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00-W_土曜日氏_47

Last-modified: 2008-12-05 (金) 21:19:12
 

 さて諸兄に問う。

 

 パトリック=コーラサワー29歳(この作中の話である、あくまで)は馬鹿か否か。

 

 おっと、早押しクイズの如く即答で「はい! そうです!」と答えないでいただきたい。
 よくよく考えてみて欲しい。
 彼はAEU軍のトップエースなのだ。
 それにいくら300年後でも、MS(これはモビルスーツね)は車と違う。
 人型のメカを外部操縦でも内部操縦でも『人間のように動かす』ことがどれだけ難しいことであるかは、H○NDAの某ロボットが我々に嫌と言う程教えてくれた。
 自称とは言え模擬戦で二千回も不敗を続け、性格を差っ引かれてもエースとして上司から認められるということは、操縦のテクニックとMS力学(とでも言おうか)によっぽど通じていないと絶対に不可能。
 野生のカンとか本能とか天才ですからとか、そんな便利な言葉で片付けていい問題じゃないのだ。
 で、それじゃあコーラさんは頭がいいのか賢いのかと問われると、はて、これもそうだと言い難い部分があったりする。
 『知識と知恵は異なる』と言うが、少なくとも机上の学問で秀才である、とは断じて思えない。
 かつてZガンダムでライラ=ミラ=ライラという女性パイロットがティターンズのジェリト=メサを評して、「お勉強ばかりよく出来て馬鹿な子っているんだよね」との発言を残したが、もしかするとコーラさんはこの真逆なのではないか、と思えるのである。
 お堅い問題は不得手だが、理屈と膏薬でカタをつけられる応用証明系の問題はもしかしたらコーラさん、とにかくやられても撃たれても生き残る、つまり結果を出し続けるという意味で大得意かもしれない(ここは意見が分かれるところである。突撃傾向や不意打ちに十分対処出来なかった面から、応用力に疑問符がつくという論もある)。
 事務系などの机に張り付く仕事以外では、この手のタイプが実に現場で重宝される傾向にあり、組織下ながら個々のレベルで命令以外の瞬時の判断を求められるパイロットという仕事は、彼の天職と言うべきか。
 大佐の指示をそのまま通している可能性があるとは言え、部下(?)にそれなりに指示を出している点を鑑みても、やはり単なる馬鹿で片付けるべき男ではない、という結論に行き着くのである。

 

 やあ諸兄、疑惑の目を向けてくれるな、これも理屈と膏薬ってヤツだから。
 どこにでも貼りつくのよ、生きてる限りは。

 

          *          *          *

 

「おいプリベンター・バカ、仕事だから行くぞ」
「このデコッパゲ……コードネームで俺を呼ぶなっつってんだろ!」

 

 プリベンターは今日も今日とて平和である。
 式典の警備とか、OZやデキム=バートンが残した『忘れ物』を処理するのがここのところのお仕事になっている。
 もちろん、それらも立派にプリベンターの任務の範疇内であり、何ら恥じるところはないのだが、イケイケゴーゴージャンプな性格のコーラサワーにとっては、いささか刺激が足りないのも事実ではあった。
 まぁ正味の話、プリベンターが全力介入を図らねばならない程に世界を揺るがす事件がそうそう起こってもらっても困るわけで。
 事件を未然に防ぐ、つまり影の抑止力もまたプリベンターに課せられた使命なのだから。

 

「何を言う、お前なんぞただのバカで済むところをわざわざプリベンターと付けて呼んでやっているんだ、感謝してもらいたいくらいだ」
「そんな理屈で喜ぶ奴がどこにいるんだよ!」
「俺の目の前にいる。自分でスペシャルとか言うような奴は所詮その程度だ」
「……お前ら、仲良いな」

 

 コーラサワーと五飛の漫才的会話に、デュオがテーブルに頬杖つきながらボソリと突っ込む。
 半ば、プリベンターの日常風景と化してきた場面である。

 

「俺はスペシャル様なんだよ! AEUのエースだったんだぞ! 模擬戦二千回負けなしなんだぞ!」
「もうその自己賛美台詞には垢が付いているのに気付け」
「何だとバーロー!」

 

 普段、コーラサワーと最も会話が多いのはデュオ=マックスウェルである。
 それは何故かと言えば、デュオがプリベンターの面子の中で一番のツッコミ属性の持ち主だからだ。
 コーラサワーのボケ(と、本人は自覚していないが)にビシバシと言葉のレイピアで突き刺していくデュオは、どう見てもプリベンターの中でベストマッチな取り合わせと言えるかもしれない。
 ま、デュオは甚だ不本意だろうが。

 

 そして、デュオの次にコーラサワーと言葉を交わす回数が多いのは、これが何と張五飛。
 ツッコミともボケとも違う、独自の思想と理屈(これを変形ジャイアニズム、ウーフェニズムと呼ぶ)でもって行動する彼は、ぶっちゃけて言えば相性が良い相手なぞいない。
 基本、攻撃的な言動に終始して相手の意見を素直に通さないからだが、それでもそれなりに成長しているのである、彼も。
 もともと頭の回転の良さはガンダムパイロットの中でも随一で、意志も強い男なのだ。
 ただ、ちーっとばかりイジワルな方向に精神が伸長しちゃった感じはあるけれども。

