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00-W_土曜日氏_44

Last-modified: 2008-11-26 (水) 20:52:08
 

 世紀の天才、ビリー=カタギリ。
 ポニテでエロメガネでサンダルで白衣で一人称がボクなちょっとお茶目な怪しい三十路過ぎだが、その脳みそはアイン○ュタインも本○猛も道を譲る程で、まさにイン○ル入ってるの超高性能。
 ミカンの皮を燃料にして動くミカンエンジンを発明し、太陽光に続くエネルギー革命の旗手と謳われる人物である。

 

「ちょっと待て」
「何だ」
「どうしてまたポニテ博士の紹介から入るんだよ! 俺が主役じゃねーのか! しかもこれ、二回目! 全く同じ!」
字数稼ぎだ、気にするな。俺は気にしない」
「いや、いやいやいや!」

 

 えー、さて、プリベンターである。
 ここのところ警備以外にたいした出番もなく、のどかな日々を送っているわけだが、今日はちょっと特殊なお仕事。
 MK−01ことミカンスーツ・ネーブルバレンシアの新武装の実地検証を行うことになったのだ。
 もう何度も説明したようにこのMS(ミカンスーツだかんね)、ミカンの皮を燃料にして動くミカンエンジン搭載のマシンである。
 時代の最先端と言っても過言ではなく、つい先日も業界大手の《人類革新重工》から視察に来たくらいのシロモノだ。

 

「ええと、説明を始めてもいいかなあ」
「どうぞどうぞ、カタギリ博士」
「ちょ、こら、俺の話をふんがくっく」

 

 文句たらたらのコーラサワーを、問答無用でトロワが抑え込む。
 コーラの不満の原因はカタギリにスポットライトが当たっているほかにももう一つあるのだが、ま、それはおいおい。

 

「さてそれじゃあ、まずはこの機体のポイントからおさらいしようかねぇ」

 

 カタギリの話は長い。
 ただ長いのではない、天才の頭脳から引っ張り出される専門用語、比喩、事例の数々は、とことん凡人を打ちのめす。
 以前それでコーラサワーが知恵熱出しかけたのはご存じの通り。

 

「あの、短めにお願いします」
「ああ、うんうん、わかってますよ」

 

 プリベンターの現場リーダー、サリィ=ポォもさりげなく釘を刺す。
 彼女もコーラサワーやグラハムとつきあううちにかなり気が長くなったが、
 それでもカタギリの"御説明"のボリュームはちょっと敬遠したいところである。

 

「皆も知ってると思うけど、MK−01のアビリティレベルはオール50ってことになってるんだけれど」

 

 アビリティレベルについてはもう解説の必要はあるまい。
 簡単に言えば、リーオーを基準とした強さの数値のことである。
 リーオーがオール100なので、ネーブルバレンシアはその半分のパワーということになる。

 

「ミカンエンジンもまだまだ発展途上だしね、出力に関してはこれから僕が強化していくよ」
「まだ余地がある、と?」
「うーん、一朝一夕には無理だけどね」

 

 カトルの質問に対し、穏やかにカタギリは返す。
 いかな天才と言えども、わずかな時間でエンジンそのものをバージョンアップさせることは出来ない。
 機体とのマッチング、バランス調整もある。
 MS(ミカンスーツ)は精密機械なのだ。

 

「で、これからプリベンターは色々と難しい任務に向かうこともあるだろう。ならばオプションの充実こそが最優先ということになるねえ」

 

 MS(これはモビルスーツね)は、公式で使われている物は一部の小型作業用を除き全て活動をストップしている。
 しかし、まだまだ裏で残っているリーオーやサーペントなどがあるだろうし、何より一休さん並のの屁理屈でMAはご健在ときている。
 アリー=アル=サーシェスがゴキブリッサ、失礼、アグリッサでプリベンターに喧嘩を売ったのは記憶に新しいところである。

 

「エネルギーの問題と、そして倫理上の問題からビーム兵器はつけられない」
「当たれば一撃必殺なんだけどな」
「必殺ってのが危ないんですよ、デュオ」
「せめてビームトライデントくらいは欲しいところだが」
「……五飛、カタギリ博士の話、ちゃんと聞いてる?」

 

 警察官がバズーカや対戦車ミサイルを常に持ってちゃ立場上マズイように、プリベンターも一応『事件が起こる前に速やかに、起こってからもひっそりと』仕事を行うのが本分。
 まぁパーソナルジェットで突撃したり人間魚雷やったりしている時点で崩壊している気もするが、とにかくタテマエは表に出す必要がある。
 日本国内の米軍基地に核があっても非核三原則は非核三原則ってやつである。

 

「そこで、殺傷能力がない、もしくはとことん抑えた武器ってことになるねえ」
「はぁはぁ、それでどんなものが」
「うん、こんなものが」

 

 デュオの促しに応えるように、カタギリは白衣のポケットから小型の携帯メモリーを取り出した。
 この時代、もちろんこういった小型記憶装置も進化を遂げている。
 現代のフラッシュメモリーと同じ大きさなら、国立図書館の全書物の内容を画像付きで突っ込んでもなおお釣りがくる。

