Top > 00-W_土曜日氏_38
HTML convert time to 0.013 sec.


00-W_土曜日氏_38

Last-modified: 2008-10-15 (水) 19:27:06
 

 世紀の天才、ビリー=カタギリ。

 

 ポニテでエロメガネでサンダルで白衣で一人称がボクなちょっとお茶目な怪しい三十路過ぎだが、その脳みそはアインシュタインも本○猛も道を譲る程で、まさに『イ○テル入ってる』の超高性能。
 蜜柑の皮を燃料にして動く蜜柑エンジンを発明し、太陽光に続くエネルギー革命の旗手と謳われる人物である。

 

「ちょっと待て」
「何だよ、今カタギリ博士に説明して貰ってるところだろ」

 

 そろそろ春の匂いも感じ始められる三月初頭、プリベンター本部はいつになくせわしなかった。
 いや、いつもせわしないのだが、今日はその質が違うと言えた。
 何しろ、彼らが現場で駆る新たな装備と言うか、武器が手に入る日なのだ。

 

「だから待て! 何でポニテ博士の紹介が一番最初なんだよ、俺じゃねーのか!?」
「この件に関してはお前は全然役に立ってないだろ!」

 

 で、そんな日でもコーラサワーは騒々しい。
 もっとも、おとなしいコーラサワーなんぞ想像は出来ないが。
 そんなコーラサワー、フ○ーザを一発で倒すヤ○チャくらい有り得ない。

 

「ふっ、吠える犬は弱い犬、おとなしくカタギリの説明を聞け」
「うるせーうるせー! 黙れナルハム野郎!」
「やかましい! ちょっとは殊勝な態度でへぐぶしわっぐ」
「……すまんなアラスカ野、どうしてもお前だけは言葉より先に手が出るぜ」

 

 コーラスクリューブローを右頬に喰らい、アラスカ野ことジョシュア、悶絶。
 ごくたまにコーラサワーといい勝負をするのだが、十回やれば九回はこうして一方的にKOされてしまう彼である。
 心の中にあるヘタレ解除スイッチがOFFにならない限り、彼に光ある未来はやってこない。

 

「ええと、そろそろ説明を始めていいかな」
「失礼した、カタギリ博士。この馬鹿二人は置いて、先を続けてくれ」

 

 困るカタギリ(でも笑っている)に五飛が先を促す。
 張五飛、ある意味ガンダムパイロットの中でも最も内面が成長した男と言えようか。
 前々から正義正義と小うるさい男だったのだが、トレーズとの一件が決着してからはフッ切れるものがあったのか、

 

「俺は忘れたお前も忘れろ」

 

 を座右の銘に、とにかく力づくで物事を解決する男になった。
 この一文を見ると全く成長していないように思えるが、端的に言えば図太くなったということである。
 元から図太い、というツッコミはさて置きつつ。

 

「まてコラ、馬鹿二人って俺とこのヘタレのことか」
「他に誰がいる?」
「コイツがいるだろ! ナルハム野郎が!」
「お前らに比べたらマシだ」
「ははは、そういうことだ」
「いや、褒められてませんから、エーカーさん」

 
 

 グラハム=エーカー。

 

 通称『プリベンターの変態二号』。
 独特の美意識を持ち、物事の本質を突いているのかそれともただ迂遠なだけの言い回しなのかそれともアホなのか、何とも判別つきがたい喋り方が特徴の元ユニオン軍人27歳である。
 コーラサワーと張りあったり、はたまたジョシュアを無理矢理プリベンターに加入させたりとかなりトンデモな人物なのだが、ある意味コーラサワーと同じく自分に素直な人間ではあるだろう。
 カトルが丁寧に突っ込んであげているのに、全く気づきもしないのだから大物とは言えるかもしれない。

 

「貴方たち……ホント、そろそろいい加減にして」

 

 溜息混じりで呟くのは、プリベンターの現場指揮官であるサリィ=ポォ。
 まだ二十も越してちょろっとの若い女性だが、幾多の危険事を潜りぬけてきた豪胆な人物である。
 トレードマークは見事なオデコだが、それを言うとスマキにされるので要注意。
 なお、オデコ二号のヒルデ=シュバイカーも同様で、こちらはよく磨かれたフライパンが飛んでくる。

