今ラン○ルールが不意にやりたくなったぞ、と。
 ファミコン版ではなくPC版を。

 

「おう、酒場のナポレオンのな」
「……なんだそりゃ」
「パリのナポレオンていう酒場の客の中では、群を抜いて酒豪だったんだと」
「はあ?」
「で、ついたあだ名が『酒飲み将軍』」
「はああ?」
「飲兵衛同士の酒量合戦ではいつも勝ってたそうだ。大活躍だな」
「はあああ」

 

 頭痛を覚えて、デュオは額を指で押さえた。
 この先祖あって、パトリックあり。
 コーラサワーの両親が果たしてどのような人物かは知らないが、少なくとも、過去の『コーラサワー』がやっぱり『コーラサワー』であったのは確実であるらしい。

 

「それだけじゃねー、先祖はあのジダンとも一緒のチームでプレーしたことがある」
「もう信用しねーよ」

 

 ジダンとは、フランスサッカー界の英雄ジネディーヌ・ジダンのこと。
 自国で開催されたワールドカップで大活躍し、優勝に大きく貢献、パスからドリブル、シュート、全ての能力に傑出しており、300年近く経た今現在でもトップクラスのサッカー選手として称えられている。
 彼とワールドカップ優勝時に共にプレーしていた主な代表選手は、GKのバルテズ、DFのデサイー、テュラム、MFのデシャン、ジョルカエフと、これまた特級のプレイヤーばかり。
 そんな彼らを率いていたジダンと一緒にプレーしたことがあるというのだから、驚きである。
 あっ、何か今サカ○くがやりたくなったぞ、と。
 初作から全て一気に。

 

「おう、ちなみにユニフォームは新橋色だ」
「……ちょっと待て」
「何だ」
「確か、フランス代表のユニフォームは基本青色だろう」
「誰が代表のユニフォームって言ったよ」
「は?」
「何でも、好きな選手の名前をユニフォームに縫いこんでたらしいんだな」
「はあ?」
「で、俺の先祖の町内会チームの主将がジダンの名前を使ったんだそうな。本名は知らん」
「はああ?」
「他のメンバーもそれぞれお気に入りの選手の名前をユニフォームに使ったんだとさ。憧れの選手と一体感、てぇやつか?」
「はあああ?」
「そんな中で先祖はちゃんと『コーラサワー』と縫い込んだんだ。憧れの選手は自分自身! さすがだな!」
「はああああ」

 

 さらに酷い頭痛を覚えて、デュオは両の掌で頭を押さえた。
 この先祖あって、パトリックあり。
 コーラサワーの両親も何だか怪しくなってきた。
 過去がこうなら、今もこうである可能性がある。

 

「まだまだあるぞ、先祖の英雄譚は。えーとだな」
「もういい」
「そう言うなよ、まあ聞け」
「聞かんわ!」

 

 気づけば、最初に話題を振ったミレイナはとっくにトンズラかましており、本部から姿を消している。
 この娘、自分の得意分野とは土俵が違うと見るや即座に撤退をかます辺り、なかなかしたたかである。
 さらに、ヒイロをはじめ、他の面子も既にティータイムを切り上げて、部屋にはデュオとコーラサワー、そしてグラハムのみが残っている状態に。

 

「いやいや、聞けよ。俺の婆ちゃんの話だと……」
「カンベンしてくれよ、まったく」

 

 デュオはそう言い、席を立った。
 遅ればせながら、退却である。
 ここで不用意に付き合うと、どこまで話が転がっていくかわからない。

 

「おい、待てよみつあみおさげ」
「待たんよ!」

 

 パトリック・コーラサワーの婆ちゃんの話がどこまで本当かはわからない。
 でも、大昔からコーラサワーはコーラサワーだったと、妙な確信を抱いた、いや、抱いてしまったデュオであった。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――

 
 
 
 
 

 なお、グラハム・エーカー氏だが。

 

「うむむ……悩む、実に悩む」

 

 一人、次に買うつもりの陣羽織の柄を考えるのにひたすら集中しまくっていた。

 

「やはりカモンが欲しい。ゲンジのササリンドーやサナダのシックスモンセーンのような、サムライの証であるカモンが!」

 

 ティータイムの最初から、ずっと。

 

 

【あとがき】
 コンバンハ。
 マジでランペ○ールやりたくなってきたサヨウナラ。

 
 

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