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00-W_名無し氏_02

Last-modified: 2009-01-06 (火) 19:25:47
 

 ここはプリベンター本部。
 先日、カティ=マネキン直々の周辺警護要請を受けたプリベンターの面々だったが、コーラサワーの一件で結局詳しい内容を聞きそびれていたのだった。
 今日は改めて依頼内容を聞くためにプリベンター達は集まったのである。

 

「これを見てほしい」

 

 カティが一枚の手紙を見せる。

 

「これは……脅迫文ですか?」
「そうだ。内容は……」

 
 俺は、双葉PMCトラスト商事のアリー=アル=サーシェスだ。
 いきなりで悪いが、今度ブリュッセル新大統領府で行われる平和記念式典で、あんたを殺すことにした。
 俺は平和なんて望んじゃいねえ。
 だから、平和の象徴みたいに振る舞ってるあんたを殺せばまた戦争が起きるぜ。
 おっと、逃げるなよ。
 逃げたらテロに屈した臆病者だとマスコミに言いふらしてやるからな。
 全世界に血まみれの天使とやらを見せつけてやろうってんだよ!
 

「双葉PMCトラスト商事?こんなのが大佐の命狙ってやがんのか?」
「……ん?封筒に何か書いてあるな」

 

 トロワが脅迫文にあるはずの無いものを発見した。

 

「……って奴らのアジトの住所かよ!」

 

 デュオは思わず手紙にツッコミを入れてしまった。
 ご丁寧に差出人の住所が書かれていたのだ。

 

「アジトがわかっているなら話は早い。すぐに乗り込むぞ。私は我慢弱いのだ!」
「まて、プリベンター・アホ。 この住所はここからかなり遠いし、もう引き払って準備を進めているはずだ。別のアジトを用意しているだろうから戻ることもあるまい」

 

 五飛が血気に逸るグラハムを制止する。

 

「それに……」
「それに、何だ?」
「使い終わったアジトは爆破するのが、テロリストの間で流行しているようだからな」
「どういう意味だ?カタギリ風少年」
「漫画の影響じゃないでしょうか? 少年マ○ジンの」

 

 サラっと変なことを言ったグラハムだが、彼には髪を結んでいる人は全部ビリーのように見えるらしい。
 というよりか名前を発音しずらいから適当にごまかしたとか。

 

「へっ!テロリストだか、侍だか知らねえが、俺が大佐を守れば良いだけだぜ」
「お前はチームワークという物を知らんのかっ!」

 

 カティの鉄拳がコーラを襲う。

 

「イヤッフゥ!」

 

 きゅうしょにあたった!
 こうかはばつぐんだ!
 コーラはきあいのタスキでもちこたえた!

 

「データベースによると、アリー=アル=サーシェスは要人暗殺やオレオレ詐欺、女の子のスカートめくり等数々の悪行を働いてきた凶悪犯だそうよ」
「何か変なの混じってませんでした?サリィさん」

 

 カトルの質問はスルーして、サリィは話を続ける。

 

「これが、アリーの手配写真。覚えておいて」

 
 ―世界の人々に凶弾を ぎっちょん党― 党首・アリー=アル=サーシェス
 

「選挙ポスターの写真?他にマシなのなかったのかよ!」
「仕方ないのよ。過去に宗教団体を作って、選挙戦に立候補したものしか資料がなくて……」
「へっ!こんな赤い髪した奴、俺がぎったんぎったんにしてやるぜ」

 

 コーラは妙にテンションが高い。
 愛しのカティが傍にいるからだろうか。

 

「……役割分担を発表するわ」(この子たちに世界平和を任せて本当に良かったのかしら……)

 

 不安に襲われつつも、サリィの発表した役割分担はこうである。

 
 会場内警備:ヒイロ、五飛、ジョシュア、カトル、デュオ
 対MS(A)戦迎撃(一応):グラハム、トロワ
 ボディーガード:コーラサワー
 現場指揮:サリィ、ヒルデ(サポート)
 

「直接付くボディーガードがあいつ一人で良いのか?不安だ」

 

 ヒイロが率直な意見を言う。

 

「あまり人が多すぎると機敏に動けないわ。それにあなたたちには事件を未然に防いで欲しいし」

 

 確かに、事件が起きてしまうくらいならテロリストを捕まえて、何事もなかったように振る舞える方が一番だろう。

 

「任務了解。ところで式典はいつ開催される?」
「二日後よ。それまでも警備は怠らないでね」
「了解!」

 

 これで作戦会議は終了したのだが。

 

「……」

 

 ふと、黙り込む五飛。
 何事かとグラハムが話し掛ける。

 

「どうした?少年」
「……お前の友人のカタギリ博士に頼みがある」
「ほう、カタギリにか。で、内容は?」

 

 五飛はグラハムと何やら話し始めたのであった。

 

          *          *          *

 

 場面を変えよう。
 ここは双葉PMCトラスト商事のアジト。

 