 

「ははは、穏やかじゃないねえ」
「すんませんね、どうも」

 

 デュオがカタギリに謝る。
 ガンダムパイロットの中で一番世間慣れしているのが彼であるが、そのためかコーラサワーの相手役を務めさせられたりと何かと貧乏クジを引く傾向にある。
 これはもうこういう性格のキャラの運命だと言っても過言ではない。

 

「さて、それじゃ僕が開発したMSのことだけど」

 

 ちょっと待て、エンドレスワルツ以後MSは地球上から姿を消したのではないか、と疑問を感じる方もいるだろう。
 確かに、軍隊からMSは全て引き上げられた。
 だがしかし、作業用の小型MSは未だ残っているし、廃棄MSもまだ各地に転がっている。
 それにこの前いらんことしいのアリーも言ってたが、屁理屈ながらもMAはちゃんと残ってたりする。
 とんだペテンだ、と思うなかれ。
 この後、カタギリの口からさらなるペテンが漏れるから。

 

カタギリ式ミカンスーツ、略称『MS』なんだけどね」

 

 はいそこ、なんじゃあそりゃあ、などとひっくり返らないように。
 彼は結構本気で言ってるんだから。
 それと、オレンジスーツじゃないんだ、とも突っ込まないように。
 カタギリが涙目になってしまうので。

 
 

 まあ正味、アリーのようなやんちゃくれが現れた以上、プリベンターとしても戦力増強を図らねばならないところ。
 体面上非戦ではあっても、やはり治安維持のための手段はどうしても必要になってくる。
 いずれリリーナ・ピースクラフトが目指す完全平和主義が実現するとしても、それはまだまだ遠い先のことであり、
 それまではプリベンターはドサ周りの隠密同心であると同時に、泥かぶりの仕事人もこなさなければならないのだ。
 ここらへんは、リーダーのレディ=アンをはじめとして、それぞれに覚悟を持っているところである。
 コーラサワーとグラハムとジョシュアは置いといて。

 

「ところでカタギリ」
「何だいグラハム」
「そのミカンスーツ、やはりフラッグ似で変形するんだろうな」
「君はそればっかりだね、結論から言うと似てないし変形しない」

 

「なあなあポニテ博士」
「何だいパトリック君」
「それってイナクトに似て」
「似てないね」

 

「……ビリー=カタギリ博士」
「何だいヒイロ=ユイ君」
「それはウイングに」
「似てないよ」

 

 否定のジェットストリームアタックを食らい、部屋の隅で膝小僧を抱えてうずくまるグラハム、コーラサワー、ヒイロ。
 前の二人はともかく、ヒイロのこの行為は結構異常である。
 まあ彼もリリーナを理解しつつもガンダムそのものには未練があったということなのかもしれない。
 そりゃまあ、本音を言うともっと活躍したかったことであろう。
 誰が最後のバスターライフル発射が強大な敵MSでなく、シェルターだと思うものか。
 見せ場は他のメンツにことごとく取られまくりのエンドレスワルツだったわけで、どこぞのウインドさんなんか突然現れて衛星ドカン、そして最後にノインと肩を並べてバンバンバンだもの。
 ヒイロ、五飛とちょっと削り合っただけだし。

 

「だいたい太陽炉やミノフスキークラフトとかと同列に思われても困るんだけどねぇ、そこはほら、やっぱり蜜柑なわけで」
「……つまり、派手なドンパチは出来ないってことなんだな」
「仕方あるまい、それくらいの縛りがあってこそ平和維持活動だろう」
「平和の守り手が堂々とビームライフルなんか撃てませんもんね」

 

 カタギリの言葉に、とりあえず納得するデュオ、トロワ、カトルの三人。
 彼らは案外あっさりしたものである。
 まあ、エンドレスワルツのラストバトルで不殺とはいえ思いっきり戦えたので納得済みなのだろう。
 彼らの背後で五飛だけがやや曖昧な表情をしているが、これはもしかしたらミカンスーツに青龍刀でも持たせようかと考えてるのかもしれない。

