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00-W_土曜日氏_60

Last-modified: 2009-01-25 (日) 19:10:16
 

「うーんうーん」
「だいぶうなされているわね」
「まあ……無理もないけどな」

 

 アラスカ野こと、この度目出度く姓を小説で補完してもらったジョシュア=エドワーズは寝込んでいた。
 デュオが呟いたように、実際無理もない。
 海岸から遥か沖合まで荒波に耐えつつ全力で泳いだのだ、そりゃ体力も精神力も削られようてなもんである。
 本人の意思で突撃したんだから自業自得と言えないこともないが、彼にとって不幸だったのは共に突貫かましたのが歩く天然痘、じゃない天然党員のグラハム=エーカーだったことにある。
 下手に弱音吐いたり休んだりしようもんならあの体力阿修羅馬鹿のこと、「情けない! 軍人ならば死地にあってこそ矜持を見せろ!」などと曲解武士道を説いて無理矢理引っ張っていくのだからたまらない。
 成る程、名パイロットと称賛されてるにも関わらず進んでついてきた部下がダリルとハワードの二人しかいなかったのは、旧知の間柄である以上に「結果的に残ったのがこの二人」に過ぎなかったのではとも思えるわけで。
 多分たくさんの部下や後輩から慕われてたことはいたんだろうが、彼の密林をナタではなく素手で叩き割りながら進むが如き剛直さ(?)にそうそうコバンザメできる人間もおらんに違いない。
 フラッグのテストパイロット事件よりもきっとそっちの方が彼にとっては問題だったのではと……

 

 失礼、話が逸れスタルビーイング。
 エドワーズさん家のジョシュア君のことである。
 とにもかくにも疲労困憊精神減退、あえなくここにリタイヤとなった次第。

 

「うーんうーん、怖いよう怖いよう、波の間から阿修羅がいっぱいやってくるよう」

 

 顔面に冷や汗を滴らせつつ、布団で見悶えするジョシュア。
 かわいらしい美少女が眉根を寄せてうなされ寝る姿は色々と需要があるかもしれないが、いい歳こいた寝汗塗れの男なんぞあっちの道の人間にしか求められない類のものである。

 

「おかしな夢でも見てるみたいね」
「間違いなく悪夢だろうな」
「錯乱夢、とでも言ったほうがいいかもしれませんね」

 

 一応そんなジョシュアを看病するプリベンターの面々たち。
 まぁ彼らのしたことといったら布団を敷いてあげたことと冷えピタを額に貼ってやったことぐらいで、後の医療的処置は全部お医者さんがやってくれたわけだが。
 あれサリィって軍医じゃなかったっけなどというツッコミはここでは無視。
 今の彼女は医者ではなくプリベンターの現場指揮官ですしー、などとタテマエを一応言っておく。
 ぶっちゃけ彼女にも選ぶ権利はあります、患者をね。
 仁の道から外れてしまうけれども、まぁそこはそれ、
 あのブラッ○・ジャックだって「心の腐った奴」の命を助けなかったこともおっとまた逸れスタルビーイング。

 

          *          *          *

 

「おおい何時までアラスカ野のむさ苦しい寝顔を見てるんだよ」

 

 はい、ここでようやく我らが性パトリック、いや失礼聖パトリックことコーラサワーさんの登場です。
 頭が高い控えおろう、ここにおわすお方をどなたと心得る、先の一期においての不死身少尉、パトリック=コーラサワーなるぞ、ええい一同頭が高いと申しておる、控えい、控えいい―――とは、格さんも助さんもいないので口上ありませんよろしく。

 

「早く来ねーとカニを全部食っちまうぞ」
「お前、昨日からいったいどれだけカニを食べてるんだよ」
「カニと女は食った数を覚えていない」
「……下らん冗談はやめとけよ」

 

 コーラさん、隣の部屋で一人カニパーティー状態になっている。
 いや、海辺の危機を救ってくれる(はずの)プリベンター、もちろん滞在費は公費で落ちる。
 もちろん食事も込みなのだが、このカニカニ三昧は地元の大サービスで、暮らす人々の期待料と言っていいだろう。

 

「もう既にアラスカ野の分は俺が食っちまったが」
「……わかったわ、私たちもお腹が減ったし、いただくとしましょう」
「腹が減っては戦は出来ないですからね」
「策が無いともっと戦は出来ないけどな」
「あらデュオ、敵がいないともっと戦は出来ないよ?」

 

 上から順にサリィ、カトル、デュオ、ヒルデの発現也。
 なぁお前ら、本当に謎の怪物・巨大カツオノエボシを倒そうという気持ちあんのか?

 

「あら、ところで彼は?」
「彼? ああナルハム野郎のことか」
「そう」
「アイツなら自分の分だけ食べると外に出て行った」
「え? ま、まさかまた海に?」
「いや、何だか無性に体を動かしたいからそこら辺を走ってくるんだと」
「……ああ、バカはバカでも体力系のバカだったな、あの人」

 

 ちなみにこの日、人気が無いからという理由でわざわざやってきて、へこへこちちくりあっていたバカップルが何組か謎の人物に説教されるという事件が起こったが、さてその説教をかました人物の名前は一切後世に残っていない。
 ただ「夜七時を越えて物陰でイチャついていると怪人に怒られる」という都市伝説だけがこの地に語り継がれることになったが、それはまた別の話。

 

「うーんうーん、カニカニここはどこカニ……うーんうーん」

 

 哀れジョシュア、しかし君には敗北が良く似合う。
 いつか君にも輝ける未来が来る、かもしれない。
 もう出番のない本編以外で。

 

「おいみつあみおさげ、ふすまの横にビールのケースがあるから取ってくれよ」
「カニにビールか……お前、痛風になるぞ」

 

 で、アラスカ野=ジョシュア=エドワーズさんの苦悩なんぞかまいもせず、我らがコーラサワーさんはカニをパクつくのであった。
 やれやれ、ホントにこれでいいのカニ。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心のカニは続く―――

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 ……さて。
 コーラサワーさんがカニを頬張っている頃、海の中では……

 

「お頭、今日もたんまり捕れましたぜ! カニにアワビにサザエに」
「ふふん、がっぽりだな。たまんねぇなおい!」

 

 とある某悪人が海産物を乱獲していた。
 大きな、とても大きなクラゲ型の潜水艦に乗って。

 

 

【あとがき】
 コンバンハ。ではまた来週サヨウナラ。

 
 

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