 

「まずは、そうだね、ネットガンからいこうかな」

 

 メモリーからデータを端末に読みこみ、皆の目の前のモニターに映し出すカタギリ。
 さっき説明は短めにとサリィに頼まれたのを殊勝にも守るつもりなのか、結構淡々としている。
 で、ネットガンとは、文字通りネット=網を圧縮された空気によって打ち出す『拘束道具』のこと。
 これに絡め捕られたら、身動きが著しく取れなくなり、逃走や抵抗はほとんど出来なくなる。
 プ○デターのアレまでいっちゃうとさすがに殺傷兵器になってしまうので、カタギリ製のこれは網の部分が鋼線ではなく強化ロープになっているが。

 

「そしてトリモチガン」

 

 あらお懐かしい、と思われた方もおられるに違いない。
 Zガンダムの一番最初、クワトロさんがリックディアスで使っていたトリモチランチャー、言ってみればあれと同類である。
 あっちはMS(これはモビルスーツ)の指関節に内蔵されていたが、こっちは拳銃の形をしており、トリモチ弾を発射するタイプ。
 粘着する物体を相手に付着させることで関節等の動きを制限するのが目的で、使い勝手はネットガンと似たような感じだと思えば、まぁ間違いなかろう。

 

「次にペイントガン」

 

 これは簡単、ペイント弾を打ち出すやつである。
 コンビニにおいてある防犯用のペイントボールと同じ理屈ね、つまり。
 MAとかにはあまり意味がないだろうが、逃走する車両などには目印がついて追跡が楽になるだろう。

 

「そして電磁警棒」

 

 あらこれもまたお懐かしい。
 そう、パト○イバーのアレと思ってもらって差し支えない。
 スタンロッドと似て否なる物だが、強烈な電流を相手に流しこむことによって動力部、及び伝達部を無理矢理故障させるわけだ。
 一見チャチいが、やる気があれば地球外生命体とだって互角に戦える、バカにしたもんではないのだ。

 

「ま、今はこんなところだね。後は初期装備のミニライフルをどうするかってところかな」
「ほおおおおおお」
「へえええええ」
「ふうううむ」

 

 やれバスターライフルだのヒートショーテルだのビームガトリングだのとごっつい武器を使っていたガンダムパイロットからすれば、こういったものは子供のおもちゃとさして変わりないところだが、それでも対悪人用の装備としてはとても心強い味方。
 おもちゃでも何も、無いのとあるのとではエライ違いなのだから。

 

「よし、では早速テストしてみるか」
「そうだな、実際に使ってみないことには何とも」
「ふむ、このグラハム=エーカー、実に興味をそそられると言っても過言ではないと言えるだろう!」
「隊長、言うという文字が三つ被ってます」
「えーと、とにかく行きましょうか。陸軍の訓練跡地を特別に借りてあるから」

 

 サリィを先頭に、ぞろぞろと部屋を出ていくプリベンターのメンバーとビリー=カタギリ。
 おや、とここで思われた方もおられるかもしれない。
 こういう時、大抵はあのお祭り男が先陣を切るはずなのに、と。

 
 

「ケッ、相手を破壊しない武器のどこがおもしろいってんだか」

 
 

 何とコーラサワー、列の最後方。
 両手を頭の後ろに組んでチンタラ歩き、いったいどこの80年代の不良だと言った感じの雰囲気を醸し出している。
 で、ここで彼の不機嫌なもう一つの理由をお教えしよう。
 まずはヒント、前回彼は一体ミカンスーツで何をしましたか?
 はい、クエスチョーン。

 

          *          *          *

 

「と、言うわけで訓練地までやってきました」
「早いな、展開が」
「移動中なんてなんもおもしろい話ないからいいんですよ」

 

 三流旅番組みたいな流れだが、実際移動中はカタギリ博士による蘊蓄の宴だったので、そんなもんいちいち字に起こしてらんないわけで。
 ゲーデルの不完全性定理とか適者生存と幸者生存の違いとか、そんなもん学者の口から聞いたってパンピーにゃ理解不能なのだ。
 サリィ以下ガンダムパイロットは特殊知識が豊富だが、あくまでそれは実践面に直結するものであって、学問的に有意義かどうかはぶっちゃけ全く関係ない。
 グラハムもジョシュアも、ついでに言っとくとコーラさんも軍の養成校ではトップレベル(でないとエースにそもそもなれない)だったが、彼らにとってもそれは同じである。
 軍人にとって、個人の趣味の範疇を越えたディープな知識は身を滅ぼす素なのだ、いやほんと。

 

「さて、ミカンスーツも揃ってることだし、本来なら模擬戦をやって有効性を確かめたいところなんだけど」

 

 整列したメンバーを前に、一際鋭い目つきでとある人物をギロリとにらみつけるサリィ。
 その眼光はすでに二十歳そこそこの若い女性のものではなく、彼女の日頃の苦労がしのばれるというものである。
「つい先日、どこぞのオバカさんが暴走したせいで、今は模擬戦自体に政府からストップがかかっています。ええ、オバカさんのせいで」
「ぐぐぐ、二度も言うことないじゃんかよう」