 

「形式はKM−01、カタギリミカン・ゼロワンだね」
「名称は?」
「まだ未定、全高は15m、本体重量は5t」
「ガンダムと比べると一回り小さいという感じですね」
「装甲はガンダミカンα超合金」
「ガンダミカン?」
「僕が開発した材質だよ。ガンダニュウムに比べると強度は劣るけど、弾力性は倍近くある」
「もしかしてそれも」
「そう、蜜柑の皮が原材料」
「凄いですね……」

 

 蜜柑の皮かそれともカタギリの発想か、どちらが凄いとかとははっきり言わないカトルなのだった。

 

「なあなあポニテ博士」
「あ、復活した」

 

 コーラサワーさん、ここで戦列復帰。
 切り替えの速さ、立ち直りの速さは彼の最大の売りでもある。

 

「そのミカンスーツってのはどれくらいの強さなんだよ」
「んーそうだねぇ、単純なファイティング・アビリティなら50ってところかなあ」

 
 

 《アビリティ》とは、ぬっちゃけた話強さのレベルみたいなもの。
 ファイティング・アビリティが格闘能力
 ウエポンズ・アビリティが総合火力
 スピード・アビリティが機動性
 パワー・アビリティが駆動力
 アーマード・アビリティが装甲強度 となり、
 それぞれリーオーの基準値を100として相対された数値がMSの力というわけである。

 

 例えばヘビーアームズなら
 ファイティング・アビリティ=110
 ウエポンズ・アビリティ=160
 スピード・アビリティ=110
 パワー・アビリティ=140
 アーマード・アビリティ=140 となり、
 これだけ見ても火力型のMSであるとわかるようにもなっている。

 
 

「ウエポンズアビリティは?」
「これも50だね」
「スピード…」
「50。いや、オール50だと思ってくれていいよ」

 

 つまりはリーオーの半分の性能、ということ。
 はて、そう思うとおもっくそ弱く見えるから不思議だが、まぁこの世界でこの面子が乗るならある意味妥当とも言える。
 なんせガンダムパイロット勢ぞろい、それにグラハムスペシャルなのだから。
 あ、それとコーラさんとアラスカ野も一応エースだし。

 

「えええ何だよそれ、鬼のようにつまんねぇMS(注:ミカンスーツ)だな」
「文句言うなよ」
「だってよ、ガーッと突撃してバーッと撃ってビーッとぶった斬ることが出来ねーなんてロボットじゃねーだろ」
「ガーとかバーとか、お前は長○監督かよ!」
「うるせーみつあみおさげ! 俺はとにかく強いMS(注:ミカンスーツ)に乗りてぇんだよ!」

 

 ダダをこねるコーラサワー。
 確認しよう、彼は29歳である。

 

「ふん、ガキかおまえへぐべろわしうぇ」
「ちょっと黙ってようぜアラスカ野。お前は俺が発言してもいいというまでダンボールの中で体育座りしてな」

 

 コーラサワーとデュオが正統なボケツッコミ漫才だとすれば、コーラサワーとジョシュアはドツキ漫才の様相を呈してきている。
 ちなみに、コーラサワーとグラハムならボケボケ漫才になる。

 

「俺はああ、スペシャルでええ、模擬戦でええ、二千回なんだよぉおお」
「もうそろそろその台詞、賞味期限切れてるのを自覚しろな」
「そんなぁ!」
「あと、それも」
「はい! ないです!」
「シチュエーションがそもそも違うからな、それ」

 

 やはりデュオ、切れ味が違う。
 良くも悪しくも、コーラサワーのベストパートナーは彼ということになるであろう。
 本人はもの凄く嫌がるだろうが、それが運命ってもんである。

 

「まあいいだろう、デュオ」
「五飛?」

 

 コーラサワーとデュオの会話に割り込んできたのは五飛だった。
 どうも先程から、彼の表情がおかしい。
 何か企んでいるというか、そんな感じの色があるのだ。

 