「おうっ!おめえら元気にしてっか!」

 

 長髪赤髪の髭を生やした男。
 この男が、双葉商事のボス・アリー=アル=サーシェスである。

 

「チィ〜ス」

 

 部下達がヤンキーのごとく威勢よく答える。

 

「遂に二日後、俺達の祭りが始まる。宇宙の歌姫ことカティ=マネキンを殺れば世界は大混乱に陥るはず。きっとまた戦争が始まるぜ。そうすりゃ俺達は傭兵業でガッボリ儲けられるってもんよ」
「御頭!また暴れられんですねっ!」
「おうよっ!今は祭りのための下準備だ。行くぞ!」
「チィ〜ス!」
(……俺は嘘つきでな。本当は私怨であの女を殺してえんだ)

 

 以下アリーの一人語り。

 

(俺は昔、東南アジア戦線で軍属として戦ってた。
 そんときに、ロック歌手としてデビューすることになった。
 CDも売れて、戦うロック歌手として生きて行こうと俺は胸に誓った。
 ところがぎっちょん! 戦争が終結しちまった。
 その上、軍人上がりのカティなんたらかが出てきて大ヒット。
 俺の歌は見向きもされなくなっちまった。
 俺はあの女が憎い!
 だからあいつを殺して、俺がもう一度スターになってやるんだ!)

 

          *          *          *

 

――そして二日後――

 

 ここは、ブリュッセルの新大統領府。
 『マリーメイアの乱』の際、ヒイロがウイングゼロのツインバスターライフルで目茶苦茶にしたために新たに建て直されたものだ。
 今日は新大統領府の完成披露と共に平和を願う式典が催されている。
 式典の前には立食パーティー。
 和洋中やアフリカの郷土料理など様々な料理が振る舞われている。

 

「このギョーザうめぇ〜。いやソバってのも良いな」

 

 何故か食い気に走る男、パトリック=コーラサワーである。

 

「おいおい、お前ボディーガードの仕事しないで何やってるんだ」

 

 会場警備をしていたデュオがツッコミを入れる。
 以前出た警備体制で皆動いているのだが、カトルはウィナー家当主という立場上、世界各国の要人と話さねばならず、他に気を置く余裕がない。

 

「んぁ?大佐を守るためには体力ないといけねえ。そのための腹ごなしだ」

 

 真っ当な事を言っているはずなのだが、コーラサワーが言うとただ単に食事がしたいだけのように思えるのが不思議である。

 

「……全く。あいつ自覚あるのかねぇ」
「諦めろ。俺達は与えられた任務をするまでだ」

 

 本当はリリーナの元にいたいヒイロがもどかしそうに言う。

 

「おっ!このミートソーススパゲッティうめぇ。ん?ボルシチって何だ?」

 

 ここで通信が入る。

 

『……こちらプリベンター・ウォーター。もうすぐカティさんが壇上に上がるわ。注意して』

 

 プリンター達にも緊張が走る。
 コーラサワーを除いて。

 

『え〜次は、宇宙の歌姫ことカティ=マネキンさんの登場です」

 

 司会がカティを壇上に迎い入れる。
 カティは純白のドレスを着ていた。

 

「大佐〜!綺麗ですよ〜。大佐〜!」

 

 本来の仕事を忘れて只のミーハーになっているコーラサワー。
 これで良いのかプリベンター?

 

『ただいまご紹介預かりましたカティ=マネキンです。私が軍を辞め……』

 
 

「……おかしい」
「どうした?五飛」

 

 怪訝な顔をする五飛にヒイロが尋ねる。

 

「奴らにはいくらでも襲うチャンスがあったはずだ……しかし、全く動きがない」

 

 確かにコーラサワーがあんな状態なのだから、いくらでも襲えるはずである。

 

「奴らは脅迫文の中で『全世界に血まみれの歌姫を見せつける』と言っていたな……!まさか!?」

 

 五飛もヒイロの考えを察知したようだ。

 

「プリベンター・ウォーター、こちらプリベンター・ドラゴン。 大至急、会場内のカメラマンの素性を確認してくれ」

 

          *          *          *

 

(……遂にこの時が来たぜ。俺は嘘つきでな。この会場にはゲイリー=ビアッジとして来てるんだよ。政府関係の仕事を取り仕切る派遣会社に登録したかいがあったぜ。給料は安いし、過酷な労働ばかりだったが、信頼を得たことで重要な仕事を任された。まさか珊瑚礁みたいな髪型した暗殺者が来るとは思ってねえだろ。変装は完璧だぜ。絶好のアングル。さぁ、歌姫が血に溺れる時が来たようだ)

 
 

「五飛、2カメよ。壇上の右側にいる男。会場内を映し出す役なのに、さっきからカティさんしか映してないわ。」
「くっ!この位置から近づいたのでは遠すぎる。コーラサワーは……気づいていない」

 

 緊迫した状況で考えを必死に巡らす五飛。

 

(…全員、奴から離れすぎだ。大声をあげたら焦って撃たれる可能性もある。どうすれば……!?)