 

 さて賢明なる諸氏よ思い出されたし。
 さっきのクエスチョンの答え合わせである。
 前回、コーラサワーが何をしたのかと言えば……はいその通り、視察に来た企業のお偉いさん相手に暴言を吐き、おまけにその企業の社員と三時間超もミカンスーツで模擬戦をやっちゃったのだ。
 おかげで彼のミカンスーツはボッロボロ、さらに周囲の施設にも少なからず被害が出て、レディ・アンのさらに上に位置する政府のお偉方からこっぴどく怒られてしまったという次第である。

 

「俺のせいじゃない! あの銀髪の娘っ子がしつこく喧嘩売ってきたからだっつーの!」
「もともと売りつけたのはアナタの方です」
「そんなぁ! 喧嘩両成敗だろ!?」
「あら、両成敗というからにはアナタも罪の意識を感じてるということかしら」
「ほ、ほんがっくっく」

 

 で、これがコーラさんの不機嫌の原因のもうひとつ。
 自分のミカンスーツが修理中で、テストにそもそも参加出来ないというわけだ。

 

「だってよう、あそこでああなったら本気でやりあうしかねぇだろうがよう……」
「はいはい反省しなさいね。……えーと、そこで仕方ないので、仮想敵と言うか標的を作って試験を行うことにします」

 

 眼光だけでなく舌鋒も鋭く、コーラをやりこめるサリィ。
 一歩一歩成長の毎日です、彼女も。

 

「標的?」
「文字通り的というわけか。動かないのが何だが、まぁ威力を確認するくらいなら十分だろうな」
「少し残念ですね、実戦形式で出来れば効果を見たかったんですけれど」

 

 ちょっと拍子抜けした感じのガンダムパイロットたち。
 彼らも武器を一度捨てた身とはいえ、やはり男、戦いというものに血が騒ぐのはこれは生物として無理からんことではある。
 その意味では模擬戦は良い気分転換にもなるわけで、何もそこに価値を見出しているのは、コーラサワーだけじゃないのだ。

 

「成る程、それで陸軍の訓練跡地なわけか」
「ここなら射撃訓練用の標的がまだ残ってるかもしれませんからね」

 

 軍が訓練で使う標的、それは結構単純なものだったりする。
 老朽化した戦車とか装甲車を狙う場合もあるが、正味の話それはもったいない。
 リサイクルの概念が根付いたこの世界でそんなことをすりゃ、頭の渋い経済学者や民間の平和論者辺りから散々詰られるであろう。
 ほんじゃどんなんがマトなんだと言うと、はい皆さん、マンションを思い浮かべて下さい。
 そんで、窓や壁にかかっている鳥除けのまんまるおめめをさらに思い浮かべて下さい。
 もうここまで言ったらおわかりでしょうが、そう、あんな感じのまーるいおめめが的なのだ(もちろん風船ではないが)。
 実戦形式以外の訓練なんてそんなもんである、ぶっちゃけ。
 軍隊というのはあるだけで金を食う存在、ババーンと費用を注ぎ込む一方で、いかにして細かい出費を減らすかってのは何時の時代でも軍隊運営の至上の命題ってやつなのだ。

 

「使用するのはこのコマンド部隊の訓練場、そしてターゲットは」

 

 サリィがパチン、と指を鳴らす。
 それを受けて、彼女の斜め前にいるヒルデ=シュバイカーが手にしたポータブルのミニコンをカシャカシャと鮮やかな指さばきで操作する。
 訓練場のコントロールをきっちり事前にまとめておく辺り、やはり出たとこ勝負のコーラサワーとは元より資質が違うと言わざるを得ない。

 

「あれです」
「あれ?」

 

 サリィの右の人差し指の先、訓練場の最奥からんぎょんぎょと一枚の大きな板がせりあがってくる。
 その縦にミカンスーツ程の高さのある板が的なのだが、そこに描かれているものとは……

 

「ぶ、ぶはははは!」
「……何だあれは」
「ふむ、これは狙い甲斐がありそうだな」
「むしろこれはビームライフルが欲しいところだ」
「す、凄いですね」
「ううむ、しかしちょっと阿修羅には物足りんな」
「ぎゃははははは、は、は、腹いてええぇぇぇ、のはははははは」

 

 抱腹絶倒するデュオとアラスカ野ことジョシュア、呆れるヒイロとカトル、ハンターの顔つきになるトロワ、五飛、グラハム。
 板に描かれているものとは、それは。

 

「な、な、なんじゃそりゃああああああああああ!」

 

 笑顔でピースしているパトリック=コーラサワーだった。
 身長10メートルの。

 
 

 プリベンターとパトリック=コーラサワーの心の旅は続く―――

 

 

【あとがき】
 次回へ続くコンバンハ。
 半年の間に落ちてくる情報が気になりますねサヨウナラ。

 
 

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