 

「よしわかった、次からプリベンター・バカと呼ばないでいてやる」
「ん、んあ? わかりゃいいんだよ、わかりゃ」
プリベンター・スペシャル・バカと呼んでやる、本望だろう」
「……お前、コラ五飛、喧嘩売ってんのか」
「ほう、お前は買っているのか? 喧嘩を」
「あんたたち、いい加減にしときなさいよ……」

 

 呆れたような口調で、プリベンターの現場指揮官であるサリィ=ポォが呟く。
 ほっとくと亜光速でどんどん地平の果てに飛んでいくコーラサワーとガンダムパイロットの会話に待ったをかけるのは、いつだって彼女の仕事である。
 ちなみにヒルデ=シュバイカーも会話をストップさせることが出来る。
 フライング・フライパン的な意味で。

 

「早く出発しましょう、現地にはグラハムさんとジョシュアさんだけなんでしょう?」
「まぁ大丈夫だろう、あの二人も相当にアレだが、少なくともコーラサワーよりはマシだ」
「今ふと思ったんだが、パトリック=コーラサワーという男はいったいプリベンターの仕事のどこに寄与しているんだろうな」

 

 カトル=ラバーバ=ウィナーを端的に評すると、『人の良いお坊ちゃん』となる。
 実際、中東の名家ウィナー家の跡取り息子で、立場的にはかなり恵まれた存在である。
 家柄が上級な上に人当たりが良く、礼儀も正しいので、対外折衝なんかにはうってつけの人物なのだが、これで結構頑固な面もあったりする。
 それに、怒らせたら一番怖いという二面性も密かに持っている。

 

 ヒイロ=ユイは言わずと知れたガンダムWの主人公さん。
 もっとも、この物語ではとことん影が薄いが、まぁ寡黙で対人の関係作りが拙いタチなので、仕方ないとは言える。
 何せ周りが個性的に過ぎるわけで、どうしてもワリを食ってしまうわけだ。
 リリーナ=ピースクラフト絡みなら一気に主役になるわけだが、さてさて、今後そういった展開があるかどうか。

 

 トロワ=バートンは謎の軽業師である。
 いや、本当に。
 本名は不明で、トロワ=バートンという名前は借り物に過ぎない。
 バートンという姓でわかる通り、本物はデキム=バートンの一族でヘビーアームズの本来のパイロットだったのだが、諸事情により今は彼が「トロワ=バートンになって」いる。
 もう今更そのことについて言及する人間もおらず、また本人もこのままでいいと思っているので、余程のことが無い限り、彼はこの後もずっとトロワ=バートンであり続けるだろう。

 

「おいお前ら、俺がプリベンターにとって邪魔だっていうのか?」
「そこまでは言っていないが」
「そ、そうですよ」
「正直、ちょっとは思っている」

 

 この三人はあまりコーラサワーとマンツーで会話をしない。
 言葉を交わすとすれば、今のように複数対コーラサワー一人という図式の上で行われることが多い。
 コーラサワーに関わりたくない……と言うより、会話のネタが無いと言う方が実際のところである。
 何もフェルマーの定理量子重力理論について語れというわけではない、本当に会話が続かないのだから、しょうがないのだ。

 

「ざっ、けっ、んっ、なぁあああぁぁぁああ!」
「うるさい奴だな、本当に」
「名誉じゃねーか! このスペシャル様が在籍してるってことだけでプリベンターは価値が上がるんだぞ!」
「何だその『アイドルが踏んだからガムの噛みカスでも価値がある』みたいな屁理屈は」
「ヒイロ、相当に違うと思いますけど」
「でも当たらずとも遠からずだと思うぜ」
「聞き捨てならん、俺達はガムの噛みカスか」
「五飛、何でも噛みついたらいいってもんじゃあない」
「ガムだけにな」
「デュオお前、上手いこと言ったつもりか」

 

 一人ひとりでは弾まない会話も、こうして五人集えばかしましい。
 結局こうなるのだ、コーラサワーのゴーイングマイロード発言を中心に、ガンダムパイロットたちが茶々を入れるという展開に。
 嗚呼、仲良きことは美しきかな、かもしれないなんて言っちゃったりなんかしちゃったりして

 

「あなた達! いい加減にしなさい! これ以上の遅延行為は罰金対象にします!」

 

 そして引率者、じゃない現場責任者サリィ=ポォの一喝。
 その向こうで、すっかり準備を終えたヒルデがひとつ、呆れたように大欠伸をするのだった。
 早くしなさいよ、揃って馬鹿みたいじゃない―――と。

 
 

 今日もプリベンターは平和である。
 そう、とことん。

 
 

 プリベンターとパトリック=コーラサワーの心の旅は続く―――

 

 

【あとがき】
 GWは法事と仕事があるので早めにコンバンハ。
 皆さま良い休日をお過ごし下さいサヨウナラ。

 
 

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