 

 ふと傍らを見ると出番とセリフがなくて暇人と化しているアラスカ野ことジョシュアが。

 

「暇ならたまには役に立ってみろ!」

 

 五飛がジョシュアの胸倉を掴む。

 

「ん?え?それってあいつの仕事だろ〜〜!」

 

 ジュシュアの人間ロケットが会場を飛ぶ!

 

(……カメラ型拳銃。ガバメントなんちゃらかんちゃらをカメラの下部分に装備したんだぜ。当たっちまえば人間なんて肉塊よ)

 

 壇上ではカティが『WHITE REFLECTION』を歌っている。
 彼女の周りでは、コーラサワーがヲタ芸ならぬコーラ芸を披露しながらピョンピョン跳ねていた。

 

「逝っちまいなっ!……ん?おわっ!」

 

 銃声が会場に響く。
 一瞬、一瞬だけ人間ロケットが届くのが遅かったのだ。
 しかし……

 

「大佐あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 スペシャルだからなのか?
 勘が冴えているのか?
 凶弾がカティに届く前に、驚くべき速さでコーラサワーが立ち塞がった!

 

「ギャッフゥ!」

 

 その場に倒れ込むコーラサワー。
 もろに腹に当たったらしい。

 

「あのカメラマンを取り押さえろ!」

 

 五飛が怒鳴り声を上げるが、会場は恐怖に包まれ、混乱している。

 

「ちっ!しくじったか……おいっ!アグリッサを出せ!脱出すんぞ!」

 

 伸びているジュシュアを尻目に、アリーはまんまと会場を抜け出すのであった……

 

          *          *          *

 

「パトリック? おい!どうしたんだパトリック! 返事をしろ!」

 

 壇上では、カティが涙を流しながらコーラサワーを叱咤激励していた。

 

「た、大佐……やられちゃいました……」

 

 微かな声でコーラサワーは返事をする。

 

「もう良い。安静にしていろ」

 

 コーラサワーの腹からは血が溢れ出している。

 

「俺は……大佐がこの世にいてくれて嬉しかったです……」
「う……う………」

 

 カティは大粒の涙を流していた。

 

「泣かないで下さい大佐……俺は大佐を守ることができて満足です……」
「もう何も言うな!」
「俺は……もう………限界です…………」

 

 そう言うと、コーラサワーは力なく倒れ込んだ……

 

「おい、パトリック?パトリック!パトリック=コーラサワー!!!」

 

 カティの叫びが会場に虚しく響く。
 純白のドレスは血で濡れていた……

 
 

〜綺麗な世界〜
 「あ〜なんか綺麗なお花畑だな〜。 あ、大佐がいる。 大佐〜!最後にキッスを下さい〜」

 
 

「イテッ!あれ、大佐は?大佐はどこだ?」
「何寝ぼけてるんだ。ここは病院だぜ」

 

 デュオの言う通り、ここは病院。
 デュオの隣にはムスッとした表情のヒルデ。
 さっきコーラサワーは寝ぼけてヒルデに抱き付いていたのだ。

 

 と、ここまで来て疑問に思う方も多いだろう。
 コーラサワーは、なんであれだけ死亡フラグ全開な言葉を言ったのに普通に生きてんの?
 この疑問に答えるにはある人に説明して貰うほうが早いだろう。

 

「どうも、ビリー=カタギリです。実は五飛君に頼まれて新型の防弾チョッキを作成していたんだよ。それをコラサワー君に着せておいたんだ。いや〜大成功だったね。ちゃんと理論通り、みかんの成分が強固な膜を作り体をガードしてくれた。え?血が出てたって?あれは血糊だよ。死んだと思わせて反撃を喰らわせるために仕込んでみたんだ」

 

 じゃあコーラサワーはノリで気絶したのか?
 それを説明するためにあの日の夜へ時間を戻してみよう。

 

 

「おっ、美味そうな料理だな」

 

 あの日コーラサワーはやたらと食った。
 きつね蕎麦一杯、餃子20個、スパゲッティ一皿、梅茶漬け一杯、
 ボルシチ一皿、ラーメン一杯、ハンバーガー2個、ひつまぶし等々……。
 食い過ぎです。
 そして梅茶漬けとひつまぶし(鰻)。
 食べ合わせの悪さ。
 あの時コーラサワーが言いたかったのは、

 

「大佐……俺はもう限界です………腹が

 

 だったのだ……

 

 

 グラハムとトロワの働きでMAは破壊したものの、結局アリーには逃げられてしまった。
 しかし、不死身の男パトリック=コーラサワーがいる限りきっと世界は平和なことでしょう。
 頑張れコーラサワー!
 ぼくらのパトリック=コーラサワー!

 
 

(……押収した銃を調べたけど、下手したら防弾チョッキも貫通してたことは内緒にしとこ) byヒルデ

 
 

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