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00-W_模倣の人氏_16

Last-modified: 2009-01-25 (日) 19:31:16
 

 プリベンター本部では、今日も明るい会話が絶えない。

 

「警察で予定されていたちーこりんの一日署長就任イベントは諸事情により中止だそうですよ」
「えーっ、残念! 俺見たかったのに。ちーこりんの婦警姿は絶対可愛かったろうになぁ」
「お前、ちーこりんのファンだったのか」
「可愛い娘なら全員好きだぜ。まあ大佐に敵う娘はいないけどな」
「お前らしい回答だ。しかし、ちーこりんよりもむしろ一日署長に相応しいのは、ふーこりんだと俺は思うがな」
「それは何故ですか?」
「コスプレアイドルとしてキャリアを評価してな。だがそのマニアックさをどう捉えるかは意見の別れるところだろう」

 

 テレビを見ながらそんな談話を繰り広げているのは、ソファに腰掛けるコーラサワーと、彼の膝の上に座ったマリーメイア=クシュリナーダと、そして背もたれに肘をついて寄りかかっているヒイロの三人であった。

 

「一般的な人気と知名度でいけばちーこりん。それは否定できない。あるいは咽喉の手術を克服したばかりで話題性のあるみーこりんって線もあったかもしれないが、手堅く考えればよーこりんも捨てがたいところだ。けれども彼女には既に一日署長の経験がある」
「お前なんでそんな詳しいのよ?」

 

 離れた場所で盗み聞いていたデュオが堪りかねてツッコミを入れるも、ヒイロは平然とした様子で、

 

「一般常識の範疇だ」

 

 と答えるのだった。

 

 ところで、何故マリーメイアがいるのかといえば。
 理由は単純、珍しく本部へ顔を出したレディ・アンについて来たからである。

 

「お前もちーこりんやカティ大佐みたいに美人に育てよー」
「努力は怠っていないつもりです」
「いい心掛けだな!」

 

 殊勝なマリーメイアの頭をコーラサワーは満面の笑顔で撫で回した。

 

          *          *          *

 

 不意に本部の扉が開かれ、外回りから戻ってきたサリィが顔を覗かせる。

 

「ただいま戻りました。ふぅ、暑いわね、アイス買ってきたから皆で食べましょ」

 

 彼女が手に提げた袋を掲げて見せると、待ってましたと言わんばかりにその場の全員が群がった。
 一人一つずつ配っていって、サリィは気がつく。

 

「あら、五飛は?」
「彼ならたった今、武術の鍛錬で掻いた汗を流すといってシャワー室に行きましたよ」

 

 どうやらサリィが帰ってくるのと入れ違いになってしまったらしい。
 ならばしばらくは戻ってこないだろう。
 五飛の分をしまっておこうと冷凍庫の扉を開けた瞬間――
 けたたましいほどの絶叫が本部中に響き渡った。
 声の方向は紛れもなくシャワー室がある方から。

 

「五飛!?」

 

 皆が振り向くと同時、五飛が扉を開けて転がり込んできた。
 よほど慌てていたのだろう、かろうじて下は履いているが上半身は何も身に着けていない。
 酷く青ざめた様子で唇を震わせている。
 勇猛な彼をこうまでさせるとは、一体何事が起こったのだろうか。

 

「だ、だ、だだだだだ」
「落ち着いて五飛。何があったの」

 

 五飛は一度唾を飲み下し、改めて口を開いた。

 

「誰だ!風呂場を薔薇尽くしにしたのはっ!」
「……はい? なんですって?」

 

 サリィが眉を顰めて問い返すと、彼は世にも恐ろしい物を見たかのように頭を抱えてこうのたまった。

 

「石鹸からシャンプーからバスオイルから何もかもが薔薇の香りで、その上シャワーカーテンまで薔薇模様とはどういうことだ。誰だ!あんな真似をしたのは!」
「あ、はい俺ー」

 