「MS(注:ミカンスーツ)のテストも兼ねて、模擬戦をやってみたらいいかもしれん」
「ちょっと五飛! そんなの勝手に決めないでよ!」
「いや、僕としても歴戦のパイロットが動かすMS(注:しつこいがミカンスーツ)を見てみたいもんだねぇ」

 

 サリィが慌てて止めに入るが、これは何とカタギリが制した。
 発明家と言うか研究家と言うか、そっちの人はこういう時興味が最優先になる。
 悲しくも罪な性(サガ)ってやつである。

 

「よし、じゃあ決まりだ。俺達がお前の相手をしてやる、MS(注:だからミカンスーツ)でな。ヒイロたちも構わんだろう?」
「俺は別に問題ない」
「俺もだ」
「まあ、皆がやるなら僕もいいですよ」
「やれやれ、しゃあねえな、つきあってやっかあ」

 

 ガンダムパイロット、五飛の意見を承諾。
 一方のコーラさん、もう喜色満面。

 

「うははは! 機体が同じなら模擬戦負けなしの俺が有利に決まってらあ!」

 

 バカと言うか何と言うか、これで機嫌が直るんだから単純極りない。
 しかし女と落とす時はこの脳がフル回転するのだから、まったくプレイボーイという奴は人類の敵である。

 

「ぐははは、積年の恨み今こそ……って、何だよナルハム野郎」

 

 コーラサワーはポンポンと肩を叩かれて振り返った。
 そこには、ニヤニヤの一歩手前といった感じに微笑んでいるグラハムがいる。

 

「思い出せ」
「何を」
「あっちの世界、お披露目でナマス斬りにされた時の相手は何だった?」
「んあ? ふ、古傷をえぐるような質問を……ガンダムだよ、ガンダム!」
「そうだ。そして五飛たちもガンダムだ。ガンダムパイロット」
「……」
「また負けるな、間違いなく」

 

 御愁傷様でした、と言わんばかりのグラハム。

 

「バ、バカにすんな! さっきも言ったろうが! 模擬戦で! 同じ機体なら俺に分がある! あるはずだあ!」
「さあ、どうだかな。……カタギリ、私もひとつ模擬戦に加わろう。私のMS(注:ああミカンスーツ)はあるか?」
「全員分揃ってるよ」
「よし、それじゃあ、AEUのエースとやらの力を存分に見せてもらおうか」
「うおお、どいつもこいつも……ギッタンギッタンにしてやる!」

 

 コーラサワー、怒りのあまり顔が真っ赤。
 やはり単純な男と言わざるを得まい。
 まあ、こんな性格だから『大佐のキス〜!』で発奮出来るのも事実。
 しかし誰が想像したやら、初のガンダム大破の手柄が彼になるとは。

 

「じゃ、じゃあ俺もはるぐへぐめしえ」
「あー、お前はいいやアラスカ野。お前はいい」

 

 ガンダムに致命傷を与えるどころか一撃で屠られた男、ジョシュア。
 同じMSパイロットでエースでも、こうも違う立場と扱い。
 はてさて、世の中わからんもんである。

 

          *           *           *

 

 で、蜜柑エンジン搭載のMS(注:もういいですか、ミカンスーツです)による模擬戦、
 参加はコーラサワー、グラハム、ヒイロ、デュオ、カトル、五飛、トロワの七人に、そして欠席はジョシュアに決定。
 これからの彼らの仕事を測る上で、重要になるこの模擬戦だが、さてその結果と言えば……

 

 ……コーラさんが可哀想になるので敢えて書きません。
 ただひとつ、彼は最後まで負けを認めませんでした。
 だから、模擬戦二千回無敗は依然継続中―――

 
 

 プリベンターとパトリック=コーラサワーの心の旅は新スレでも続く。

 

 

【あとがき】
 保守代わりということでにコンバンハ。
 新しいスレになってたので一発目にsageチェック入ってなかったこのバカスサヨウナラ。

 
 

 【前】 【戻る】 【次】