 挙手したのは他でもない、コーラサワーその人であった。

 

「だってここのシャワー室って全っ然洒落っ気ねえんだもん」
「だからとてあんな悪趣味な真似をしなくともよかろう!」
「どこが悪趣味だよ、高貴と言え」
「そうだぞ張五飛。あの方もこよなく薔薇を愛しておられた。薔薇の美しさを理解できぬとはやはりまだ未熟だな」

 

 コーラサワーに同調するように、レディ・アンも口を添えた。
 ちなみにレディの言う『あの方』とは、説明するまでもなくトレーズ=クシュリナーダ閣下のことである。

 

「だから嫌なんだ。何が悲しくて風呂のときにまであんな男の面影を思い出さなければならんのだ」
「気にしなきゃいいじゃん」
「それができれば苦労はせん! とにかくさっさとあれらを撤去しろ、あんなものに囲まれるなど耐え切れん」
「えー、せっかく俺が自費で揃えたのに。ちょっとくらい我慢しろよ」
「無茶を言うな、嫌なものは嫌なのだ!」

 

 どうやら本気で拒絶反応を起こしているらしい。
 目を血走らせて頭を掻き毟りながら全力で訴えてくる。
 そこには普段の冷静沈着な五飛の姿は微塵も存在しなかった。
 そんな彼らの様子を大人しく眺めていたマリーメイアが、ぽつりと一言。

 
 

「大人げない……」

 
 

 ピシリ、と五飛が硬直した。

 

「嫌だ嫌だと喚き散らすことのなんと愚かしいこと」

 

 何かがひび割れる音がする。

 

「これが誇り高き戦士の成れの果てかと思うと、見ているこちらが情けない気持ちになります」

 

 何かが瓦解する音がした。
 見れば、五飛はすっかり打ちのめされた様子で四肢を床について項垂れていた。

 

「こんな子供に説教されるとは……俺は……僕は……私は……っ」

 

          *          *          *

 

 翌日。

 

「あれ、五飛はどうしたんですか?」

 

 本部内を見渡しても姿の見えない同僚を探すカトルに、トロワが答える。

 

「小さな子供に打ち負かされたのが相当堪えたらしい。性根を鍛えなおすといって山篭りしにいった」
「それはまた……相変わらず極端な性格をしてるね」

 
 

「五飛、いい加減帰っていらっしゃい。あんなことで誰も貴方を嘲笑ったりしないわよ!」

 

 サリィが川縁から呼びかけるが、五飛は一向に耳を貸そうとせず、ひたすら滝に打たれ続けている。

 

「五飛ってば、いつまで引きずるつもりなの?」
「……」
「もう、本当に頭が固いのね。どうしようもないほど馬鹿なんだから!」
「……」

 

 サリィは気づいていなかった。
 そうやって声をかければかけるほど、五飛の誇りが傷ついていくことに。
 こうして五飛は、幾日も幾日も山に篭もり続けたのであった。
 ところで、原因を作ったコーラサワーはといえば。

 

「薔薇はもう飽きたな。よし、次はひまわりだ」

 

 わずか一晩で薔薇製品を片付け、新たな調度品を鼻歌交じりに並べていく姿が目撃されたという。

 

 

【あとがき】
 『恥』という言葉を練り固めて人の形にすれば模倣の人が出来上がりました。
 こんばんは皆様ご機嫌麗しゅう。
 ここのところ携帯から書き込めないから久々にパソでレスしてみればハンドル残しっぱという醜態晒してしまい穴があったら身投げしたい気分。
 神郷兄弟とその周辺可愛いよというかペ○ソナアニメが面白かったので只今絶賛P3プレイ中ですタルンダ。
 世間の皆様はP4の時代でしょうがキニシナイ。
 3ヶ月ルールなんてそんなものがありましたね。
 けどまだ頑張りたいです。
 近頃コンビニで薔薇水を見かけないことを嘆きつつそれでは。

 
 

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